平21(ワ)12号 リース料等請求事件

裁判年月日  平成22年 3月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)12号
事件名  リース料等請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2010WLJPCA03308035

要旨
◆原告が、被告との間で電話機のリース契約を締結した訴外会社から、上記契約に係るリース料債権の回収業務を受託されたことに基づき、被告に対し、残リース料の支払を求めた事案において、本件リース契約に係る契約書は、ルーリング・オフに関する記載に欠ける以上、特商法5条所定の法定書面に当たらないところ、被告は、そのほかに法定書面に該当する文書を受領していないから、同法9条所定のクーリング・オフにつき法定の行使制限期間は進行していないのであり、本件リース契約は被告のクーリング・オフ権利の行使により、有効に解除されたなどとして、請求を棄却した事例

参照条文
特定商取引に関する法律9条

裁判年月日  平成22年 3月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)12号
事件名  リース料等請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2010WLJPCA03308035

東京都豊島区〈以下省略〉
原告 ジェーピーエヌ債権回収株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 長島良成
同 伊藤健一郎
同 淺沼貞光
茨城県つくば市〈以下省略〉
被告 Y
同訴訟代理人弁護士 大塚陵

 

 

主文

1  原告の請求を棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告は,原告に対し,金71万5728円及び内金55万5000円に対する平成20年6月26日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告が,被告との間で電話機のリース契約を締結した訴外株式会社クレディセゾン(以下「訴外会社」という。)から,上記契約に係るリース料債権の回収業務を受託されたことに基づき,被告に対し,残リース料及び遅延損害金の支払を求める事案である。
1  当事者間に争いのない事実
(1)  原告は,法務大臣の許可(許可番号・法務大臣第34号)を受け,債権回収を業とする債権回収会社である。
(2)  原告は,平成14年4月17日,訴外会社から債権の回収業務を受託した。
(3)  訴外会社は,被告との間で,平成17年12月14日,下記内容のリース契約を締結し(以下「本件リース契約」という。),同日ころ,下記リース物件を引き渡した。
ア リース物件(以下「本件リース物件」という。)
NTT AX 主電話機,CL
イ リース期間
平成17年12月14日から平成24年12月13日まで
ウ リース料総額(消費税含む。)
66万1500円
エ 消費税
月額リース料に5.0パーセントを乗じた金額
オ 支払方法(消費税含む。)
平成18年2月4日限り金1万5750円
平成18年3月から平成24年12月まで毎月4日限り金7875円(82回払い)
カ 期限の利益喪失条項
被告がリース料の支払を一回でも怠ったときは,訴外会社は何らの催告を要せず本件リース契約を解除することができ,被告は,催告なくして当然に期限の利益を失い,残リース料総額を直ちに訴外会社に支払う。
キ 遅延損害金率
年14.6パーセント(年365日とする日割計算)
(4)  被告は,平成18年11月4日支払期限の支払を怠ったので,期限の利益を喪失した。
(5)  被告は,別紙のとおり,本件リース料につき平成18年10月4日までに7万8750円を支払ったのみで,その余の支払をしない。
2  争点
(1)  解除の成否
(被告の主張)
ア 本件リース契約は,特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)2条1項1号の「訪問販売」に当たるところ,被告は,上記契約につき同法5条所定の法定書面を受領していないから,同法9条1項に基づき,クーリング・オフの権利を行使し,上記契約を解除する。
イ 被告は,本件リース物件である電話機をほとんど個人用又は家庭用として使用していたから,特商法26条1項1号の適用除外には当たらない。
(原告の主張)
ア 本件リース契約では,実際に被告を訪問し,被告から契約の申込みを受けたのは訴外パーソナル電電株式会社(以下「パーソナル電電」という。)の担当者であるから,仮に訴外会社が「役務提供事業者」に当たるとしても,実際に営業所等以外の場所で契約の申込みを受けた者と「役務提供事業者」が異なり,同一の主体ではないこととなる。したがって,本件リース契約は「訪問販売」に該当しない。
イ ①本件リース物件はビジネス用の電話機であり,一般の個人用・家庭用としてではなく,事業用として使用されることを予定した機器であること,②被告は,本件リース契約の締結時はもちろん,現在も「ヘアースタジオCutDo」の屋号で理容室を営んでおり,その事業活動の性質上,顧客からの予約・問い合わせ等に対応するために電話機が必要であること,③実際,インターネット上に被告の電話番号を掲載しており,被告にとって電話機は,営業上,必要不可欠の機器であること,④本件リース物件である電話機は,店舗スペース付近に設置されていたこと等の事情からすれば,本件リース契約は,「営業のために若しくは営業として」締結されたものであることは明らかであるから,特商法26条1項1号が適用され,同法9条1項の適用はない。
(2)  相殺の成否
(被告の主張)
一般に,契約当事者間においては,互いに相手方に不測の損害を与えぬよう配慮すべき信義則上の注意義務があるところ,特に契約当事者間に情報や交渉力に格差がある場合には,商品等につき知識・経験等を有する一方当事者が,他方当事者に対し,商品等について調査し説明する義務があるというべきである。そして,本件リース料総額は,本件リース物件である電話機の定価ないし市場販売価格に比して著しく高額であるところ,訴外会社は,本件リース料総額が不適切であることについて調査・説明すべき義務を負っているのに,本件リース契約締結に当たって,その義務に違反したことから,被告に対し本件リース料総額に相当する損害の賠償責任を負うというべきである。
そこで,被告は,原告に対し,本件第5回弁論準備手続期日において,上記損害賠償請求権と本訴請求権を対当額で相殺する旨の意思表示をした。
(原告の主張)
本件リース料総額は著しく高額ではなく,被告の主張は前提事実を誤るものである。また,訴外会社には信義則上の注意義務はない。
(3)  信義則による支払拒絶の成否
(被告の主張)
本件リース契約締結及びその後の経緯のほか,本件リース物件が十全に使用できるものではなかったこと等に照らせば,訴外会社が被告に対し本件リース料を請求することは信義則に反する。
(原告の主張)
被告は,訴外会社から本件リース物件の借受確認があった際,何ら異議を述べず,本件リース契約についても,既に10回分,合計7万8750円のリース料を支払っているにもかかわらず,残リース料の支払を拒絶することこそ,信義則に反する。
第3  当裁判所の判断
1  本件事実関係について
上記当事者間に争いのない事実のほか,証拠(甲5,乙16,証人B,被告本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次のような事実が認められる。
(1)  本件リース契約締結の経緯
ア 被告は,本件リース契約の締結前,電器店で購入したNTT製のファックス付き電話機を使用していたが,同電話機には繋がりにくくなる等の不具合があった。
イ そのような状況で,パーソナル電電から勧誘の電話があり,その担当者であるB(以下「B」という。)は,平成17年11月16日ころ,被告方を訪問した。
その際,Bは,被告に対し「メンテナンスをしっかりやりますので,うちの電話機は調子悪くなることはありません。」などと述べて勧誘した。被告は,電話機の故障に手を焼いていたことから,メンテナンスがしっかりしているなら毎月のリース料を支払うのもやむを得ないと考え,本件リース契約を申し込むことにした。
ウ 被告は,本件リース物件の納品を受けて間もなく,ファックスに不具合が生じたにもかかわらず,パーソナル電電が速やかに対応しないので,訴外会社から契約の意思確認の電話があった際,本件リース契約を解約する旨述べた。
その後,Bが,平成17年12月14日,被告宅に来て「今後はメンテナンスをしっかりやるので,リースを継続してほしい。」などと述べ,その旨の書面(乙9)を作成したことから,被告は,訴外会社から再度確認の電話があった際,本件リース契約に応じると答えた(甲2)。
(2)  本件リース契約締結後の状況
本件リース契約締結後も,コードレスホンの充電ができず,液晶ディスプレイの窓枠部分が外れる不具合が生じたので,被告は,不具合が生じる度にパーソナル電電にメンテナンスを依頼したが,なかなか修理に訪れることはなく,ようやく来た修理業者も,窓枠部分を接着剤で貼り付けたため,かえって液晶ディスプレイが見えなくなる結果を招いたほか,最後に被告が交換用に提供したコードレスホンは中古品であった(乙10)。
被告は,メンテナンスに係る当初の約束が果たされていないと考え,平成18年10月を最後にリース料の支払を止め,パーソナル電電に対し抗議するため,同年12月19日付けの内容証明郵便(乙11)を送った。
被告は,リース料の支払を止めた後,本件リース物件の使用を止めて,市販の一般用電話機(親機とコードレスの子機)を使用している。
(3)  被告の理容業の営業実態等
ア 被告は,3階建ての自宅において,次女及び孫と3人で暮らしているところ,その1階の一部で理容店を営み,2階及び3階を居住部分として利用しているが,本件リース物件のうち主電話機は1階の理容店付近に設置され,コードレスホンは2階の居間に置かれていた(乙2)。
イ 被告の理容業による売上げは,本件リース契約締結当時の平成17年において65万1300円(乙3,22),平成18年において95万2550円(乙4),平成19年において64万1300円(乙5)であって,少額にとどまっており,被告ら家族の生計は,主として被告の夫(単身赴任中)と次女の給与収入に頼っていた。
被告は,理容業以外にも,酵素風呂の営業をやっていた時期もあるが,本件リース契約を締結した前後には,酵素風呂の営業を止めていた(被告本人8,9頁)。
2  争点(1)について
(1)  上記1で認定した本件事実関係によれば,被告は,従前使用していた家庭用電話機の交換を目的として,本件リース契約を締結したものであるところ,ビジネス用の機能が満載な本件リース物件(甲6)を利用するに適した理容業等の営業実態を有するものでもないのに,電話機のメンテナンスを期待できるなどと本件リース契約の必要性を誤解して,本件リース契約を締結したものである。
したがって,上記第2の2(1)の原告の主張イ①ないし④の各事情を考慮しても,本件リース契約が「営業のために若しくは営業として」締結されたものとは認めるに足りないというべきである。
(2)  次に,本件リース契約においては,契約を直接勧誘したのがリース会社の従業員ではなく,リース物件の販売業者であるが,本件事実関係を総合してみれば,一つの訪問販売を形成していることから,本件リース契約は特商法2条1項1号の「訪問販売」に該当するものと解される(乙6,7)。
そして,本件リース契約に係る契約書(甲1)は,クーリング・オフに関する記載に欠ける以上,特商法5条所定の法定書面に当たらないところ,被告は,そのほかに上記法定書面に該当する文書を受領していないから,同法9条所定のクーリング・オフにつき法定の行使制限期間は進行していない。
そうすると,被告がクーリング・オフの権利を行使したのは当裁判所に顕著であるから,本件リース契約は有効に解除されたものと認められる。
3  結論
よって,原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判官 上拂大作)

 

〈以下省略〉

 

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