平21(ワ)30040号・平22(ワ)3823号・平23(ワ)7477号 損害賠償請求事件、リース料反訴請求事件

裁判年月日  平成24年 3月29日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)30040号・平22(ワ)3823号・平23(ワ)7477号
事件名  損害賠償請求事件、リース料反訴請求事件
裁判結果  本訴請求棄却、反訴請求認容  文献番号  2012WLJPCA03298024

要旨
◆本訴原告らが、販売会社である本訴被告会社及び訴外会社の勧誘により、リース会社である本訴被告兼甲事件反訴原告会社(甲事件反訴原告)及び本訴被告兼乙事件反訴原告会社(乙事件反訴原告)との間で、必要のない電話機等のリース契約を締結させられたなどと主張して、被告らに対し、主位的に不法行為に基づく損害賠償請求をし、予備的に、当該リース各契約について、解除、取消し又は無効を主張して、不当利得返還請求をした(本訴)のに対し、甲事件反訴原告及び乙事件反訴原告が、本訴原告らに対し、各リース契約等に基づき、未払リース料等の支払を求めた事案において、本訴被告会社らの担当者に不法行為は認められないとし、また、本件各リース契約について、特定商取引に関する法律及び消費者契約法の適用を否定するとともに、詐欺又は公序良俗違反もないとして、本訴原告らの請求をいずれも棄却する一方、甲事件反訴原告及び乙事件反訴原告の各反訴請求を認容した事例

評釈
手塚宣夫・消費者法ニュース 94号102頁

参照条文
民法90条
民法96条1項
民法703条
民法709条
民法719条
消費者契約法2条1項
消費者契約法4条2項
特定商取引に関する法律2条1項
特定商取引に関する法律5条1項
特定商取引に関する法律9条1項
特定商取引に関する法律26条1項

裁判年月日  平成24年 3月29日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)30040号・平22(ワ)3823号・平23(ワ)7477号
事件名  損害賠償請求事件、リース料反訴請求事件
裁判結果  本訴請求棄却、反訴請求認容  文献番号  2012WLJPCA03298024

平成21年(ワ)第30040号 損害賠償請求事件
平成22年(ワ)第3823号 リース料反訴請求事件(甲事件)
平成23年(ワ)第7477号 リース料反訴請求事件(乙事件)

東京都稲城市〈以下省略〉
原告(甲事件反訴被告・乙事件反訴被告) X1
東京都新宿区〈以下省略〉
原告(甲事件反訴被告・乙事件反訴被告) X2
上記両名訴訟代理人弁護士 藤井篤
同 宮地理子
同 土佐一仁
同 三原利教
東京都豊島区〈以下省略〉
被告 西武通信株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 井上清成
同 衞藤正道
同 小野英明
同 尾籠真也
同 吉成紗恵
同訴訟復代理人弁護士 小林英憲
同 山崎祥光
東京都港区〈以下省略〉
被告(乙事件反訴原告) NECキャピタルソリューション株式会社
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 香髙茂
東京都中央区〈以下省略〉
被告(甲事件反訴原告) 株式会社日本ビジネスリース
同代表者代表取締役 C
同訴訟代理人弁護士 八倉賢一
同 中村雅男
同 石田道明
同 髙柳眞彦
同 榎本久司
同 梅本寛人
同 杉本幸男
同 袖川嘉朗
同 今田富久香
同 安江克典
同 栗原大
同 近藤暁
同 吉田直可

 

 

主文

1  原告(甲事件反訴被告・乙事件反訴被告)らの請求をいずれも棄却する。
2  原告(甲事件反訴被告・乙事件反訴被告)らは,被告(甲事件反訴原告)に対し,連帯して42万5250円及びこれに対する平成20年12月30日から支払済みまで年14.6パーセント(ただし,1年を365日とする日割計算による。)の割合による金員を支払え。
3  原告(甲事件反訴被告・乙事件反訴被告)らは,被告(甲事件反訴原告)に対し,連帯して77万6055円及びこれに対する平成21年1月28日から支払済みまで年14.6パーセント(ただし,1年を365日とする日割計算による。)の割合による金員を支払え。
4  原告(甲事件反訴被告・乙事件反訴被告)らは,被告(乙事件反訴原告)に対し,連帯して301万3920円及びこれに対する平成21年5月30日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
5  訴訟費用は,本訴反訴を通じ,全部原告(甲事件反訴被告・乙事件反訴被告)らの負担とする。
6  この判決は,第2ないし第4項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第一  請求
一  本訴
1  被告西武通信株式会社は,原告ら各自に対し,369万3690円及びこれに対する平成21年9月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告NECキャピタルソリューション株式会社は,原告ら各自に対し,270万1440円及びこれに対する平成21年9月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告株式会社日本ビジネスリースは,原告ら各自に対し,311万6190円及び内金99万2250円に対する平成21年9月9日から,内金212万3940円に対する平成22年5月7日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
二  反訴(甲事件)
主文第2,第3項と同旨。
三  反訴(乙事件)
主文第4項と同旨。
第二  事案の概要
本訴は,原告らが,販売会社である被告西武通信株式会社又は訴外会社の勧誘により,被告NECキャピタルソリューション株式会社及び被告株式会社日本ビジネスリースとの間で,リースを受ける必要もない電話機や複合機等のリース契約を詐欺的な商法により締結させられたなどと主張して,主位的に不法行為に基づき,既払いのリース料に相当する損害の賠償を求め,予備的に,これらのリース契約につき,特定商取引に関する法律9条に基づくクーリングオフとして解除し,消費者契約法4条1項に基づき取り消し,民法96条1項に基づき取り消した,あるいは,公序良俗に反するものとして無効であると主張して,不当利得に基づき,既払いのリース料の返還を求める事案である。
反訴(甲事件)は,反訴原告が,反訴被告らに対し,別紙リース契約推移表(3)及び(7)記載の各リース契約及び連帯保証契約に基づき,未払いの月額リース料及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日から支払済みまで約定の遅延損害金の支払いを求める事案である。
反訴(乙事件)は,反訴原告が,反訴被告らに対し,別紙リース契約推移表(8)記載のリース契約及び連帯保証契約に基づき,未払いの月額リース料及びこれに対する催告期限の翌日から支払済みまで約定の遅延損害金の支払いを求める事案である。
一  前提となるべき事実(括弧内掲記の証拠により認定した。)
1  当事者
(一) 原告(甲事件反訴被告・乙事件反訴被告)X2(以下「原告X2」という。)は,肩書住所地において,「○○塗装所」という屋号で個人として塗装業を営んでいた(甲第31号証)。
原告(甲事件反訴被告・乙事件反訴被告)X1(以下「原告X1」という。)は,原告X2の子であり,平成17年ころ以降,上記「○○塗装所」の代表たる地位を承継し,同屋号で塗装業を営んでいる(甲第30号証)。
(二) 被告西武通信株式会社(以下「被告西武通信」という。)は,事務用機器,警備保安用機器,通信用機器及び同設備の販売,リース,レンタル業務等を業とする会社である(弁論の全趣旨)。
(三) 被告(乙事件反訴原告)NECキャピタルソリューション株式会社(旧商号:NECリース株式会社。以下「被告NECリース」という。)は,各種機械,器具,装置,設備,備品,建物付属設備,車輌,船舶,航空機等の賃貸借,売買(割賦売買を含む。),輸出入及びその代理,仲介,上記物件の保守管理・運用支援等のメンテナンスサービスに関する業務等を業とする会社である(弁論の全趣旨)。
(四) 被告(甲事件反訴原告)株式会社日本ビジネスリース(以下「被告ビジネスリース」という。)は,総合リース業,金銭貸付業,クレジットカード業,ファクタリング業等を業とする会社である(弁論の全趣旨)。
(五) 株式会社メディアサポート(以下「メディアサポート」という。)は,平成18年7月26日から3か月間,業務停止命令を受け(甲第18号証),その後,破産した会社である(甲第19号証,弁論の全趣旨)。
2  契約状況
(一) 原告X2は,別紙リース契約推移表記載(1)のとおりのリース契約(以下「ネクサス1契約」という。)を締結していた(甲第1号証,甲第9号証の1)。ネクサス1契約の中途解約時の残リース料は,同別紙記載(8)の契約に伴って被告NECリースから支払われた購入代金によって賄われた(乙第2号証,第4号証の3,弁論の全趣旨)。
原告X2は,別紙リース契約推移表記載(2)のとおりのリース契約(以下「ネクサス2契約」という。)を締結していた(甲第2号証,第9号証の1)。ネクサス2契約の中途解約時の残リース料は,同別紙記載(3)の契約に伴って被告ビジネスリースから支払われた購入代金によって賄われた(弁論の全趣旨)。
原告X2は,別紙リース契約推移表記載(3)のとおりのリース契約(以下「メディアサポート1契約」という。)を締結した(甲第3号証の1,2,丁第6号証)。原告X1は,平成17年7月7日,メディアサポート1契約に基づく原告X2の契約上の地位を承継し,原告X2は,同契約に基づく債務につき連帯保証した(丁第7号証)。
原告X1は,別紙リース契約推移表記載(4)のとおりのリース契約(以下「メディアサポート2契約」という。)を締結していた(甲第4号証,乙第3号証,第4号証の1)。メディアサポート2契約の中途解約時の残リース料は,同別紙記載(5)の契約に伴って被告NECリースから支払われた購入代金によって賄われた(乙第2,第3号証,第4号証の2)。
(二) 原告X2は,別紙リース契約推移表記載(5)のとおりのリース契約(以下「本件1契約」という。)を締結した(甲第5号証の1,乙第4号証の1,丙第1ないし第4号証)。原告X1は,平成17年6月8日,本件1契約に基づく原告X2の債務について併存的に債務引受けをした(丙第5号証)。本件1契約の中途解約時の残リース料は,同別紙記載(8)の契約に伴って被告NECリースから支払われた購入代金によって賄われた(乙第2号証,第4号証の4,丙第7号証,弁論の全趣旨)。
原告X1は,別紙リース契約推移表記載(6)のとおりのリース契約(以下「本件未成立契約」という。)を申し込もうとしたが,しなかった(甲第6号証)。
原告X2は,別紙リース契約推移表記載(7)のとおりのリース契約(以下「本件2契約」という。)を締結した(甲第7号証,丁第1号証)。原告X1は,平成17年7月7日,本件2契約に基づく原告X2の契約上の地位を承継し,原告X2は,同契約に基づく債務につき連帯保証した(丁第3号証)。
原告X2は,別紙リース契約推移表記載(8)のとおりのリース契約(以下「本件3契約」といい,メディアサポート1契約,本件1契約及び本件2契約と併せて「本件各リース契約」という。)を締結した(甲第8号証,丙第8ないし第11号証)。
(三) 上記各契約に基づくリース目的物は,それぞれその契約日ころに契約者に引き渡された。ただし,本件3契約の目的物のうち電話機については,サクサTD510が引き渡された(乙第8号証の1,2)。
(四) メディアサポート1契約につき,被告ビジネスリースに対し,原告X2は12か月分の月額リース料を,原告X1は41か月分の月額リース料をそれぞれ支払った(別紙リース契約推移表の「既払いの月額リース料」欄の記載は,合計額。甲第9号証の1,2,弁論の全趣旨)。原告らは,平成21年1月27日に支払うべき月額リース料を支払わなかったため,未払いの月額リース料は,別紙リース契約推移表の「未払いの月額リース料」欄記載のとおりである(弁論の全趣旨)。
本件1契約につき,被告NECリースに対し,原告X2は8か月分の月額リース料を,原告X1は4か月分の月額リース料をそれぞれ支払った(別紙リース契約推移表の「既払いの月額リース料」欄の記載は,合計額。甲第9号証の1,2,弁論の全趣旨)。
本件2契約につき,被告ビジネスリースに対し,原告X2は2か月分の月額リース料を,原告X1は40か月分の月額リース料をそれぞれ支払った(別紙リース契約推移表の「既払いの月額リース料」欄の記載は,合計額。甲第9号証の1,2,弁論の全趣旨)。原告らは,平成20年12月29日に支払うべき月額リース料を支払わなかったため,未払いの月額リース料は,別紙リース契約推移表の「未払いの月額リース料」欄記載のとおりである(弁論の全趣旨)。
本件3契約につき,原告X1は,被告NECリースに対し,別紙リース契約推移表の「既払いの月額リース料」欄記載のとおり,36か月分の月額リース料を支払った(甲第9号証の2,丙第14号証)。原告らは,平成20年12月26日に支払うべき月額リース料を支払わなかったため,未払いの月額リース料は,別紙リース契約推移表の「未払いの月額リース料」欄記載のとおりである。被告NECリースは,原告X2に対し,平成21年5月16日到達の書面をもって,上記金額を同月29日までに支払うよう催告し,支払いがないときは本件3契約を解除する旨を通知したが,原告らはこれを支払っていない(丙第12号証,弁論の全趣旨)。
3  解除の意思表示
(一) メディアサポート1契約,本件1契約,本件2契約及び本件3契約には,いずれも特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)5条1項所定の書面の交付がなかった(弁論の全趣旨)。
(二) 原告X1は,被告NECリースに対し,平成21年5月,本件1契約につき,特定商取引法9条1項に基づき解除する旨の意思表示をした(甲第12号証)。
原告X1は,被告NECリースに対し,平成21年4月27日,本件3契約につき,特定商取引法9条1項に基づき解除する旨の意思表示をした(甲第14号証の1,2)。
(三) 原告X1は,被告ビジネスリースに対し,平成21年4月27日,メディアサポート1契約につき,特定商取引法9条1項に基づき解除する旨の意思表示をした(甲第22号証の1,2)。
原告X1は,被告ビジネスリースに対し,平成21年4月27日,本件2契約につき,特定商取引法9条1項に基づき解除する旨の意思表示をした(甲第13号証の1,2)。
4  取消しの意思表示
(一) 原告らは,被告NECリースに対し,本件訴訟手続において,消費者契約法4条2項に基づき,本件1契約及び本件3契約を取り消す旨の意思表示をした(顕著な事実)。
(二) 原告らは,被告ビジネスリースに対し,本件訴訟手続において,消費者契約法4条2項に基づき,メディアサポート1契約及び本件2契約を取り消す旨の意思表示をした(顕著な事実)。
5  取消しの意思表示
(一) 原告らは,被告NECリースに対し,本件訴訟手続において,民法96条1項に基づき,本件1契約及び本件3契約を取り消す旨の意思表示をした(顕著な事実)。
(二) 原告らは,被告ビジネスリースに対し,本件訴訟手続において,民法96条1項に基づき,メディアサポート1契約及び本件2契約を取り消す旨の意思表示をした(顕著な事実)。
二  争点及び争点に関する当事者の主張
1  不法行為
〔原告ら〕
(一) 被告西武通信又はメディアサポートの担当者は,原告X2の自宅を訪問し,原告らに対し,性能が高く新しい機械を導入すれば月額のリース料も割安になることを強調した一方,リース料総額が増加することを一切説明せず,電話機等について新たなリース契約を締結するよう勧誘して,本件各リース契約を締結させた。
しかし,真実は,本件各リース契約を締結するに際しては,いずれも既存のリース契約を解約し,結果的に解約金を上乗せした額について支払うこととなっており,原告らの負担するリース料総額は増額した。
被告西武通信又はメディアサポートの担当者は,訪問販売に際し販売者側に求められる商品に関する説明,リース契約を締結する場合のリース条件,従前のリース契約の解約に伴う処理の内容に関し適切な説明をせず,著しく不誠実かつ不正確な情報を提供することにより原告らを欺いて原告らにとって有利な契約である旨誤信させた。
原告らは,被告西武通信又はメディアサポートの担当者による虚偽の説明により,本件各リース契約を締結すればリース料が安くなり有利なものとなると誤信して,本件各リース契約を締結した。
(二) 被告NECリース及び被告ビジネスリースは,いずれもプロモーションリース契約に基づき,被告西武通信又はメディアサポートの意思及び行為を直接支配しているから,被告らは,一体となって共同行為を行ったということができる。
リース会社は,販売会社の販売促進行為を利用して利益を挙げている関係にある。
また,被告西武通信又はメディアサポートの担当者は,顧客が申し込むリース契約のリース料等重要な要素を決めている。
リース会社と販売会社の契約上,販売会社は,顧客の選別,リース条件の提示,リース契約書の交付等リース契約締結に関するほとんど全てを行っており,委任契約があるのと同視することができる。
(三) 一般的に販売会社は行き過ぎた販売促進行為を行いやすい状況にあったから,リース会社は,個別に顧客に接触して契約締結時の状況等を確認するなどして販売会社の行為を監督すべき義務があったのに,これをしなかった。
また,リース会社は,顧客に対し,リース契約の内容について説明すべき義務があるのに,被告NECリース及び被告ビジネスリースは,これを怠った。
(四) したがって,被告らについては共同不法行為が成立する。
〔被告NECリース〕
(一) 被告NECリースは,物件価格に従前のリース契約の残債務が含まれるとは知らなかった。物件の選定と価格の決定は,原告らと被告西武通信が協議して決定するもので,被告NECリースのようなリース会社は全く関与しない。
(二) 被告NECリースに調査義務又は監督義務があることは否認する。
(三) 被告NECリースと被告西武通信とは,全く別個の法人であり,資本的,人的,社会的にもなんら関連性がなく,リース物件の販売契約については利害関係が対立する存在である。
被告西武通信がリース契約締結を希望する顧客を斡旋し,リース契約申込みを取り次ぐとしても,それは,顧客が被告西武通信に依頼したものであり,リース契約の申込内容を決定するのは原告ら自身である。他方,これに対し,被告NECリースが与信について判断し,契約を不可とする案件も相当数存在する。
実際には,顧客が販売会社と極めて密接な関係を有していることが多いのであり,リース会社と販売会社とに一体関係や共同行為という実態は存しない。
顧客において導入する機器等に対する資金的手当てをどのようにするかは顧客の決定によるのであり,ファイナンス・リースを受けなければならないというものではないから,販売契約とリース契約とが不可分のものという関係にない。
〔被告ビジネスリース〕
(一) 被告ビジネスリースは,被告西武通信又はメディアサポートに対してリース契約締結について代理権を付与していない。原告ら主張の一体行為性は否認する。
被告ビジネスリースと販売会社との間の関係は,販売会社が販売する物件について,事業の用に供する目的でリースを希望する顧客のうち被告ビジネスリースが信用調査を行い承認した顧客に対し,販売会社からリース会社が物件を購入し,その顧客に対しリースするという内容の加盟店契約に過ぎない。
加盟店契約において,加盟店は,リース契約締結について代理人として申込みを受ける権限を付与されているわけではないし,リース契約締結についての事務や勧誘を委託されているわけでもない。加盟店契約は,主として,被告ビジネスリースと各加盟店との間のトラブル時の責任等を明確にするために締結されるのである。
(二) 販売会社の担当者と原告との間のやり取りについては否認する。被告ビジネスリースの義務については争う。
〔被告西武通信〕
原告らは,リース契約の仕組み等をよく知っていた。
被告西武通信担当者は,原告らに対し,契約に際し,きちんと契約内容の説明をし,理解を得た上で手続を進めており,何ら悪質なものではなく勧誘も不当なものではなかった。
被告西武通信の担当者は,原告らに対し,従前のリース契約に基づく残債を清算し,それを新規契約に合算することを説明した上で,リース契約の内容について詰めてから,契約書に署名押印をしてもらっている。
2  特定商取引法に基づく解除
〔原告ら〕
(一) 被告NECリース及び被告ビジネスリースは,販売会社(被告西武通信及びメディアサポート)に対し,業務提携をしてリース契約の勧誘及び同契約締結の取次を継続的に行わせていたところ,本件の各リース契約は,被告西武通信又はメディアサポートが原告らを訪問して勧誘したものであり,リース目的物の販売と一体をなすものであるから,被告NECリース及び被告ビジネスリースは,それぞれ,リース契約の勧誘から締結に至るまで被告西武通信又はメディアサポートの従業員をいわばその手足として利用したというべきである。原告らに対する関係において,販売会社の行為はすなわちリース会社の行為でもあり,両者の共同行為と評価するのが相当である。
したがって,被告NECリース及び被告ビジネスリースは,特定商取引法2条1項1号の役務提供事業者に当たり,本件各リース契約は,いずれも販売契約と一体として同法の訪問販売であるというべきである。
(二) 原告らの行っている塗装業はきわめて零細な企業であり,本件1契約及び本件3契約の目的物たるビジネスフォン,メディアサポート1契約の複合機を業務に関連して使用することは非常に少なく,本件2契約のパソコンに至っては皆無であった。
したがって,本件各リース契約は,原告らの営業のために若しくは営業として締結されたものではなく,特定商取引法26条1項1号の適用除外に該当しない。
〔被告NECリース〕
(一) 被告西武通信の原告X2に対する販売行為と,原告X2と被告NECリースとのリース契約は全く別個独立の法律関係である。
被告西武通信は,リース物件の販売業者であり,リース会社たる被告NECリースの代理人ではなく,単にリース契約の取次を申込者のために行っているに過ぎない。リース契約は,原告らと被告NECリースとの間で直接に成立するものである。
売買契約において,リース会社と販売業者とは利害相対立する関係にあり,リース会社が販売業者を指揮監督することはおよそできず,販売業者が服従することもない。
(二) 本件1契約及び本件3契約は,ファイナンス・リース契約であり,リース会社がユーザーに対して目的物購入代金の融資をするもので,金銭消費貸借契約の実質を有する。
したがって,被告NECリースは,特定商取引法にいう役務提供事業者ではない。
(三) 本件1契約及び本件3契約は,原告X2及び原告X1の営業のために締結されたものであるから,特定商取引法の適用は除外される。
〔被告ビジネスリース〕
(一) メディアサポート1契約及び本件2契約は,いずれも,原告らが営業のために締結したものであり,特定商取引法の適用が除外される。
(二) 被告ビジネスリースは,被告西武通信又はメディアサポートに対し,リース契約締結について代理権を付与していない。被告ビジネスリースが販売会社をいわば手足として利用していただとか,一体となった行為であるなどという主張は否認する。
(三) 特定商取引法上の指定役務及び訪問販売に当たることは争う。
3  消費者契約法に基づく取消し
〔原告ら〕
(一) 本件各リース契約の目的物は,原告らの行っていた塗装業の業務との関連性が極めて低いから,原告らは,事業のために本件各リース契約の当事者になったものではなく,消費者契約法2条1項規定の消費者に該当する。
(二) 本件各リース契約は,消費者契約法4条2項所定の事項があった。前記のとおり,被告NECリース及び被告ビジネスリースは,被告西武通信又はメディアサポートの従業員をいわばその手足として利用したのであるから,以下の行為は,いずれも被告NECリース又は被告ビジネスリースの行為である。
(1) メディアサポートの販売担当者は,平成16年7月8日,原告X2に対し,ネクサス2契約に基づくファクシミリを,新しくリース契約を締結して複合機に切り替えれば,安いリース料で高性能の機械を使用できるとのみ述べ,ネクサス2契約の解約手数料が上乗せされてリース料総額が増加することを一切説明せず,メディアサポート1契約が原告らにとって有利な契約であると誤信させた。
すなわち,メディアサポート担当者は,リース料及び商品の機能という重要事項について,利益となる旨を告げ,リース料増額という不利益事実を故意に告げなかったものであり,リース契約について理解を欠いていた原告X2は,その旨誤信した。
(2) 被告西武通信の販売担当者は,平成16年11月26日,原告X2に対し,電話機等に新たなリース契約を設定すれば毎月支払っているリース料が安くなること,3か月前に締結したばかりのメディアサポート2契約の目的物を被告西武通信が引き取り,下取り代として52万5000円を支払う旨を告げた。
そのため,原告らは,本件1契約を締結することが自己にとって利益となることばかりであると誤信した。
しかし,実際には,月額リース料は増額し,また,メディアサポート2契約の解約金が発生し,その解約金を本件1契約の代金に上乗せしているにもかかわらず,被告西武通信担当者は,これを原告らに告げなかった。
すなわち,原告らは,利益となる事実が存在するものと信じ,不利益な事実が存在しないものと誤認して,本件1契約を締結したものである。
(3) 原告らは,利用していない電話機についてネクサス1契約に基づきリース料を支払っていたところ,被告西武通信の販売担当者は,平成17年4月25日,ネクサス1契約を解約するために,新しくパソコンについてリース契約を締結する必要があること,そうすれば月額リース料が安くなることを告げたため,原告らはその旨信じた。
しかし,実際には,本件2契約によってはネクサス1契約は解約されず,原告らの支払う月額リース料は増大した。
すなわち,本件2契約の締結に際し,被告西武通信担当者は,ネクサス1契約を解約するために原告らが実際には利用しないパソコンについてリース契約を締結しなければならないと誤信させ,リース料が安くなると利益となる旨を告げ,結果的にリース料が増額するという不利益事実を故意に告げなかったものであり,原告らは,不利益事実が存しないものと誤信して本件2契約を締結した。
(4) 被告西武通信の販売担当者は,原告らに対し,平成17年11月16日,性能が高く新しい電話機等を導入すれば月額リース料が割安になることのみを強調して本件3契約を締結させた。被告西武通信担当者は,ネクサス1契約及び本件1契約を解約して解約金の負担が生ずることや,リース料総額や月額リース料が増加することについてあえて説明をしなかった。
原告らは,利益となるものと信じ,不利益事実が存在しないものと誤認して,本件3契約を締結したものである。
(三) 原告X1が,本件各リース契約が取り消し得べき行為であることを知ったのは,消費生活センターで相談をした平成20年12月16日又は平成21年1月16日である。
〔被告NECリース〕
(一) 原告X2及び原告X1は消費者ではないから,消費者契約法は適用されない。
(二) 被告西武通信担当者の言動については知らず,被告西武通信は被告NECリースの代理人でもないから,その問題は,被告西武通信と原告らにおいて解決されるべきものである。被告NECリースが原告ら主張のような行為を行ったことはない。
(三) 仮に,取消権が成立するとしても,原告X2は,本件1契約については平成16年12月8日から,本件3契約については平成17年12月1日から追認をすることができ,取消権は,それぞれ6か月の期間の経過に伴って時効消滅した。
〔被告ビジネスリース〕
(一) メディアサポート1契約及び本件2契約は,いずれも,原告らが事業のために締結したものであり,原告らは消費者に当たらない。
(二) 原告ら主張の販売会社担当者の言動については否認する。原告らは,リース料総額について了解していた。
(三) 被告ビジネスリースは,被告西武通信又はメディアサポートに対し,リース契約締結について代理権を付与していない。被告ビジネスリースが販売会社をいわば手足として利用していただとか,一体となった行為であるなどということはできず,不利益事実の不告知等の事実が仮にあったとしても,リース契約に適用になるものではない。
(四) 原告らは,○○塗装所の代表者変更に伴う地位承継に関する契約を締結する際,リース料総額を知ったが,それにもかかわらず同契約を締結した。したがって,原告らは,メディアサポート1契約の瑕疵を追認した。
また,原告らは,本件3契約においてネクサス1契約の解約を持ちかけられた時点で,ネクサス1契約が解約されていなかったこと,リース料が安くなっていないことに気付いたことは明らかである。しかし,原告らは,その後も本件2契約に基づくリース料を支払い続けたから,原告らは,本件2契約の有効性を追認したものである。
(五) また,取消権は6か月の時効に服するものであり,時効期間は優に経過しているから,被告ビジネスリースは,この消滅時効を援用する。
4  詐欺に基づく取消し
〔原告ら〕
(一) 前記のとおり,被告NECリース及び被告ビジネスリースは,被告西武通信又はメディアサポートの従業員をいわばその手足として利用したのであるから,以下の行為は,いずれも被告NECリース又は被告ビジネスリースの行為であって,同被告らは,第三者ではない。
(二)(1) メディアサポート1契約の締結状況は,前記のとおりであり,メディアサポート担当者は,リース料総額を敢えて示さずに隠し,解約するネクサス2契約の解約料を上乗せしてリース料を設定することも全く説明せず,リース料が得だとのみ申し向け,原告X2を欺いたものである。
(2) 本件1契約の締結状況は,前記のとおりであり,被告西武通信担当者は,商品の説明,リース条件,従前のリース契約の解約に伴う処理の内容に関して適切な説明をせず,不誠実かつ不正確な情報を提供することにより原告らを欺いたものである。
(3) 本件2契約の締結状況は,前記のとおりであり,被告西武通信担当者は,使用していない電話機にリース料を支払わないようにするためには新たにパソコンについてリース契約を締結しなければならないこと,本件2契約を締結すればリース料が安くなること等の虚偽の説明をすることにより原告らを欺いたものである。
(4) 本件3契約の締結状況は,前記のとおりであり,被告西武通信担当者は,実際にはリース料総額も月額リース料も増加するのに,月額リース料が月あたり2600円安くなると虚偽の事実を述べた上で,総額リース料が増加することをあえて伏せ,原告らを欺いたものである。
〔被告NECリース〕
被告西武通信に被告NECリースの代理権があること,あるいは,行為の一体性については否認する。
仮に被告西武通信につき欺罔行為があったとしても,被告NECリースは善意の第三者である。
〔被告ビジネスリース〕
(一) 否認する。
(二) 原告らは,本件3契約においてネクサス1契約の解約を持ちかけられた時点で,ネクサス1契約が解約されておらず,リース料が安くなっていないことに気付いたことは明らかである。しかし,原告らは,その後も本件2契約に基づくリース料を支払い続けたから,原告らは,本件2契約の有効性を追認したものである。
5  公序良俗違反による無効
〔原告ら〕
(一)(1) メディアサポート1契約にかかる目的物は,複合機であるところ,原告らは,ファクシミリ機能やコピー機能の使用頻度は低く,プリンタ,スキャナ機能については皆無であった。
本件1契約及び本件3契約にかかる目的物は,ビジネスフォンであるが,原告らの業務上必要のないものであった。本件2契約にかかる目的物は,パソコンであり,業務上の必要性は皆無である。
(2) メディアサポート1契約は,ネクサス2契約により設置された真新しいファクシミリを無意味に代替する契約であった。
また,本件1契約及び本件3契約は,不要な高機能のついた高額な電話機を無意味に入れ替えるだけの契約であった。
(3) 本件各リース契約のリース料総額は,各目的物の価格に比して非常に高額であり,被告らはこれらによって暴利を得ることを予定していた。
(4) メディアサポート及び被告西武通信の担当者は,訪問販売に際し販売者側に求められる商品に関する説明,リース契約を締結する場合のリース条件,従前のリース契約の解約に伴う処理の内容に関し適切な説明をせず,著しく不誠実かつ不正確な情報を提供することにより原告らを欺いた。
(5) 被告NECリース及び被告ビジネスリースは,原告らがリース料の返還を求めたのに対し,強硬な対応であった。
(二) 以上の事情に基づけば,本件各リース契約は,公序良俗に反し,無効である。
〔被告NECリース〕
物件の選択と価格の決定は,原告らと被告西武通信との間で合意されるものであり,被告NECリースは,これを尊重してリース契約を締結する。物件価格の実質的価値についての紛争は,原告らと被告西武通信との間で解決すべきである。
被告NECリースが暴利を得ていることは否認する。
〔被告ビジネスリース〕
ファイナンス・リース契約の性質は,実質的には,ユーザーのリース物件の購入資金の融資である。そのため,ファイナンス・リース契約においては,リース物件の選定・使用,代金額の決定は,販売会社と顧客との間で行われるのであって,リース会社はこれらに関わらず,販売会社と顧客との間の交渉によって決まったリース物件代金を融資するだけである。被告ビジネスリースは,原告らにとって目的物が不必要であったかどうかを知らない。
被告ビジネスリースが暴利を得ていることは否認する。
6  被告らの利得
〔原告ら〕
(一) 被告西武通信は,売買代金額から物件価格等を控除して計算すれば,本件1契約により140万0805円,本件2契約により21万2205円,本件3契約により393万7290円を利得した。
(二) 被告NECリースは,本件1契約により44万1000円,本件3契約により226万0440円の支払いを受けて利得した。
(三) 被告ビジネスリースは,メディアサポート1契約により216万4185円,本件2契約により99万2250円の支払いを受けて利得した。
第三  当裁判所の判断
一  争点1(不法行為)について
1  メディアサポート1契約
まず,原告らは,メディアサポート1契約の締結に当たって,メディアサポートの担当者が原告X2を欺いたと主張するが,これを認めることはできない。原告X2本人は,メディアサポート担当者が「うちの機械に替えれば,今までよりリース料金安くなりますよ。」と述べていたと供述するが,上記前提となるべき事実記載のとおり,メディアサポート1契約に基づく月額リース料は4万0845円であり,ファクシミリを目的とするネクサス2契約に基づく月額リース料である1万8900円より増額しているところ,甲第3号証の1,2によれば,原告X2は,月額リース料が明示されているリース申込書に署名押印してメディアサポート1契約を申し込んでいることが認められ,これに照らせば,原告X2本人の上記供述部分は採用することができない。
2  本件1契約
原告らは,本件1契約につき,被告西武通信の担当者が,メディアサポート2契約の解約手数料が販売代金に上乗せされていることを秘し,月額リース料が安くなることのみを強調して原告X2に契約を締結させたなどと主張し,甲第31号証にもこれに副う部分がある。また,原告X2本人は,被告西武通信担当者からリース料が安くなるということを言われたと述べ,また,原告X1本人は,被告西武通信と契約してくれればメディアサポートとの縁が切れると言われたと述べる。
しかし,甲第1,第4号証,第5号証の1,2,原告らの各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,原告X2は,昭和32年ころから○○塗装所という屋号で塗装業を営み,原告X1も昭和58年ころからこれを手伝っていたこと,本件1契約より前から事務用機器等についてリース契約を締結してリースを受けていたこと,メディアサポート2契約も本件1契約も,それぞれリース申込書には,月額リース料及びリース期間が明示的に記載されていたこと,すなわち,別途入金される52万5000円を度外視すれば,メディアサポート2契約に基づくリース料の支払いがなくなっても毎月のリース料が増額となることが明らかであり,かつ,リース料総額も単純な計算により容易に判明すること,原告X2は,上記リース申込書と同時に,メディアサポート2契約の清算処理について,被告西武通信に対して委任状を発行していることがそれぞれ認められ,これらに基づけば,原告X2本人の上記供述部分は採用することができないし,また,申込書に則ればリース料総額を比較することも容易であるから,被告西武通信担当者が,メディアサポート2契約の解約金を上乗せしていることについてことさらに秘し,あるいは虚偽を述べたと認めることもできない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
3  本件2契約
原告X1本人は,本件2契約につき,被告西武通信の担当者が,パソコンについて新規にリース契約を結べば,電話機がもう存しないのに原告らにおいてリース料のみを支払っていたネクサス1契約を解約することができ,これによって月額リース料の総額が安くなるという虚偽でありかつ不正確な説明を受けたと供述し,甲第30,第44号証には,これに副う記載がある。
しかしながら,上記前提となるべき事実及び弁論の全趣旨に基づけば,本件2契約の締結に伴ってネクサス1契約が解約されるに至らなかったことは明らかであり,リース料を毎月支払っている原告らにとってもそれは容易に判明することである。しかし,原告らが,原告X1本人の供述するように,ネクサス1契約に基づくリース料を支払い続けていることを気にしていたとすれば,本件2契約の後もネクサス1契約が解約されないことにつき,被告西武通信になんらかの確認あるいは督促をしたり抗議をしたりするのが当然であると考えられるところ,そうした形跡は見受けられない。これに基づけば,原告らにおいて,本件2契約締結に当たって,ネクサス1契約の帰趨について重視していたと考えることはできないから,被告西武通信の担当者が上記のとおり誤った説明をしていたとしても,これをもって不法行為の成立を肯定するには至らない。
4  本件3契約
原告X1本人は,本件3契約につき,被告西武通信の担当者が,月額リース料が安くなることについて不正確な説明をし,リース料総額について説明しなかったと供述し,甲第43号証にもこれに副う記載がある。
しかし,丙第7号証によれば,原告X1は,本件3契約の締結に当たって,被告NECリース及び被告西武通信との間で,本件1契約を中途解約し,これに伴う解約金債務が税抜き252万円であることを確認し,被告西武通信が支払う本件1契約の目的物の買取代金が上記解約金に充てられること合意したことが認められ,原告X1が解約金債務の存在を確認していたことは明らかである。そして,甲第8号証に基づけば,本件3契約についても,月額リース料及びリース期間は,リース申込書に明示されていることが認められ,長年塗装業を自営し切り盛りしてきた原告X2及びその後継者たる原告X1が,リース期間及びリース料総額につき一顧だにせず,従前のリース契約の解約金の捻出について思いを致すこともせず,月額リース料の多寡のみに着目して被告西武通信担当者の不正確な説明を鵜呑みにしてその旨誤信したとは到底考えられないところであって,原告X1本人の上記供述部分はその限りで採用することができず,この点に関する原告らの主張は理由がない。
二  争点2(特定商取引法に基づく解除)について
1  甲第9号証の1,2,第28,第31号証,原告らの各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨に基づけば,原告X2は,自宅に○○塗装所という看板を掲げて営業していたこと,平成17年ころ,原告X1に○○塗装所の代表者たる地位を承継させ,対外的契約名義や銀行口座名義も変更し,その後は,原告X1が中心となって○○塗装所を経営していること,ただし,原告X2も仕事を継続していること,原告X2の自宅には作業所が存し,資材,塗料,道具類等が保管されており,消防署に少量危険物貯蔵取扱所の届出をしていること,事務机が設置され,メディアサポート1契約にかかる複合機,本件3契約にかかる電話機が置かれ,書類棚があり,ホワイトボード及びカレンダーで月間予定が管理されていること,本件3契約にかかる子機や電話機は,応接間と目される部屋及び2階の自宅部分たる和室に置かれていること,○○塗装所は,原告X2の妻を従業員とし,また,従前は,従業員を雇用していたこと,最盛期(平成年代)には優に年商2000万円以上に達しており,その後も,平成16年には1800万円の売上げを挙げ,平成17年には1300万円の売上げを挙げていたことが認められる。
2  しかるに,これらの事情を前提として,メディアサポート1契約の目的物は複合機であって,ファクシミリ,プリンタ,コピー機等の機能を有するものであること,本件1契約及び本件3契約の目的物はいわゆるビジネスフォンであること,本件2契約の目的物は,パソコン及び企業の経理処理をする基幹業務ソフトウェアであることに基づけば,本件各リース契約は,原告X2が自営の塗装業の営業のために締結した取引であると推認されるから,特定商取引法26条1項1号に基づき,同法の適用は除外されるというべきである。
原告らは,業務上,電話機及び複合機をほとんど使用していないこと,パソコンの利用は皆無であることを主張し,原告ら本人も同旨の供述をし(甲第30,第31号証も同旨。),証人Dの証言によれば,本件2契約の目的物であるパソコンは,ソフトウェアこそ導入されているものの現実に利用されていなかったことが窺われるが,上記認定の○○塗装所の経営の実態を前提として,電話機及び複合機は○○塗装所の作業所部分に設置され,その性質上業務上利用されているものと推認されること,パソコンに導入された基幹業務ソフトウェアは,個人が事業を離れて生活上利用する類のものとは考えられず,○○塗装所の代替わりに伴い,原告X1において経理システムを刷新しようと考えたとしてもあながち不自然でないことに照らせば,上記のとおり認定するのが相当である。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件各リース契約につき特定商取引法上の訪問販売に当たるとして,その解除をいう原告らの主張は理由がないことに帰する。
三  争点3(消費者契約法に基づく取消し)について
上記判示に基づけば,原告らは,個人ではあるものの,自営の塗装業の事業のために本件各リース契約の当事者となった場合に当たるというべきであるから,消費者契約法2条1項に基づき,本件各リース契約につき同法の適用を受けないことが明らかである。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,この点に関する原告らの主張もまた理由がない。
四  争点4(詐欺に基づく取消し)について
争点1に関し,上記一においてした判示に基づけば,本件各リース契約の締結につき,メディアサポート担当者及び被告西武通信担当者において,本件各リース契約の締結と因果関係のある欺罔行為があったと認めることはできないから,詐欺の成立をいう原告らの主張は理由がない。
五  争点5(公序良俗違反による無効)について
1(一)  上記前提となるべき事実に基づけば,メディアサポート1契約は,ネクサス2契約を解約して目的物を入れ替えるもの,本件1契約は,メディアサポート2契約を解約して目的物を入れ替え,本件3契約は,さらに本件1契約及びネクサス1契約を解約して目的物を入れ替えるものであったところ,これらリース契約の約定に基づけば,契約を中途で解約するとその時点での残リース料全額を支払うべき義務が生ずるものであって,繰上弁済により手数料分が割り戻される性質のものでないことから,これを新たなリース契約の販売価格に上乗せすることは,目的物の利用者たる顧客にとって経済的不利益が大であるということができる。
そして,特に本件1契約は,先行するメディアサポート2契約がわずか約3か月前に締結された契約であることに鑑みると,それ自体として原告らにとってどの程度の意味があったかについては疑問なしとしない。
(二)  しかし,メディアサポート1契約は,先行するネクサス2契約から2年を過ぎており,目的物も高機能になっていることが明らかである。
また,証人Eの証言及び原告らの各本人尋問の結果によれば,原告らは,メディアサポートの担当者の態度等を嫌い,同社との付き合いを止めたいと強く希望していたことが認められ,本件1契約は,メディアサポート2契約を解約し,同社との関係を断つことを主たる目的としたものと推認されるから,上記経済的合理性のみからその必要性をはかることは相当でない。
(三)  そして,本件各リース契約の目的物につき,業務上一定程度の有用性を見込むことができるのは,前記のとおりである。
また,上記前提となるべき事実及び乙第2号証に基づけば,被告らが本件各リース契約によって得る利益をもって暴利ということは到底できない。
本件各リース契約の締結時の説明状況については,上記で判示したとおりであり,一部不正確と考えられる部分があるものの,原告らの手元に控えが残されたリース申込書の記載等に照らせば,それが著しく不誠実であるとか,著しく重大であるということはできない。
2  以上の諸事情を総合的に考慮すれば,本件各リース契約が公序良俗に反しその効力を否定すべきであるとまでは認めることができない。
したがって,この点に関する原告らの主張もまた理由がない。
六  結論
以上のとおりであるから,原告らの本訴請求は理由がないから棄却すべきであり,前記前提となるべき事実に基づけば,被告ビジネスリースの甲事件反訴請求及び被告NECリースの乙事件反訴請求はいずれも理由があるから認容し(なお,丙第8,第9号証に基づけば,目的物と納入物との型番が異なっていたとしても,原告X2において引渡しを確認していることが認められるから,リース料請求権を肯定することができる。),主文のとおり判決する。
(裁判官 永山倫代)

 

〈以下省略〉

 

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