平20(ワ)19096号 解約金等請求事件

裁判年月日  平成22年 2月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)19096号
事件名  解約金等請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2010WLJPCA02268027

要旨
◆原告が被告らに対し、被告Z寺との間で電話機等のリース契約を、被告Y1との間で同契約に係る連帯保証契約を締結していたが、被告らからリース料の支払がなかったので当該リース契約を解除したなどと主張し、上記各契約に基づき、約定の解約金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案において、被告は、各契約につき、詐欺取消し、錯誤無効、クーリングオフ等の主張をしたが、内容虚偽の説明等は認められないとして詐欺取消し等の主張を排斥し、また、被告Z寺はその営業のために当該リース契約を締結しており特商法の適用除外事由が認められるとして、クーリングオフの主張も排斥し、請求を全部認容した事例

参照条文
民法1条3項
民法95条
民法96条
特定商取引に関する法律2条4項
特定商取引に関する法律9条1項
特定商取引に関する法律26条1項1号

裁判年月日  平成22年 2月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)19096号
事件名  解約金等請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2010WLJPCA02268027

東京都港区〈以下省略〉
原告 NTTファイナンス株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 黒川浩志
同 松田孝彦
同 中前佑一
熊本県人吉市〈以下省略〉
被告 瑞祥寺
同代表者代表役員 Y1
熊本県人吉市〈以下省略〉
被告 Y1
被告ら訴訟代理人弁護士 吉田哲也

 

 

主文

1  被告らは,原告に対し,連帯して,186万5430円及びこれに対する平成19年1月26日から支払済みまで年14.5%の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告らの負担とする。
3  この判決の第1項は仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  事案の概要
本件は,原告が被告らに対し,被告瑞祥寺(以下「被告寺」という。)との間で電話機等のリース契約を,被告Y1(以下「被告Y1」という。)との間で同契約に係る連帯保証契約を締結していたが,被告らからリース料の支払がなかったので当該リース契約を解除したなどと主張して,上記各契約に基づき,約定の解約金及びこれに対する催告による弁済期の翌日から支払済みまで約定の利率による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1  争いのない事実
(1)  原告は,平成17年1月17日,被告寺との間で,次の内容のファイナンス・リース契約をし(以下「本件リース契約」という。),同日,リース物件の引渡しを完了した。
① リース物件 NTT αGX TYPE-S(以下「本件電話機セット」という。)
主装置 1台
標準電話機 2台
コードレス 3台
竹中セキュリティーシステム(以下「本件セキュリティ装置」といい,本件電話機セットと合わせて「本件リース物件」という。)
コントローラー 1台
パッシブセンサー 4
マグネット 10
② リース期間 84か月
③ 月額リース料 2万8200円(消費税相当額を除く)
④ 総リース料 236万8800円(消費税相当額を除く)
⑤ 支払方法 平成17年2月25日から毎月25日銀行口座からの自動引落し(ただし初回は2回分)
⑥ 契約の解除 原告は,被告寺がリース料の支払を1回でも怠った場合,催告を要せず通知により契約を解除することができる
⑦ 解約金 契約が解除されたときは,被告寺は原告に対し,リース料残額全部を即時に支払う
⑧ 遅延損害金 年14.5%の割合
(2)  原告は,平成17年1月17日,被告Y1との間で,本件リース契約に基づき被告寺が負担する一切の債務について,被告Y1が連帯保証する旨の契約をした(以下「本件連帯保証契約」という。)。
(3)  被告寺は,本件リース契約に基づく平成18年10月25日請求分のリース料の支払をしなかった。
原告は,平成19年1月18日ころ被告寺に到達した書面をもって,被告寺に対し,その当時の滞納リース料8万8830円(消費税相当額を含む)について,同月25日までに支払うよう催告するとともに,催告による弁済期が経過した時に本件リース契約を解除する旨の意思表示をした。
しかるに,上記の弁済期は滞納リース料の支払のないままに経過した。
2  争点
(1)  詐欺取消し,錯誤無効,権利濫用,暴利行為
(被告らの主張)
本件リース物件の取扱店である株式会社テレウェイヴリンクス(以下「テレウェイヴリンクス」という。)の営業担当社員であるB(以下「B」という。)は,平成16年11月初め,被告Y1方を訪問し,被告Y1に対し,「今後は全てIP電話に移行するので,現在使用している電話機は使えなくなるので,交換が必要である。」,「当社とリース契約し,電話機を交換すれば,IP電話も利用できるし,法人のために現在と比べて基本使用料及び通話料が大幅に安くなるので,毎月のリース費用を考慮しても通信コスト全体としては現在よりも安くなる。」などと説明した。
Bの上記説明は,全く根拠のない虚偽のものであったが,被告Y1は,その内容を真実であると誤信し,本件リース契約及び本件連帯保証契約の締結に至った。
なお,本件リース物件の種類,仕様,価格等のリース契約の諸条件についての顧客に対する説明と確定の作業は,原告がすべていわゆる取扱店であるテレウェイヴリンクスに委ね,原告は,事後的に,しかも書類審査を行うにすぎないのであり,このような原告とテレウェイヴリンクスとの密接な関連性にかんがみれば,テレウェイヴリンクスの社員であるBの行為は,原告の行為と同じであると評価すべきである。
そこで,被告らは,平成20年12月12日の本件口頭弁論期日において陳述したものとみなされた同年8月20日付け準備書面をもって,原告に対し,上記の詐欺を理由に本件リース契約及び本件連帯保証契約を取り消す旨の意思表示をした。
また,以上の次第で,本件リース契約及び本件連帯保証契約は錯誤により無効である。
さらに,以上のような契約締結に至る経過や原告と取扱店との関係等からすれば,原告の本訴請求は権利濫用であり,本件リース料の設定自体も暴利行為に該当するのものであるから,本訴請求は許されない。
(原告の主張)
原告は,テレウェイヴリンクス及びその社員とは別個の法人格を有しており,Bなる人物の行為が原告の行為と同じであると評価されることなどあり得ない。
その余の被告らの主張も否認ないし争う。
(2)  クーリングオフ
(被告らの主張)
① 本件リース契約は,「電話機及びファクシミリ装置」及び「火災警報器、ガス漏れ警報器、防犯警報器その他の警報装置」である本件リース物件を「貸与」するものであるから,特定商取引に関する法律(以下「法」という。)2条4項,同法施行令(以下「施行令」という。)3条3項,別表第3の2号ニ及びトの指定役務の提供契約に当たる。
また,本件リース契約に関して,契約を締結し役務を提供する事業者と訪問して契約の締結について勧誘する者とは複数いるが,総合してみれば,一つの訪問販売を形成しているというべきであるところ,このような場合には,訪問販売による消費者被害を防止しようとした法の趣旨に照らせば,契約の締結について勧誘する者が契約の申込書を受領した時点で,役務提供事業者が契約の申込みを受けたと解するべきであるから,原告は,その「営業所等以外の場所において契約の申込みを受けた」ものである。
以上のとおり,本件リース契約は,法所定の訪問販売であるところ,被告寺は,本件リース契約について法4条所定の書面の交付を受けていない。
そこで,被告寺は,原告に平成18年9月29日ころ到達した書面をもって,原告に対し,法9条1項に基づき本件リース契約を解除する旨の意思表示をした。
そうでないとしても,被告寺は,平成20年12月12日の本件口頭弁論期日において陳述したものとみなされた同年10月1日付け準備書面をもって,原告に対し,法9条1項に基づき本件リース契約を解除する旨の意思表示をした。
② なお,法26条1項1号の適用除外事由に関して,一見事業者名で契約を行っていても,購入商品や役務が,事業用というよりも主として個人用・家庭用に使用するためのものであった場合は,同項の適用はないというべきところ,被告Y1方は,寺院部分と一体となっており,固定電話は本件電話機セットの電話機のみであって,寺という事業の性質上,固定電話を大量に利用して電話をかけてたり,あるいは大量に電話がかかってくることはそもそもなく,概ね,被告Y1及び家族の使用のために利用されている。本件セキュリティ装置についても,被告寺の事業は,宗教法人としての活動であり,その実態からしても,零細事業者といってよい。そうすると,本件リース契約は,「営業のために」締結するものに当たらない。
(原告の主張)
① 本件リース物件のうち本件セキュリティ装置は,そもそも法所定の指定商品にも指定役務にも該当しない。
また,本件リース契約は,ファイナンス・リースであり,その実体はユーザーに対する融資であるから,施行令3条3項,別表第3の2号の「貸与」には当たらない。
原告が本件リース契約につき被告寺からの申込みの意思表示を受けたのは,原告の営業所であり,営業所等以外の場所でこれを受けたのではない。
したがって,本件リース契約は法所定の訪問販売には当たらない。
なお,被告寺が,原告に平成18年9月29日ころ到達した書面をもって,原告に対し,法9条1項に基づき本件リース契約を解除する旨の意思表示をしたことはない。被告らが指摘する書面は,本件リース契約上のサプライヤーに対するものであり,解除の意思表示も法に基づくものとはなっていない。
② 本件リース契約は,法人名義でなされているところ,被告寺は,事業者としての人的組織と物的基盤を有し,収入も得ているのであるから,事業者として評価できるだけの実体を有しているというべきである。
また,本件電話機セットはビジネス仕様の電話機であり,被告らはこれを被告寺の庫裏と被告Y1の自宅に設置し,檀家との連絡等に利用している。そうすると,本件電話機セットは,被告寺の事業・職務のために使用されているというべきである。
本件セキュリティ装置も事業者向けの商品であり,被告らはこれを被告寺の本堂,庫裏と被告Y1の自宅に設置し,被告寺の防犯等に利用している。そうすると,本件セキュリティ装置は,被告寺の事業・職務のために使用されているというべきである。
なお,本件リース料の支払は,被告寺名義の銀行口座からなされていた。
以上により,本件リース契約が,被告寺の「営業のために」締結されたことは明らかであるから,法26条1項1号の適用除外事由がある。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)(詐欺取消し,錯誤無効,権利濫用,暴利行為)について
被告らは,被告Y1(なお,記録上,被告Y1は本件リース契約締結当時被告寺の代表者であったことが明らかである。)が,テレウェイヴリンクスのBから,「今後は全てIP電話に移行するので,現在使用している電話機は使えなくなるので,交換が必要である。」,「当社とリース契約し,電話機を交換すれば,IP電話も利用できるし,法人のために現在と比べて基本使用料及び通話料が大幅に安くなるので,毎月のリース費用を考慮しても通信コスト全体としては現在よりも安くなる。」などとの内容虚偽の説明を受けたがために,本件リース契約を締結したとの前提の下,本件リース契約の詐欺取消し及び錯誤無効,並びに,原告の本訴請求の権利濫用行為又は暴利行為としての不当性を主張する。
しかし,Bが被告Y1に対して上記のような説明をしたことについては,その事実を認めるのに的確な客観的な証拠が存在しない。のみならず,被告Y1の当事者尋問の際の供述によれば,IP電話への移行というのは,明確な時期についての言及なしに,ゆくゆくは光電話になるという程度の話であったと窺われるのであって,その陳述書(乙19)の記載と合わせて検討しても,この点に関して,Bが被告Y1に対して内容虚偽の説明をしたり,あるいは被告Y1が何らかの錯誤に陥っていたと認めるには足りない。さらに,通信コストについては,被告Y1の当事者尋問の際の供述によれば,本件リース契約よりも前に被告らが使用していた電話機も,リースによるものであったと認められるところ,その従前使用していた電話機のリース料と本件リース契約のリース料のうち本件電話機セットのリースに相当する部分とが大差ないものであれば,IP電話の利用により,通信コストが下がるというのは真実であると窺われるのであって,上記陳述書の記載と合わせて検討しても,この点に関して,Bが被告Y1に対して内容虚偽の説明をしたり,あるいは被告Y1が何らかの錯誤に陥っていたと認めるには足りない。
そのほか,被告Y1がBから内容虚偽の説明を受けたがために本件リース契約を締結したとの事実を認めるべき証拠は存在しないから,被告らの上記主張は,いずれもその前提を欠くものといわなければならず,これを採用することはできない。
2  争点(2)(クーリングオフ)について
被告らは,法9条1項に基づき本件リース契約を解除する旨の意思表示(いわゆるクーリングオフ)をしたと主張するところ,原告は,本件リース契約が法所定の訪問販売であることを争うほか,本件リース契約については,法9条等の規定はその申込みをした者が営業のために締結する役務提供契約等に適用しないとする法26条1項1号の適用除外事由がある旨を主張する。
そこで,本件リース契約が法所定の訪問販売であるかどうかを検討する前に,上記の適用除外事由の存否につき検討するに,被告らは,本件電話機セットは主として個人用・家庭用に使用するためのものであったと主張するが,そうであるならば,被告Y1としては,被告寺の代表者としてではなく,当事者本人として本件リース契約を締結することもできたし,またそうすべきであったというべきところ,甲1,乙10,11,19及び被告Y1の当事者尋問の際の供述によれば,被告Y1は,被告寺の代表者として本件リース契約を締結した上,本件電話機セットを被告寺の庫裏と被告Y1の自宅に設置し,これを自らと家族の私生活にも利用しているが,被告寺としての檀家との連絡等にも利用していると認められる。また,被告らは,被告寺が零細事業者であると主張するが,被告寺が法26条1項1号にいうところのその営業のために役務提供契約等を締結する主体となり得ない程度に零細な事業者であることを認めるべき証拠は存在しない。そもそも,乙6,被告Y1の上記供述及び弁論の全趣旨によれば,本件リース物件は事業者向けのものであると認められるのであり,そのことのみでも,被告寺はその営業のために本件リース契約を締結したものと推認される。
そうすると,本件リース契約は,被告寺がその営業のために締結したものであって,上記の適用除外事由があると認めるのが相当である。かかる認定を左右するような証拠は存在しない。
したがって,クーリングオフによる本件リース契約の解除をいう被告らの主張は,これを採用することができない。
3  結論
以上の認定事実及び弁論の全趣旨によれば,本件リース契約は,原告がした意思表示により解除されたものであり,被告らは,本件リース契約及び本件連帯保証契約に基づき,原告に対し,連帯して,本件リース契約の定める解約金としてリース料残額である186万5430円及びこれに対する催告による弁済期の翌日である平成19年1月26日から支払済みまで約定の年14.5%の割合による遅延損害金を支払うべきであると認められる。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判官 石橋俊一)

 

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