平24(ワ)1969号・平25(ワ)606号 損害賠償等本訴請求事件、リース料反訴請求事件

裁判年月日  平成25年12月20日  裁判所名  京都地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)1969号・平25(ワ)606号
事件名  損害賠償等本訴請求事件、リース料反訴請求事件
裁判結果  本訴請求棄却、反訴請求認容  文献番号  2013WLJPCA12206002

要旨
◆原告神社との間でファイナンス・リース契約を、原告代表役員及び原告禰宜との間で連帯保証契約を締結したと主張する被告が、未払リース料の支払を求めた事案において、本件ではリース対象物件のうちの一部が原告神社に引き渡されていないものの、本件契約はファイナンス・リース契約に該当し、対象物件の引渡しを効力発生要件とする法律上の根拠はなく、本件契約の性質及び規定上、対象物件の一部引渡未了は被告の債務不履行を構成するものではないとして原告側の債務不履行の主張を退けた上、本件各契約の有効な成立及び原告神社によるリース料の支払懈怠を認め、被告の請求を全部認容した事例(反訴)
◆サプライヤーの勧誘を受けてリース業者である被告との間でリース契約を締結した原告神社が、本件契約についてのサプライヤーの詐欺、錯誤、契約解除、不法行為等を理由に金員の支払を求めた事案において、本件勧誘が実現不可能なキャッシュバック合意を含む虚偽事実を告知するものとはいえないから詐欺には当たらず、結果として同合意が完遂されなかったとしても同合意が実現不可能ではない以上、原告側が錯誤に陥っていたとは評価できず、不法行為も認められない上、本件契約に特定商取引法の適用はないから同法9条による解除もできないとして、原告神社の請求を棄却した事例(本訴)

参照条文
民法95条
民法96条1項
民法446条1項
民法454条
民法541条
民法709条
特定商取引に関する法律2条(平20法74改正前)
特定商取引に関する法律2条1項1号
特定商取引に関する法律9条1項
特定商取引に関する法律26条1項1号
特定商取引に関する法律施行令別表第3第2号(平21政217改正前)

裁判年月日  平成25年12月20日  裁判所名  京都地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)1969号・平25(ワ)606号
事件名  損害賠償等本訴請求事件、リース料反訴請求事件
裁判結果  本訴請求棄却、反訴請求認容  文献番号  2013WLJPCA12206002

平成24年(ワ)第1969号 損害賠償等本訴請求事件
平成25年(ワ)第606号 リース料反訴請求事件

京都府〈以下省略〉
本訴原告兼反訴被告 A神社(以下「原告A神社」という。)
同代表者代表役員 B
京都府〈以下省略〉
反訴被告 B(以下,訴え取下げ前の本訴請求に係る地位に従い「原告B」という。)
京都府〈以下省略〉
反訴被告 C(以下,訴え取下げ前の本訴請求に係る地位に従い「原告C」といい,原告A神社及び同Bと併せて「原告ら」という。)
原告ら訴訟代理人弁護士 別紙弁護士目録記載のとおり
東京都港区〈以下省略〉
本訴被告兼反訴原告 NECキャピタルソリューション株式会社(以下「被告」という。)
同代表者代表取締役 D
同訴訟代理人弁護士 香髙茂

 

 

主文

1  原告らは,被告に対し,連帯して240万3660円及びこれに対する平成24年2月10日から支払済みまで年14.6分の割合による金員を支払え。
2  原告A神社の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は,本訴反訴を通じて原告らの負担とする。
4  この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。

 

事実

第1  当事者の求めた裁判
1  本訴請求の趣旨
(1)  被告は,原告A神社に対し,147万0716円及びこれに対する平成21年11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  訴訟費用は被告の負担とする。
(3)  仮執行宣言
2  本訴請求の趣旨に対する答弁
(1)  原告A神社の請求をいずれも棄却する。
(2)  訴訟費用は原告A神社の負担とする。
3  反訴請求の趣旨
(1)  主文第1項同旨
(2)  訴訟費用は原告らの負担とする。
(3)  仮執行宣言
4  反訴請求の趣旨に対する答弁
(1)  被告の請求をいずれも棄却する。
(2)  訴訟費用は被告の負担とする。
第2  反訴請求事件における当事者の主張(事案に鑑み,反訴請求事件に係る事実を先に摘示する。)
1  請求原因
(1)  原告A神社は,宗教法人であり,原告Bは,原告A神社の代表役員であり,原告Cは,原告A神社の禰宜であり,被告は,リース等を業とする株式会社である。
(2)  原告A神社は,被告との間で,平成21年12月10日,下記の約定で別紙リース契約目録記載のファイナンス・リース契約(以下「本件契約」という。)を締結し,原告B及び同Cは,被告との間で,本件契約から生じる債務について連帯保証する旨の契約(以下「本件連帯保証契約」という。)を締結した。

ア 被告は,別紙リース契約目録記載の対象物件(以下「本件対象物件」という。)を,そこに記載のリース料,支払条件及びリース期間で原告A神社に賃貸する。
イ 本件対象物件の所有権は,被告が留保する。
ウ 原告A神社がリース料支払債務又は被告のリース契約解除に伴う損害金支払債務を履行しない場合には,支払うべき金額に対し,支払期日の翌日から完済まで年14.6分の割合による遅延損害金を支払う。
エ 原告A神社は,リース料の支払を怠るなどの契約違反行為をしたときは,被告が請求したときに,直ちに残リース料債務について期限の利益を喪失し,残リース料全額を直ちに支払うとともに,被告は,本件契約を解除できる。
オ 本件対象物件は,本件契約成立後,売主(株式会社フルサポート。以下「フルサポート」という。)から指定の設置場所に搬入され,借主(原告A神社)は,搬入を受けた後,直ちに物件について検査を行い,瑕疵のない完全な状態で売主から契約物件の引渡を受けたことを確認し,売主にその旨を伝える。貸主(被告)は,売主から引渡完了の連絡を受けた後,電話で借主に引渡完了及び引渡完了日を確認し,借主は,貸主に対して引渡完了通知書を発行する。本件対象物件の規格,仕様,品質,性能その他に瑕疵があったときは,借主は,売主との間で解決した後に上記手続を行う。
カ 貸主(被告)の故意又は重大な過失が認められない事由によって本件対象物件の引渡しが遅延又は不能となったときは,貸主は,一切責任を負わない。
キ 本件対象物件の規格,仕様,品質,性能その他に隠れた瑕疵があった場合及び本件対象物件の選択又は決定に際して借主(原告A神社)に錯誤があった場合においても,貸主(被告)は,一切責任を負わない。
ク 前記カ又はキの場合,借主(原告A神社)は,売主(フルサポート)に対し直接請求を行い,売主と解決する。借主が売主に対して権利行使をする場合においても,リース料支払その他本件契約に基づく債務の弁済を免れない。
(3)  原告A神社は,平成24年1月26日,同日を支払期日とするリース料の支払を怠り,その頃,被告からリース料の支払催告を受けたが,被告に対し,同年2月10日,本件契約に基づくリース料の支払意思のないことを明らかにした。
(4)  よって,被告は,原告らに対し,本件契約及び本件連帯保証契約に基づき,連帯して本件契約に基づくリース料の未払分240万3660円及びこれに対する期限の利益喪失後である平成24年2月10日から支払済みまで本件契約所定の年14.6分の割合による遅延損害金の支払を請求する。
2  請求原因に対する認否
(1)  請求原因(1)は,認める。
(2)  請求原因(2)のうち,被告及び原告らが平成21年11月26日にそこに記載の本件契約に該当する意思表示をしたことは認め,その余は否認する。
本件契約は,ファイナンス・リース契約ではなく,後記のいわゆる提携リース契約である。
また,リース契約は,対象物件の購入を希望するユーザーに代わってリース業者が販売業者から対象物件を購入の上,ユーザーに長期間これを使用させてリース料を回収する購入代行賃貸という性質を有するから,対象物件をユーザーに引き渡して利用させることに目的があり,対象物件の引渡しを伴わないリース契約は,ユーザーにとって全く無意味である。したがって,リース契約においては,その性質上,対象物件の引渡しが効力発生要件であると解すべきである。しかるところ,被告は,原告A神社に対し,本件対象物件のうちNSSデイナイトスピードドームカメラ(NSZ110DN)3台(以下「本件カメラ」という。)とは別の機種1台を引き渡したにとどまり,NSSキーボードコントローラー(NSK107)1台(以下「本件コントローラー」という。)を引き渡していない。したがって,本件契約は,成立していない。
(3)  請求原因(3)のうち,被告からリース料の支払催告を受けたことを否認し,その余は認める。
3  抗弁
(1)  特定商取引に関する法律(以下,平成20年法律第74号による改正前のものを「旧法」,平成21年12月1日施行の当該改正後のものを「新法」といい,両者を通じて「法」という。)9条1項に基づく解除,詐欺取消し及び錯誤無効
ア 被告とフルサポートは,提携関係にあり,フルサポートは,株式会社アイフェクト(以下「アイフェクト」という。)を第2次販売店として利用しているところ,アイフェクト従業員であるE(以下「E」という。)は,平成21年11月26日,原告A神社を訪問し,原告B及び同Cに対し,「神社に危険な人物が出入りするため,防犯カメラが必要です。このカメラの契約をしてもらえば,現在リースにより設置されている電話機及び複合機に代えて,新複合機を設置し,カウンター料金も引き下げます。また,今の電話機及び複合機のリース料は,アイフェクトが負担します(以下,このような既存のリース契約に基づくリース料を新たなリース対象物件の販売店等が負担することを,「キャッシュバック」という。)。」などと実現不可能な内容(キャッシュバック)を含む虚偽の事実を申し向けて被告とのリース契約を締結するよう勧誘し,原告B及び同Cをしてその旨誤信させて錯誤に陥らせ,売主をフルサポート,貸主を被告,原告B及び同Cを連帯保証人とする本件契約及び本件連帯保証契約の申込書に所要の事項を記載させた。
イ サプライヤー(売主)がリース業者(貸主)と提携し,ユーザー(借主)において割賦販売かリースかの選択や,取引するリース業者等について選択の余地がないままにリース契約を締結させられるいわゆる提携リース契約においては,瑕疵担保責任やリース契約書の不備又は事実と異なった記載が存在する場合には,ユーザーがサプライヤーと解決すべき旨の条項になっており,実際に,リース契約の対象となる物件の特定及びリース料は,サプライヤーが事実上決定し,サプライヤーがその問題処理に当たっている実態がある。さらに,サプライヤーは,あらかじめ印刷されたリース契約書を持ち歩き,ユーザーは,作成した契約書をサプライヤーに提出するなど,リース契約が成立するまでにリース業者担当者とは全く顔を合わせない事例が大半である。このように,提携リース契約は,サプライヤーの主導のもとに,商品販売の信用供与手段として利用されることが前提になっている。このような提携リース契約においては,典型的なファイナンス・リース契約と異なり,サプライヤーの販売員が熱心に勧誘を行って販路を開いた場合,自動的にリース業者にも利益が発生するから,サプライヤーとリース業者との間には,密接な依存関係が存在するのであって,提携リース契約の勧誘においてサプライヤーの行為が著しく信義に背くときは,ユーザーは,それを直接にリース業者に主張することができると解すべきである。
したがって,フルサポート及びアイフェクト(サプライヤー)並びに被告(リース業者)の密接な依存関係に照らせば,被告の第2次販売店アイフェクト従業員であるEの詐欺行為は,実態としての一体性から,被告の行為と同視されるべきである。
ウ 原告A神社は,被告に対し,平成24年2月10日,本件契約を法9条1項に基づき解除し,民法96条1項に基づき取り消す旨の意思表示をした。
エ 本件対象物件のリースは,旧法2条1項1号,同条4項の指定役務である防犯警報機又は家庭用電気機械器具等の貸与(旧法施行令別表第3の2号ニ又はヘ)に該当し,また,新法は,法の適用を指定役務に限定していないから,本件契約には法の適用がある。なお,被告は,本件契約に当たり,法5条の要件を満たす書面を交付していない。
(2)  債務不履行に基づく解除
原告A神社は,被告に対し,平成24年7月19日,本訴請求に係る訴状送達をもって本件契約を本件対象物件のうち本件カメラ及び本件コントローラーの引渡未了という債務不履行に基づき解除する旨の意思表示をした。
4  抗弁に対する認否
(1)  法9条1項に基づく解除,詐欺取消し及び錯誤無効
ア 抗弁(1)アのうち,原告A神社,同B及び同Cが平成21年11月26日に本件契約の申込書を作成したことは認め,その余は否認する。
本件契約は,平成21年12月10日に被告本社における被告の承諾により成立したものであって,訪問販売に該当しない。原告A神社に対して訪問販売をしたのは,本件対象物件の売主であるフルサポート又はアイフェクトである。
被告は,Eという第三者による詐欺について善意であるし,原告らに動機の錯誤があったとしても,当該動機は,被告に対して表示されていない。
イ 抗弁(1)イは,否認ないし争う。
被告は,フルサポートに代理権を授与していないし,被告とフルサポート及びアイフェクトは,別個の会社であって何ら関連性がないから一体性が認められない。フルサポートが取り次いだ顧客について被告が与信しないことは,相当程度存在するし,リース契約が締結されても,被告は,リース料支払が停止されればその回収という危険を負担している。
アイフェクトは,被告の代理店又は販売店ではない。
ウ 抗弁(1)ウは,認める。
エ 抗弁(1)エのうち,被告が本件契約に当たり法5条の要件を満たす書面を交付していないことは認め,その余は否認する。
旧法施行令別表第3の2号所定の「貸与」とは,民法上の賃貸借契約に基づく物品の使用と賃料の支払とが対価関係に立つものを指すところ,本件契約は,原告A神社がフルサポートから本件対象物件を購入するに当たり,被告がその購入代金の融資を行うという金銭消費貸借契約であって,本件対象物件の賃貸借(便益の提供)を行う役務提供ではないから,「貸与」に該当しない。したがって,本件契約には旧法も新法も適用がない。
本件対象物件は,業務に係る防犯対策の上で必要な場所に設置して監視する装置であって,一定の事実が発生した場合にそれを知らせる警報装置には該当しないし,テレビジョン受信機その他の家庭用電気機械器具にも該当しないから,本件契約は,旧法の指定役務に係る役務提供契約ではない。
(2)  債務不履行に基づく解除
当裁判所に顕著である。
しかし,本件対象物件の引渡義務を負うのは,フルサポートであって被告ではないから,本件カメラ及び本件コントローラーの引渡未了は,被告の債務不履行ではない。むしろ,原告A神社は,被告に対し,本件対象物件が搬入設置され正常に稼働していることを確認している。
5  再抗弁
(1)  法26条1項1号所定の適用除外
ア 原告A神社は,宗教活動のほか,相当額の収入を得る事業活動を行う事業者であり,また,防犯対策を必要とするものであるから,本件契約を,その防犯対策というその営業のために又は営業として締結した。
イ 原告A神社は,被告に対し,平成21年11月26日,本件対象物件を原告A神社の事業用に使用するために締結するものであり,旧法所定のクーリングオフの適用がないことを確認することで,クーリングオフの権利行使を事前に放棄した。
(2)  錯誤に関する重過失
原告A神社は,本件契約に伴い,アイフェクトとの間で,本件契約のリース料の支払に相当するキャッシュバックとして月額4万2630円の支払を受ける旨を合意(以下「本件キャッシュバック合意」という。)していながら,これを被告に秘匿していたから,錯誤があったとしても,そのことについて重大な過失がある。
(3)  本件キャッシュバック合意に基づく信義則違反
原告A神社は,本件契約に伴い,アイフェクトとの間で,本件キャッシュバック合意をし,平成22年6月11日,当該キャッシュバックの不履行について和解契約を締結し,アイフェクトがその履行をできなくなると,株式会社アローフィールド(以下「アローフィールド」という。)との間で,平成23年10月12日,改めて契約を締結して,その支払を受けているが,このことを被告に対して秘匿していた。
このように,原告A神社は,本件契約が有効であることを前提としてキャッシュバックを受けていたのであって,本件契約に基づくリース料支払を拒むのは,信義則に反する。
6  再抗弁に対する認否
(1)  法26条1項1号所定の適用除外
ア 再抗弁(1)アは,否認する。
法26条1項1号所定の「営業」とは,営利性を有し反復継続されるものをいうところ,原告A神社は,営利活動を目的としない宗教法人であり,現に宗教活動以外の活動を一切行っておらず,職員が4名にとどまり,氏子数も約400名であって,防犯カメラを導入する必要がなかった。他方,本件対象物件は,原告A神社の防犯用としては過剰な機能と性能を備えるものである。
イ 再抗弁(1)イは,否認する。
(2)  錯誤に関する重過失及び本件キャッシュバック合意に基づく信義則違反
再抗弁(2)及び(3)のうち,本件キャッシュバック合意及びそれに引き続く合意及びそれに基づく支払は認め,その余は否認ないし争う。原告A神社は,本件キャッシュバック合意を被告に対して秘匿していない。
アイフェクトらによるキャッシュバックは,それ自体,持続的に実現することが不可能な詐欺行為であり,アイフェクト従業員であるEに欺罔された原告A神社がリース料の支払を拒み,本件契約の解除・取消し等を主張し,あるいは損害賠償請求をすることが信義則に反するような事情はない。
また,本件キャッシュバック合意は,従前のリース契約のリース料相当額の支払としてされたものであるから,本件契約とは関係がない。
第3  本訴請求事件における当事者の主張
1  請求原因
(1)  反訴請求事件における請求原因(1)と同じ。
(2)  反訴請求事件における抗弁(1)アと同じ。
(3)  反訴請求事件における抗弁(1)イと同じ。
(4)  反訴請求事件における抗弁(1)ウと同じ。
(5)  反訴請求事件における抗弁(1)エと同じ。
(6)  反訴請求事件における抗弁(2)と同じ。
(7)  被告は,①サプライヤーを選任する自由があり,②サプライヤー(フルサポート及びアイフェクト)の従業員に対し,その行動を牽制し,指揮監督することが可能であり,③被告が用意した契約書のひな形を持たせて契約条項について具体的に指揮監督しており,④サプライヤーの従業員の営業によって巨額の利益を得ており,⑤提携リース契約の危険性を十分に認識し,その危険を管理し得る地位にありながら,その危険により利益を得ていることから,アイフェクト従業員であるEによる欺罔行為は,被告の事業の執行について行われたものである(使用者責任)。
(8)  被告は,提携リース契約の訪問販売には不当リース又は不当販売の危険が存在することを知りながら,その危険により利益を得て事業を継続しているから,当該危険が現実化してユーザーに損害が発生しないよう最大限の注意を払い,当該危険の現実化を防ぐための措置をとるべき注意義務が存するにもかかわらず,当該注意義務を著しく怠り,原告A神社が本件契約を締結して既払いリース料相当額の損害を被る結果を招来したものであって,アイフェクトの不法行為と客観的に関連共同している(共同不法行為)。
(9)  被告(リース業者)は,サプライヤー(フルサポート及びアイフェクト)を使って提携リース契約の締結事務をさせるものであるから,信義則上,サプライヤーの状況を管理監督する義務があるところ,当該義務に違反し,フルサポート及びアイフェクトを管理監督することなく,本件契約を締結させ,よって原告A神社に損害を生じさせたものである(単独不法行為)。
(10)  原告A神社は,Eの欺罔行為により,リース料金101万8500円の支払を余儀なくされたほか,被告の不当なリース料請求による精神的苦痛を受けており,その損害は,10万円を下らない。また,相当因果関係にある弁護士費用は,35万2216円が相当である。
(11)  よって,原告A神社は,被告に対し,第1次的に本件契約の解除,取消し若しくは無効に基づく不当利得返還請求権に基づく101万8500円の支払を請求し,第2次的にEの不法行為に起因する使用者責任,共同不法行為又は単独不法行為による損害賠償請求権に基づく110万8500円の支払を請求するほか,弁護士費用35万2216円及び以上の合計に対する不法行為日である平成21年11月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する。
2  請求原因に対する認否
(1)  請求原因(1)は,認める。
(2)  請求原因(2)は,否認する。
(3)  請求原因(3)は,否認ないし争う。
(4)  請求原因(4)は,認める。
(5)  請求原因(5)のうち,被告が本件契約に当たり法5条の要件を満たす書面を交付していないことは認め,その余は否認する。
(6)  当裁判所に顕著である。
しかし,本件対象物件の引渡義務を負うのは,フルサポートであって被告ではないから,本件カメラ及び本件コントローラーの引渡未了は,被告の債務不履行ではない。むしろ,原告A神社は,被告に対し,本件対象物件が搬入設置され正常に稼働していることを確認している。
(7)  請求原因(7)は,否認ないし争う。
被告とフルサポートとの間には,提携関係も指揮監督関係も存在しないし,アイフェクトがフルサポートの代理店又は第2次販売店として活動していたことを知らない。本件契約の内容は,その契約書に明記されており,原告A神社主張に係る危険なるものは,発生する余地がないし,原告A神社は,本件契約により利益を受けている。
むしろ,原告A神社は,本件キャッシュバック合意があるように,アイフェクトとの間に密接な関係がある。
(8)  請求原因(8)は,否認ないし争う。
被告とアイフェクトとの間には,何ら共同不法行為に相当する行為が存在しないし,被告とフルサポートとは,対当かつ独立した関係にあり,被告は,フルサポートに代理権も授与していないから,共同不法行為が成立する余地はない。被告は,原告A神社の契約締結意思や,本件対象物件の搬入設置等を念入りに確認している以上,リース契約当事者としての注意義務を果たしている。
(9)  請求原因(9)は,争う。
(10)  請求原因(10)のうち,原告A神社が本件契約に基づきリース料101万8500円を支払ったことは認め,その余は否認ないし争う。
3  抗弁
本訴請求事件における再抗弁と同じ。
4  抗弁に対する認否
本訴請求事件における再抗弁に対する認否と同じ。

 

理由

第1  認定事実
当事者間に争いのない事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。
1  当事者
(1)  被告は,リース等を業とする株式会社である。
(2)  フルサポートは,東京都内に本店を有する株式会社であり,被告との間で,平成21年1月6日,フルサポートが売主(サプライヤー),被告が買主(リース業者)として,顧客(ユーザー)との間でリース取引等を行う際の事務手続及び基本的事項等について合意した(以下「本件協定」という。乙11)。
本件協定は,フルサポートが,被告に対し,被告所定の契約申込書を交付する方法で顧客を紹介すること(第2条),フルサポートが,被告の与信審査終了通知後,被告が示したリース条件を顧客に提示して合意を得て,顧客から署名を受けたリース契約書を被告に交付する方法で,顧客の被告に対するリース契約申込みの媒介を行うこと(第3条),被告が,顧客に対して電話等で意思確認を行った上でリース契約を締結すること(第5条),フルサポート及び被告が,リース契約成立後に当該契約の対象物件の売買契約を締結すること(第6条),フルサポートによる顧客(ユーザー)に対する当該対象物件の引渡し後,被告が,顧客に対して電話等でリース開始を確認すること(第7条)のほか,フルサポートが,当該対象物件の品質,規格,仕様,性能その他について生じた紛争をユーザーとの間で協議解決すること(第9条),フルサポートが,被告による事前の承諾を得た上でフルサポートが行う手続を代理店に行わせ,その際,リース契約に関して代理店が行った全ての行為について責任を負い,被告に対して一切迷惑をかけないこと(第14条)などを定めている。
(3)  アイフェクトは,大阪府寝屋川市に本店を有する株式会社であるが,平成21年頃,フルサポートの代理店として活動しており,Eは,その従業員として,被告がリース業者となるリース契約書のひな形を所持して,リース契約の締結に関する営業活動を行っていた。ただし,被告は,フルサポートに対し,アイフェクトを代理店として承認したことがなかった(甲2,55,56,65,乙18,36,弁論の全趣旨)。
(4)  原告A神社は,昭和27年7月16日に設立された基本財産の総額を91万2000円とする宗教法人であるところ,その敷地面積は,2万3835m2,本殿(82.64m2)及び社務所(80.99m2)を含む13棟の建物の床面積は,合計315.7m2であり,氏子の数は,約400名である。原告Bは,原告A神社の唯一の代表役員であり,原告Cは,原告A神社の禰宜である(甲70,乙24~26,31,原告B本人)。
原告A神社の平成20年度ないし平成24年度における収入の平均は,657万4374円であり,同時期における支出の平均は,430万8599円であって,原告Bの原告A神社における神職としての同時期における収入(祭事に伴う玉串料等の収入,賽銭収入142万円,お守り等の販売収入420万円を含む。)の平均は,972万円であり,同時期における支出(お守り等の原価相当額185万円を含む。)の平均は,786万5000円であるが,原告A神社及び同Bのこれらの収支は,厳密に区別されておらず,これらに関する税務申告も,されていない(甲37~39(以下,枝番号を省略する。),64,70,原告B本人)。
2  本件契約の申込み
原告A神社は,かねてより電話機及びファクシミリ機器(複合機)についてのリース契約を締結していたところ,アイフェクト従業員であるEは,平成21年11月26日,原告A神社を訪問し,原告Bに対し,「神社に危険な人物が出入りするため,防犯カメラが必要です。このカメラの契約をしてもらえば,サービスとして,現在リースにより設置されている電話機及び複合機に代えて新複合機を設置し,カウンター料金も引き下げます。また,今の電話機及び複合機のリース料は,アイフェクトが負担します。」などと申し向けて新たなリース契約の締結を勧誘した。原告Bは,原告A神社に防犯対策が必要であると考えていたところ,Eの勧誘文言によれば原告A神社には防犯カメラが設置されるばかりか,新しい複合機が設置され,カウンター料金も引き下がり,既存のリース料金もアイフェクトに負担してもらえるから原告A神社にメリットがあるものと判断し,原告A神社代表者として,原告A神社境内において,Eとの間で,キャッシュバックの実行等について合意した(本件キャッシュバック合意)ほか,それが中途解除のできないリース契約の契約書であることを認識した上で,原告A神社代表者としてEが示した被告とのリース契約書に署名・記名捺印し,更に原告Cとともに,当該リース契約書の連帯保証人欄にも署名捺印してこれらをEに交付し,本件契約及び本件連帯保証契約を申し込んだ。なお,上記リース契約書には,対象物件の売主欄にフルサポートの社名等がゴム印で押捺されていたほか,例えば下記の条項が記載されていたが,本件対象物件の具体的な選択をアイフェクトに任せており,その性能等について必ずしも十分な知識を有していなかった(甲2,3,15,70,乙1,4,5,原告B本人)。

(1)  被告は,本件対象物件を,そこに記載のリース料,支払条件及びリース期間で原告A神社に賃貸する。
(2)  本件対象物件の所有権は,被告が留保する。
(3)  原告A神社がリース料支払債務又は被告のリース契約解除に伴う損害金支払債務を履行しない場合には,支払うべき金額に対し,支払期日の翌日から完済まで年14.6分の割合による遅延損害金を支払う。
(4)  原告A神社は,リース料の支払を怠るなどの契約違反行為をしたときは,被告が請求したときに,直ちに残リース料債務について期限の利益を喪失し,残リース料全額を直ちに支払うとともに,被告は,本件契約を解除できる。
(5)  本件対象物件は,本件契約成立後,売主(フルサポート)から指定の設置場所に搬入され,借主(原告A神社)は,搬入を受けた後,直ちに物件について検査を行い,瑕疵のない完全な状態で売主から契約物件の引渡を受けたことを確認し,売主にその旨を伝える。貸主(被告)は,売主から引渡完了の連絡を受けた後,電話で借主に引渡完了及び引渡完了日を確認し,借主は,貸主に対して引渡完了通知書を発行する。本件対象物件の規格,仕様,品質,性能その他に瑕疵があったときは,借主は,売主との間で解決した後に上記手続を行う。
(6)  貸主(被告)の故意又は重大な過失が認められない事由によって本件対象物件の引渡が遅延又は不能となったときは,貸主は,一切責任を負わない。
(7)  本件対象物件の規格,仕様,品質,性能その他に隠れた瑕疵があった場合及び本件対象物件の選択又は決定に際して借主(原告A神社)に錯誤があった場合においても,貸主(被告)は,一切責任を負わない。
(8)  前記(6)又は(7)の場合,借主(原告A神社)は,売主(フルサポート)に対し直接請求を行い,売主と解決する。借主が売主に対して権利行使をする場合においても,リース料支払その他本件契約に基づく債務の弁済を免れない。
3  本件対象物件
(1)  本件対象物件のうち,NSSデジタルレコーダーCPD548D(以下「本件レコーダー」という。)は,人が動いたときだけ撮影コマ数を増やすモーションセンサー機能を搭載しており,録画映像をデジタルズームで再生可能であり,高画質で長時間の録画が可能であり,インターネットを介して遠隔操作が可能であり,録画をしながらメニュー操作や撮影映像の再生が可能であるほか,複数拠点の監視に効果的な機能を有している(甲6)。
(2)  本件対象物件のうち,本件カメラは,光学10倍レンズを搭載しており,デジタルズームと併せて最大100倍までのズームアップが可能であり,モニターしたい位置やパン,チルト,ズーム等の動作を64か所まで事前に設定可能であるほか,昼間はカラー,夜間など暗くなると自動的に高感度の白黒撮影に切り替えることができるデイナイト機能を搭載しているものである(甲7,乙20)。
(3)  本件対象物件のうち,本件コントローラーは,本件カメラのようなスピードドームカメラのパン,チルト,ズーム等の制御をするキーボードコントローラーであって,最大255台のスピードドームカメラを制御することが可能であるほか,ワンプッシュでパンチルトの位置を微調整できるスモールステップボタンを搭載しているため,ズーム時の撮影位置調整に便利なものであるばかりか,液晶ディスプレイ画面(防犯カメラが撮影した映像を映写する画面とは認められない。)を搭載しているものである(乙21)。
4  本件契約内容の確認
原告Bは,平成21年11月26日,前記リース契約書作成に当たり,Eの助言のもと,原告A神社代表者として「『セキュリティシステム』リース契約確認書」と題する書面を作成し,これに署名捺印してEに交付した。上記確認書の「確認項目」欄には,例えば,「今回お申込みいただいた物件は,お申込者の事業のためにご使用されますか。/※「事業のため」若しくは「事業として」締結する契約は特定商取引に関する法律に定める「クーリングオフ」等の適用はありませんのでご留意ください。」,「お申込みいただいたリース契約対象となる物件等の内容はご確認されましたか。また,お申込者とリース会社との間で次の事項が合意されていることについて,ご確認されましたか。/①リース契約は,原則としてリース期間内の解約ができません。」,「②リース物件に不具合(瑕疵,故障など)が発生した場合は,お申込者(ご契約者)が販売会社との間で解決を図ります。」などの記載があり,原告Bは,これらに対する「確認欄」に印字された「はい」との文言に丸を記載している(甲70,乙5,原告B本人)。
5  リース物件の引渡し及び本件契約の承諾
原告A神社は,平成21年12月初め頃,本件契約の申込みに基づき,防犯カメラ1台及び本件レコーダーの引渡しを受け,当該防犯カメラを原告A神社境内の賽銭箱を撮影する場所に設置させたが,本件対象物件のうち,本件カメラ(3台)及び本件コントローラーの引渡しを受けることはなかった。他方,被告担当者は,フルサポートを経由して前記リース契約書及び前記確認書を受領し,与信審査の上,同月10日午前11時39分頃,原告Bに対して電話をかけ,本件契約の申込内容,その目的が事業用であること及び連帯保証意思のほか,本件契約所定の本件対象物件が引き渡されているか否かを尋ねたが,原告Bは,これらをいずれも肯定する返事をした。そこで,被告は,本件契約及び本件連帯保証契約を承諾する旨の意思表示をし,ここに本件契約及び本件連帯保証契約が成立した(甲54,70,乙8~10,23,原告B本人)。
6  本件キャッシュバック合意の帰結
アイフェクトは,原告A神社に対し,平成22年1月28日から,本件キャッシュバック合意に基づき,毎月4万2630円を支払うようになり,Eは,原告A神社に対し,同年3月29日頃,従前のリース契約に基づくリース料月額合計4万2630円を,リース期間満了まで支払う旨を約した書面を差し入れた。しかし,原告Bは,同年5月頃,原告A神社が引渡を受けた防犯カメラの機種及び台数が本件契約所定のものとは異なることに気付き,Eに対してこの点の苦情を述べたところ,Eは,原告Bに対し,同年6月8日頃,当該苦情に対する賠償を申し込み,アイフェクトは,原告A神社に対し,同月11日頃,顧客対応費と称して同月及び同年7月に月額4万0740円を,同年8月から平成23年1月まで月額52万1570円(合計321万0900円)を,いずれも支払う旨を合意した。しかし,アイフェクトは,平成22年8月末までにこれらの金員の支払いを滞るようになり,原告A神社との間で,同年9月24日,原告A神社に対して賠償金額総額312万9420円の支払義務があることを認め,これを分割弁済する旨の債務承諾兼分割支払計画書と題する契約を締結するに至った。アイフェクトは,その後,滞りながらも平成23年8月31日まで,上記契約に基づいて分割弁済を続けたが,同年9月頃,改めて原告A神社に対して賠償金総額300万円の支払義務があることを認め,これを分割弁済する旨の債務承諾兼分割支払計画書と題する契約を締結した。アローフィールドは,同月30日頃,アイフェクトの原告A神社に対する上記債務を引き継いで弁済を開始し,原告A神社との間で,同年10月12日頃,当該債務を改めて分割弁済する旨を合意したが,同月31日に最後の弁済をしたのみで,その後,当該債務の弁済をしていない。なお,原告A神社は,アイフェクトから合計62万7472円の,アローフィールドから合計31万9600円の,各支払(以上合計94万7072円)を受けている(甲5,16,55~59,63,66,70,乙17,27~29,原告B本人)。
7  本件契約の解除の意思表示等
原告Bは,被告に対し,平成22年6月11日には,本件キャッシュバック合意があるにもかかわらず,カウンター料金の引き下げが履行されておらず,本件カメラ及び本件コントローラーも搬入されていないことについて苦情を記載した文書をファクシミリで送信していたが,原告A神社は,平成24年1月26日,同日を支払期日とするリース料の支払を怠り,その頃,被告からリース料の支払催告を受けたものの,被告に対し,同年2月10日,本件契約を法9条1項に基づき解除し,民法96条1項に基づき取り消す旨の意思表示をして,本件契約に基づくリース料(240万3660円)の支払意思のないことを明らかにした(甲15,乙7,弁論の全趣旨)。
また,原告らは,平成24年6月28日,本訴請求事件の訴えを提起し,被告に対し,同年7月19日,本訴請求事件に係る訴状送達をもって本件契約を本件対象物件のうち本件カメラ(3台)及び本件コントローラーの引渡未了という債務不履行に基づき解除する旨の意思表示をした。
第2  争点に対する判断
1  本件契約及び債務不履行の成否について
(1)  原告らは,本件対象物件のうち本件カメラ(3台)及び本件コントローラーが引き渡されていない旨を主張し,原告Bの供述(甲70,原告B本人)は,これに沿うものである。
そこで検討すると,原告Bの上記供述は,①原告Bが被告に対し,本件契約後約7か月後には,これと同内容の苦情を述べていること(甲15,16),②アイフェクトが,時期を同じくして原告A神社に対する顧客対応費の支払を承諾していること(乙29),③フルサポートも,その約1か月後には苦情に対する対応を示していること(甲17)から,具体的な裏付けがあるものとしてこれを信用できる。
よって,本件対象物件のうち,本件カメラ(3台)及び本件コントローラーは,原告A神社に引き渡されていないものと認められる。
他方,被告は,前記のとおり,原告Bに対し,平成21年12月10日,原告ら作成のリース契約書に基づき,本件契約の申込内容及び連帯保証意思等を電話により確認し,これを肯定する返事を受けて本件契約及び本件連帯保証契約の申込みを承諾する意思表示をしたものと認められ,この認定に反する証拠はない。
(2)  原告らは,リース契約の目的が物件ユーザーに引き渡して利用させることにある以上,物件の引渡しが効力発生要件であると解すべきであると主張する。
そこで検討すると,一般にリース契約と称されるファイナンス・リース契約は,物件の購入を希望するユーザーに代わって,リース業者が販売業者から物件を購入の上,ユーザーに長期間これを使用させ,右購入代金に金利等の諸経費を加えたものをリース料として回収する制度であり,その実体は,ユーザーに対する金融上の便宜を付与するものであるから,リース料の支払債務は,契約締結と同時にその全額について発生し,ユーザーに対して月々のリース料の支払という方式による期限の利益を与えるものにすぎず,また,リース物件の使用と賦払金の支払とは対価関係に立つものではないというべきである(最高裁平成5年11月25日判決裁判集民事170巻553頁)。
そして,本件契約は,本件対象物件の種類・性質,本件契約が神社における防犯を目的としていること及び本件協定の内容に照らすと,上記のファイナンス・リース契約に該当することが明らかであって,平成21年12月10日,被告の承諾により被告本社において成立したものと認められる一方,その効力発生について本件対象物件の引渡しを要件とすべき法律上の根拠は見当たらない。
よって,原告らの上記主張は,採用できない。
(3)  原告らは,本件契約がいわゆる提携リース契約に該当することから,物件の引渡しが効力発生要件であると解すべきであると主張するもののようである。
しかしながら,リース契約とされる契約のうち,サプライヤー(売主)とリース業者(貸主)とがその営業活動に当たって提携関係を有しているなどの事情があるからといって,そのことを根拠としてユーザー(借主)とリース業者との間の契約の効力発生が,サプライヤーによる物件の引渡しを条件とすべき理由は見当たらない。また,上記のいわゆる提携リース契約なるものを他のファイナンス・リース契約と法的に区別する基準ないし限界は,原告らの全主張によってもそれ自体明確であるとはいい難く,仮に原告ら主張に係るような取引実態があるとしても,そのことは,特定のリース契約において物件の引渡しをリース契約の効力発生要件と解すべきことを基礎付けるに足りない。
よって,原告らの上記主張は,採用できない。
(4)  原告らは,本件カメラ(3台)及び本件コントローラーが引渡未了であることから,被告には本件契約について債務不履行がある旨を主張する。
しかしながら,①本件契約のようなファイナンス・リース契約においては,前記のとおり,リース物件の使用と賦払金の支払とは対価関係に立つものではないことに加えて,②本件契約は,前記のとおり,貸主(被告)の故意又は重大な過失が認められない事由によって対象物件の引渡しが遅延又は不能となったときや,対象物件の規格,仕様,品質,性能その他に隠れた瑕疵があったとき等に,貸主が一切責任を負わず,これらの場合には,借主(原告A神社)が売主(フルサポート)に対して直接請求を行い,売主と解決するものであって,リース料支払債務の弁済を免れない旨の規定があることに照らすと,本件カメラ(3台)及び本件コントローラーが引渡未了であることは,フルサポートの原告A神社に対する債務不履行を構成するものとみることはできるものの,被告の原告A神社に対する債務不履行を構成するものではない。
よって,原告らの上記主張は,採用できない。
(5)  以上によれば,本件契約及び本件連帯保証契約は,平成21年12月10日,いずれも被告の承諾により成立したものと認められ,被告に原告A神社に対する債務不履行の事実は,認められない。
そして,原告A神社は,平成24年1月26日,本件契約に基づくリース料の支払を怠ったものであるから,経験則上,被告は,原告A神社に対し,その頃,リース料の支払を催告したものと推認され,これにより,原告A神社は,本件契約に基づく期限の利益を喪失したものと認められる。
したがって,原告A神社は,本件契約に基づき,原告B及び同Cは,本件連帯保証契約に基づき,連帯して,本件契約に基づくリース料残金240万3660円及びこれに対する期限の利益喪失後である平成24年2月10日から支払済みまで本件契約所定の年14.6分の割合による遅延損害金の支払義務を負うものである。
2  詐欺,錯誤及び不法行為の成否について
(1)  原告Bは,前記のとおり,平成21年11月26日,アイフェクト従業員であるEの勧誘に基づき,原告A神社を代表して,原告A神社境内において,Eとの間で本件キャッシュバック合意をしたほか,本件契約に係るリース契約書を作成してEにこれを交付することで,被告に対して本件契約を申し込んだものと認められ,この認定に反する証拠はない。
(2)  原告らは,Eによる前記勧誘が実現不可能な内容(本件キャッシュバック合意)を含む虚偽の事実を告知するものであって詐欺ないし不法行為であり,これにより原告Bが錯誤に陥った旨を主張する。
しかしながら,本件キャッシュバック合意は,アイフェクトがそのような合意を他の多数の顧客との間で締結するなど特定の条件を具備した場合には,その継続的な履行が困難になるものであるとしても,当該条件を具備せず,あるいは他からの資金調達を実現すれば,直ちに継続的な履行が困難になるものではないばかりか,本件キャッシュバック合意それ自体のみに着目した場合,直ちに実現不可能とすべき要素が見当たらない。現に,アイフェクトは,原告A神社に対する債務を引き継いだアローフィールドとともに,その後相当長期間にわたって原告A神社に対して本件キャッシュバック合意に基づく支払を継続し,原告Bからの苦情に対して顧客対応費の支払を約するほか,その履行が滞ると,原告A神社との間で2回にわたって債務承諾兼分割支払計画書と題する契約を締結するなど,本件キャッシュバック合意の履行及び原告A神社に生じた損失の補填に努めている。
このように,本件キャッシュバック合意が実現不可能ではないばかりか,アイフェクトが本件キャッシュバック合意その他の合意を相当長期間にわたって履行し又は履行に努めていた以上,Eは,上記勧誘に当たり,虚偽の事実を告知したとは認めるに足りず,また,本件キャッシュバック合意を含む勧誘文言の内容についてそのとおりに履行する意思がなかったものと認めるにも足りない。したがって,Eによる上記勧誘は,詐欺に該当するとはいえず,不法行為を構成するものともいえない。
また,原告A神社代表者である原告Bが,Eによる上記勧誘によって,本件キャッシュバック合意の履行及び本件対象物件の引渡しがされるものと信じたにもかかわらず,結果として本件キャッシュバック合意が完遂されなかったことは,アイフェクトの原告A神社に対する債務不履行を構成し,本件対象物件が引き渡されなかったことは,フルサポートの原告A神社に対する債務不履行を構成するとみることはできる。しかしながら,上記のとおり,本件キャッシュバック合意が実現不可能ではない以上,原告Bが,リース契約の中途解除ができないことを認識する一方で,原告A神社には防犯カメラも設置され,新しい複合機が設置され,カウンター料金も引き下がり,既存のリース料金もアイフェクトに負担してもらえるから原告A神社にメリットがあるものと判断した上で本件契約を申し込んだことは,一応経済合理性のある行動であって,瑕疵ある意思表示とはいえないばかりか,事後的に上記の債務不履行が発生したからといって,翻って被告との間の本件契約の申込みの際に原告Bが錯誤に陥っていたと評価することはできない。
(3)  以上によれば,Eによる前記勧誘は,詐欺にも不法行為にも該当せず,また,原告A神社代表者である原告Bは,これにより錯誤に陥ったものとは認められない。
したがって,原告らによる詐欺,錯誤及び不法行為に関する主張は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。
3  法9条1項に基づく解除について
(1)  本件契約は,前記のとおり,平成21年12月10日,被告本社における被告の承諾により成立したものであるから,新法2条1項所定の「訪問販売」の定義にいう営業所等以外の場所における契約の締結には該当せず,したがって,本件契約に新法の適用はない。
他方,原告A神社代表者である原告Bは,前記のとおり,平成21年11月26日,被告の営業所等以外の場所である原告A神社境内において本件契約の申込みをしたものであり,かつ,本件契約は,被告との間の売買契約ではないから,本件契約が旧法2条1項1号,同条4項所定の「指定役務」に関する「役務提供契約」該当するならば,旧法2条1項1号所定の「訪問販売」に該当し,旧法の適用があることになる。
(2)  そこで検討すると,本件契約は,前記のとおり,ファイナンス・リース契約であって,物件の購入を希望するユーザーに代わって,リース業者が販売業者から物件を購入の上,ユーザーに長期間これを使用させ,右購入代金に金利等の諸経費を加えたものをリース料として回収する制度であり,その実体は,ユーザーに対する金融上の便宜を付与するものである。そして,ファイナンス・リース契約は,上記のとおり,リース業者が諸経費を得る一方で所有権を留保した物件をユーザーに長期間使用させることを特徴の一つとしており,現に,本件契約も,前記のとおり,本件対象物件を原告A神社に賃貸する旨を記載している。そうである以上,ここにいう「賃貸」は,民法上の賃貸借契約と等価であるとはいえないものの,本件契約は,被告が原告A神社に対して被告所有に係る本件対象物件の貸与という役務を有償で提供するものであって,旧法2条1項1号,同条4項所定の「指定役務」を対象とするものであれば,旧法2条1項1号所定の「役務提供契約」に該当するものといえる。
(3)  次に,本件対象物件の貸与が旧法2条1項1号,同条4項所定の「指定役務」に該当するか否かを検討すると,旧法施行令別表第3の2号ニは,「火災警報機,ガス漏れ警報機,防犯警報機その他の警報装置」の貸与を指定役務として規定している。
そして,本件対象物件は,防犯カメラ,レコーダー及びコントローラーであって,防犯カメラが設置された場所付近の画像を記録する機能を備えるものではあるものの,不審者等の出現に伴って警報を発し,これを使用者である原告A神社の関係者等に告知するなどの機能を備えるものとは認められない。
したがって,本件対象物件は,上記「火災警報機,ガス漏れ警報機,防犯警報機その他の警報装置」のいずれにも該当しないというほかない。
また,旧法施行令別表第3の2号ヘは,「ラジオ受信機,テレビジョン受信機,電気冷蔵庫,エアコンディショナーその他の家庭用電気機械器具及び電圧調整器」の貸与を指定役務として規定している。
そして,本件対象物件は,防犯カメラの撮影画像を映写する画面を備えていないからテレビジョン受信機とはいえない。また,本件カメラ及び本件コントローラーは,前記のとおり,最大100倍のズームや最大255台のスピードドームカメラを制御することが可能であるなど,これを家庭で使用することが想定困難な過剰というべき高性能を備えるものであって,上記に列挙の他の電気機械器具と対比するとき,これを家庭用電気機械器具とみることは,困難であるというほかない。
したがって,本件対象物件は,上記「ラジオ受信機,テレビジョン受信機,電気冷蔵庫,エアコンディショナーその他の家庭用電気機械器具及び電圧調整器」のいずれにも該当しないというほかない。
(4)  以上によれば,本件対象物件の貸与は,旧法2条1項1号,同条4項所定の「指定役務」に該当しない以上,本件契約も,旧法2条1項1号所定の「役務提供契約」に該当しない。
したがって,本件契約に法の適用はなく,原告A神社は,法9条1項に基づき本件契約を解除することはできない。
(5)  なお,念のため,本件契約が旧法2条1項1号所定の「役務提供契約」に該当し,本件契約に法の適用があると仮定した場合について,以下に検討する。
すなわち,被告は,上記の場合において,原告A神社が営業のために又は営業として本件契約を締結したから,法26条1項1号により法が適用されない旨を主張する。
そこで検討すると,原告A神社は,宗教法人であって,営利を目的とする法人ではないものの,その敷地面積が2万3835m2,本殿(82.64m2)及び社務所(80.99m2)を含む13棟の建物の床面積が合計315.7m2であり,氏子の数が約400名であるなど,物理的に大規模な神社である。また,原告Bの神職としての収入を合わせると,原告A神社の平成20年度ないし平成24年度における収入の平均は,1629万4374円であり,同時期の支出の平均は,1217万3599円であって,経済活動の規模も大きいばかりか,この収支は,絶対的商行為(商法501条1号)に該当するお守り等の販売収入420万円及びその原価相当額185万円を含んでいる。しかも,本件契約に基づき引き渡された防犯カメラが設置されているのは,原告A神社境内の賽銭箱を撮影する場所であるところ,上記収入に占める賽銭収入は,142万円であって,原告A神社の収入の1割弱に相当するものであるから,ここに防犯カメラを設置することは,原告A神社の収入維持に当たって重要な意味を有するものといえる。現に,原告Bは,本件契約申込みに当たり作成した確認書において,本件対象物件を事業のために使用する旨を明らかにしている。
以上のとおり,原告A神社の物理的規模及び経済的規模,原告A神社が商行為をしていること,本件契約に基づき引き渡された防犯カメラが原告A神社の収入維持に当たって重要な意味を有する場所に設置されていることを総合すると,本件契約の締結は,営利性及び継続性の双方を具備するものとして,その申込みをした原告A神社の営業のためにされた役務提供契約であると評価するのが相当である。
したがって,本件契約は,法26条1項1号に基づき,法の適用がされず,原告A神社は,法9条1項に基づく解除をすることができない。
4  結論
以上のとおり,被告の原告らに対する本件契約及び本件連帯保証契約に基づく請求には,いずれも理由があるから認容する一方,原告A神社の請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用につき民訴法61条,64条本文を,仮執行宣言につき同法259条1項を適用して,主文のとおり判決する次第である。
(裁判官 井上泰人)

 

別紙
弁護士目録
木内哲郎,久米弘子,安保嘉博,長谷川彰,小槻浩史,山下信子,牧野聡,中隆志,藤原東子,吉田誠司,中筋斉子,加藤進一郎,平尾嘉晃,舩橋恵子,若松豊,上田敦,平井宏俊,舟木浩,細川治,小川顕彰,小嶋敦,藤居弘之,毛利崇,住田浩史,内村和朝,牧野誠司,紀啓子,粟野浩之,大濵巌生,松村絵里子,河野佑宜,木下靖章,西村友彦,荒鹿高行,木村充里,福岡壮一,吉松裕子,頼政忠,黒木寿,高山博司,森田基彦,平林美沙子,稲田真孝,中川龍也,寺本憲治,増田朋記,西靖雄,嵯峨根大樹,竹中芳晴,中出威一郎,後藤周平,堀田康介,壽彩子,本條裕子,石垣元庸,加納雄二,河野純子,大野聡子,杉山佐枝子
以上

〈以下省略〉

 

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