平23(ワ)13089号・平23(ワ)28949号 不当利得返還等請求事件(甲事件)、リース料請求事件(乙事件)

裁判年月日  平成24年 5月23日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)13089号・平23(ワ)28949号
事件名  不当利得返還等請求事件(甲事件)、リース料請求事件(乙事件)
裁判結果  甲事件請求棄却、乙事件認容  文献番号  2012WLJPCA05238008

要旨
◆被告に対して5件のファイナンス・リース契約に基づくリース料を支払ってきた原告会社が、被告とのリース契約の不成立等を主張して、既払リース料の不当利得返還を求めた(甲事件)のに対し、被告が、原告会社に対しては本件リース契約に基づき、同社の代表取締役に対しては連帯保証契約に基づき、残リース料の支払を求めた(乙事件)事案において、原告会社と被告は各リース契約の締結を合意したと認められ、また、原告会社によるリース物件の使用がなかったことにつき被告の帰責事由の存在は認められないから、ユーザーである原告会社は本件リース契約に係るリース料の支払義務を免れないとした上、詐欺取消し、本件各リース契約の公序良俗違反、クーリングオフをいう原告らの各主張はいずれも採用できないとして、原告らの請求を棄却し、被告の請求を全部認容した事例

参照条文
民法90条
民法96条
民法703条
特定商取引に関する法律2条4項(平20法74改正前)
特定商取引に関する法律9条1項(平20法74改正前)
特定商取引に関する法律26条1項1号
特定商取引に関する法律施行令3条1項(平21政117改正前)
会社法5条
商法4条
商法503条2項

裁判年月日  平成24年 5月23日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)13089号・平23(ワ)28949号
事件名  不当利得返還等請求事件(甲事件)、リース料請求事件(乙事件)
裁判結果  甲事件請求棄却、乙事件認容  文献番号  2012WLJPCA05238008

平成23年(ワ)第13089号 不当利得返還等請求事件(甲事件)
平成23年(ワ)第28949号 リース料請求事件(乙事件)

東京都大田区〈以下省略〉
甲事件原告・乙事件被告 株式会社台貞(以下「原告会社」という。)
同代表者代表取締役 A
東京都大田区〈以下省略〉
乙事件被告 A(以下「A」といい,原告会社と併せて「原告ら」という。)
両名訴訟代理人弁護士 伊藤嘉健
同 髙木秀治
東京都港区〈以下省略〉
甲事件被告・乙事件原告 日本GE株式会社(以下「被告」という。)
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 鶴田進
同 荒木邦彦
同 藤井直孝
同 平岡広輔

 

 

主文

1  原告会社の被告に対する請求を棄却する。
2  原告らは,被告に対し,連帯して,377万5065円及びこれに対する平成23年2月4日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
3  訴訟費用は,甲事件及び乙事件を通じ,原告らの負担とする。
4  この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  甲事件
被告は,原告会社に対し,114万5235円及びこれに対する平成23年5月13日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
2  乙事件
主文第2項同旨
第2  事案の概要
1  甲事件は,被告に対して5件のいわゆるファイナンス・リース契約に基づくリース料を支払ってきた原告会社が,被告とのリース契約の不成立等を主張して,不当利得に基づき,既払リース料合計114万5235円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成23年5月13日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
乙事件は,被告が,原告会社に対しては上記リース契約に基づき,Aに対しては連帯保証契約に基づき,連帯して,残リース料合計377万5065円及びこれに対する期限の利益喪失日の翌日である平成23年2月4日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による約定遅延損害金の支払を求める事案である。
2  前提事実(当事者間に争いがないか,後記の証拠又は弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)
(1)当事者
ア  原告会社は,金物の販売等を営む株式会社であって,Aが代表取締役を務めている。原告会社の本店所在地にあるA所有の3階建て建物のうち,1階部分において,A及びその母親が金物店を営んでいる(甲16,22,32,A本人)。
A及びその家族は,上記建物の2階部分及び3階部分に住んでいたが,平成22年3月上旬ころ,Aの肩書住所地に引っ越した(甲32)。
イ  被告は,リース業等を営む株式会社である。GE三洋クレジット株式会社は,平成21年にGEフィナンシャルサービス株式会社に吸収合併され,同社は,平成22年1月に被告に吸収合併された(以下,これらを時期を問わず「被告」という。)。
(2)C(以下「C」という。)は,リース物件の販売業者である有限会社アクティブネットワーク(以下「アクティブネットワーク」という。)の代表取締役である。
(3)Aは,原告会社の店舗においてCから勧誘を受け,平成20年5月23日,原告会社と被告は,別紙リース契約目録記載1のリース契約(以下「本件リース契約1」という。)を締結し,Aは本件リース契約1に基づく原告会社の債務を書面により連帯保証した。本件リース契約1においては,債務の履行を1回でも遅延した場合,被告からの通知・催告を要せず,原告会社は契約に基づく債務の履行について当然に期限の利益を失い,残リース料全額に消費税相当額を加算した金額を直ちに被告に支払う旨や,この場合,上記残リース料全額に対する年14.6パーセントの遅延損害金を支払う旨が約定された。(甲1の1,乙1)
(4)Aは,原告会社の店舗においてCから勧誘を受け,原告会社と被告は,別紙リース契約目録記載2ないし5の各契約日欄に記載の日ころに,同目録記載の内容で,各リース契約書を作成した(以下,それぞれの契約書記載の契約を「本件リース契約2」,「本件リース契約3」などといい,これらの契約と本件リース契約1を併せて「本件各リース契約」と総称する。)。また,これらの各契約書(以下「各リース契約書」と総称する。)の連帯保証人欄には,Aの氏名が記載され,かつ,押印されている。なお,各リース契約書においては,本件リース契約1と同内容の期限の利益喪失特約及び約定遅延損害金の定めがある。(甲2ないし5の各1,乙2ないし5)
(5)被告は,アクティブネットワークに対し,別紙リース契約目録記載1ないし5記載のリース物件についての代金を支払った(乙14の1ないし18の2)。
(6)被告は,Aに対し,本件各リース契約の各契約締結日の前日から翌日までの間に,電話で,①リース物件名を含む契約内容,②引落銀行口座,③納品の有無,④契約者の住所及び⑤保証内容を確認した(乙6ないし11,A本人)。
(7)原告会社は,平成22年11月16日,本件各リース契約につきクーリングオフによる解除の意思表示及び詐欺に基づく取消しの意思表示をする旨などを記載した書面(以下「本件書面」という。)を被告に発送し,同月18日に到達した(甲6)。
(8)原告会社は,被告に対し,平成23年1月4日までに別紙リース料支払履歴記載のとおりリース料を支払ったが,同日の支払を最後にリース料の支払をしていない。
本件各リース契約の各リース料総額から上記のリース料支払額を控除した残額は,本件リース契約1が36万5820円,本件リース契約2が20万7900円,本件リース契約3が71万0010円,本件リース契約4が69万4575円,本件リース契約5が179万6760円の合計377万5065円である。
3  争点及びこれについての当事者の主張
(1)本件は,原告らが本件各リース契約の効力を争うところ,これについての争点は次のとおりである。
ア  本件リース契約1
詐欺取消し(争点3)
クーリングオフ(争点5)
イ  本件リース契約2,3及び5
契約不成立(争点1)
リース物件の引渡し未了(争点2)
詐欺取消し(争点3)
公序良俗違反(争点4)
クーリングオフ(争点5)
ウ  本件リース契約4
契約不成立(争点1)
リース物件の引渡し未了(争点2)
詐欺取消し(争点3)
クーリングオフ(争点5)
(2)本件リース契約2ないし5について,リース契約が成立したか。(争点1)
(被告の主張)
原告会社は,各リース契約書において,当該契約書記載の物件をリースして借り受ける旨記載し,被告に交付している。また,原告会社は,被告から,本件リース契約2ないし5の内容について電話確認を受けた際も,当該契約書記載の物件がリース物件であると述べた。
したがって,原告会社は,各リース契約書記載の物件をリースして借り受ける旨の意思表示をしたことから,被告と原告会社との間で,当該契約書記載のリース契約が締結されたことは明らかである。
(原告らの主張)
原告会社は,Cを介して,被告に対し,本件リース契約2についてはADSL無線LANルーターを,本件リース契約3については光無線LANルーターを,本件リース契約4については防犯監視システムを,本件リース契約5については子機付き家庭用電話機及び無線LANルーターをリース物件とするリース契約を申し込んだ。これに対し,被告の原告会社に対する承諾の意思表示は,各リース契約書記載の物件をリース物件とするリース契約であった。
したがって,本件リース契約2ないし5については,原告会社と被告との間で意思表示の合致がないから,契約は不成立というべきである。
(3)原告会社は本件リース契約2ないし5についてリース物件の引渡しを受けたか。また,原告会社はリース物件の引渡しを受けていないことを理由にリース料の支払を拒むことができるか。(争点2)
(原告らの主張)
ア(ア)原告会社は,平成20年9月ころ,CからADSL無線LANルーターのリースの勧誘を受け,「実際の物と契約書の物件名が違うが気にしないでください。これだけ高価な商品をこの安い値段でリース契約書を作成すると,リース会社から不審がられるので,品名を違うものにしているのです。」などと言われたため,NEC製パソコンがリース物件とされている本件リース契約2を締結した。そして,原告会社は,同年10月17日,Cから本件リース契約2のリース物件として,ADSL無線LANルーターを受け取ったが,同ルーターは,平成21年7月23日,下記(イ)の本件リース契約3のリース物件として光無線LANルーターを受け取った際に,Cが持ち去った。
(イ)原告会社は,平成21年7月ころ,Cの勧誘によって,Aの自宅の電話回線をアナログ回線から光回線に切り替えた上,光無線LANルーターのリースの勧誘を受け,「リース会社から不審がられないように実際の物件名を変えている。」などと虚偽の説明を受けて,富士通製サーバーがリース物件とされている本件リース契約3を締結した。そして,原告会社は,同月23日,Cから本件リース契約3のリース物件として,光無線LANルーターを受け取ったが,平成22年3月12日,下記(エ)の本件リース契約5のリース物件として子機付き家庭用電話機及び無線LANルーターを受け取った際に,Cが持ち去った。
(ウ)原告会社は,平成22年2月9日,Cから防犯監視システムのリースの勧誘を受け,「リース会社から不審がられないように実際の物件名を変えている。」などと虚偽の説明を受けて,キャノン製複合機がリース物件とされている本件リース契約4を締結した。そして,原告会社は,同月12日,Cから本件リース契約4のリース物件として,監視システム1台などを受け取った。
(エ)原告会社は,平成22年3月4日,Aが自宅を引っ越す際,Cから子機付き家庭用電話機及び無線LANルーターのリースの勧誘を受け,「リース会社から不審がられないように実際の物件名を変えている。」などと虚偽の説明を受けて,キャノン製複合機がリース物件とされている本件リース契約5を締結した。そして,原告会社は,同月12日,Cから本件リース契約5のリース物件として,子機付き家庭用電話機及び無線LANルーターを受け取った。
(オ)上記(ア)ないし(エ)のとおり,原告会社は本件リース契約2ないし5のリース契約のリース物件の引渡しを受けていないから,被告はリース料を取得することができない。
また,本件リース契約2及び3については,それぞれの現実のリース対象であるADSL無線LANルーターや光無線LANルーターについて,Cがこれらを持ち去っているから,被告はそれらが持ち去られた後のリース料を取得することはできない。
イ  被告は,本件リース契約2ないし5における物件の機種,仕様,価格,納期その他リース契約の諸条件などの顧客に対する説明と確定作業をCに任せ,被告自身は何らの説明もせず,契約書及びリース物件借受証の作成や交付に関与していないところ,そのCが,リース物件借受証をすべて作成し,原告会社の実印を押した。このような事実関係の下では,原告会社が,被告に対してリース物件の引渡しがないことをもってリース料の支払を拒むことができるというべきである。
(被告の主張)
本件リース契約2ないし5について,原告会社から被告に対し,契約書記載の物件が搬入された旨のリース物件借受証が交付されている。また,原告会社の代表取締役であるAは,被告から,本件リース契約2ないし5の内容について電話確認を受けたときにも,契約書記載の物件がリース物件であると述べた。
したがって,本件リース契約2ないし5につき,契約書記載の物件が原告会社に引き渡されたか,仮に引き渡されていないとしても,引渡しがないことをもってリース料の支払を拒むことは信義則に反する。
(4)本件各リース契約は,詐欺による意思表示であることを理由に取り消すことができるか。(争点3)
(原告らの主張)
ア 本件リース契約1について
Cは,Aに対し,本件リース契約1の締結に際し,実際には市販のウィルス対策ソフトと性能に大差がなく,高額なリース料を支払わなければならないにもかかわらず,「市販のソフトは,更新する度に代金を支払わなければなりませんが,ネットセキュリティ機器だと更新時の支払は不要なので,トータルで料金が安くなります。」などと虚偽の事実を告げ,Aをしてその旨誤信させて本件リース契約1を締結させた。
イ 本件リース契約2,3及び5について
前記(3)(原告らの主張)ア(ア),(イ)及び(エ)のとおり,Aは,Cから,本件リース契約2,3及び5につき,当該リース契約書記載の物件と異なる物件のリースを安価なリース料で契約することができ,リース会社に不審がられないようにするために安価なリース料に見合った別の物件をリース物件として契約書に記載する旨の説明を受け,Aはそれを信じて契約を締結した。
しかし,原告会社が,Cから本件リース契約2,3及び5のリース物件として引き渡された物件は,ADSL無線LANルーター(本件リース契約2),光無線LANルーター(本件リース契約3)及び子機付き家庭用電話機並びに無線LANルーター(本件リース契約5)であって,その市販価格がいずれも5300円から1万8480円程度であるところ,本件リース契約2,3及び5のリース料総額は,それぞれ36万円(税抜),96万6000円(税抜)及び198万7200円(税抜)である。
したがって,Cの原告会社に対する説明は虚偽であり,Aをしてその旨誤信させて本件リース契約2,3及び5を締結させた。
ウ 本件リース契約4について
Cは,Aに対し,本件リース契約4の締結に際し,「他社の電話機リース契約のリース料をずいぶん支払ってもらいましたので,その残りの支払を防犯カメラのリースに切り替えることができます。切り替えても新たな負担はありません。」などと虚偽の事実を告げて,Aをしてその旨誤信させて本件リース契約4を締結させた。
エ  本件各リース契約は,被告及びアクティブネットワークによるリース提携販売によるものであり,総合的にみれば一つの訪問販売を形成しており,リース契約における物件の機種,仕様,価格,納期その他リース契約の諸条件などの顧客に対する説明と確定作業は,被告が全て提携業者であるアクティブネットワークに任せていた。そして,本件各リース契約の契約書及びリース物件借受証の作成及び押印を全てアクティブネットワークのCが行った。このような被告と密接な関係にあるアクティブネットワークのCが,Aに対して詐欺行為をしたのであるから,被告による詐欺行為と評価すべきである。
(被告の主張)
ア  Aは,本件各リース契約締結当時,53歳又は54歳であって,判断能力が衰える年齢ではなく,また,原告会社の代表取締役として,個々の契約を締結する際には,常に慎重な判断が求められていた。さらに,Aは,原告会社の経営者として契約書の重要性は当然認識していたはずである。そのようなAが,欺罔されて安易に5つものリース契約書に署名押印することはあり得ない。
イ  本件リース契約1については,市販のセキュリティソフト(1年用)の相場が1万円弱であることは,インターネットで検索するなどすればすぐに分かるのであるから,総額59万0940円(税込)のネットセキュリティシステムが,市販のセキュリティソフトよりも安いと誤信することはあり得ない。
ウ  本件リース契約2,3及び5については,弁論準備手続にて争点整理がされた後の第4回口頭弁論期日において初めて主張したことから,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである(民訴法157条)。
また,本件リース契約2,3及び5のリース物件は,いずれも契約書記載の物件であり,当該物件に比してリース料が高額とはいえない。リース物件が実際に搬入された物件であることを前提とする被告の主張は,前提を欠いている。
エ  本件リース契約4については,平成22年4月から平成23年1月までの10か月間,リース料を支払っている。リース料の支払がないと欺罔されたのであれば,10か月もの長期にわたってリース料を支払うことはあり得ない。
オ  仮に,Cによる詐欺の事実があったとしても,Cの行為を被告の行為と同視することはできず,被告は第三者であるから,原告会社は本件各リース契約を取り消すことはできない。
(5)本件リース契約2,3及び5は,暴利行為であるとして公序良俗に違反するか。(争点4)
(原告らの主張)
本件リース契約2,3及び5のリース料総額は,順に36万円(税抜),96万6000円(税抜)及び198万7200円(税抜)であるところ,上記(4)(原告らの主張)イのとおり,原告会社がCから本件リース物件2,3及び5のリース物件として引渡しを受けた物件の市販価格は,いずれも5300円から1万8480円程度であることと比較すると,そのリース料総額は著しく高額である。
したがって,本件リース契約2,3及び5は,暴利行為として民法90条により無効である。
(被告の主張)
本件リース契約2,3及び5のリース物件は,当該リース契約書記載の物件であるところ,当該リース契約書記載の物件とリース料総額を比較すると,著しく高価であるとはいえない。
(6)本件各リース契約について,特定商取引に関する法律(以下「法」という。)9条1項に基づく解除(クーリングオフ)をすることができるか。(争点5)
(原告らの主張)
ア  本件各リース契約の締結は,被告及びアクティブネットワークによるリース提携販売によるものであり,総合的にみれば一つの訪問販売を形成しているものであるから,被告及びアクティブネットワークはいずれも法における「販売業者」又は「役務提供事業者」(以下併せて「販売業者等」という。)に該当する。
イ  本件リース契約1ないし3は,平成20年法律第74号(平成21年12月1日施行)による改正前の法(以下「旧法」という。)が適用される時点での契約であるところ,いずれのリース物件も,国民の日常生活に係る取引において販売される電子計算機又はその附属品であり,現に家庭用として使用していたから,旧法におけるクーリングオフの要件である「指定商品」に当たる(平成21年政令第117号による改正前の特定商取引に関する法律施行令(以下「施行令」という。)別表第1)。
ウ  被告もアクティブネットワークも,原告会社に対し,法5条1項で定められた書面を交付していないため,本件書面が発送された段階では,クーリングオフ期間は進行していなかった。
エ  法の適用除外を定める法26条1項1号は,昭和63年法律第43号による改正前においては,「商行為」であることが適用除外要件であったが,この改正により「営業のため若しくは営業として」と改められたことからすれば,会社の行為が商行為であるからという形式的論理で法が適用されないと解釈することはできず,契約の目的及び内容が営業のためのものである場合に法が適用されないという趣旨の規定と解すべきである。
原告会社は,専らA及びその家族が家庭用に使用するために,本件リース契約1ないし3及び5のリース物件として,それぞれ,ネットセキュリティ機器,ADSL無線LANルーター,光無線LANルーター並びに子機付き家庭用電話機及び無線LANルーターのリース契約をし,現に家庭用として使用してきた。また,Aの自宅の防犯目的のため,本件リース契約4として,防犯監視システムのリース契約をし,建物入口等に防犯カメラを設置した。
したがって,本件各リース契約は,原告会社が「営業のために若しくは営業として」契約したものではないから,法26条1項1号による法の適用除外には該当しない。
(被告の主張)
ア  Cは被告の従業員ではないし,被告とCは,ファイナンス・リース契約におけるリース会社とサプライヤーの関係にあり,利害が対立する関係にある。したがって,Cの行為を被告の行為と同視することはできないから,被告は販売業者等に当たらない。
イ  旧法における「指定商品」とは,国民の日常生活に係る取引において販売される物品であって政令で定めるものをいい,事業の用に供される商品は含まれていない。本件リース契約1のリース物件であるネットセキュリティシステム(ネットステルス)及び本件リース契約3のリース物件であるサーバーは業務用物件であり,「指定商品」には当たらない。
ウ  本件各リース契約は,原告会社が「営業のため」(法26条1項1号)に締結したものであるから,法9条1項に基づくクーリングオフをすることができない。
本件各リース契約は原告会社が契約主体となっているところ,会社の行為はその事業のためにするものと推定される(最高裁平成20年2月22日判決・民集62巻2号576頁参照)から,本件各リース契約は営業のために行ったと推定される。
本件リース契約1のリース物件であるネットステルスは業務用のネットセキュリティ機器であり,個人用のものではなく,原告会社において業務に使用していたパソコンにネットステルスが接続されていたことは明白であるから,本件リース契約1が「営業のため若しくは営業として」締結されたことは明らかである。
本件リース契約2ないし5については,契約書記載のリース物件の引渡しがないということであれば,実際の利用状況を考慮できない以上,「営業のため若しくは営業として」締結されたかどうかは,契約者の属性及びリース物件の性質のみによって判断されるべきところ,その契約主体は原告会社であるから営業のために行ったと推定され,契約書記載のリース物件がいずれも業務用の物件であるから,「営業のために若しくは営業として」締結されたことは明白である。
第3  当裁判所の判断
1  争点1(本件リース契約2ないし5の成否)について
(1)上記前提事実に証拠(各掲記のもの)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる(末尾に証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがない。)。
ア  本件リース契約2ないし5について用いられた契約書は,その一枚目に,賃借人及び連帯保証人の所在地又は住所,商号又は氏名等を記載する欄のほか,リース物件の物件名,メーカー名,型式(品番),製造番号及び台数を記載する欄及び月額リース料その他のリース料に関する事項を記載する欄が設けられている。そして,本件リース契約2及び3については上記契約書の一部であり,本件リース契約4及び5については上記契約書と別の書面であるリース物件借受証には,「リース契約に基づき,上記物件を検査の結果,契約に適合し,かつ瑕疵がないことを確認しましたので,本日これを借り受けました。」との文言の下,商号及び代表者の署名及び押印欄が設けられており,かつ,当該記載欄の左には,「右リース物件借受証への署名・押印は,必ず,物件搬入後に自ら右記載の検査を実施したうえで,行ってください。」等の注記がされている。(甲2ないし5の各1,乙2ないし5)
イ  本件リース契約2ないし5について作成された各リース契約書には,いずれも,賃借人欄に原告会社が,連帯保証人欄にAがそれぞれ記載され,リース物件及びリース料についてはいずれも別紙リース契約目録記載2ないし5のリース物件欄及び月額リース料欄に記載のとおりの内容がそれぞれ記載された上,原告会社の実印及びAの印章による押印がされている。また,本件リース契約2ないし5について作成されたリース物件借受証には,原告会社の商号及び代表者の記載がされ,原告会社の実印が押印されている。各リース契約書及び上記各リース物件借受証の記載及び押印は,Cによってされたものの,Aは,上記各契約書及び各リース物件借受証の記載を認識しつつ,Cが各押印をすることを了承していた。(甲2ないし5の各1,甲32,乙2ないし5,A本人)
ウ  Cは,本件リース契約2ないし5に係る契約書の作成に先立ち,被告に対し,それぞれ,アクティブネットワーク名義の見積書を提出した。この見積書には,見積の内訳として,それぞれ,別紙リース契約目録記載2ないし5のリース物件欄に記載の物件が記載されていた。そして,被告は,アクティブネットワークに対し,契約書作成後それぞれ,上記各見積書の合計金額欄に記載された金額から振込料相当額を控除した金員を振込送金する方法で支払った。(乙15の1ないし18の2)
エ  被告の担当者は,Cを通じて本件リース契約2ないし5に係る契約書及びリース物件借受証の送付を受けた後,それぞれ,原告会社に電話をかけ,応対した原告会社の代表者であり各リース契約書上の連帯保証人であるAに対し,いずれも,本件リース契約2ないし5の内容,リース料の引落銀行口座,納品の有無,契約者の住所及び保証内容を確認した。これに対し,Aは,いずれの確認に対しても,本件リース契約2ないし5のリース物件が各リース契約書記載の物件であることや,これらの物件が納品済みであることなど,各リース契約書の記載内容に誤りがない旨を回答した。(乙7ないし11,A本人)
オ  原告会社は,被告に対し,本件リース契約2ないし5に係る契約書の提出後,平成23年1月4日までの間,別紙リース料支払履歴記載のとおり,本件リース契約2ないし5に係る各契約書に記載されたリース料を支払った。
(2)上記認定事実によれば,原告会社と被告との間の本件リース契約2ないし5は,いずれも,原告らが,所定の事項が記入され,原告ら名義の署名及び原告らの印章による押印がされた契約書を作成し,これをCを通じて被告に提出することにより締結され,かつ,被告の担当者において,後日,原告会社に電話をかけ,本件リース契約2ないし5の内容や保証内容をAに確認することを通じて,各リース契約書記載のリース物件を対象とするリース契約が真に締結されたか否か,リース料等の契約の内容に誤りがないか等が確認され,また,原告会社においても,当該リース物件の受領後に,当該物件に瑕疵のないことを確認し,その旨をリース物件借受証を提出することにより明らかにしたことが認められる。原告らは,Cが契約書やリース物件借受証を記載したと主張するが,原告会社の代表取締役のAが,それらの記載内容を認識した上で,原告らの印章を押印することを了承した以上,当該各リース契約書及びリース物件借受証を原告らが作成したことに変わりはない。
そして,上記認定のとおり,本件リース契約2ないし5について作成された各リース契約書には,いずれも,リース物件として別紙リース契約目録記載2ないし5の各リース物件欄に記載の物件が記載されていた上,被告においても,Cから当該物件に係る見積書の送付を受けると,アクティブネットワークに対し,それぞれ,上記各見積にほぼ相当する金員を支払ったのであるから,被告において,本件リース契約2ないし5のリース物件が別紙リース契約目録記載2ないし5の各リース物件欄記載の物件であると認識していたことは明らかである。
他方,原告らとしても,Cを通じて被告に提出した原告会社の実印による押印のある契約書に記載されたリース物件が別紙リース契約目録記載2ないし5の各リース物件欄に記載の物件であった以上,本件リース契約2ないし5のリース物件は上記物件である旨を表示したというべきである上,同じくCを通じて被告に本件リース契約2ないし5について上記実印による押印がされた各リース物件借受証を提出していることや,被告の担当者による電話確認において,Aが本件リース契約2ないし5のリース物件が各リース契約書記載の物件であると回答したことは,原告会社が受領したものが別紙リース契約目録記載2ないし5の各リース物件欄記載の物件であったことを前提としたものである。
以上を総合すれば,原告会社と被告は,別紙リース契約目録記載2ないし5のとおりの各リース契約の締結を合意したと認められる。
(3)これに対し,原告らは,原告会社が被告に対しリースを申し込んだのは本件リース契約2ないし5に係る契約書に記載された物件と異なるから,原告会社と被告との間にはリース物件に関する意思表示の合致がなく,本件リース契約2ないし5は成立していない旨主張する。
しかしながら,原告会社が被告に対してした契約書の提出等の行為は,いずれも,本件リース契約2ないし5のリース物件が別紙リース契約目録記載2ないし5のとおりであったことは上記認定のとおりであるから,原告らの上記主張は,その前提を欠き,採用の余地がない。
2  争点2(本件リース契約2ないし5のリース物件の引渡し未了)について
(1)原告らは,原告会社が本件リース契約2ないし5に係るリース物件の引渡しを受けていないから,被告はリース料を取得することができない旨主張する。
しかしながら,本件リース契約1を含め,本件各リース契約はいわゆるファイナンス・リース契約である(当事者間に争いがない。)。そして,ファイナンス・リース契約は,物件の購入を希望するユーザーに代わって,リース業者が販売業者から物件を購入のうえ,ユーザーに長期間これを使用させ,当該購入代金に金利等の諸経費を加えたものをリース料として回収する制度であり,その実体はユーザーに対する金融上の便宜を付与するものであるから,リース料の支払債務は契約の締結と同時にその金額について発生し,ユーザーに対して月々のリース料の支払という方式による期限の利益を与えるものにすぎず,また,リース物件の使用とリース料の支払とは対価関係に立つものではないというべきである。したがって,ユーザーによるリース物件の使用がなかったとしても,これがリース業者の責めに帰すべき事由によるものでないときは,ユーザーにおいて月々のリース料の支払を免れるものではないと解すべきである。(最高裁平成5年11月25日第一小法廷判決・裁判集民事170号553頁参照)
(2)これを本件についてみるに,Aは,本件リース契約2ないし5については,契約の締結後,Cから当該契約に係るリース物件が引き渡されることなく,いずれも,契約書に記載されたリース物件と異なる物件が引き渡され,原告会社は,これを本件リース契約2ないし5のリース物件と取り扱った上で,被告に対しリース料を支払ってきたと陳述(甲32)及び供述するところ,この陳述及び供述の信用性を否定するに足る証拠はない。そうすると,Cは,アクティブネットワーク名義で本件リース契約2ないし5の各リース契約書記載のリース物件について見積書を作成し,被告に当該物件に係る代金相当額を支払わせる一方で(前記1(1)ウ),原告会社に対しては異なる物件を交付し,原告会社は本件リース契約2ないし5に係るリース物件を利用していなかったこととなり,このことについて,Cが何らかの不正行為を行った可能性が疑われる。
しかしながら,そもそも,上記1で認定,判断したとおり,原告会社は,Cを通じて,本件リース契約2ないし5のリース物件が別紙リース契約目録記載2ないし5の各リース物件欄記載の物件である旨を記載した契約書を作成して,被告に提出したほか,当該各物件を受領したこと等を確認した旨のリース物件借受証を被告に提出し,Aが,被告の担当者からの電話での照会に対し,本件リース契約2ないし5のリース物件が当該各物件であることや,現実に納品済みであること等を回答しているところ,これらの行為がCの求めによるものであること自体は否定し難い(甲32,A本人)とはいえ,こうした原告らの一連の行為がなければ,被告が原告会社に対し当該各物件についてリースという形で信用を供与することもなかったことは明らかである。その上,被告としても,リース物件借受証の徴求や,Aに対する電話による契約内容の確認により,原告会社が真実本件リース契約2ないし5を締結する意思があったか,そのリース物件は何かを確認する方策を尽くしていたと認められる一方,被告が通常の注意を尽くしていれば,Cから原告会社に対してリース物件として交付された物件が現実には別紙リース契約目録記載2ないし5の各リース物件欄記載の物件と異なることについて容易に気付くことができたことを窺わせるような証拠はない。のみならず,Cは,被告との間で業務提携契約を締結したアクティブネットワークの代表者として,被告に代わって,ユーザーである原告会社に対しリース契約の説明をし,契約書やリース物件借受証を原告会社から受領して被告に送付することによって,本件リース契約2ないし5の締結に関する被告の事務を一定程度代行したにすぎないと認められ(甲2ないし5の各1,甲32,乙2ないし5,A本人),CのAに対する勧誘が被告の指示の下に行われていたことなど,Cひいてはアクティブネットワークの行為を被告自身の行為と同視すべき事情の存在を窺わせる証拠はない。
(3)そうすると,原告会社によるリース物件の使用がなかったことについて被告の責めに帰すべき事由があったと認めることはできないから,被告主張の信義則を問題にするまでもなく,ユーザーである原告会社は本件リース契約2ないし5に係るリース料の支払義務を免れることはできず,原告らの上記(1)の主張は採用することができない。
3  争点3(本件各リース契約の詐欺取消し)について
原告らは,本件各リース契約の締結に係る原告会社の意思表示は,いずれも,Cの詐欺に基づくものであるから,取り消されるべき旨主張する。
しかしながら,Cの行為を被告自身の行為と同視することができないことは上記2(2)において説示したとおりであるから,被告にとってCは民法96条2項の「第三者」に当たるというほかないところ,被告がCのAに対する勧誘の具体的内容につき悪意であったことについての主張立証はないから,原告会社は,被告に対する意思表示を取り消すことができないというべきである。
のみならず,仮に,この点を措くとしても,以下に説示するとおり,上記原告の主張はいずれも採用することができない。
(1)本件リース契約1について
原告らは,Cが,「市販のソフトは,更新する度に代金を支払わなければなりませんが,ネットセキュリティ機器だと更新時の支払は不要なので,トータル料金が安くなります。」などと虚偽の事実を告げて,Aを誤信させたと主張する。そして,Aは,これと同旨の供述に加え,本件リース契約1を締結する際,市販のネットセキュリティ機器の価格を調べたことはなく,その価格も知らなかった旨の供述をする。
しかしながら,証拠(甲32,A本人)及び弁論の全趣旨によれば,Aは,本件リース契約1の締結に際し,Cから妻とともに勧誘を受け,妻と本件リース契約1を締結することの損得について相談したこと,妻がネットセキュリティソフトを使っていたこと,妻がリース料が高いと考えていると認識していたものの,ネットセキュリティ機器の設置工事やその後の管理を知り合いであるCが担当することを併せて考えるとリース料が高くてもやむを得ないと考え,本件リース契約1の締結に至ったことが認められる。これらのことに,本件リース契約1に係る契約書にはリース料が明示されており,Aはその額を認識した上で本件リース契約1を締結したと認められること(甲1の1,乙1,弁論の全趣旨)を併せ考慮すると,Aの上記供述は措信し難く,原告らの上記主張を採用することができない。
(2)本件リース契約2,3及び5について
ア  原告会社は,Cから,本件リース契約2,3及び5につき,当該リース契約書記載のリース物件と異なる物件のリースを安価なリース料で契約することができ,そのためにはリース会社に不審がられないようにするために安価なリース料に見合った別の物件をリース物件として契約書に記載する旨の虚偽の説明を受け,Aはその旨誤信したと主張する。
イ  被告は,原告らの当該主張を時機に後れたもので,民事訴訟法157条1項の規定により却下すべきであると主張するが,本件リース契約2,3及び5につき,原告会社がCから受けた説明内容や当該契約締結に至った経緯についての主張自体は,原告会社が甲事件第1回口頭弁論期日において陳述した甲事件訴状に記載があり,Aも,乙事件が甲事件と併合された直後から原告会社の主張を援用していたものであって,上記アの主張は同一の事実についての法的評価ないし法的構成を新たに付け加えたものにすぎず,その判断のために期日を重ねる必要のないものであるから,当該主張が訴訟の完結を遅延させるものということはできず,被告の主張を採用することはできない。
ウ  そこで,原告らの主張の当否について判断するに,Aの陳述書(甲32)ないし供述中には,上記アの主張に沿う部分がある。
しかしながら,そもそも,Aは,原告会社の代表者であり,同社の経営に当たる者として,契約書に対する記名,押印の意義はもとより,ファイナンス・リース契約におけるリース料の内容及び性質に関する一般的な知識を有していたと認められる(甲32,A本人,弁論の全趣旨)ところ,このようなAにおいて,原告会社がCから受領したとされる物件の真実のリース料をいわば仮装する必要があるとか,そのためには,実際に交付を受ける物件と異なる物件をリース物件としたリース契約を締結する形式を採る必要がある旨の説明を受け,これを誤信するとは容易に想定し難いというべきである。また,Aは,現実に受領した物件と異なる物件,すなわち,契約書に記載された物件を現実に受領した旨のリース物件借受証をいずれも作成し,被告に提出した上,被告の担当者からの電話による照会に対しても,これらのリース物件借受証に記載された物件が本件リース契約2,3及び5のリース物件で間違いない旨回答しており,しかも,平成23年1月に支払を止めるまでの間,本件リース契約2,3及び5所定のリース料を現に支払ってきたところ,Aにおいて,リース物件やそのリース料について正確な認識を欠いたまま,上記の回答,支払等をするとも考え難い(なお,この点,Aは,原告会社の経理はAの母親に任せていたため,銀行から送付される当座勘定照合表を確認していなかった旨供述するが,原告会社を経営するAにおいて,原告会社の経費としての性質を有するリース料の額や支払状況等に関心を抱いていなかったとは考え難く,採用することができない。)。のみならず,上記各リース契約の契約書記載のリース物件は,本件リース契約2がパソコン,本件リース契約3がサーバー,本件リース契約5がの複合機であるところ,これらのリース物件を,原告会社がCから現実に受領したと主張する物件,すなわち,本件リース契約2についてADSL無線LANルーター,本件リース契約3について光無線LANルーター,本件リース契約5について子機付き家庭用電話機及び無線LANルーターと比較しても,一般的にリース物件の方が安価であるとみることはできず,リース物件を上記各リース契約書に記載することによって真実のリース料を偽装することができるとは容易に認め難いこと,Aの家族のうち少なくともAの妻はインターネットに親しんでおり,本件リース契約2,3及び5の締結につきAがその妻と相談したと認められること(甲32,A本人,弁論の全趣旨)や,上記各契約のうち,とりわけ本件リース契約5については,Aも,Cから,当該契約を締結したことに関し,キャッシュバックとして30万円を受け取る等の利益を得ていると認められること(甲30の1・2,32,A本人)にも照らすと,Aは,リース物件と比較したリース料の多寡等の事情を十分認識し,検討した上で,被告との間で上記の各リース契約を締結したと推認することがむしろ自然というべきである。
以上を総合すると,本件リース契約2,3及び5について,Cに騙されて,真実のリース物件と異なる物件を対象とするリース契約を締結した等のAの上記陳述及び供述はいずれも不自然・不合理であって,容易に信用し難く,原告らの上記主張を採用することができない。
(3)本件リース契約4について
原告らは,Cが「他社の電話機リース契約のリース料をずいぶん支払ってもらいましたので,その残りの支払を防犯カメラのリースに切り替えることができます。切り替えても新たな負担はありません。」などと虚偽の事実を告げて,Aを誤信させて本件リース契約4を締結させた旨主張し,Aの陳述書(甲32)及び供述中には,これに沿う部分がある。
しかしながら,そもそも,Aの上記陳述ないし供述は,原告会社が,被告以外のリース会社にリース料を支払ってきたことにより,なぜ新たな負担なしで防犯監視システムを被告からリースすることができるのか,原告会社を経営するAにおいて,このようなCの申出について疑いを抱かなかったのかという点において不自然・不合理なものといわざるを得ない。その上,原告会社が,被告に対し,平成23年1月4日までの間,本件リース契約4に係るリース料を,他社に対する電話機のリース料に加える形で支払ってきたことはAが自認しているところ,仮に,Aが供述するように,電話機のリース料をいわば防犯カメラのリース料に充当することにより,原告会社がリース料を負担することなく防犯カメラをリースすることを可能にすることが本件リース契約4の趣旨であったのであれば,原告会社が本件リース契約4に係るリース料を継続的に支払うことは想定し難く(なお,Aが銀行から送付される当座勘定照合表を確認していなかった旨の供述を採用することができないことは前記(2)ウのとおりである。),この点からしても,Aの上記陳述ないし供述は容易に信用し難いものというほかない。
そうすると,原告らの上記主張を採用することができない。
4  争点4(本件リース契約2,3及び5の公序良俗違反)について
原告らは,本件リース契約2,3及び5に係るリース料は,いずれも,原告会社がCから現実に受領したリース物件と比較して著しく高額であるから,本件リース契約2,3及び5はいずれも暴利行為に当たり,公序良俗に違反して無効である(民法90条)旨主張する。
しかしながら,そもそも,本件リース契約2,3及び5は,それぞれ,別紙リース契約目録記載2,3及び5のリース物件欄記載の物件をリース物件として成立したと認められることは上記1において説示したとおりである。そうすると,これらの契約が暴利行為に該当するものとして公序良俗に違反するか否かも,原告会社が現実に受領した物件ではなく,当該リース契約のリース物件とリース料との比較において検討されるべきところ,上記の各リース契約において定められたリース料が,各リース物件との比較において著しく高額に失することを認めるに足りる証拠はない。
そうすると,原告らの上記主張を採用することはできない。
5  争点5(クーリングオフの可否・本件各リース契約)について
(1)本件リース契約1について
原告らは,本件リース契約1は,本件書面によるクーリングオフにより効力を失った旨主張する。
しかしながら,そもそも,リース契約におけるリース会社である被告は役務提供事業者と解される。そして,本件リース契約1が締結されたのは平成20年5月23日であるから,旧法が適用されることになる(平成20年法律第74号附則4条3項)が,旧法においては,役務提供事業者が営業所,代理店その他の経済産業省令で定める場所以外の場所において,「指定役務」につき役務提供契約の申込みを受ける等することが要件であるとされ(旧法9条1項),上記「指定役務」の具体的な内容については政令の定めに委ねられている(旧法2条4号,施行令3条,別表第三)ところ,本件リース契約1のリース物件であるネットセキュリティシステムは,上記「指定役務」に該当しない。のみならず,被告が販売業者に当たるとの原告の主張を前提としても,クーリングオフをするには,上記場所において「指定商品」につき売買契約の申込みを受ける等することが要件であるとされ(旧法9条1項),「指定商品」は,「国民の日常生活に係る取引において販売される物品」であることが要件の一つである(旧法2条4項)ところ,本件リース契約1のリース物件であるネットセキュリティシステム(ネットステルス・型式130J)は,企業セキュリティの更なる強化を目的に発売された商品で,「大企業の支店,中小企業,学校や役所のインターネット接続時のセキュリティに最適」とされていたことが認められる(甲28,乙13)から,上記リース物件は一般に企業等において業務用に使用される物品であって,「国民の日常生活に係る取引において販売される物品」に該当しない。
したがって,原告会社が,本件リース契約1について,クーリングオフをすることはできないから,原告らの上記主張を採用することはできない。
(2)本件リース契約2ないし5について
原告らは,本件リース契約2ないし5について,これらのリース契約に基づき原告会社がCから現実に受領した物件がいずれも原告会社の営業のためではなく,A及びその家族のために用いられていることを前提として,本件リース契約2ないし5は,本件書面によるクーリングオフによって効力を失った旨主張する。
しかしながら,そもそも,クーリングオフは,本件リース契約2ないし5を解除する意思表示であるところ,上記1において説示したとおり,本件リース契約2ないし5のリース物件は別紙リース契約目録記載2ないし5のリース物件欄記載の物件であるから,原告らがしたクーリングオフが法の適用除外に当たるか否かについても,原告会社が現実に受領した物件ではなく,本件リース契約2ないし5において定められたリース物件によって定まると解される。
この観点から検討するに,上記1(1)で認定したとおり,本件リース契約2ないし5は,いずれも,賃借人を原告会社,連帯保証人を原告会社の代表者であるAとして締結されたものであり,Aは,被告担当者からの電話による確認に対し,原告代表者としての立場において,契約者が原告会社であること等を回答しており,被告に対するリース料の支払も,原告会社の名義によって行われている。そして,商人である原告会社がする行為は,その営業のためにするものと推定される(会社法5条,商法4条,商法503条2項)上,本件リース契約2ないし5のリース物件の内容及び性質に照らしても,当該リース物件が原告会社の営業とおよそ関係がないとは認め難いから,本件リース契約2ないし5は,いずれも,法26条1項1号が法の適用が除外される場合として定める「営業のために若しくは営業として締結する」販売又は役務の提供で訪問販売に該当するものに当たるというほかなく,この認定を左右する証拠はない。
そうすると,原告らの上記主張は採用することができない。
6  以上の次第で,本件各リース契約は,いずれも,別紙リース契約目録記載の内容のものとして原告会社と被告間で成立し,Aが本件各リース契約による原告会社の債務を連帯保証したものであり,また,争点2ないし5の原告らの主張はいずれも採用することができないから,被告は,原告会社及びAに対し,本件各リース契約に基づくリース料を連帯して支払うよう求めることができる。そして,本件各リース契約にあっては,いずれも,債務者である原告会社が債務の履行を1回でも遅滞した場合,何らの通知又は催告を要することなく期限の利益を喪失する旨の定めが存するところ,原告らは,平成23年1月4日を最後にリース料の支払をしなかったから,次月の支払日である平成23年2月3日の経過により,原告会社が期限の利益を喪失したことは明らかである。
なお,原告らは,本件各リース料の支払を口座引落しの方法で行っていたところ,平成23年2月分以降口座からリース料が引き落とされていないのは,被告がリース料の引落しを停止したことによるものであり,被告自身の行為によるから,期限の利益が喪失しない旨主張するが,被告が原告会社の支払口座からリース料の引落しを停止したのは,原告会社が本件書面によってクーリングオフによる解除の意思表示等をするとともに,口座引落しの停止を要求したからであると認められ(甲6,弁論の全趣旨),原告会社は,自らの意思により,本件各リース契約に係るリース料の支払を拒んだというべきであるから,原告らの上記主張を採用することはできない。
第4  結論
よって,原告会社の甲事件の請求は理由がないから棄却することとし,被告の乙事件の請求はいずれも理由があるのでこれを認容することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 始関正光 裁判官 進藤壮一郎 裁判官 道場康介)

 

〈以下省略〉

 

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