平21(ワ)32250号・平22(ワ)12736号・平22(ワ)34971号 和解金請求事件(第1事件)、損害賠償請求事件(第2事件本訴)、立替金請求事件(第2事件反訴)

裁判年月日  平成26年 2月17日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)32250号・平22(ワ)12736号・平22(ワ)34971号
事件名  和解金請求事件(第1事件)、損害賠償請求事件(第2事件本訴)、立替金請求事件(第2事件反訴)
裁判結果  第1事件認容、第2事件本訴請求棄却、第2事件反訴請求認容  文献番号  2014WLJPCA02178006

要旨
◆原告との立替払契約に基づいて原告の被告a社に対する着物等の売買代金債務を立替払した被告J社が、原告との間で締結した当該立替払債務の弁済額及び弁済方法を変更する旨の和解契約に基づく和解金残金の支払を求めた事案において、原告が主張する被告a社代表取締役である被告Dによる販売行為の不法行為該当性又は公序良俗違反、被告J社による過剰与信行為の不法行為該当性、原告のクーリングオフによる本件各売買契約の解除や支払停止の抗弁はいずれも認められないとして、請求を全部認容した事例(第1事件)
◆原告が、訪問販売で押売りをされたとして被告a社に対しては過量販売等の不法行為に基づき、同社代表者である被告Dに対しては会社法等に基づき、被告J社及び被告O社に対しては信販会社の加盟店調査義務に反する過剰与信による共同不法行為に基づき、損害賠償を求め、予備的に、被告Dの訪問押売販売の公序良俗違反等による不当利得返還を求めた事案において、被告Dの販売行為に訪問販売上の不適切行為や原告の意思決定権侵害があったとはいえないから違法性や公序良俗違反は認められず、また、被告J社らに原告主張の調査管理義務及び過剰与信防止義務等があるともいえない上、原告は本件各売買契約時に法定書面を交付されておりクーリングオフ期間は経過したから解除は認められないとして、請求を棄却した事例(第2事件本訴)
◆信販会社である被告O社が、原告と被告a社間の着物等の売買契約に関する立替払契約を締結し立替払をしたとして、原告に対し、立替払金債務の残代金の支払を求めた事案において、原告は、被告a社の代表取締役である被告Dによる販売行為は不法行為又は公序良俗違反に当たる旨、被告O社による過剰な与信行為は不法行為に当たる旨、クーリングオフに基づく各売買契約の解除や支払停止の抗弁を主張するものの、各主張はいずれも認められないとして、請求を全部認容した事例(第2事件反訴)

参照条文
民法90条
民法644条
民法656条
民法695条
民法703条
民法709条
民法719条1項
会社法350条
会社法429条
旧有限会社法30条ノ3
特定商取引に関する法律2条1項1号
特定商取引に関する法律4条
特定商取引に関する法律5条
特定商取引に関する法律26条2項2号(平20法74改正前)
特定商取引に関する法律施行令8条3号(平21政117改正前)
割賦販売法38条(平20法74改正前)

裁判年月日  平成26年 2月17日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)32250号・平22(ワ)12736号・平22(ワ)34971号
事件名  和解金請求事件(第1事件)、損害賠償請求事件(第2事件本訴)、立替金請求事件(第2事件反訴)
裁判結果  第1事件認容、第2事件本訴請求棄却、第2事件反訴請求認容  文献番号  2014WLJPCA02178006

平成21年(ワ)第32250号 和解金請求事件(第1事件)
平成22年(ワ)第12736号 損害賠償請求事件(第2事件本訴)
平成22年(ワ)第34971号 立替金請求事件(第2事件反訴)

北海道函館市〈以下省略〉
第1事件原告兼第2事件本訴被告 株式会社ジャックス(以下「被告ジャックス」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人支配人 B
同訴訟代理人弁護士 三好徹
同 石田央子
同 津田直和
同 井川真由美
同 鶴﨑有一
同 石井修平
同 山崎哲
同 江花史郎
同 内田尚成
同 本田雄巳
同 黒木義隆
同 升田沙弥
東京都台東区〈以下省略〉
第1事件被告兼第2事件本訴原告兼第2事件反訴被告
C(以下,単に「原告」という。)
同訴訟代理人弁護士 五十嵐潤
同 増村圭一
札幌市〈以下省略〉
第2事件本訴被告 有限会社a(以下「被告a社」という。)
同代表者代表取締役 D
札幌市〈以下省略〉
第2事件本訴被告 D(以下「被告D」という。)
上記2名訴訟代理人弁護士 本橋光一郎
同 下田俊夫
東京都千代田区〈以下省略〉
第2事件本訴被告兼第2事件反訴原告 株式会社オリエントコーポレーション
(以下「被告オリコ」という。)
同代表者代表取締役 E
同訴訟代理人弁護士 松尾翼
同 西村光治
同 林恵子
同 木村尚徳
同 小澤崇行
同 山岸泰洋

 

 

主文

1  原告は,被告ジャックスに対し,227万5000円及びこれに対する平成20年1月28日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  原告の第2事件本訴請求をいずれも棄却する。
3  原告は,被告オリコに対し,293万8910円及びうち253万8700円に対する平成22年9月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
4  訴訟費用は,第1事件並びに第2事件本訴及び第2事件反訴を通じて,原告の負担とする。
5  この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  第1事件
主文第1項に同じ。
2  第2事件本訴
(1)  主位的請求
被告ジャックス,被告a社,被告D及び被告オリコは,原告に対し,各自4413万8710円及びこれに対する平成19年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  予備的請求
ア 被告a社は,原告に対し,3884万4935円及びこれに対する平成19年9月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 被告ジャックスは,原告に対し,267万2685円及びこれに対する平成16年5月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ウ 被告オリコは,原告に対し,224万2699円及びこれに対する平成18年7月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  第2事件反訴
主文第3項に同じ。
第2  事案の概要等
1  事案の概要
(1)  第1事件
被告ジャックスが,原告との立替払契約に基づいて原告の被告a社に対する着物等の売買代金債務を立替払したところ,原告との間で,当該立替払債務につき,弁済額,弁済方法を変更することを内容とする和解契約が成立したとして,原告に対し,上記和解契約に基づく和解金残金227万5000円及びこれに対する期限の利益喪失日の翌日である平成20年1月28日から支払済みまで約定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
(2)  第2事件本訴
ア 主位的請求
原告が,被告a社から別紙商品一覧記載の商品を訪問販売により押売されたとして,被告a社については過量販売,強引な販売方法による不法行為(民法709条)に基づき,被告a社の代表者である被告Dについては平成18年5月1日より前の販売行為は旧有限会社法30条の3,同日以降の販売行為は会社法350条,429条に基づき,被告ジャックス及び被告オリコについては信販会社の加盟店調査義務に反して過剰な与信を原告に与え続けたことにより成立する被告a社及び被告D(以下「被告a社ら」という。)との共同不法行為(民法719条)に基づき,被告a社ら,被告ジャックス及び被告オリコ(以下「被告ら」と総称する。)に対し,連帯して,4413万8710円(着物等商品額3884万4935円及び立替払手数料529万3775円(被告ジャックス,被告オリコのほか,株式会社クオーク及び三井住友カード株式会社分を含む。)の合計額)の賠償及びこれに対する一連の不法行為の終期である平成19年9月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
イ 予備的請求
原告が,被告Dによる訪問押売販売が公序良俗に反し,別紙商品一覧に記載された被告a社と原告の間の売買契約及びこれに関する原告と被告ジャックス又は被告オリコとの間の立替払契約が無効であるとして,不当利得返還請求権に基づき,被告a社に対しては上記売買代金3884万4935円及びこれに対する最終の売買契約締結日の翌日である平成19年9月26日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を,被告ジャックスに対しては被告ジャックスとの立替払契約の手数料合計相当額267万2685円及びこれに対する被告ジャックスとの最後の立替払契約締結日の翌日である平成16年5月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,被告オリコに対しては被告オリコとの立替払契約の手数料合計相当額224万2699円及びこれに対する被告オリコとの最後の立替払契約締結日の翌日である平成18年7月6日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。
(3)  第2事件反訴
被告オリコが,原告との間で,別紙立替払契約一覧表1から4までに記載のとおり,原告と被告a社との間の着物等の売買契約に関する立替払契約を締結し,立替払をしたとして,原告に対し,立替払金債務の残代金253万8700円,平成22年8月31日時点での確定遅延損害金40万0210円及び上記残代金に対する同年9月1日から支払済みまで約定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2  前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,又は後掲各証拠(以下の表記において,枝番号のある書証については,特に限定がある場合を除き,各枝番号を含む趣旨である。)及び弁論の全趣旨により認定することができるものである。
(1)  当事者
ア 原告は,昭和9年○月○日生まれ(平成25年12月現在79歳)の女性であり,その夫が熊手飾りの製造販売業を営む「b商店」において勤務している。
イ 被告a社は,呉服,洋服及び婦人服の販売等を業とする有限会社であり(なお,平成8年6月17日の商号変更前の商号は,「有限会社a1」である。),被告Dは,その代表者である(乙A1,乙A2)。
ウ 被告ジャックス及び被告オリコは,登録を受けた信用購入あっせん,融資及び保証等を業とする株式会社である。
(2)  原告と被告ジャックス又は被告オリコとの立替払契約の締結
原告は,別紙契約目録中,「信販会社」の欄にジャックス又はオリコとの記載がある項目につき,「商品名」,「売買契約日」及び「売買代金額(税込)」欄に各記載の内容で被告a社と締結した売買契約に関し,「立替払契約日」記載の日に,「立替払額」,「手数料」及び「分割払債務総額」欄に各記載の内容のとおり(ただし,29番の立替払契約については,契約時の手数料は102万3075円,分割払総額は443万3325円であったが,事後的に「手数料」欄及び「分割払総額」欄記載のとおりに変更されたものである。),被告ジャックス又は被告オリコとの間で立替払契約を締結した(甲A1から3まで,甲1,乙C1)。
(3)  原告と被告ジャックスとの和解契約
ア 被告ジャックスは,原告との間で締結した,別紙契約目録24番,26番及び29番に係る立替払契約(以下,それぞれ「本件原契約1」,「本件原契約2」,「本件原契約3」という。)に基づく立替払債務の残債務合計234万0768円について,弁済額及び弁済方法を以下のとおり変更する旨の和解契約をした(甲A4。以下「本件和解契約」という。)。
(ア) 弁済総額
234万0768円
(イ) 弁済方法
平成19年12月27日限り6万5768円を,平成20年1月から平成22年11月までは毎月27日限り6万5000円を支払う。
(ウ) 期限の利益喪失
原告が,毎月の返済を1回でも怠ったときは,当然に期限の利益を喪失する。
(エ) 遅延損害金
原告は,遅延発生から完済に至るまで総支払総額の残高に対して商事法定利率を乗じた額を遅延損害金として支払う。
イ 原告は,被告ジャックスに対し,平成20年1月27日の支払を怠り,同日の経過をもって期限の利益を喪失した。期限の利益喪失時の残元金は227万5000円である。
(4)  被告オリコに対する期限の利益喪失
ア 原告は,被告オリコとの間で,別紙立替払契約一覧表記載の各立替払契約(別紙契約目録の28番,31番,32番及び33番に相当する。以下,順に「本件立替契約①」から「本件立替契約④」という。)を締結した際,別紙立替払契約一覧表に各記載の「支払回数」及び「支払方法」により分割払することを約した。
イ 原告と被告オリコとの間の立替払契約には,いずれも,原告が分割支払金の支払を1回でも遅滞し,被告オリコから20日以上の期間の定めのある書面による催告を受けた後も支払わないときは,期限の利益を喪失すること,支払回数が3回以上であり,割賦販売法に定める指定商品,指定権利,指定役務に関する取引については,期限の利益を喪失した後,分割支払金の残金額に対し,商事法定利率による遅延損害金を支払うことを内容とする条項がある。
ウ 原告は,被告オリコとの間で,別紙計算書1から4までに記載のとおりに弁済をしていたが,平成20年1月27日の支払をいずれも怠り,被告オリコの催告によっても,これを支払わない。
エ 上記により,原告は,平成20年1月27日に期限の利益を喪失した。
(5)  原告によるクーリングオフの主張
原告は,被告a社ら及び被告ジャックスに対し,平成21年4月27日,クーリングオフによる立替払契約の解除通知書を発信した(甲2)。
また,これに先立って,原告は,平成20年6月10日付けで,被告D,被告ジャックス,被告オリコ等に対して送付した「返還通知書」と題する書面(甲3参照)において,被告Dから購入した商品につき,クーリングオフにより契約を解除する旨を主張している。
3  争点及び争点に関する当事者の主張
(1)  被告Dの原告に対する販売行為の不法行為又は公序良俗違反該当性(争点1)
(原告の主張)
以下の事実関係からすると,被告Dは,原告に対し,原告が商品を購入する意思も能力もないことを知りながら,原告宅を訪問し,脅迫的言辞を用いる等の強引な手法を用いて過量に商品を販売したものであり,その勧誘行為には不法行為が成立するとともに,当該勧誘行為に基づく各売買契約は公序良俗違反により無効である。
ア 原告は,平成5年頃,被告Dに何度も着物の展示会に誘われたところ,娘が成人式を控えていたこともあり,展示会に行くことにした。原告は,上記展示会において,被告Dに対し,展示されている着物について感想を述べていただけで一言も買うとは言っていなかったにもかかわらず,後日,被告Dがその着物を作った上で原告宅を訪問してきたので,やむを得ず買うこととなってしまった。
イ 被告Dは,平成7年頃,原告を食事に誘い,原告及び原告の娘であるF(以下「F」という。)と食事した後,被告Dが宿泊していた帝国ホテル内の部屋に原告及びFを連れて行き,Fに「折角なので,あわせるだけあわせてみたらどう」などと言って着物の購入を勧誘した。被告Dは,着物が高いと言って買い渋る原告及びFに対し,「買うのにお金払えないの。おどかさんといてください」などと声を張り上げ,「このくらいの物は持っていないと恥ずかしいですわ。」「娘さん似合ってたじゃないですか。娘さんキャンセルしたんだから奥様の方で何か買ってくださいよ」等と申し向け,矢継ぎ早に商品を売り込み,契約しなければ帰ることができない雰囲気にした。そのため,原告は,50万円程度の大島袖を半強制的に購入させられた。
それ以降,被告Dは,原告宅を訪れては,原告が契約書に署名するまで帰らず,「私が怨んだ相手は必ず死ぬんです」等の原告の恐怖心を煽る言葉や暴言を言い続けた結果,原告は,被告Dに対して恐怖を感じるようになり,商品の購入をしてしまっていた。
ウ 原告は,平成14年頃には,毎月のローンの支払額が約30万円になり,月々の支払に追われていた。
しかし,被告Dは,原告が上記の支払状況であることから「お金がない。支払えない」などと言ったのに対し,「お金がないならローンを組めばいい」などと申し向けて原告にローンを組ませ,当該ローンが完済される頃に再び商品を持って原告宅を訪れては「あのローン終わったのでしょう。じゃあ次こっちどうですか」などと原告に申し向けて,商品を売り付けた。
エ 原告は平成14年4月10日に隣家からのもらい火で火事に遭っているのに,被告Dは,同年10月にも,原告に商品を売り付けている。
オ 被告Dは,平成15年頃にも,原告が「支払できない」と商品の購入を断っていたにもかかわらず,一時期,原告のクレジットの立替をしてまでローンを組ませ,さらに,「クレジットの商品名を変えて,商品をまとめたお値段にしてローンを組み替えたらいいんです」と言って,ローンを組ませて商品を販売した。
その後も,被告Dは,原告に対し,「この商品の値打ちが分からないような人はばかです。」「価値が分かっていない。ステータスというものは,その人の価値観なんです。」「こんな二束三文の宝石より,こちらを買うべきです。」「細かいお金を気にするような小さな人間にお話はしませんよ。」「このくらい持っていないと恥ずかしいですよ」などと申し向けては原告に着物等を売り付けた。
カ 以上の訪問販売の結果,原告は,被告a社との間で,別紙商品一覧記載のとおり,平成7年6月から平成19年9月までの12年3か月もの期間に,54回以上も契約を締結しており,あまりに回数が多い上,その購入価格は4000万円近くに上る。また,着物だけでも16着も購入しており,アクセサリーを11個,バッグを4個,洋服を6着も購入しているが,全て2品目以上は過量販売である。
(被告a社らの主張)
ア 原告の主張する取引については,一部重複があるため否認する。
イ 被告Dは,原告宅を訪問する前は必ず事前連絡をし,商品の案内をするときは,「ご覧になりますか」と話して,原告から「見てみたい」との申出があったときに商品を持って行き,見せていた。契約書は,納品時に作成しており,契約書を書くまで居座ることなど,あり得ない。
ウ 被告Dは,原告に対して恐怖心を煽るような発言をするなどして,強引に商品を売り付けたことはない。
むしろ,原告は,被告Dが原告宅を訪問した際,お土産を用意していたこと,原告の夫の助力を得るなどして被告Dの勧誘を断ることも可能であったにもかかわらず,同人も被告Dに挨拶をする等していたことなどから,原告が被告Dの訪問を歓迎していたことは明らかである。
また,原告は,c自治会の役員をしており,着物を着用する機会が有った上,経済的にもゆとりがあったのであり,着物等を購入する意思も能力もあった。
(被告ジャックス及び被告オリコの主張)
ア 原告は,被告ジャックス又は被告オリコからの契約意思確認に対しても,キャンセルの意思等を伝えたことはなく,クーリングオフも行使していないことから,自己の意思で商品を購入していた。
イ 原告は,Fとともに,被告Dと海外旅行を含む複数回の旅行,会食,エステ,自宅での食事の供応,手土産のやりとり等の交流を重ねていたのであり,被告Dが違法な販売方法を行った旨の原告の主張には信用性がない。
(2)  被告ジャックス及び被告オリコの与信行為の不法行為該当性(争点2)
(原告の主張)
ア 加盟店調査管理義務違反
被告ジャックス及び被告オリコは,信販会社として,信義則上,加盟店が顧客に対して悪質な勧誘行為を行っていないか,調査管理義務を負うところ,被告a社と原告の売買契約においては,訪問販売の方法の違法性があること及び過量販売であることを知りながら,又は調査すれば容易に知り得るにもかかわらず,調査を怠り,与信を継続していたのであるから,加盟店調査管理義務違反がある。
イ 過剰与信防止義務違反
信販会社は,平成20年6月法律第74号による改正前の割賦販売法(以下「旧割賦販売法」という。)38条の趣旨,信義則等に基づき,顧客に対し,当該立替払契約にかかる支払が可能な資力・収入があるか否かを調査し,過剰な与信とならないように配慮する義務を負うところ,原告は立替払契約の申込書に年収を記載しておらず,実際にも,原告の資産状況・収入状況が芳しくなかったにもかかわらず,被告ジャックス及び被告オリコは,確定申告書等により原告の収入状況を確認することなく,被告ジャックスは総額約2126万円(手数料分を除いた売買代金価格でも1859万5810円)の,被告オリコは総額約1743万円(手数料分を除いた売買代金価格でも1538万4250円)の与信を漫然と行ったものである。
ウ 共同不法行為であること
被告ジャックス及び被告オリコが加盟店である被告a社を適切に調査し,又は原告の資力・収入状況を調査していれば,原告が過剰与信による損害を受けることもなかったのであるから,被告ジャックス及び被告オリコは,被告a社らと共同して不法行為責任を負う。
なお,被告ジャックスは,平成16年5月26日の立替払契約以降,被告オリコは,平成18年7月5日の立替払契約以降,原告との間で立替払契約を締結していないが,これ以降も自己の立替払契約による立替金を回収するために故意に本件を問題化せずにそのまま放置しているから,上記各最終の契約締結時以降の原告の損害についても共同不法行為責任を負う。
また,被告オリコについては,平成9年11月20日以前の取引について,立替払契約を締結していないが,被告ジャックスによる与信状況を知った上でこれを利用して本件共同不法行為に加担しているから,その取引による損害についても共同不法行為責任を負う。
エ 被告ジャックス及び被告オリコに対する抗弁対抗
原告と被告a社の間の各売買契約は,上記のとおり,被告Dにおいて,強引な手法で過剰な商品販売をしたものであって,その販売方法が公序良俗に反し,売買契約は無効となるものであることから,原告と被告ジャックス又は被告オリコとの間の立替払契約についても,無効となる。
(被告ジャックスの主張)
ア 原告の加盟店調査義務違反の主張には,法的根拠がないばかりか,被告ジャックスと被告a社の間には資本関係もなく,被告ジャックスに対して他の契約者からのクレーム等もなかったのであるから,被告ジャックスに加盟店の管理義務違反があるとはいえない。
また,原告は飾り熊手職人の妻として人前に着物等を着て出る機会も多いと思われること等から,被告a社による原告への着物等の販売が過量であるとはいえない。宝飾品についても,不自然な重複等はなく,過量とはいえない。
イ 原告が過剰与信防止義務違反の根拠として主張する旧割賦販売法38条は,努力義務規定に過ぎず,直ちに法的根拠となるものではない上,被告ジャックスは,原告の申込みの都度,過去の支払実績,配偶者の保有資産や職業等を精査した上で契約の可否を判断しており,過剰与信防止義務違反は存在しない。
また,被告ジャックスは,契約申込みの都度,所定の与信審査を行い,可と判断した場合にのみ契約を締結している。
ウ 仮に原告と被告a社との間の販売契約が公序良俗違反により無効となったとしても,当該販売契約と原告及び被告ジャックスとの間の立替払契約とは別個の契約であって,後者は無効とはならず,単に,抗弁接続として,支払の停止が認められるだけである。
よって,原告が主張する被告ジャックスによる不当利得返還請求には,理由がないことになる。
(被告オリコの主張)
ア 本件は,平成20年の割賦販売法改正前の事案であるところ,信販会社が,立替払契約に基づく善管注意義務又は信義則上の義務として,加盟店調査義務や過剰与信防止義務を負う理由はない。
イ 被告オリコの原告に対する約1538万円という与信額は,10年近い期間にわたり複数回締結された立替払契約の合計額であるから,単にその額が高額であることをもって,与信が過剰であるということにはならない。また,被告オリコは,立替払契約ごとに原告の居住形態や過去の支払実績等から与信審査を行っており,原告の過去の支払実績に問題がなかったからこそ,立替払契約を締結したものである。
実際のところ,別紙契約目録15番,19番,20番,22番及び23番記載の商品に関する立替払契約については,原告は問題なく完済している。適正に与信され,完済された契約について,事後的に公序良俗違反となる理由はない。
(3)  クーリングオフによる解除,支払停止の抗弁の可否(争点3)
(原告の主張)
ア 別紙商品一覧記載の各売買契約は,いずれも被告Dが原告宅等を訪れて締結したものであり,「訪問販売」(特定商取引に関する法律2条1項1号)に該当するところ,被告a社の原告に対する交付書面には,商品名や数量の記載を欠くものであり,また,その後の契約内容の変更について記載されていないものもあるから,法定書面の交付がないこととなる。
したがって,原告は,被告Dに対して,クーリングオフを行使することができる。
イ 原告と被告ジャックス又は被告オリコとの立替払契約は,売買契約の存在を前提とするものであるから,原告は,被告ジャックス及び被告オリコに対しても,クーリングオフの抗弁を対抗することができる。
ウ なお,被告ジャックスと原告の和解契約は,立替払契約により生じた支払債務の弁済額及び弁済方法を変更する合意に過ぎず,本件原契約1から本件原契約3までが消滅するものではないから,本件和解契約によってクーリングオフの行使が妨げられることにはならない。
(被告ジャックスの主張)
ア 法定書面該当性・期間経過
本件原契約1及び本件原契約2の契約書(甲A1,甲A2)には,数量の記載がないものの,宝飾品という商品の性質上,数量が「1」であることは明白である。また,本件原契約3については,契約締結時に合意された分割金等は記載されており,書面自体に不備はない。したがって,法定書面交付から8日を経過した以上,クーリングオフは認められない。
イ 和解契約による権利放棄
仮に法定書面の不備が認められるとしても,原告と被告ジャックスは,本件原契約1から本件原契約3までについて,平成19年12月10日に和解契約(契約書及び期限の利益の譲歩があるため,和解契約の性質を有する。)を締結しているため,この時点において,原告はクーリングオフの権利行使を放棄したものと認められる。
ウ 権利濫用
原告がクーリングオフの主張をしたのは,各契約締結日から5年以上を経過した平成21年4月27日のことであり(甲2),原告は,購入した商品の返還を拒絶していること,被告Dに依頼して実際とは異なる商品代金を立替払契約書に記載させて被告ジャックスから金員を詐取していること等を総合的に考慮すれば,原告のクーリングオフの主張は,権利の濫用に当たり,認められない。
(被告オリコの主張)
ア 適用除外
本件立替払契約①及び本件立替払契約②については,これらに対応する原告と被告a社との間の売買契約は,平成20年改正前の特定商取引に関する法律(以下「旧特定商取引法」という。)26条2項2号を受けた旧特定商取引に関する法律施行令8条3号にいう「店舗販売業者以外の販売業者…が継続的取引関係にある顧客(当該訪問の日前1年間に,当該販売又は役務の提供の事業に関して,2以上の訪問につき取引のあった者に限る。)に対してその住居を訪問して行う販売」に該当するため,クーリングオフの規定は,適用されない。また,その余の立替払契約についても,原告と被告a社との間で,それ以前に多数の売買契約が締結されていたのであるから,上記規定の類推適用が認められるべきである。
イ 法定書面該当性
別紙契約目録28番,31番,32番及び33番の各売買契約について,書類の一部に数量や担当者の記載の欠けるものもあるものの,着物や宝飾品を同一人に複数販売することは考えられないから,数量が「1」であることは明らかであるし,担当者についても,被告a社と原告は10年以上も取引を継続してきたのであるから,担当者も明白である。そうすると,上記各売買契約に際して原告に交付された書類がいずれも旧特定商取引法の要求する「法定書面」に該当することは明らかであり,その受領後8日以上が経過していることから,クーリングオフの主張は認められない。
ウ 権利濫用
仮に法定書面の交付が認められないとしても,原告のクーリングオフの主張は,直近の立替払契約から2年弱,当初の契約からは4年3か月を経過しており,原告自身,各立替払契約締結時において,毎回被告オリコの担当者から契約締結意思確認の電話を受けて契約締結の意思がある旨を述べていたのであるから,原告のクーリングオフの主張は,権利の濫用に当たり,許されない。
(4)  消滅時効(争点4)
(被告a社らの主張)
原告は,平成22年4月6日に,第2事件本訴を提起した。
よって,平成19年4月6日以前の売買契約についての不法行為に基づく損害賠償請求権及び平成12年4月6日以前の売買契約についての不当利得返還請求権については消滅時効が成立するので,これを援用する。
(被告オリコの主張)
原告の共同不法行為及び不当利得に係る主張にはいずれも理由がないが,仮にそれが認められるとしても,平成19年4月6日以前の各売買契約に関する損害賠償請求及び平成12年4月6日以前の各売買契約に係る不当利得返還請求について,消滅時効を援用する。
(原告の主張)
被告a社ら及び被告オリコの不法行為は,一連のものであって,別個に消滅時効が起算されるものではない。
第3  当裁判所の判断
1  本件に係る事実経過について
前記第2の2(前提事実)並びに証拠(甲9,甲10,乙A10,乙A24,乙A25,証人F,原告本人,被告a社代表者本人兼被告D本人及び後掲各書証)及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件に係る事実経過として,以下の各事実を認めることができる。
(1)  原告は,平成2年頃に,原告の夫が営むb商店において被告Dが熊手を購入したことをきっかけに,被告Dと知り合った。
(2)  原告は,平成5年頃,被告Dに着物の展示会に誘われ,ホテルオークラで開催された展示会に行き,原告の娘であるFの晴れ着用に,反物,襦袢,帯,帯の付属品を購入した(甲12・1~2頁)。
(3)  展示会の約1週間後に被告Dが上記晴れ着の仕立ての打合せのために原告宅を訪問し,その際,原告に対し,訪問着の購入を勧誘し,原告はこれを購入した。
(4)  平成7年5月頃,原告,F及び被告Dは,帝国ホテルで食事をした。食事代は被告Dが支払った。
(5)  被告Dは,平成7年6月1日から平成19年9月25日までの間,原告宅を訪問して,別紙契約目録中の「売買契約日」の日に,「商品名」欄に記載の着物等の商品を,「売買代金額(税込)」欄に記載の金額で販売した(甲1,甲12,甲A1~3,乙A11~23)。
当該各売買契約(以下「本件各売買契約」という。)のうち,別紙契約目録中の「購入方法」の欄にローンと記載があるものについては,「信販会社」欄に記載の信販会社等によるローンが用いられ,「立替払契約日」欄記載の日に,「立替払額」,「手数料」及び「分割払債務総額」欄記載の内容で,立替払契約がされた。
なお,別紙契約目録のうち,売買契約に係る売買代金額と立替払契約における立替払額が異なるものが存在するが,そのうち,ローンの組替えのために売買代金額を多額に設定していたものについては,その差額分は,被告a社が,原告に現金で交付するなどしていた。
(6)  被告Dは,原告宅を訪問する際は,必ず事前に電話を入れていた。
(7)  被告ジャックス及び被告オリコは,立替払契約の意思確認のために,原告に電話をすることがあったが,その際,原告から契約のキャンセルやクーリングオフの話をすることはなかった(乙C1及び2)。
(8)  原告は,被告Dに対して,事前にせんべい等のお土産を用意しておき,これを持たせることもあった。
(9)  原告は,平成12年に,被告Dからタイへの旅行の誘いを受け,F,被告Dとともに,同旅行に行った。そこで,被告Dは,トルマリンの宝石の購入を勧誘した。旅行の飛行機代,ホテル代,食事代等は,被告Dが負担した。
また,Fは,被告Dと共に,被告Dの費用負担でエステや食事に行っていた。
(10)  原告は,平成15年頃にも,被告Dから札幌雪祭り旅行に招待されて参加した。この際は,被告Dから商品を購入していない。
さらに,原告は,平成16年に被告Dと富良野旅行にも行っている。
(11)  原告の夫は,熊手飾り職人として,在宅していることが多いが,原告宅を訪問していた被告Dに対して,あんこう鍋を振る舞ったこともあった。
また,原告の夫は,原告や被告Dのために,近所の天ぷら屋の順番待ちをしたこともあった。
(12)  原告の夫の所得は,平成7年当時は271万6356円であったが,その後は200万円前後が続き,平成19年には約14万円にとどまっている。
また,b商店から原告に対する給与支給額は,平成12年までは年54万円であったが,平成13年以降は102万円となっている。(甲5,甲7)
(13)  原告には,c自治会役員として着物を着る機会が有り,着物に関する知識もあった。
2  争点1(被告Dの原告に対する販売行為の不法行為又は公序良俗違反該当性)について
(1)  訪問販売の担当者が,強引な態様による勧誘をして顧客の自由な意思決定を妨げたり,また,顧客の意向と実情に反して,顧客に明らかに過大な負担を伴う取引を執拗に勧誘したり,過量な商品について契約を締結させたりしたときは,顧客の商品購入に関する意思決定権を侵害したものといえるから,当該行為は,不法行為法上も違法となるとともに,これによって締結された売買契約も公序良俗に反するものとして無効となるものと解される。
そして,上記の違法性の判断に当たっては,顧客の年齢や職業,収入や資産,生活の状況及び顧客の取引経験や商品の必要性等の具体的事情を総合的に考慮して当該各勧誘行為の不当性の有無・程度を判断するべきである。
(2)  そこで,前記1認定の事実に基づき,検討する。
ア 原告は,別紙契約目録1番の売買契約がなされた平成7年6月1日当時61歳という年齢であった。
また,平成7年から平成19年までの原告の世帯所得は,300万円程度またはこれに満たない程度として申告されている。
イ 他方で,原告は,夫の営む熊手屋を手伝っているだけでなく,地元の婦人会の役員を務めていて,着物について着る機会や知識があったし,宝飾品を身に付ける機会もあったといえ,これらを購入する必要性が全くなかったとはいえない。この点,原告は,被告a社が販売した商品は不要であり,ほぼ未使用な旨を主張するが,着物を着る機会や宝石を身につける機会はあったのであるから,必要性が全くなかったとはいえない。
ウ 被告Dの原告に対する販売の態様については,被告Dは,訪問前に原告に連絡をしており,原告宅には,原告の夫もいることから,自ら,あるいは夫に協力してもらい,被告Dの訪問を拒否し,あるいはその退去を強く求めることが困難といえるまでの事情はなかったといえ,被告Dが無理矢理原告宅を訪問し,原告が商品を買うまで居座ったとまでは認められない。
また,原告及びFは,被告Dと食事をし,北海道へ旅行をするなどしていることからしても,被告Dが主張するような強引な勧誘があったとまでは認められないところである。
これに対し,原告は,被告Dが強引に原告宅へ押しかけ,居座り,脅迫的な言辞,オカルトチックな発言を用いて押し売りしたことを主張するが,かかる事実を認めるに足りる証拠はなく,むしろ,原告が,強引に宝石を買わされた等と主張する平成12年のタイ旅行の後も,原告及びFは,被告Dと食事をし,原告自身も被告Dをもてなしていることからすると,原告側も被告Dの来訪を迷惑と考えてはいなかったことがうかがわれる。
エ また,過量販売の指摘との関係でも,取引期間が約12年にわたること,その間の原告の支払債務総額は,立替払契約の分割手数料を含めて,4000万円を超えるものであったが,平成19年頃までの間,ローンの組替えをする場合も一部あったものの,分割金の支払も継続的に行われていたことに照らせば,支払能力に大きな問題があったとも認められないところであって,原告の支払能力を著しく逸脱する売買であったとも解されない。
さらに,原告は,着物,アクセサリー,バッグ及び洋服のそれぞれが複数購入されていることをもって,2品目以上は過量販売であると主張するが,全く同一の品を複数購入させているのであればともかく,上記の各品目は,時と場合に応じて使い分けるのが通常であるから,同じ品目を複数購入していること自体が不自然・不合理であるとはいえず,このことをもって,過量販売と解することはできない。
(3)  そうすると,被告Dの販売行為について,訪問販売として不適切な勧誘行為があったとまではいえず,原告の商品購入に関する意思決定権を侵害したとはいえないから,当該行為について,不法行為法上の違法性や公序良俗違反があるとはいえない。
3  争点2(被告ジャックス及び被告オリコの与信行為の不法行為該当性)について
(1)  原告は,被告ジャックス及び被告オリコに対し,信販会社は,立替払契約に付随する信義則上の注意義務として,加盟店の調査管理義務及び過剰与信防止義務を負う旨を主張するので,以下検討する。
まず,立替払契約は,売買契約において買主が負う代金支払債務の履行を信販会社に委託することを内容とする準委任契約としての性質を有する。そして,信販会社は,売主に対する売買代金の支払という準委任事務の履行において,善良な管理者の注意をもって処理する義務を負う。これに対し,原告の主張する加盟店管理義務や過剰与信防止義務は,信販会社が,買主に対し,一般的に加盟店の販売方法を調査,是正する義務や買主の支払能力を確定申告書等により確認する義務を負うというものであるが,そのような内容は準委任事務の処理の範囲を超えるものであるから,原告が主張するような上記義務が,立替払契約自体から当然に導かれるということはできない。
(2)  また,立替払契約から導かれる本来的債務が売買代金債務の履行にあることに照らせば,立替払契約における信義則を根拠に,信販会社が買主に対して,加盟店の調査義務や買主の支払い能力の調査義務を負うという原告の主張は直ちに採用することはできない。
なお,旧割賦販売法38条に基づき,過剰与信防止義務があるとの原告の主張については,同条は,割賦販売あっせん業者に対して,信用情報機関を利用すること等により得た正確な信用情報に基づき,それにより購入者が支払うこととなる割賦金等が当該購入者の支払能力を超えると認められる割賦販売,割賦購入あっせんを行わないよう努めなければならないと規定するものであり,事業者に対し,私法上,直ちに購入者の支払能力を超える割賦購入あっせんを行ってはならない義務を負わせるものとは解されない。
さらに,原告は,経済産業省が指導等を行っている点をも指摘するものの,行政指導は,一定の行政目的のためにされるものであり,直ちに私法上の義務を発生させるものではない。
(3)  よって,被告ジャックス及び被告オリコは,原告が主張する加盟店調査管理義務又は過剰与信防止義務を負うものとは認められない。
4  争点3(クーリングオフによる解除,支払停止の抗弁の可否)について
訪問販売においては,クーリングオフの期間を設け,消費者に当該売買契約について再考の機会を与えるため,一定の事項が記載された書面の交付が義務付けられている(特定商取引に関する法律4条,5条)。このような書面交付の趣旨が消費者保護にあることからすれば,書面が交付されていても,重要な記載事項に不備があり,クーリングオフの機会付与に役立たない場合は,書面交付義務を果たしたものとは解されず,いまだクーリングオフの行使期間が始まっていないものと解すべきこととなる。
この点,本件においては,原告が指摘するとおり,本件各売買契約締結時に被告Dが原告に交付した書面には,数量や担当者に係る記載の不備や,その後の契約内容の変更についての記載がないことが認められる(甲A1から甲A3まで,甲1の33,36,37及び38)。
しかしながら,本件では,売買契約の対象が着物や宝石等であったものであり,これら商品の性質からすれば,数量の記載がなくても,数量が「1」であることは明らかであるし,原告と被告a社との間の売買契約においては,被告D以外には担当者はいなかったのであるから,担当者の記載がなくとも,原告がクーリングオフをしようとした場合に特段の支障はなかったといえるから,重要な記載事項に不備があるとはいえない。なお,法定書面は,契約時に交付することを求められているものであることからすれば,契約締結後に契約の内容に重要な変更が加えられ,契約としての同一性が失われるような場合を除き,変更後の内容を記載した書面を改めて交付することまでを要するものとは解されない。そして,本件原契約3に関し,分割払手数料の額が減額されたこと(この点は,原告に有利な条件変更である。)に伴い,各回の分割支払金の額も一部変更されたことが認められるところ(甲A3,甲1の34参照),その内容に照らせば,改めて契約内容を記載した書面を交付させ,クーリングオフを認めるべき重要な変更に当たるとまでは解されないところであって,契約時に交付された書面によって,法定書面の交付の要件を充足するものと解されるところである。
そうすると,原告は,本件各売買契約時に法定書面の交付を受けており,クーリングオフの行使期間をいずれも経過しているものといえるため,特定商取引法に基づく解除は認められない。
5  原告のその余の主張について
(1)  以上のほか,原告は,被告ジャックスとの本件原契約2及び本件原契約3並びに被告オリコとの本件立替払契約②から本件立替払契約④までについて,売買契約における商品の代金額と立替払契約における商品の代金額の差額部分があるところ,立替払契約の前提となる売買代金債務が存在しない以上は,当該部分の立替払金債務も存在しない旨を主張する。
(2)  しかし,立替払契約と売買契約は,あくまで別個の契約であって,購入者・あっせん業者間の立替払契約が購入者・販売業者間の売買契約を前提とするものであるから,両者が経済的,実質的に密接な関係にあることは否定し得ないとしても,そのことから,直ちに,売買契約の範囲でしか立替払契約が成立し得ないと解することはできない。
(3)  よって,この点に係る原告の主張も,理由があると認められず,採用することができない。
第4  結論
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,① 被告ジャックスは,原告に対し,227万5000円の和解金請求権及び平成20年1月28日から約定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払請求権を有することとなり,また,② 被告オリコは,原告に対し,253万8700円の立替払請求権,40万0210円の確定遅延損害金及び平成22年9月1日から支払済みまで約定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払請求権を有することとなる一方で,③ 原告の被告らに対する共同不法行為に基づく損害賠償請求権並びに原告の被告a社,被告ジャックス及び被告オリコに対する不当利得返還請求権は認められないこととなる。
よって,被告ジャックスの原告に対する第1事件請求及び被告オリコの原告に対する第2事件反訴請求については理由があるからいずれも認容することとし,原告の被告らに対する第2事件本訴請求については,主位的請求及び予備的請求のいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担については民事訴訟法61条を,仮執行宣言については同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 花村良一 裁判官 関根規夫 裁判官 髙田卓)

 

〈以下省略〉

 

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