平25(ワ)8927号 不当利得返還請求事件

裁判年月日  平成26年 9月11日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(ワ)8927号
事件名  不当利得返還請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2014WLJPCA09118008

要旨
◆原告が、被告会社との間で原告の自宅の新築工事に関する仮工事請負契約書を作成し、被告会社の代表者である被告Y1は同社が本件契約書に基づき負う債務につき連帯保証するとともに、建築士である被告Y2との間で同工事に関して建築確認申請手続の委任契約を締結したところ、本件契約書による契約及び本件委任契約を解除したとして、被告らに対し、既払金額の返還等を求めた事案において、本件事情の下では、本件契約書による契約は請負契約とみるのが相当であり、同契約及び本件委任契約は、特定商取引に関する法律2条1項1号の「訪問販売」に当たるところ、同法9条1項に基づく原告による本件各契約の解除(クーリングオフ)は有効であるなどとして、請求を認容した事例

参照条文
特定商取引に関する法律2条1項1号
特定商取引に関する法律9条1項
特定商取引に関する法律26条
民法446条
民法545条
民法632条
民法643条
民法656条

裁判年月日  平成26年 9月11日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(ワ)8927号
事件名  不当利得返還請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2014WLJPCA09118008

東京都練馬区〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 阿部哲二
千葉県大網白里市〈以下省略〉
被告 有限会社フジケンホーム
同代表者代表取締役 Y1
千葉県大網白里市〈以下省略〉
被告 Y1
東京都東村山市〈以下省略〉
被告 Y2

 

 

主文

1  被告有限会社フジケンホーム及び被告Y1は,原告に対し,連帯して150万円及びこれに対する平成25年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告Y2は,原告に対し,20万円及びこれに対する平成25年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  訴訟費用は被告らの負担とする。
4  この判決は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  事案の概要
本件は,原告が,被告有限会社フジケンホーム(以下「被告会社」という。)に対しては,不当利得返還請求権に基づき支払った150万円及びこれに対する弁済期の後の日である平成25年1月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,被告Y1(以下「被告Y1」という。)に対しては連帯保証契約に基づきこれと同額の支払を求め,被告Y2(以下「被告Y2」という。)に対しては,不当利得返還請求権に基づき支払った20万円及びこれに対する弁済期の後の日である平成25年3月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1  争いがない事実等
(1)  原告は,住所地に自宅を所有し,単身で暮らしている(争いがない。)。
(2)  被告会社は,建築工事の請負等を業とする会社である(争いがない。)。
被告Y1は,被告会社の代表者である(争いがない。)。
(3)  被告Y2は,建築士である(争いがない。)。被告Y2は建築確認申請,工事監理等を業としている(被告Y2本人)。
(4)  原告と被告会社は,平成24年12月29日,原告の自宅の新築工事に関して総額1500万円(内金150万円)とする仮工事請負契約書(以下「本件契約書」という。)を作成した(争いがない。)。
被告Y1は,同日,原告に対し,被告会社が本件契約書に基づき負う債務につき書面により連帯保証した(争いがない。)。
(5)  原告と被告Y2は,原告の自宅の新築工事に関し,建築確認申請手続の委任契約(以下「本件委任契約」という。)を締結した(争いがない。)。
(6)  原告は,平成25年1月4日,被告会社に対して本件契約書による契約を解除する旨の意思表示をした(争いがない。)。
(7)  原告は,平成25年1月7日,被告Y2に対して本件委任契約を解除する旨の意思表示をした(争いがない。)。
(8)  原告は,平成25年6月17日,書面により,被告ら訴訟代理人弁護士に対し,特定商取引に関する法律9条に基づき本件契約書による契約及び本件委任契約を解除する旨の意思表示をした(当裁判所に顕著)。
2  争点及び当事者の主張
(1)  原告と被告会社との間で平成24年12月29日付けでされた契約の性質
【原告の主張】
原告と被告会社との間の平成24年12月29日付けで締結された契約は,飽くまでも仮契約にすぎず,原告が被告会社に支払った150万円は,本契約が成立した場合には,これを請負代金の一部に充当する趣旨のものである。
原告がこの仮契約を解除する意思表示は,本契約を締結しない旨の意思表示とみることができ,被告は不当利得として150万円を原告に返還すべき義務を負う。
【被告会社及び被告Y1の主張】
原告と被告会社との間の平成24年12月29日付けで締結された契約は,請負契約であり,原告が被告会社に支払った150万円は手付けである。原告がした解除は,手付解除とみるべきであり,被告会社はその返還義務を負わない。
(2)  クーリングオフ(主位的主張)
【原告の主張】
原告と被告会社との間で平成24年12月29日に締結された契約及び原告と被告Y2との間の同日付けの委任契約は,役務提供事業者の営業所以外の場所である原告の自宅で締結されたものであり,特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)2条の訪問販売に当たる。
被告会社及び被告Y2は,特商法5条に定める法定書面を原告に交付しておらず,クーリングオフの期間の始期は到来していない。
【被告らの主張】
原告と被告会社との間で平成24年12月29日に締結された契約は,原告の既存の自宅を取り壊して建物を新築しようというものであり,その性質上,原告の自宅の状況を検分しないと契約を締結することはできず,被告らの営業所においてできる作業ではないから,特商法2条の訪問販売には当たらない。
被告らは,原告の友人を介して原告の相談を受け,原告宅で数回にわたり打合せを行っており,特商法に基づき消費者を保護すべき不意打ち的な取引ではないから,特商法2条の訪問販売には当たらない。
(3)  解除(予備的主張)
【原告の主張】
原告は,被告会社に対しては,平成25年1月4日,民法641条に基づき本件契約書による契約を解除する旨の意思表示をし,被告Y2に対しては,同月7日,民法651条に基づき本件委任契約を解除する旨の意思表示をした。
第3  当裁判所の判断
1  争いがない事実及び証拠(甲1,2,3,乙4,丙1,2,3,4,5,6,7,8,12,原告本人,被告Y2本人。ただし,認定に反する部分は採用しない。)並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)  原告は,自宅の建替えを考えていたところ,知人から被告会社を紹介された。
(2)  被告Y1は,平成24年11月22日,原告宅を訪問し,原告は自宅の建替えについて相談した。被告Y1は,この後も何度か原告宅を訪問したが,原告の方から訪問するよう依頼したことはなかった。
(3)  被告Y1は,平成24年12月4日,同月8日,原告宅を訪問し,カイト設計が作成した間取り図のプランに基づいて原告と相談した。
(4)  被告Y2は,以前千葉県四街道市にある物件の仕事の関係で,被告Y1と知り合うこととなった。
被告Y2は,平成24年12月8日,被告Y1の紹介により,原告宅を訪問し,原告と初めて会った。被告Y2は,原告に対し,費用の概算について口頭で説明した。被告Y2は,この後も何度か原告宅を訪問したが,原告の方から訪問するよう依頼したことはなかった。
(5)  被告Y2は,その後,関係官公庁を訪問して原告の自宅を建築する条件について確認したり,被告会社の依頼を受けてカイト設計が作成した間取り図を基に平面図等を作成するなどした。
被告Y2は,平成24年12月18日,原告宅を訪問し,上記平面図等に基づいて打合せをし,原告は駐車場の形状の変更等を求めるなどした。被告Y2は,同日,原告に対し,建築確認申請業務の報酬を36万7500円,うち業務着手時に20万円とする旨の見積書を交付し,その内容を説明した。
(6)  被告Y1は,平成24年12月27日,見積書を持参し,原告宅を訪問した。この見積書では解体工事,外構工事等を除いた本体工事分だけで1426万円余りかかるということであったことから,原告は総額1500万円以内でないと無理であると話した。
(7)  被告Y2は,平成24年12月27日,原告宅を訪問し,修正した平面図等に基づいて原告に説明をし,20万円の請求書を交付した。
被告Y2は,顧客と契約する際に通常は契約書を作成するが,原告との間では契約書を作成していない。
(8)  被告Y1は,平成24年12月29日,原告宅を訪問し,外構工事,解体工事を含めて総額1500万円で請ける,契約の詳細は打ち合わせることとして,年内に仮契約をしてほしいと執ように申し入れ,被告会社や被告Y1の記名押印等が既にされた仮工事請負契約書を持参し,原告の署名押印を求めた。原告は,被告Y1の求めに応じ,仮工事請負契約書に署名押印した。この仮工事請負契約書の内容に対応する確定した見積書,設計図面等は作成されていなかった。
被告Y1は,本件契約書の作成が終了すると,原告に対し,内金150万円の支払を求め,150万円の領収証を交付した。原告は,同日,被告Y1の求めに応じ,銀行に行き,指定された被告会社の口座に150万円を振り込んだ。
また,原告は,同日,被告会社と契約した以上,被告Y2にも支払わなければならないと思い,被告Y2から聞いていた同人の口座に20万円を振り込んだ。
(9)  原告は,平成25年1月4日,電話により被告会社に対して本件契約書による契約を解除する意思表示をした。
(10)  原告は,平成25年1月7日,電話により被告Y2に対して本件委任契約を解除する意思表示をした。
2  原告と被告会社との間で平成24年12月29日付けでされた契約の性質(争点(1))について
原告は,原告と被告会社との間の平成24年12月29日付けで締結された契約は,飽くまでも仮契約にすぎないと主張する。
しかし,原告と被告会社は,原告の自宅の建替えについて数回打合せをしていること,被告Y2も原告の要望を踏まえた新築建物の概要についての平面図等を作成しこれを原告に交付したこと,被告会社は,本体工事を1426万円余りとする見積書を提出しており,解体工事と外構工事と併せて1500万円とすることに合意していること,代金の一部が本件契約書作成後直ちに支払われていることなどに鑑みれば,原告と被告会社とは自宅の建替工事に関する契約の概要については合意に至ったものとみることができるから,原告と被告会社との間で平成24年12月29日付けでされた契約は,請負契約とみることが相当であると解される。
したがって,原告の前記主張は採用することができない。
3  クーリングオフ(主位的主張)(争点(2))について
(1)ア  被告会社は,建築工事の請負等を業とする者であり,被告Y2は,建築確認申請,工事監理等を業とする者であり,いずれも特商法2条1項1号の「役務の提供の事業を営む者」に当たる。
イ  被告会社は,平成24年12月29日,原告の自宅において,原告との間で,建物の建築等の請負という役務を有償で提供する契約を締結しており,特商法2条1項1号の「営業所,代理店その他の主務省令で定める場所…以外の場所において,…役務提供契約を締結」したものに当たる。
また,被告Y2は,遅くとも平成24年12月29日までの間に,原告の自宅において,原告との間で,建築する建物の建築確認申請業務という役務を有償で提供する契約を締結しており,特商法2条1項1号の「営業所,代理店その他の主務省令で定める場所…以外の場所において,…役務提供契約を締結」したものに当たる。
ウ  したがって,本件契約書に基づく契約及び本件委任契約は,特商法2条1項1号の「訪問販売」に当たる。
(2)  これに対し,被告らは,①原告と被告会社との間で平成24年12月29日に締結された契約は,その性質上,原告の自宅の状況を検分しないと契約を締結することはできず,被告らの営業所においてできる作業ではないから,特商法2条の訪問販売には当たらないとか,②被告らは,原告の友人を介して原告の相談を受け,原告宅で数回にわたり打合せを行っており,特商法に基づき消費者を保護すべき不意打ち的な取引ではないから,特商法2条の訪問販売には当たらないなどと主張する。
しかし,本件契約書に基づく契約及び本件委任契約が特商法2条1項1号の「訪問販売」に当たる以上,特商法26条が定める適用除外の事由に当たらない限りは,特商法9条のクーリングオフに関する規定の適用は免れないところ,被告らは,どの事由に当たるかを明らかにしない。
被告らの上記主張を特商法26条5項1号のいわゆる請求訪販の適用を主張するものと解しても,前記によれば,原告は,被告会社や被告Y2が原告宅を訪問するより前に被告会社や被告Y2と契約を締結する意思をあらかじめ有していたものではなく,被告会社や被告Y2に対して原告宅において契約するよう請求したものでもないから,同号は適用されない(そもそも本件委任契約については,契約書も作成されておらず,原告の契約締結の意思はあいまいなものと認められる。)。このほかの適用除外の規定についても,本件契約書に基づく契約及び本件委任契約に適用されるものは見当たらない。
したがって,被告らの前記主張は採用することができない。
(3)  以上によれば,本件契約書に基づく契約及び本件委任契約は,特商法2条1項1号の「訪問販売」に当たり,原告は,同法9条1項に基づき上記各契約を解除することができるから,原告が,平成25年6月17日にした解除(クーリングオフ)は有効である。そして,その解除(クーリングオフ)の効果は,上記各契約締結時に遡って上記各契約が無効となるものと解すべきであるから,被告会社及び被告Y2は,上記各契約に基づいて原告から受領した金員の受領時に遡ってその利息を支払う義務を負うと解される(民法545条2項)。そして,被告Y1も,連帯保証契約に基づき被告会社と同様の責任を負うことになる。
第4  結論
よって,原告の請求は,いずれも理由がある。
(裁判官 上村考由)

 

*******

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。