平22(ワ)12402号 原状回復請求事件

裁判年月日  平成22年11月11日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)12402号
事件名  原状回復請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2010WLJPCA11118015

要旨
◆原告らが、被告との間で、それぞれインターネットを利用した副業に関する業務委託及び商品供給基本契約を締結し、代金を支払ったところ、本件各契約は、特定商取引法51条の定める業務提供誘引販売取引に該当すると主張して、クーリングオフによる原状回復請求権に基づき代金の返還等を求めた事案において、本件各契約は、特定商取引法51条の定める業務提供誘引販売取引に該当し、本件各契約は原告らの解除の意思表示により、解除されたものと認められるとし、原状回復請求権に基づき本件各契約に基づき支払った代金の返還等を求めることができるとして請求をすべて認容した事例

参照条文
特定商取引に関する法律51条

裁判年月日  平成22年11月11日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)12402号
事件名  原状回復請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2010WLJPCA11118015

滋賀県甲賀市〈以下省略〉
原告 X1
千葉県松戸市〈以下省略〉
原告 X2
青森県弘前市〈以下省略〉
原告 X3
神奈川県川崎市〈以下省略〉
原告 X4
山形県酒田市〈以下省略〉
原告 X5
上記5名訴訟代理人弁護士 神田知宏
東京都台東区〈以下省略〉
被告 株式会社サイト
同代表者代表取締役 A

 

 

主文

1  被告は,原告X1に対し,100万円及びこれに対する平成21年10月2日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
2  被告は,原告X2に対し,180万円及びこれに対する平成21年11月11日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
3  被告は,原告X3に対し,50万円及びこれに対する平成21年11月2日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
4  被告は,原告X4に対し,85万円及びこれに対する平成22年1月15日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
5  被告は,原告X5に対し,85万円及びこれに対する平成22年2月23日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
6  訴訟費用は,被告の負担とする。
7  この判決は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
主文と同旨
第2  事案の概要
本件は,原告らが,被告との間で,それぞれインターネットを利用した副業に関する業務委託及び商品供給基本契約(以下「本件各契約」という。)を締結し,代金を支払ったところ,本件各契約は,特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)51条の定める業務提供誘引販売取引に該当すると主張して,クーリングオフによる原状回復請求権に基づき,代金の返還及びこれに対する原告らが代金を支払った日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による利息の支払を求めた事案である。
1  原告らの主張(請求原因)
(1)  被告は,インターネットホームページの企画,制作等を目的とする株式会社である。
(2)  本件各契約の締結と代金の支払
ア 原告X1は,平成21年10月2日,被告との間で業務委託及び商品供給基本契約を締結し,同日,被告に対し,100万円を支払った。
イ 原告X2は,平成21年11月1日,被告との間で業務委託及び商品供給基本契約を締結し,同月4日及び同月11日,被告に対し,合計180万円を支払った。
ウ 原告X3は,平成21年11月2日,被告との間で業務委託及び商品供給基本契約を締結し,同日,被告に対し,50万円を支払った。
エ 原告X4は,平成22年1月15日,被告との間で業務委託及び商品供給基本契約を締結し,同日までに被告に対し,85万円を支払った。
オ 原告X5は,平成22年2月18日,被告との間で業務委託及び商品供給基本契約を締結し,同月19日及び同月23日,被告に対し,合計85万円を支払った。
(3)  業務提供誘引販売取引について
被告が取り扱っている副業システムは,いわゆるドロップシッピングと呼ばれる形態のネットショップであり,顧客からネットショップに注文が入った際,メーカー等から顧客に対して商品を直送する運営形態のものである。
被告は,上記副業システムにおいて,ネットショップのホームページ開設,集客,広告の掲載,検索効果の向上対策,商材仕入及び商品発送の業務を分担する一方で,原告らに対し,販売商品の選択及び価格決定,顧客からの受注及び入金確認及び被告への発送依頼等の業務を提供しており,被告と原告らとが一体となってインターネット通信販売事業を運営している。
そして,被告は,原告らが上記業務に従事することにより,商品の仕入代金と販売代金の差額が利益になるとして,原告らを誘引し,プラン別の代金を設定して,原告らと本件各契約を締結した。
このように被告は,消費者に対し業務を提供し,これに従事すれば利益が得られると勧誘して,ネットショップの運営に係る本件各契約を締結して対価を得る事業を行っていることから,本件各契約は,特定商取引法51条の定める業務提供誘引販売取引に該当する。
なお,平成22年3月1日,東京都は,ドロップシッピングサービス事業者である訴外2社について,業務提供誘引販売取引を行う事業者であることを前提に,特定商取引法違反による業務停止命令を行った。
(4)  原告らは,提供される業務を事業所等によらないで行う個人である。
(5)  被告は,原告らに対し,法定の契約書面(特定商取引法55条2項)を交付していないから,同法58条の定めるクーリングオフの期間は経過していない。
(6)  原告らは,本件訴状をもって,被告に対し,各業務委託及び商品供給契約を解除する旨の意思表示をした。
2  被告の認否・反論
(1)  原告らの主張(1)は認める。
(2)  同(2)は,争うことを明らかにしない。
(3)  同(3)ないし(5)は,否認ないし争う。
本件各契約は,特定商取引法51条の定める業務提供誘引販売取引には当たらないため,同法58条によるクーリングオフは認められない。
すなわち,被告の行うドロップシッピング・サービスにおいては,原告らショップオーナーがネットショップの販売主体であって,被告は,ネットショップのためのウェブサイト制作等を行い,原告らをサポートするだけであるから,原告らに対し,同法51条の定める業務を提供又はあっせんするものではない。
原告らも,被告との間の契約が業務提供誘引販売取引に当たらないことを前提に,本件各契約の第12条において,クーリング・オフの適用除外が規定されていることを了解していたものである。
第3  当裁判所の判断
1  原告らの主張(1)については,当事者間に争いがなく,同(2)については,被告が争うことを明らかにしないから,これを自白したものとみなす。
2  同(3)について
(1)  証拠(甲1ないし14)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告が原告らに提供していた副業システムは,いわゆるドロップシッピングを組み込んだビジネスモデルである。ドロップシッピングとは,インターネット上のネットショップに注文が入った時点で,それをメーカーや卸売業者から直送させるネットショップの運営方法の一形態であり,商品提供業者の卸値に上乗せして販売し,差額分がネットショップの利益となるものである。
イ 被告は,上記副業システムにおいて,ネットショップの商号,インターネットにおけるドメイン名及びネットショップのデザイン等について,原告らの企画を受け入れた上で,被告においてドメイン名の所有者・登録者となり,ネットショップの制作を行っていた。
そして,制作されたネットショップにおいては,集客,商材仕入及び商品発送のほか,販売商品の選択,価格決定,顧客からの受注,入金確認及び発送依頼等の業務が発生するところ,被告は,集客,商材仕入及び商品発送を主に担当し,それ以外の業務について,ネットショップの企画を行った原告らに提供するものとしていた。
ウ 被告は,原告らが,上記ネットショップの業務を行うことにより,商品の仕入代金と販売代金の差額が利益になるとして,原告らを誘引した。
なお,被告は,そのウェブページ(甲1)において,「安心×簡単×ローリスクで稼ぐという新しい副業。インターネットビジネスのプロが実践する0からの徹底サポート。」「従来のインターネットショップ オーナー様のお店を,オーナー様1人で運営。」「サイトのインターネットショップ オーナー様のお店を,オーナー様とサイトで運営。」「販売価格-卸価格=オーナー様利益 手数料0で利益100%還元」と記載するなどしている。
エ 被告は,ネットショップの企画受入れ及び制作について,プラン別の代金を設定しており,原告らは,上記第2の1(2)記載のとおり,被告との間で本件各契約を締結した上,被告に対して代金を支払った。
(2)  上記認定事実によれば,本件各契約については,特定商取引法51条の定める業務提供誘引販売取引に該当するというべきである。
被告は,被告の行うドロップシッピング・サービスにおいては,原告らがネットショップの販売主体であることなど上記第2の2(3)記載の事情を指摘するが,それらの事情を考慮しても,上記結論を左右するものではない。
3  同(4)(5)は,証拠(甲8ないし12)及び弁論の全趣旨により認められる。
4  同(6)は,当裁判所に顕著である。
以上によると,本件各契約は,原告らの解除の意思表示により,解除されたものと認められるから,原告らは被告に対して,それぞれ原状回復請求権に基づき,本件各契約に基づき支払った代金の返還及び原告らが代金を支払った日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による利息の支払を求めることができる。
第4  結論
よって,原告らの請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 加本牧子)

 

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