平23(レ)1297号 リース料等請求控訴事件

裁判年月日  平成25年 1月18日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(レ)1297号
事件名  リース料等請求控訴事件
文献番号  2013WLJPCA01188013

裁判年月日  平成25年 1月18日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(レ)1297号
事件名  リース料等請求控訴事件
文献番号  2013WLJPCA01188013

東京都大田区〈以下省略〉
控訴人 株式会社防災センター
同代表者代表取締役 A
東京都世田谷区〈以下省略〉
被控訴人 Y

 

 

主文

1  本件控訴を棄却する。
2  控訴費用は,控訴人の負担とする。

 

事実及び理由

第1  控訴の趣旨
1  原判決を取り消す。
2  被控訴人は,控訴人に対し,14万0910円及びうち13万4200円に対する平成22年4月11日から支払済みまで年36%の割合による金員を支払え。
3  訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
第2  事案の概要
本件は,被控訴人との間で,被控訴人所有の共同住宅内に設置する消火器のリース契約及びFm消防点検契約と称する契約を締結した控訴人が,被控訴人に対し,上記各契約に基づき,リース料12万5160円及び消防法所定の書類の作成料金等1万5750円の合計額である14万0910円及びうち消費税相当額を除いた13万4200円に対する支払期限の翌日である平成22年4月11日から支払済みまで約定年36%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1  前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,後記証拠により容易に認められる。
(1)  控訴人は,消防機器等のリース等を業とする株式会社である。被控訴人は,肩書地に居住し,同所でaマンションと称する共同住宅(以下「本件共同住宅」という。)を所有し,その居室の一部を第三者に賃貸している。
(2)  控訴人は,平成22年3月26日,被控訴人宅を訪問し,同所において,被控訴人との間で,消火器4台(以下「本件消火器」という。)を目的物として,要旨,下記約定の「パッケージリース契約」と称する契約(以下「本件リース契約」という。)を締結し,同日,被控訴人に対し,本件消火器を引き渡した。なお,本件リース契約の契約書(甲1。以下「本件契約書」という。)には,「フランチャイズチェーン(物件販売加盟店)」として「東京都中央区〈以下省略〉 SP270 SP代表B 担当者 SP321 C」との記載がある(甲1)。
リース期間 10年
リース料金 12万5160円(消費税相当額5960円を含む)を一括前払とし,平成22年4月10日限り支払う。
遅延損害金 物件受領義務違反等に係る遅延損害金は,年36%とし,その余の場合は年18%とする。
(3)  控訴人と被控訴人は,前同日,後記約定の「Fm消防点検契約」と称する契約(以下「本件点検契約」という。)を締結した(甲2)。
ア 点検契約期間を10年とし,控訴人は,本件消火器について,1年ごとの総合点検及び6か月ごとの機器点検を実施し,3年ごとに消防署長宛の点検報告書類等を作成し,代行提出する。
イ 上記報告書提出3年ごとに1万5000円の書類作成費用を支払う。
(4)  被控訴人は,控訴人に宛て,平成22年3月30日,簡易書留郵便で,本件リース契約及び本件点検契約を解除する旨の葉書を発信した(いわゆるクーリングオフ。乙1)。
2  争点及びこれに関する当事者の主張
(1)  本件リース契約について特定商取引に関する法律(以下「法」ともいう。)26条1項1号の適用があるか。
(控訴人の主張)
被控訴人は,個人事業者であり,「営業のために若しくは営業として」本件リース契約を締結したものであるから,法26条1項1号により法9条の適用除外となり,クーリングオフは認められない。
すなわち,本件消火器は,本件共同住宅の賃貸業を営む原告が,入居者が火災になったときに使用できるように設置したものであり,設置目的は,被控訴人の事業を継続するために消防法で義務とされている法規を遵守する目的であって,本件リース契約が営業のために締結されたことは明らかである。
(被控訴人の主張)
被控訴人は,共同住宅の賃貸を業とする個人であるが,消火器自体を営業の対象とするものではないから,本件リース契約は,被控訴人の「営業のために若しくは営業として」締結されたものではない。本件共同住宅に消火器を設備することが必要とされているとしても,これは,消防法の目的から要求されるものにすぎない。
(2)  本件リース契約は,信義則上解除することができないファイナンスリース契約ということができるか。
(控訴人の主張)
本件リース契約は,C(以下「C」という。)を販売事業者とし,Cから控訴人が購入した「ファイナンスリース物件」である本件消火器を控訴人が被控訴人に対し賃貸するという関係があり,控訴人と被控訴人との間に成立した本件リース契約は,ファイナンスリースの性質を有するリース契約である。
ファイナンスリースは中途解約ができない性質の契約であって,Cと控訴人の間の売買契約は,不良品等でない限り返品をしないという内容となっているし,控訴人と被控訴人との間の本件リース契約も解約しないことを前提に締結されたものであるのだから,後になって被控訴人からクーリングオフを申し出ること自体が信義則に違反するものである。
(被控訴人の主張)
本件において,控訴人がCを介したファイナンスリースと称しているのは,クーリングオフを切断する目的によるものであって,Cは実質的には控訴人の手足となって行動しているにすぎない。
仮にファイナンスリース契約に当たるとしても,それはクーリングオフの可否と無関係である。
第3  争点に対する判断
1  争点(1)について
消防法17条1項は,防火対象物で政令で定めるものの関係者につき,消火器などの政令で定める消防用設備等について消防の活動のために必要とされる性能を有するように,政令で定める技術上の基準に従って,設置及び維持することを規定しているところ,消防法施行令6条,同別表第1(5)ロには防火対象物として「共同住宅」の定めがある。
控訴人は,本件消火器は,本件共同住宅の賃貸業を営む原告が,入居者が火災になったときに使用できるように設置したものであり,設置目的は,被控訴人の事業を継続するために消防法で義務とされている法規を遵守する目的であって,本件リース契約が「営業のため若しくは営業として」締結されたものであると主張する。
しかしながら,消防法が規定する消火器の設置等に関する所有者等の関係者の義務は,国民の生命,身体及び財産を火災から保護する等の消防法の目的を達成するため,防火対象物を所有等する関係者に対し当然に課せられる義務であり,所有者等が当該防火対象物を第三者に賃貸するかどうかにかかわらず課せられる義務であるというべきである。そうすると,被控訴人が消防法の規定の遵守を考慮して本件消火器を購入したとしても,そのような購入動機を持つに至ったのは,被控訴人が本件共同住宅の所有者であることによるものであるとみるのが合理的であって,被控訴人が本件共同住宅の各居室を業として第三者に賃貸しているかどうかには直接にはかかわらない。しかも,本件においては,被控訴人は,本件共同住宅の1階に現に居住している(甲23の2,被控訴人本人)のであるから,本件共同住宅に本件消火器を設置し,火災に備えることについては,被控訴人自身の生活の安全を増進するという利益もあることを否定することができないのである。
そうすると,本件リース契約が被控訴人の「営業のため若しくは営業として」締結されたものということはできず,本件リース契約について,法26条1項1号の適用除外を認めることはできない。
2  争点(2)について
特定商取引に関する法律は,特定商取引を公正にし,購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより,購入者等の利益を保護する趣旨の法律であるから,その要件等の解釈に当たっては,契約書の文言等を形式的に解釈するのではなく,購入者等の利益保護の観点から実質的に判断するのが相当である。
本件契約書には,本件リース契約は,「借主」である被控訴人,「貸主」である控訴人,及び物件販売加盟店であるB(以下「B」という。なお,Cは,本件契約書の記載では「加盟店」であるBの「担当者」である。)の三者による「パッケージリース」契約であり,その契約条項には,被控訴人は,控訴人がCより「購入するファイナンスリース物件」を目的物とする「ファイナンスリース」の申込みをするとの記載がある。
しかしながら,本件リース契約では,リース料は,実際には一括支払とされている(前提事実)ところ,本件においては,控訴人代表者がわざわざBに同行し,被控訴人宅を訪問して契約の勧誘を行っていること(控訴人代表者本人),控訴人が提出する社員証票なる書面(甲22)には「訪問担当員」欄にBの氏名と併せて控訴人代表者が「スーパーバイザー」と不動文字で記載されており,Bの行う訪問販売に当たっては控訴人代表者本人がBと同行することが常態であることがうかがわれること,Bは,独自の店舗をもたず,本件契約書に表示された同人の住所は本件訴状の控訴人の送達場所として表示されたところと同一であること(甲1,控訴人代表者本人,弁論の全趣旨)などの事実に照らすと,控訴人とBないしCとは経済上同一の主体と認められ,本件契約書上の記載はどうあれ,本件リース契約の実質をファイナンスリースとみることはできない。
また,クーリングオフ規定は強行規定である上,控訴人は被控訴人に対し,本件リース契約はクーリングオフができないという誤った情報を提供していた(甲1)のであるから,被控訴人が控訴人に対し,本件リース契約締結後にクーリングオフ制度を利用することが信義則に違反するものともいえない。
これと異なる控訴人の主張は,採用することができない。
3  結論
以上によれば,被控訴人のした本件リース契約の解除は有効である。そして,証拠(甲1,甲2,控訴人代表者本人,被控訴人本人)によれば,本件点検契約は,被控訴人が本件リース契約により本件消火器を取得することを前提として契約されたものであるから,本件リース契約と社会通念上一体的に処理されるべきものであり,本件点検契約の解除もまた有効である。
よって,控訴人の請求は理由がなく,これと同旨の原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとする。
東京地方裁判所民事第4部
(裁判長裁判官 太田晃詳 裁判官 竹内幸伸 裁判官池田知子は,差し支えのため署名押印することができない。裁判長裁判官 太田晃詳)

 

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