平18(ワ)8044号・平19(ワ)1350号・平19(ワ)7665号・平20(ワ)2396号 債務不存在確認請求本訴事件、リース料請求反訴事件、不当利得金返還等請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件

裁判年月日  平成21年10月30日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ワ)8044号・平19(ワ)1350号・平19(ワ)7665号・平20(ワ)2396号
事件名  債務不存在確認請求本訴事件、リース料請求反訴事件、不当利得金返還等請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件
裁判結果  請求棄却(甲事件)、認容(乙事件)、一部認容(丙事件)、一部認容(丁事件)  上訴等  控訴、後和解  文献番号  2009WLJPCA10308035

要旨
◆原告らが、被告に対し、被告と一体である訴外会社の違法な勧誘により被告とリース契約を締結させられたとして、詐欺取消等を理由とする不当利得返還等を求めた(甲事件・丙事件)のに対し、反訴として、被告が、原告らに対し、残リース料債務の支払の遅滞を理由としてリース契約上の規定損害金の支払を求めた(乙事件・丁事件)事案において、原告らのリース契約が訴外会社の販売員の欺罔行為によって締結されたものであるとしても、原告らは詐欺による取消しを被告に対して主張することはできないし、被告に私法上の義務として提携販売事業者を管理する義務があるとは解されず、また、特定商取引法26条1項の「営業」に当たるか否かは、その実態が営利を目的とした事業・職務に当たるといえるかにより判断されるべきであるなどとして、甲事件を棄却するとともに、その余の事件を認容又は一部認容した事例

新判例体系
公法編 > 産業経済法 > 特定商取引に関する法… > 第二章 訪問販売、通… > 第五節 雑則 > 第二六条 > ○適用除外 > (一)判断基準
◆個人非営利事業者である税理士であっても、「営業のために若しくは営業として」リース契約が締結されたかどうかは、当該事業や職務及び取引の実態から判断すべきである。

 

出典
判タ 1339号131頁
判時 2095号68頁

評釈
山本豊・民事判例 3号140頁

参照条文
民法1条2項
民法90条
民法95条
民法96条1項
特定商取引に関する法律9条1項1号
特定商取引に関する法律26条1項

裁判年月日  平成21年10月30日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ワ)8044号・平19(ワ)1350号・平19(ワ)7665号・平20(ワ)2396号
事件名  債務不存在確認請求本訴事件、リース料請求反訴事件、不当利得金返還等請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件
裁判結果  請求棄却(甲事件)、認容(乙事件)、一部認容(丙事件)、一部認容(丁事件)  上訴等  控訴、後和解  文献番号  2009WLJPCA10308035

平成18年(ワ)第8044号債務不存在確認請求本訴事件(以下「甲事件」という。)
平成19年(ワ)第1350号リース料請求反訴事件(以下「乙事件」という。)
平成19年(ワ)第7665号不当利得金返還等請求本訴事件(以下「丙事件」という。)
平成20年(ワ)第2396号損害賠償請求反訴事件(以下「丁事件」という。)

大阪府柏原市〈以下省略〉
甲事件原告兼乙事件被告 X1(以下「原告X1」という。)
大阪市〈以下省略〉
丙事件原告兼丁事件被告 X2(以下「原告X2」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 別紙「原告ら訴訟代理人弁護士目録」記載のとおり
東京都豊島区〈以下省略〉
甲・丙事件被告兼乙・丁事件原告 株式会社クレディセゾン(以下「被告」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 別紙「被告訴訟代理人弁護士目録」記載のとおり

 

 

主文

1  被告は,原告X2に対し,18万1440円及びこれに対する平成19年7月7日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2  原告X1は,被告に対し,127万5750円及びこれに対する平成18年8月5日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
3  原告X2は,被告に対し,19万1520円及びこれに対する平成20年2月28日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
4  原告X1の被告に対する請求,原告X2の被告に対するその余の請求及び被告の原告X2に対するその余の請求をいずれも棄却する。
5  訴訟費用は,全事件を通じて,被告に生じた費用の3分の2と原告X1に生じた費用を同原告の,被告に生じた費用の6分の1と原告X2に生じた費用の2分の1を同原告の,被告と原告X2に生じたその余の費用を被告の各負担とする。
6  この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  甲事件
被告は,原告X1に対し,15万3090円及びこれに対する平成18年8月24日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2  乙事件
主文第2項同旨
3  丙事件
被告は,原告X2に対し,35万2800円及びこれに対する平成18年10月28日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
4  丁事件
原告X2は,被告に対し,43万3440円及びこれに対する平成20年2月28日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
甲事件及び丙事件は,それぞれ原告X1及び原告X2が,被告に対し,被告と一体である訴外株式会社メディアサポート(以下「メディアサポート」という。)の違法な勧誘により被告とリース契約を締結させられたとして,詐欺取消し等を理由とする不当利得返還請求権又は提携販売事業者管理義務違反を理由とする債務不履行若しくは不法行為による損害賠償請求権に基づき,既払リース料の返還又はそれと同額の損害金の支払を求める事案である。
乙事件及び丁事件は,それぞれ甲事件及び丙事件に対する反訴として,被告が,原告X1及び原告X2に対し,残リース料債務の支払の遅滞を理由としてリース契約上の規定損害金(残リース料相当額)の支払を求める事案である。
1  前提となる事実(証拠によって認定した事実は各項末尾のかっこ内に認定に供した証拠を摘示し,その記載のない事実は当事者間に争いがない。)
(1)  当事者等
ア 原告らは,それぞれ税理士事務所を営む者である。
イ 被告は,リース業等を業とする株式会社である。
ウ メディアサポートは,被告とリース契約に関する業務提携契約を締結して,被告に対してリース物件を売却していた株式会社であり,原告らに電話機等のリース契約を勧誘した。
(2)  原告らと被告との間のリース契約
ア 原告X1
(ア) 原告X1と被告との間には,以下の内容が記載された平成17年9月13日付けの「リースお申込みの内容」と題する書面(甲1の1)がある(以下,同書面に基づくリース契約を「原告X1リース契約(1)」という。)。
a リース物件
日立主装置ET-610iA 1台
日立電話機ET-610iA 6台
b リース期間
平成17年10月4日から平成24年10月3日まで
c リース料
月額リース料 1万0400円
月額消費税 520円
月額合計 1万0920円
総額 91万7280円
d 支払方法
毎月4日に,自動振替の方法により支払う。
初回リース料は,2回目のリース料と合算して支払う。
e 期限の利益喪失
原告X1がリース料の支払を1回でも怠ったときは,原告X1は,リース料債務につき,被告からの通知,催告なくして当然に期限の利益を喪失し,被告に対し,残リース料を直ちに支払う。
f 無催告解除
原告X1がリース料の支払を1回でも怠ったときは,被告は催告をせず直ちに契約を解除することができる。
g 規定損害金
前記fの規定により被告が契約を解除したときは,原告X1は,リース物件を被告に返還するとともに,損害賠償として残リース料総額を直ちに支払う。
h 遅延損害金
原告X1が被告に対して負担する一切の債務の支払が遅滞したときは,原告X1は,支払うべき金額に対し支払済みまで年14.6パーセントの割合による遅延損害金を支払う。その計算方法は,年365日の日割計算とする。
(イ) 原告X1と被告との間には,以下の内容が記載された「リースお申込みの内容」と題する書面(甲1の2)がある(以下,同書面に基づくリース契約を「原告X1リース契約(2)」といい,原告X1リース契約(1)と併せて「原告X1各リース契約」という。)。
a リース物件
日立電話機ET-610iA 1台
b リース期間
平成17年10月1日から平成24年9月30日まで
c リース料
月額リース料 5800円
月額消費税 290円
月額合計 6090円
総額 51万1560円
d その他の契約条件については,原告X1リース契約(1)と同じ。
イ 原告X2
(ア) 原告X2と被告は,平成15年9月25日,以下の内容のリース契約(以下「原告X2リース契約(1)」という。)を締結した(乙8の1及び乙9)。
a リース物件
日立主装置ET-410iz 1台
日立電話機ET-410iz 1台
b リース期間
平成15年9月25日から平成22年9月24日まで
c リース料
月額リース料 4800円
月額消費税 240円
月額合計 5040円
総額 42万3360円
d その他の契約条件については,原告X1リース契約(1)と同じ。
(イ) 原告X2と被告は,平成15年11月6日,以下の内容のリース契約(以下「原告X2リース契約(2)」といい,原告X2リース契約(1)と併せて「原告X2各リース契約」という。また,原告X1各リース契約と原告X2各リース契約を併せて「本件各リース契約」という。)を締結した(甲43)。
a リース物件
ムラテックスファックス機 F351 1台
b リース期間
平成15年11月4日から平成21年11月3日まで
c リース料
月額リース料 4800円
月額消費税 240円
月額合計 5040円
総額 36万2880円
d その他の契約条件については,原告X1リース契約(1)と同じ。
(3)  本件各リース契約に基づくリース料の支払
(ア) 原告X1は,原告X1リース契約(1)に基づき,平成18年7月4日まで合計9万8280円を支払ったものの,同年8月4日以降,リース料の支払を行わず,残リース料として合計81万3900円が残っている。
また,原告X1は,被告に対し,原告X1リース契約(2)に基づき,平成18年7月4日まで合計5万4810円を支払ったものの,同年8月4日以降,リース料の支払を行わず,残リース料として合計45万6750円が残っている。
(イ) 原告X2は,被告に対し,原告X2リース契約(1)に基づき,平成18年9月4日まで合計18万1440円を支払ったものの,同年10月4日以降,リース料の支払を行わず,残リース料として合計24万1920円が残っている。
また,原告X2は,被告に対し,原告X2リース契約(2)に基づき,平成18年9月4日まで合計17万1360円を支払ったものの,同年10月4日以降,リース料の支払を行わず,残リース料として合計19万1520円が残っている。
(4)  経済産業省の対応等
ア 経済産業省は,そのホームページに,平成17年12月6日付けで,「悪質な電話機等リース訪問販売への対応策について」と題するニュースを掲載した。その内容は,悪質な電話機等リース訪問販売の被害実態を紹介し,対策として,特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)の通達改正,業界団体への指導,相談窓口体制の整備及び個人事業者等に対する注意喚起を行ったことを発表するものであった(甲17)。
イ 経済産業省は,同日,特定商取引法の通達改正を行い,事業者名による契約であっても一定の事案については特定商取引法による救済が受けられることを明確にした(甲17及び甲24)。
ウ 経済産業省は,社団法人リース事業協会(以下「リース事業協会」という。)に対し,同日,「電話機等リース訪問販売に係る総点検等について」と題する文書により,参加会員であるリース会社に電話機等リースに係る提携訪問販売事業者の管理を厳格に見直すことを指導するよう命じた(甲18)。
エ リース事業協会は,同日,そのホームページに,「電話機リースに係る問題事例の解消を目指して」と題する文書を発表した(甲19)。
(5)  メディアサポートに対する業務停止処分
経済産業省は,メディアサポートに対し,平成18年7月25日,不実告知,重要事項の不告知,勧誘目的等の不明示,適合性原則違反勧誘,契約書面への虚偽記載といった特定商取引法違反を理由として,3か月間の業務停止処分をした(甲20)。
(6)  原告らの取消し等の意思表示
ア(ア) 原告X1は,被告に対し,平成18年7月11日到達の書面により,原告X1リース契約(1)につき,詐欺取消しの意思表示をした。
(イ) 原告X2は,被告に対し,平成18年10月12日到達の書面により,原告X2各リース契約につき,詐欺取消しの意思表示をした。
イ(ア) 原告X1は,被告に対し,平成19年11月12日に送付された準備書面によって,原告X1各リース契約について,特定商取引法9条1項1号の規定による申込みの撤回又は解除の意思表示をした。
(イ) 原告X2は,被告に対し,平成19年7月6日に送達された丙事件の訴状によって,特定商取引法9条1項1号の規定による申込みの撤回又は解除の意思表示をするとともに,既払リース料の返還を求めた。
2  争点及びこれに対する当事者の主張
本件の争点は,
①  詐欺取消しの可否
②  錯誤の有無
③  提携販売事業者管理義務違反の有無
④  公序良俗違反の有無
⑤  クーリングオフの可否
⑥  被告が支払うべき額
⑦  原告らの支払義務の存否及び支払うべき額
である。
これに対する当事者の主張は,以下のとおりである。
(1) 争点①(詐欺取消しの可否)について
ア 原告ら
(ア)a メディアサポートの従業員であったB(以下「B」という。)及びC(以下,Bと併せて「Bら」という。)は,平成17年9月2日ころ,原告X1の事務所を訪問し,原告X1に対し,「電話機を換えれば電話代が安くなります。」,「電話代の領収証を見せてください。」,「これだったら,電話代は今の3分の1になります。」,「その分でリース代も浮きます。電話機も新しくなりますよ。」などと虚偽の事実を申し向け,新しい電話機のリース契約を勧誘した。原告X1は,電話代が安くなると誤信し,電話機6台,主装置1台のリース契約を行うこととし,「リース契約申込書兼同意書」(甲2の1),「施工・発注・内容確認書」(甲3の1)に署名押印した。
原告X1は,同月13日ころ,原告X1リース契約(1)に係る同日付けのリース契約書(甲1の1)に署名押印し,同日,前記電話機6台,主装置1台が設置された。その際,Bらは,原告X1に対し,予備の電話機1台を会社で保管しておくので増設や故障など必要なときには申し出てほしい旨述べた。
さらに,Bは,原告X1に対し,同月14日ころ,「ファックスはどうですか。安くしておきます。リース期間中,用紙は無料で供給します。」とファックス1台のリース契約を勧誘した。原告X1は,電話機同様に使用料が安くなるものと誤信し,勧誘されるままに「リース契約申込書兼同意書」(甲2の2),「施工・発注・内容確認書」(甲3の2)に署名押印した。
その後,原告X1の事務所にファックスが設置され,原告X1は,原告X1リース契約(2)に係るリース契約書(甲1の2)に署名押印した。
原告X1リース契約(2)に係る前記各書類(甲1ないし甲3の各2)には,リース物件としてファックスではなく電話機1台と記載されていたが,原告X1がこの点を指摘すると,Bらは,「ファックスの電話機ですので,これでいいんです。」などとごまかした。
Bは,原告X1に対し,同年10月3日ころ,確認のために書類がほしい旨述べ,原告X1は,「施工・発注・内容確認書」(甲15)に署名押印した。
その後,電話料金が安くなることはなく,原告X1は,Bらの欺罔行為によって原告X1リース契約(1)を締結したものである。
b メディアサポートの従業員であったD(以下「D」という。)は,平成15年9月初めころ,原告X2の事務所を訪問し,原告X2に対し,「今,新しいケーブルに交換しているので,今使っている電話機はもうすぐ使えなくなります。」,「こちらの電話機に交換していただいたら,3か月後に電話代が安くなりますし,ドコモの携帯電話の電話代も安くなります。」などと虚偽の事実を申し向け,その後,さらに原告X2を何度も訪れ,原告X2に対し,パンフレットを見せて,「この電話機を使っていただくと電話代が安くなるから,リース料を入れても損になりません。」などと,虚偽の事実を申し向けながら,執拗にリース契約を勧誘した。
Dは,同月11日,工事担当者とともに原告X2の事務所を訪問し,電話機を設置した。
その後,原告X2は,同月25日,原告X2リース契約(1)に係るリース契約書(乙9)に署名押印した。
Dは,同年10月20日,ファックスを持参して原告X2の事務所を訪問し,原告X2に対し,「現在のファックスはもうすぐ使えなくなるので,このファックスを使ってください。」と虚偽の事実を申し向けた。原告X2は説明を求めたが,Dは,ファックスが使えなくなると述べるだけで,持参したファックスを一方的に設置した。
Dは,同年11月5日,リース契約に関する書類を持参して原告X2の事務所を訪問した。原告X2は,Dに対し,ファックスを持って帰るよう抗議したが,Dは,もう使用しているなどと拒否したため,原告X2は,仕方なく原告X2リース契約(2)に係るリース契約書(甲43)に署名押印した。
その後,電話料金が安くなることはなく,原告X2は,Dの欺罔行為によって原告X2各リース契約を締結したものである。
(イ)a メディアサポートは,あらかじめ被告から交付されていた白紙のリース契約書類等に,リース物件,月額リース料,リース期間等の事項を記載してユーザーに署名押印させていた。
被告は,リースの対象物件,リース料算定の基礎となる物件価格,その他のリース契約の内容に関する事項など,リース契約締結に関する重要事項の決定をメディアサポートに委ねていたから,いくら被告とメディアサポートとの間の業務提携契約に代理権がない旨を記載していたとしても,その実態からすれば,被告は,メディアサポートに対し,リース契約申込みの意思表示の受領などを含んだリース契約締結に関する包括的代理権限を授与していたといえる。
代理人が相手方に対して詐欺を行ったとき,本人の知,不知を問わず,相手方は法律行為を取り消すことができる。
したがって,原告らは,被告の代理人であるメディアサポートのBらやDが欺罔行為を行ったことを理由に,本件リース契約を取り消すことができる。
b 仮に,メディアサポートが被告の代理人でなく使者であったとしても,民法110条により本人である被告の責任を認めるべきである。
c 仮に,メディアサポートが被告の代理人,使者のいずれでもなかったとしても,被告は,メディアサポートについて大阪市消費者センターに平成13年4月から平成18年12月まで176件も相談が寄せられていたこと,平成16年1月23日ころには,紙子法律事務所からメディアサポート従業員が顧客の印鑑を盗用しているなどと主張を受け,弁護士名での受任通知を送付されていたこと,本件各リース契約における電話機の価格が市場価格の3倍にもなっていたことからすれば,メディアサポートの欺罔行為について悪意有過失である。
したがって,原告らは,第三者の詐欺により,本件各リース契約を取り消すことができる。
d また,被告はメディアサポートにリース契約の事務手続の代行をさせて利益を得ている以上,メディアサポートの詐欺行為に関するリスクも被告が負担すべきであるから,被告の知,不知を問わず,原告らは,本件各リース契約を取り消すことができる。
e さらに,被告は,メディアサポートと一体であるから,信義則上,原告らがメディアサポートに対して主張できることは,被告に対しても主張できるというべきである。
イ 被告
(ア) Bら及びDの原告らに対する欺罔行為は,知らない。
(イ)a リース会社である被告と,サプライヤーであるメディアサポートは,ユーザーの与信判断を前提としたリース物件の売買代金を収受するという点において利害が対立するから,被告がメディアサポートに対して契約条件の設定を委ねることはあり得ない。
b また,被告とメディアサポートは,リース業務提携契約を締結していたところ,この契約において,両者の業務内容は,以下のように定められていた。
(a) まず,リース物件は,メディアサポートが取り扱う被告の承認した商品とされ,ユーザーは,被告所定の条件を充たす者とする。
(b) リース契約の申込みについては,メディアサポートが,被告からのリースを希望するユーザーから所定のリース契約申込書等の書類を受け取り,被告に送付する。
(c) 被告は,メディアサポートから前記書類を受け取り,被告の審査基準によりリース契約の諾否を決定する。
(d) メディアサポートは,被告が応諾したユーザーから,所定のリース契約書,借受確認証などの書類を受領する。
(e) メディアサポートから被告に対するリース物件の引渡しは,被告がユーザーに対してリース物件の検収終了を確認した日とする。
(f) リース料率は,物件の取得価格及びリース期間に応じて被告が定める。
このように,メディアサポートは,リース契約申込書や借受確認証等の受領を行ってはいるものの,被告がメディアサポートに委ねていた業務は極めて限定的なものである。むしろ,被告は,リース契約締結にあたり,最も重要な判断であるユーザーへの与信が可能か否かの判断を自ら行い,また,リース物件の納品の有無も電話で確認している。
c そもそも,被告とメディアサポートとの間の業務提携契約書には,被告がメディアサポートに対してリース契約締結の代理権を授与する旨の記載は一切ない。
d 以上によれば,メディアサポートは,原告らが主張するような被告の代理人ではない。
(ウ) メディアサポートが使者であるとしても被告が責任を負うとの原告ら主張は,法的主張としての意味が不明である。
原告らは,民法110条を根拠とするが,被告は,メディアサポートに対し,同条の要件である基本代理権を与えていない。
(エ) 被告がメディアサポートの欺罔行為について悪意であったから本件各リース契約を第三者の詐欺により取り消すことができるとの主張は,否認する。
悪質な電話機リースに関する苦情が多数存在したことを示す行政通達(甲17ないし甲20)は,いずれも本件各リース契約締結後のものである。
そもそも,大阪市消費者センターにメディアサポートについての相談が多数寄せられていたからといって,被告の悪意に結びつくものではない。また,仮に被告がメディアサポートの欺罔行為を容易に知り得る状況にあったとしても,これも被告の悪意に結びつくものではない。
(オ) 被告とメディアサポートは一体ではない。メディアサポートに対して業務停止処分が科せられながら被告に対しては何らの処分もなされていないことからも,被告とメディアサポートが,法的意味を持つ一体的な関係になどなかったことは明らかである。
(2) 争点②(錯誤の有無)について
ア 原告ら
(ア) 原告X1は,原告X1リース契約(1)締結当時,契約締結により電話代が安くなると信じ,リース料がリース物件の市場価格に照らして相当であると信じていた。原告X1は,被告の代理人又は使者の地位にあったメディアサポートのBらに対し,これらの事情を契約締結の動機として表示していた。
ところが,実際は,電話代は安くならず,リース料はリース物件の市場価格に照らし相当でなかったから,原告X1リース契約(1)は錯誤により無効である。
また,後で主張するとおり原告X1リース契約(2)は成立していないが,仮に成立していたとしても,原告X1はファックス1台について契約を締結する意思で電話機1台をリース物件とする原告X1リース契約(2)を締結したから,原告X1リース契約(2)も錯誤により無効である。
(イ) 原告X2は,原告X2リース契約(1)締結当時,従前使用していた電話機が使用できなくなると信じ,契約締結により電話代が安くなると信じていた。また,原告X2は,原告X2リース契約(2)締結当時,ファックスを交換しなければ使用できなくなると信じていた。原告X2は,被告の代理人又は使者の地位にあったメディアサポートのDに対し,これらの事情を契約締結の動機として表示していた。
ところが,実際は,原告X2が信じていた上記事情は存在しなかったから,原告X2各リース契約は錯誤により無効である。
イ 被告
メディアサポートは,被告の代理人でも使者でもないから,原告らは,被告に対し,本件各リース契約の動機を表示していない。
したがって,原告らの錯誤無効の主張は認められない。
(3) 争点③(提携販売事業者管理義務違反の有無)について
ア 原告ら
(ア) 電話機リースのような提携小口リースにおけるリース会社とユーザーとの間には情報量の格差があること,リース会社が販売店の行為により利益を得ていること,ユーザー被害が生じやすい契約構造となっていること,リース会社が販売店を管理し得る立場にあることから,被告は,原告らユーザーに対し,①販売店が不法,不正,不公正な契約を締結しないよう管理,監督すること,②契約締結の意思確認を慎重に行うなどしてユーザーにとって不要なリース契約や支払能力を超える過剰なリース契約の締結を防止すること,③不法,不正,不適正な契約については事後的であっても是正することを内容とする信義則上の提携販売事業者管理義務を負っていた。
被告とメディアサポートは,メディアサポートの販売促進,被告のリース取引拡大を目的として業務提携契約を締結していたところ,この契約上,被告は,メディアサポートが消費者被害を発生させた場合には直ちに業務提携契約を解除することが可能であった。したがって,被告は,業務提携契約に基づき,容易にメディアサポートを管理することができた。被告は,メディアサポートにおいてユーザーに対する信用を供与し,その緊密な関係を利用してリース契約を締結してリース料の収益をあげていたから,メディアサポートの扱う商品,販売方法,営業実態,経営内容,他のリース会社の動向等を調査して,その提携関係について厳正に管理し,原告らユーザーに対し,不測の損害を与えることがないよう配慮すべき契約上又は信義則上の義務を負っていた。
(イ) そもそも,本件のような電話機リース商法は,事業者に対して特定商取引法のクーリングオフ条項が適用されにくいという法の不備を利用し,悪徳販売員が零細事業を営む高齢者を狙って訪問し,典型的には,「この電話機は,回線のデジタル化で使えなくなる。」,「電話機を換えれば電話代が安くなる。」といった勧誘文言で欺罔するなどしてリース契約を締結させる悪徳商法として,平成15年ころから社会問題化していた。
経済産業省は,電話機リース商法の被害を認識し,平成17年12月6日に,業界団体への指導や個人事業者等への注意喚起等を内容として,「悪質な電話機等リース訪問販売への対応策について」と題するニュースをホームページに掲載し,また,平成18年1月30日付けで特定商取引法の通達改正を行い,さらに,リース事業協会に対し,提携販売事業者の管理を厳格に見直すことを指導するよう命じた。リース事業協会は,これを全面的に受け入れた。
そして,経済産業省は,メディアサポートに対し,平成18年7月25日,不実告知,重要事項の不告知,勧誘目的等の不明示,適合性原則違反勧誘,契約書面への虚偽記載といった特定商取引法違反を理由として3か月間の業務停止処分をした。
このように,電話機リース商法が社会問題化していたことは,原告らが同種被害を受けることについての被告の予見可能性を認める根拠となり得る。
(ウ) また,被告は,メディアサポートに対して,圧倒的に優越的な立場にいたことから,被告がメディアサポートを指揮監督する関係があったのであり,使用者責任の観点からも,提携販売事業者管理義務が存したというべきである。
(エ) 被告は,メディアサポートにつき多数の苦情が寄せられ,その違法行為を知り,又は容易に知り得たにもかかわらず,メディアサポートに対して何ら指導監督を行わず,メディアサポートをして原告らに虚偽説明を行わせて本件各リース契約を締結させ,原告らにリース料相当額の損害を被らせた。
(オ) したがって,被告は,提携販売事業者管理義務に違反したというべきである。
イ 被告
(ア) そもそも,原告らが提携販売事業者管理義務の根拠とする信義則は,法的根拠として脆弱である。
(イ) 原告らは,いずれも税理士であるからリース取引に関する法人税法上の取扱い,その特質について熟知しているはずであり,本件各リース契約においては原告らと被告との間にリース契約に関する情報量,知識量に格差はなかった。
また,原告らは,リース契約がユーザー被害が生じやすい構造であることも根拠とするが,ユーザーがリース物件を資産計上することなく月々のリース料を損金処理することができ,法人税法上節税効果があるという点やファイナンスを受けることができる点でユーザーにも利点が存する。したがって,リース契約の構造それ自体から当然に提携販売事業者管理義務を導くことはできない。
さらに,被告とメディアサポートとの間の業務提携契約において,メディアサポートが契約に違反した場合には被告が提携関係を解消することができるとの規定があるが,これは,被告がメディアサポートとの提携関係解消という威嚇力を背景に自助努力を促し,不適切なリース契約の発生を防止することを目的とするものにすぎず,提携販売事業者管理義務の根拠とならない。
被告は,1300社を超える極めて多数のサプライヤーとの間で業務提携契約を締結している。それぞれのサプライヤーは被告とだけ業務提携契約を締結しているのではなく,他のリース会社との間でも業務提携契約を締結している。そのため,サプライヤーが,ユーザーからどのリース会社を使うか相談された場合に,いかなるリース会社を紹介するかは,サプライヤーの自由であり,被告とサプライヤー間に事実上の指揮監督関係はない。
(ウ) 原告らの主張する行政通達は,本件と直接関係のない一般論であるし,外部への法的拘束力も遡及効もないから,本件各リース契約に何ら影響を与えない。
(エ) メディアサポートについての多数の苦情が寄せられ,その違法行為を知っていたとの主張は,否認する。
(オ) 被告が提携販売事業者管理義務を負うとしても,被告は,販売店と業務提携契約を締結するに当たり,信用状況を検査するなどして販売店の管理監督を行っている。
被告がメデイアサポート案件で初めて苦情を受けたのは,平成14年9月であった。メディアサポートがサプライヤーとなっているリース契約は,平成18年5月までに合計6973件あり,そのうち平成18年5月時点でクレームがあった者は合計146件,クレームのあったものの内解決済みのものは134件であり,未解決として残っていたものは12件しかなかった。
この期間における弁護士及び消費生活センターの介入については,上記146件のクレームのうち,弁護士の内容証明郵便等による介入のあったものが24件,消費生活センターからの報告が10件,ユーザー本人が申し立てた調停が2件である。
なお,弁護士名によるクレームを受けたのは平成15年9月が最初であった。もっとも被告としては,弁護士が介入したからといって対応を変えるわけではない。
被告がユーザーからクレームを受けた場合,クレームの内容をメディアサポートに確認した上で,クレームの内容が事実ということであれば,ユーザーとメディアサポートが協議し,メディアサポートが負担することにより契約を解約するか,クレームの内容が事実ではないということであれば,ユーザーに支払を継続するよう説得していた。
なお,このころのトラブルの内容は,ユーザーが毎月のリース料金を払うことができないことから,リース契約にクレームを付け,毎月のリース料の支払を免れようとするものであり,このようなトラブルはどのようなサプライヤーとの間でもあり,メディアサポートがサプライヤーとなった案件(以下「メディアサポート案件」という。)に限られるものではなかった。
一般に,サプライヤーの対応が不誠実な場合には,業務提携契約を解約することもあったが,上記期間中,メディアサポートの対応に問題はなかったことから,メディアサポートとの業務提携契約そのものを解除する必要はないと判断していた。
被告は,平成17年12月に経済産業省から社団法人リース事業協会に対し,電話機等リース訪問販売について審査体制を見直し,審査基準を強化するよう通達があったことに伴い,平成18年以降の新規契約について,従前以上にユーザーの意思を十分に確認するととも,ユーザーの融資枠を限定し,かつ与信の判断基準を強化することによって,ユーザーに被害が生じないよう,サプライヤーに対する審査基準を強化した。
被告は,サプライヤーに対し,審査基準の改定を伝えるとともに,トラブル解決を迅速化するよう促すようになった。
平成18年6月ころから,ユーザーからのクレームの中にメデイアサポートによる悪質な販売であると思われるものが発生してきたこと,被告がメディアサポートに対応を求めている事案であってもクレーム処理のスピードが落ち,クレーム案件が滞留してきたことから,被告は,平成18年6月13日,メディアサポートとの業務提携契約を解消した。
したがって,被告は,通常求められるリース会社の義務を果たしたというべきである。
(4) 争点④(公序良俗違反の有無)
ア 原告ら
(ア)a 原告X1各リース契約の電話機の価格は,原告X1リース契約(1)が市場価格の3倍,原告X1リース契約(2)が市場価格の10倍以上となっている。
リース料総額が適正なものでなければならないことは,リース事業協会が「リース料総額等の取引条件が不適切と判断される取引は,基本的に排除いたしております。」としていることから明らかである。
被告は,自らの利益を図るため,不合理な高額であることを認識しながら原告X1各リース契約によってリース料を取得しようとしたものであるから,原告X1各リース契約は,暴利行為により無効である。
b 原告X2リース契約(1)の電話機の価格は,少なくとも市場価格の4ないし5倍,原告X2リース契約(2)のファックスの価格は,少なくとも市場価格の2倍以上でリースさせられた。
原告X2は,その事務所に従業員もおらず,ビジネスフォンを必要としない。また,メディアサポートは,電話機を設置してから2週間後にリース契約申込書を持参し,断りにくい環境を作ってから原告X2各リース契約を締結させた。そればかりか,Dは,原告X2がリース物件の撤去を求めても「もう使っている。」などと述べて強引に契約締結を迫った。
このような行為は,押売りと同じであって,公序良俗に違反する。
(イ) 付属機器は,原告X1各リース契約のリース契約書に記載されていないから,契約対象とみることはできない。
また,リース会社は,リース期間中に物件の取得価格と付随費用の概ね全額をリース料により回収するから,リース料の決定においてはリース物件の価格が関係している。
イ 被告
(ア) 原告X1各リース契約においては,付属機器も契約対象とされているから,電話機の市場価格のみからリース料が不適切とはいえない。
また,リース物件の市場価格や購入価格は,暴利行為と無関係であるし,被告の取得価格が76万3560円であること,原告X1が負担する7年間のリース料総額が91万7280円であることから,暴利行為ではない。
(イ) 原告X2各リース契約に関するア(ア)bの事実主張は,否認し,又は知らない。
原告X2は,自己の自由な意思に基づき,経費計上のメリットを認識して原告X2各リース契約を締結した。
(5) 争点⑤(クーリングオフの可否)について
ア 原告ら
(ア) 本件各リース契約は,電話機器等の貸与として特定商取引法にいう訪問販売の指定役務に当たり,また,被告及びメディアサポートは,一体としてユーザーに対してリース提携販売を行っていたものであり,総合してみれば1つの訪問販売を形成していたから,いずれも特定商取引法2条1項1号にいう「販売業者等」に当たる。
そして,被告及びメディアサポートは,原告らに対して,特定商取引法5条1項で定められた書面を交付していないから,本件各リース契約のクーリングオフ期間は進行していない。
したがって,原告らは,本訴弁論準備手続期日において,それぞれ本件各リース契約をクーリングオフする旨の意思表示をした。
(イ)a 被告は,特定商取引法26条1項1号の適用除外を主張するが,同条項は,「営業のために若しくは営業として締結する契約」を適用除外としており,「事業」という文言は使用していない。つまり,事業者間契約であっても,「営業のために若しくは営業として締結する契約」に当たらなければ,適用除外とはならない。
「営業のために若しくは営業として締結する契約」とは,商行為に限定するものではなく,通常,営利を目的とした事業,職務用に供するために購入する場合,つまり営利性と反復性が指標となる。
原告らは,個人非営利事業者である税理士であって,営業や商行為としての契約は観念できないし,営利の目的をもって反復継続的に電話機等を購入するような事情もない。
また,原告らは,税理士業を営む者であって,通信機器の販売,リースを業とするものではないから,本件リース契約を「営業のために若しくは営業として」締結したとはいえない。
b 原告X2は,高齢かつ病弱であり,また単独で税理士業務を行っており,通信機器に関する知識もない。売上も年間わずか300万円程度,顧問先も1社しかなく,実質的には年金生活者と代わらない。
原告X2は,税理士業務を実質的に廃業しており,少なくとも,特定商取引法26条1項の適用除外の対象とする営利事業者には当たらない。
イ 被告
(ア) 本件各リース契約の締結は,与信判断を経て被告が実質的に判断するものであり,被告とメディアサポートに一体性はないから,被告は,特定商取引法2条1項1号にいう「販売業者等」に当たらない。
メディアサポートに対して業務停止処分が科せられながら被告に対しては何らの処分もなされていないことからも,被告とメディアサポートが,法的意味を持つ一体的な関係になどなかったことは明らかである。
(イ) 原告X1は,堺筋本町駅から約800メートルという好立地において事務員3人を雇用して税理士事務所を営んでおり,法人の顧問客も多数有している。
原告X2は,顧問先が1件とはいえ,税理士として,住道駅前のメインストリート沿いという好立地に会計事務所を営んでいる。
このように,原告らは,税理士として事業を行っていたから,特定商取引法26条1項1号の適用除外に当たる。
(ウ) 原告らがクーリングオフの意思表示をしたことは,認める。
(6) 争点⑥(被告が支払うべき額)について
ア 原告ら
(ア) 被告は,原告X1に対し,原告X1が原告X1各リース契約に基づき支払った15万3090円について,前記主張の詐欺取消し,錯誤無効,公序良俗違反若しくはクーリングオフを理由とする不当利得返還義務又は提携販売事業者管理義務違反を理由とする債務不履行若しくは不法行為による損害賠償義務を負う。
(イ) 被告は,原告X2に対し,原告X2が原告X2各リース契約に基づき支払った35万2800円について,前記の原告X1に対するのと同様の支払義務を負う。
イ 被告
否認し,争う。
(7) 争点⑦(原告らの支払義務の存否及び支払うべき額)について
ア 被告
(ア)a 原告X1と被告は,前記第2・1(2)ア記載の内容の原告X1各リース契約を締結した。
そして,被告は,原告X1に対し,原告X1各リース契約に基づき,リース物件を,原告X1リース契約(1)については平成17年10月4日に,原告X1リース契約(2)については同月17日に,それぞれ引き渡した。
しかしながら,原告X1は,平成18年8月4日以降,原告X1各リース契約のリース料の支払をせず,残リース料として,原告X1リース契約(1)については81万9000円が,原告X1リース契約(2)については45万6750円が残っている。
したがって,被告は,原告X1に対し,平成19年2月8日送達の反訴状をもって,原告X1各リース契約のリース契約書14条2項に基づき,原告X1各リース契約をそれぞれ解除し,同条3項に規定されている残リース料相当額の損害金として127万5750円及び遅延損害金の支払を求める。
b 前記第2・1(2)イのとおり,原告X2と被告は,原告X2各リース契約を締結した。
そして,被告は,原告X2に対し,原告X2各リース契約に基づき,リース物件を,原告X2リース契約(1)については平成15年9月25日に,原告X2リース契約(2)については同年11月4日に,それぞれ引き渡した。
しかしながら,原告X2は,平成18年10月4日以降,原告X2各リース契約のリース料の支払をせず,残リース料として,原告X2リース契約(1)については24万1920円が,原告X2リース契約(2)については19万1520円が残っている。
したがって,被告は,原告X2に対し,平成20年2月27日送達の反訴状をもって,原告X2各リース契約のリース契約書14条2項に基づき,原告X2各リース契約をそれぞれ解除し,同条3項に規定されている残リース料相当額の損害金として合計43万3440円及び遅延損害金の支払を求める。
(イ) 原告らは,原告X1リース契約(2)のリース物件が納入されていない旨主張するが,仮に物件の納入がなかったとしても,原告X1は借受確認証を交付したから,リース物件の納入がないことを主張できない。
また,ユーザーによりリース物件の使用が不可能になったとしても,これがリース会社の責めに帰すべき事由によるものでないときは,ユーザーはリース料の支払を免れることはできないところ,被告は,平成17年10月17日午後3時4分,原告X1に直接電話をしてリース物件の種類,型式,台数その他の契約内容を読み上げて借受確認をしたから,被告に責めに帰すべき事由はない。原告X1は,被告やメディアサポートに確認することで容易に物件の納入がないことを知ることができたから,借受確認証の交付につき過失がある。
イ 原告ら
(ア)a 原告X1は,リース物件を「日立電話機 ET-610iA 1台」とする原告X1リース契約(2)に係るリース契約申込書に署名押印したが,この電話機について,Bらは「現在の6台が故障した際の予備としてメディアサポートにおいて保管しておく。」と述べ,現実にはファックス1台を納入した。そのため,原告X1は,原告X1リース契約(2)はファックス1台のリース契約であり,申込書記載の電話機は,Bらの説明のとおり予備の商品と思っていた。
このように,原告X1はファックス1台のリース契約の意思しかないのに,実際には電話機1台のリース契約申込書しか存在しないから,形式的な意思の合致すらない。
したがって,「日立電話機 ET-610iA 1台」をリース物件とする原告X1リース契約(2)は成立していない。
b(a) 原告X1リース契約(2)のリース物件は納入されていないから,原告X1は,原告X1リース契約(2)に基づくリース料の支払義務を負わない。
(b) 仮に,リース物件の引渡しがないことを理由としてリース料の支払拒絶ができないとしても,リース会社がリース物件の引渡しがないことを知り又は知り得べきであった場合は,ユーザーはリース料の支払を拒絶できると解すべきである。
メディアサポートはリース物件の引渡しがないことを知っていたところ,メディアサポートは,被告の代理人又は使者であり,そうでなくても被告との一体性が認められることから,信義則上,被告はリース物件の引渡しがないことを知っていたものと評価される。
したがって,原告X1は,原告X1リース契約(2)のリース料の支払を拒絶することができる。
仮に,リース物件の引渡しの認識につき上記のような評価ができないとしても,原告X1リース契約(2)のリース物件は,原価4万円程度のごく一般的な電話機1台であるにもかかわらず,総額50万円以上のリース契約が締結されているのであって,その不自然さはリース契約書等からも明らかである。
したがって,被告は,原告X1リース契約(2)の不自然さに気付き,リース物件の引渡しがないことを容易に気付くことができたというべきであるから,リース物件の引渡しがないことを知り得べきであったといえ,原告X1は,原告X1リース契約(2)のリース料の支払を拒絶することができる。
(c) 借受確認証の交付につき原告X1に過失があるとの被告主張は争う。
原告X1は,メディアサポートの巧妙な欺罔行為によって,原告X1リース契約(2)をファックスに関するものと誤信して借受確認証を交付したから,過失はない。
メディアサポートと提携関係にある被告は,借受確認証の効果を主張することはできない。
(イ) 前記主張のとおり,詐欺取消し,錯誤無効,公序良俗違反又はクーリングオフにより,原告らは本件各リース契約に基づくリース料の支払義務を負わないから,本件各リース契約のリース料の支払を怠ったことによる損害金の支払義務も負わない。
第3  当裁判所の判断
1  前提となる事実に,証拠(甲1ないし甲4の各1及び2,甲5,甲7,甲8の1及び2,甲11ないし13,甲15,甲17ないし甲20,甲24,甲38の1ないし8,甲39ないし甲44,甲45の1及び2,甲46,甲47,甲63の1ないし4,甲64の1ないし3,甲65ないし甲67,甲68及び甲69の各1及び2,甲70,甲71の1及び2,甲72ないし甲75,甲89ないし甲101,甲102の1及び2,甲103ないし甲109,甲110の1及び2,甲135,甲137,甲138の1及び2,甲139の1ないし4,甲141の1及び2,甲142,甲143の1及び2,甲146,甲147,乙1及び乙4の各1及び2,乙5,乙8の1及び2,乙9,乙10,乙13,証人B,証人D,証人E,原告X1本人並びに原告X2本人)を総合すれば,被告におけるリース契約締結の手続及び本件各リース契約締結の経緯等について,以下の事実が認められる。
(1)  被告におけるリース契約締結の手続
被告とメディアサポートは,平成12年9月29日ころ,ビジネスホン,ファクシミリを主要取引商品として,以下の内容で,リース業務提携契約(以下「本件業務提携契約」という。)を締結した(乙5)。
ア リース物件は,メディアサポートが取り扱う被告の承認した商品とし,顧客は,被告所定の条件を充たす者とする。
イ リース契約の申込みについては,メディアサポートが,被告からのリースを希望する顧客に対し,被告に代わってリースの説明を行い,顧客から所定のリース契約申込書等の書類を受け取り,被告に送付する。
リース料率については,被告が定める料率表のとおりとし,被告は,金融情勢及び取引条件に変動が生じた場合,いつでも料率表を改定することができる。
ウ 被告は,メディアサポートから前記書類を受け取り,被告の審査基準によりリース契約の申込みに対する諾否を決定する。
エ メディアサポートは,被告が応諾した顧客につき,リース契約の事務手続を行い,当該顧客から所定のリース契約書,借受確認証などの書類を受領する。
メディアサポートは,前記事務手続の際に,被告から顧客への承諾通知をなすものとする。
なお,リース業務提携契約書(乙5)には,メディアサポートが被告の代行者であり,代理人としてリース契約を締結する権限を有しない旨の記載がある。
オ メディアサポートから被告に対するリース物件の引渡しは,被告が顧客に対してリース物件の検収終了を確認した日とする。この場合,被告は,顧客から受領した借受確認証の所定欄にその確認日を記載する。
カ 被告又はメディアサポートは,相手方が本件業務提携契約に違反したとき,著しく信用を失墜する事由が生じたときなど,一定の場合に,相手方に通知することなく本件業務提携契約を解除することができる。
(2)  本件各リース契約締結の経緯
ア 原告X1各リース契約
(ア) 原告X1リース契約(1)
a 原告X1は,原告X1各リース契約を締結する以前から,大阪府柏原市の自宅とは別の大阪市に所在する税理士事務所において,電話回線を5,6本使用してリース物件とほぼ同じ機能を備えた同台数の電話機を使用して税理士業務を行い,年間4000万円程度の売上げがあって,税理士業による所得を事業所得として申告し,原告X1各リース契約のリース料を経費に計上していた。
メディアサポートの従業員であったBらは,平成17年9月2日ころ,原告X1の税理士事務所を訪問し,原告X1に対し,電話機を替えれば電話料金が安くなる,リース料を負担することとなっても電話料金が下がることでカバーできる,などと説明した。
(甲46,原告X1)
b 原告X1は,自らの顧問先に電話関連会社があるため,電話機等の通信機器を変更するのであれば,その電話関連会社に依頼すれば足りたところ,新たに負担するリース料を超えて電話料金が安くなることやリース料を経費として計上して税金を節約するメリットを考慮した上,従前日常業務に使用していた電話機が古くなっていたこともあったため,Bらの前記勧誘に応じ,電話機のリース契約を締結することとし,「リース契約申込書兼同意書」(甲2の1)に署名押印した。同書面には,申込者の概要として「会社名 X1税理士事務所」,「営業内容 税理士業務」と記載されているほか,前記第2・1(2)ア(ア)のとおりの内容の月額リース料及びリース期間が記載されている。
(甲2の1,甲46,原告X1)
c その後,原告X1は,平成17年9月13日ころ,同日付けの契約書(甲1の1)に署名押印したが,同書面には,申込人として「名称 X1税理士事務所」,「代表者 X1」と記載され,自動振替引落口座の口座名義人として「X1税理士事務所 X1」と記載されている。また,同書面には,リース物件として「日立主装置ET-610iA 1台」,「日立電話機ET-610iA 6台」と記載されているほか,前記第2・1(2)ア(ア)のとおりの内容の月額リース料及びリース期間が記載されている。
(甲1の1)
d このようにして,原告X1は,被告との間で,前記第2・1(2)ア(ア)の内容の原告X1リース契約(1)を締結し,その後,Bは,原告X1が経営する税理士事務所内に,原告X1リース契約(1)に基づき,主装置及び電話機を設置し,同年10月4日午後4時58分ころ,被告担当者が原告X1に架電し,原告X1リース契約(1)のリース物件の設置を確認した。
原告X1リース契約(1)の締結に当たっての被告とメディアサポートとの間の事務手続は,前記(1)の一般的な手続と同様であった。
(甲3の1,証人B)
(イ) 原告X1リース契約(2)
a Bは,原告X1に対し,平成17年9月14日ころ,原告X1リース契約(1)を締結したことによるサービスの趣旨で,「安くしておきます。用紙は無料で供給します。」などと述べて,ファックスのリース契約を勧誘した。原告X1は,ファックスのリース料が原告X1リース契約(1)により電話料金が下がる範囲内に収まるのであればファックスのリース契約を締結しても構わないと思い,これに応じてファックスの供給を受けることとした。
B及び原告X1は,ファックスのリース契約にすると月々のリース料が高くなるため,リース物件の名目を電話機にすることとし,原告X1は,同日,リース物件につき「日立ET-610iA 電話機 1台」との記載がある「リース契約申込書兼同意書」(甲2の2)に署名押印した。同書面には,原告X1リース契約(1)の場合と同様,申込者の概要として「会社名 X1税理士事務所」,「営業内容 税理士業務」と記載されているほか,前記第2・1(2)ア(イ)のとおりの内容の月額リース料及びリース期間が記載されている。
(甲2の2,甲46,甲63の3,証人B)
b 原告X1は,原告X1リース契約(2)に関する契約書(甲1の2)に署名押印したが,同書面には,原告X1リース契約(1)と同様,申込人として「名称 X1税理士事務所」,「代表者 X1」と記載され,自動振替引落口座の口座名義人として「X1税理士事務所 X1」と記載されている。また,同書面には,リース物件として「電話機 日立ET-610iA 1台」と記載されているほか,前記第2・1(2)ア(ア)のとおりの内容の月額リース料及びリース期間が記載されている。
c このようにして,原告X1は,被告との間で,平成17年9月,実際に納入された物件がファックスであった点以外は前記第2・1(2)ア(イ)の内容で,原告X1リース契約(2)を締結し,その後,Bは,原告X1の税理士事務所内に,ファックス1台を設置し,同年10月17日午後3時04分ころ,被告担当者が原告X1に架電し,原告X1リース契約(2)リース物件の設置を確認した。
原告X1リース契約(2)の締結に当たっての被告とメディアサポートとの間の事務手続は,前記(1)の一般的な手続と同様であった。
また,Bは,原告X1に対し,アフターサービスとして,ファックス用紙を無料で提供したり,電話機の短縮ダイヤルの登録作業を行ったりした。
(甲46,甲63の4,証人B,原告X1)
(ウ) その後の経緯
a Bは,平成17年10月3日,原告X1に対し,原告X1各リース契約のリース物件の設置につき「施工・発注・内容確認書」(甲15)に署名押印を求め,原告X1はこれに応じて同書面に署名押印した。なお,同書面には,原告X1各リース契約においてリース物件のメンテナンスが無料である旨の記載がある。
(甲15,原告X1)
b 原告X1は,被告に対し,原告X1各リース契約に基づき,平成18年7月4日まで合計15万3090円のリース料を支払い,支払ったリース料については経費として計上していた。
原告X1は,同年8月4日以降,原告X1各リース契約のリース料の支払をしていないが,現在も原告X1リース契約(1)に基づいて電話機を使用している。
(前提事実,乙4の1及び2,原告X1)
イ 原告X2各リース契約
(ア) 原告X2リース契約(1)
a 原告X2は,平成15年9月初めころ,大阪市内の自宅とは別の大阪府大東市に所在する事務所において,事務所の扉等に「X2会計」ないし「X2会計事務所」との表示を掲げ,電話機及びファックスを使用して税理士業務を行っていた。
メディアサポートの従業員であったDは,平成15年9月初めころ,原告X2の税理士事務所を訪問し,原告X2に対し,「今電話工事をやっているため,使っている電話はすぐ使えなくなるから,電話機を替えた方がよい。この電話を使ってもらったら電話代の半分ぐらいは下がる。」などと述べ,併せて,パンフレットを交付してメディアサポートが取り扱う電話機の特徴を説明し,原告X2が使用していた電話機が古いため新しいものに交換することを提案して,電話機のリース契約を勧誘した。
原告X2は,そのころ,税理士事務所にファックス機能付きの電話機を設置して使用していたが,同電話機に接続された電話回線は1回線であり,電話番号とファックス番号は同一であった。原告X2は,一時は勤務先の税理士事務所を引き継いで税理士業を営み,年間2000万円の売上げを計上していたこともあったものの,原告X2各リース契約を締結した当時は,他の税理士に事務所を引き継いだ後であり,顧問先は1件であり,従業員を使用せず,年間の売上げは300万円程度にすぎなかった。
Dは,その後も何回か原告X2の事務所を訪問して電話機のリース契約を勧誘し,同月11日ころ,原告X2は,Dの勧誘に応じることとして,電話機の設置を許可した。
Dは,同日ころ,同行していた工事担当者に,原告X2の事務所に,主装置及び電話機を設置させた。
なお,株式会社エヌ・ティ・ティ・ネオメイト関西は,平成15年9月1日から同月末日まで,原告X2の事務所が入居する大東市〈以下省略〉所在のaビル前の道路において,通信用地下ケーブルの点検及び修理のため,マンホール内にてケーブルの点検及び修理の工事を行っていた。
(甲47,甲65ないし甲69,甲72,証人D,原告X2)
b 原告X2は,平成15年9月22日,リース契約書(乙9)に署名押印したが,同書面には,申込人として「X2会計事務所」,「税理士 X2」と記載されているほか,前記第2・1(2)イ(ア)のとおりの内容の月額リース料及びリース期間が記載されている。
また,原告X2は,同日,原告X2の事務所の電話回線をアナログ回線からデジタル回線に変更した。
(甲47,甲65,甲67,甲69の2,乙9,原告X2)
c その後,同月26日午前10時10分ころ,被告担当者が原告X2に架電し,原告X2リース契約(1)のリース物件の設置を確認した。
このようにして,原告X2は,被告との間で,前記第2・1(2)イ(ア)の内容の原告X2リース契約(1)を締結した。
(イ) 原告X2リース契約(2)
a Dは,平成15年10月27日,原告X2の事務所を訪問し,「このファックスもすぐ使えなくなるからこのファックスを使ってください。」等と言って,持参したファックスを,原告X2の事務所に設置した。
b Dは,同年11月5日,ファックスに関するリース契約書(甲43)を持参して原告X2の事務所を訪問し,原告X2に対し,リース契約書への署名を求めた。
原告X2は,これに応じてリース契約書(甲43)に署名したが,同書面には,申込人として「X2会計事務所」,「税理士 X2」と記載されているほか,前記第2・1(2)イ(イ)のとおりの内容の月額リース料及びリース期間が記載されている。
(甲43,47,65,67,原告X2)
c その後,同月6日,被告担当者が原告X2に架電し,原告X2リース契約(2)のリース物件の設置を確認した。
このようにして,原告X2は,被告との間で,前記第2・1(2)イ(イ)の内容の原告X2リース契約(2)を締結した。
(ウ) その後の経緯
原告X2は,電話代が安くなっていないと思い,メディアサポート及び被告に苦情を述べたことがあったものの,被告に対し,原告X2各リース契約に基づき,平成18年9月4日まで,合計35万2800円のリース料を支払った。原告X2は,同年10月4日以降,リース料の支払をしていない。
また,原告X2は,リース料を払っている間は,原告X2各リース契約のリース物件をいずれも使用していた。
(前提事実,原告X2)
ウ 原告X1各リース契約及び原告X2リース契約(1)のリース物件であるビジネスホンは,いずれも,主装置とそれに接続して使用する電話機端末から構成されており,主装置に電話機端末を複数接続して使用することが想定されている物品である(甲73,甲75)。
(3)  被告におけるクレーム処理等について
ア 被告は,平成14年9月ころ,メディアサポート案件で,初めてユーザーからクレームを受けた。被告は,平成15年6月ころから平成16年2月ころにかけて,メディアサポート案件で,少なくとも12件のユーザーから委任を受けた弁護士名での内容証明郵便等によるクレームを受け,また,メディアサポート案件について,ユーザーから被告を相手方として,民事調停が申し立てられる事件もあった。原告X1各リース契約が締結された平成17年10月ころまでのメディアサポート案件及び原告X2各リース契約が締結された平成15年9月ころまでのメディアサポート案件の数は,それぞれ約5600件,約2600件である。それらのうち,被告に対して,何らかのクレームが届いたのは,平成17年10月ころまでに95件ほど,平成15年9月ころまでに11件ほどある(乙13,証人E)。
弁護士名での内容証明郵便等には,メディアサポートの営業担当者が,ユーザーに対し,「近い将来,日本全国がデジタル回線になるため,現在使用中の電話機は使用不可となり,機種変更が必要となる」,「NTTが屋外の工事ミスをしたため,電話機に支障が出ているので電話機の工事をする」などの虚偽の説明をしてリース契約を締結させた旨が記載されているもの(甲137,甲139の1,甲146),「リース契約を締結すれば電話料金が安くなる」などの虚偽の説明をしてリース契約を締結させた旨が記載されているもの(甲138の1,甲141の1,甲142,甲147)などがある。
イ メディアサポートは,平成15年6月から平成16年8月までの1年あまりの間に,Dが営業を行ったユーザーから,10件余りのクレームを受けていた。クレームの中には,Dが,平成15年9月ころ,もうすぐデジタル回線になる,電話料金が従来の半分になるなどと説明して電話機の取替えを勧めたとの本件と同種のクレームも含まれていた(甲52,53)。
ウ 被告においては,クレームの名義人が弁護士か否かで対応を異にすることはなく,ユーザーないし弁護士からメディアサポートに対するクレームがあった場合,メディアサポートに対し,ファックス等により,クレームの内容を伝達し,クレームで指摘を受けた事実の確認をするとともに,メディアサポートからユーザーに説明をするよう伝えていた。メディアサポート案件におけるクレームの発生件数は,平成17年初旬までは1か月あたり5件程度で推移していたが,同年中旬以降は1か月あたり10件程度に増加していった。同案件におけるクレームの処理件数は,平成14年度は2件程度,平成15年度は5件程度,平成16年度は28件程度であったが,クレームが増加してきた平成17年度は50件,平成18年度は51件であるところ,解決に時間がかかりクレーム増に従い未解決クレーム数も増加したが,平成18年5月の時点において,未解決クレーム数は12件程度であった(乙13,証人E)。
(4)  証人らの供述等について
ア 証人B
(ア) 前記1(2)アの認定事実について,証人Bの証言中,電話機を替えれば電話料金が安くなるというような短絡的なセールストークはしておらず,3分10円の電話料金が2分6円になるというメディア回線を使えば,2分以内に電話を切った場合,10円かかるところが6円で済むため,結果として電話料金が安くなるという営業を行っていた,原告X1の件でメディア回線を使用する手続を行い,メディアサポートの回線の申込書等を作成して原告X1に交付したことなどを供述し,前記認定事実に反する部分が存在する。
しかし,メディアサポートにおいてメディア回線なる電話回線又は通話料金割引サービスを提供していたこと,メディア回線の導入に関する申込書等が作成されていたこと,原告X1についてメディア回線を導入する手続を行ったことを裏付ける客観的な証拠はない(甲110の1及び2)。またメディアサポートの事業内容は通信機器や通信回線関連商品等の販売,設置,保守等であって(甲87),メディアサポートが独自の電気通信事業を行っていることを裏付ける客観的な証拠はない。また,同証人の供述自体,メディア回線が具体的にどのようなものか尋ねられても,「メディアサポートで扱っている回線らしいんですけれども,詳しく認識しては売ってなかった」などと供述し,自社が提供する商品の内容を把握していなかったことがうかがわれる。以上からすれば,証人Bの供述には,その重要な部分について虚偽が含まれているといえ,その信用性は低いといえる。
(イ) 以上からすれば,証人Bの供述中の前記1(2)ア記載の認定事実と異なる部分を信用することはできず,他に前記1(2)ア記載の認定事実を左右するに足りる証拠はない。
イ 証人D
(ア) 前記1(2)イの認定事実について,証人Dの証言中,電話が使えなくなるので替える必要があるという方法で勧誘したことはない,原告X2の事務所の前で電話工事をしていた記憶はない,審査より先に物件を納入したことはない,電話代が安くなるというセールストークについては,電話回線をアナログからISDNにすることで2回線分使え,1回線分の経費を節約できる趣旨であったなどと供述し,前記認定事実に反する部分が存在する。
しかし,前記1(2)イ,(3)で認定したとおり,原告X2各リース契約において,リース契約書が作成されたのは,それぞれのリース物件が設置された後であるし,原告X2は,従業員を雇わず単独で税理士業を行っており,電話回線も1本で,ファックス機能付き電話を使用しており,同時に複数の電話を使用する必要はなかったのであるから,電話回線をアナログからデジタルに変更することによるメリットはなく,かえって,基本料金が上がるというデメリットもある(甲69の1及び2)。
また,Dは,平成15年6月から平成16年8月までの1年あまりの間に,10件余りのクレームを受けていたところ,メディアサポートに対し,Dが,原告X2各リース契約が締結されたころである平成15年9月29日,他のユーザーに対し,もうすぐデジタル回線になる,電話料金が従来の半分になるなどと説明して電話機の取替えを勧めたとの本件と同種のクレームが寄せられている。
このように,原告X2各リース契約を締結するに至る経過に虚偽があり,また,証人Dが供述する原告X2における電話機及びファックスを導入する動機には不自然な点があり,またDが原告X2各リース契約と同種の方法でリース契約の営業活動を行っていたことがうかがわれることからすれば,証人Dの供述のうち,前記1(2)イの認定事実に反する部分の信用性は低い。
他方,前記1(2)イ(ア)で認定したとおり,原告X2リース契約(1)の物件である電話機が設置されたころ,原告X2事務所の前の道路において,電話工事が行われていたのであり,事務所前の道路で電話線の工事をしていたとする原告X2の尋問結果及び陳述を裏付けるものとなっている。
(イ) 以上によれば,証人Dの証言中,前記1(2)イ記載の認定事実と異なる部分は,原告X2作成の陳述書である甲第47及び第65号証並びに原告X2の本人尋問の結果に照らして措信しがたく,他に前記1(2)イ記載の認定事実を左右するに足りる証拠はない。
2  争点①(詐欺取消しの可否)及び争点②(錯誤の有無)について
(1)  原告X1について
前記第3・1(2)アで認定したとおり,Bらが,原告X1リース契約(1)を勧誘する際,原告X1に対し,電話機を替えることで電話代を安くすることができる旨を説明したこと,そのため,原告X1が,電話代が安くなることやリース料を経費として計上して経費を節約するメリットを考慮した上,従前日常業務に使用していた電話機が古くなっていたこともあって,Bらの勧誘に応じて原告X1リース契約(1)を締結したことなどからすれば,原告X1が,原告X1各リース契約を締結することにより,電話機及びファックスが新しくなり,税務上のメリットがあることなどの利益を受けることを考慮に入れても,原告X1は,Bらの不適切な説明により,電話機を替えれば電話代が安くなるとの錯誤に陥ったために原告X1各リース契約を締結した可能性が高いというべきである。
(2)  原告X2について
前記第3・1(2)イで認定したとおり,Dが,原告X2各リース契約を勧誘する際,原告X2に対し,原告X2の事務所の前で行われていた電話工事を口実として,現在使っている電話機及びファックスがすぐに使えなくなり,新しいものに替えれば電話料金も安くできる旨説明し,電話機及びファックスを新しいものに交換することを提案したことが認められることからすれば,原告X2が,原告X2各リース契約を締結することにより,電話機やファックスが新しくなり,税務上のメリットを受けることなどの利益があることを考慮に入れても,原告X2は,Dの不適切な説明により,電話工事により電話機やファックスが使えなくなるとの錯誤に陥ったために原告X2各リース契約を締結した可能性が高いというべきである。
(3)ア  仮に,本件各リース契約が,メディアサポートの販売員であるBらやDらの詐欺行為により,原告らにおいて錯誤に陥ったことにより締結されたものである場合,原告らが,被告に対し,本件各リース契約が,上記メディアサポートの販売員であるBらやDの詐欺行為により,原告らにおいて錯誤に陥ったことにより締結されたものであることを主張できるかが問題となる。
イ  詐欺について
(ア)a 原告らは,代理人が相手方に対して詐欺を行ったとき,本人の知,不知を問わず,相手方は法律行為を取り消すことができるとした上,メディアサポートが被告の代理人であったと主張する。
しかし,前記第3・1(1)において認定したとおり,本件業務提携契約書において,メディアサポートは被告の代理人ではないことが明記されていることに加え,実態としても,メディアサポートは,被告に代わって,ユーザーに対してリース契約の説明をし,リース契約書や物件借受証をユーザーから受け取り被告に交付するなど,リース契約の締結に係る事務手続を代行するものであり,メディアサポートがリース契約の締結に関する被告の事務を一定程度代行しているものの,リース契約を承諾する権限を有していなかったことからすれば,被告が,メディアサポートに対し,リース契約の締結に関する代理権を授与していなかったことは明らかである。
b よって,原告らの上記主張には理由がない。
(イ)a また,原告らは,メディアサポートが被告の代理人ではないとしても,民法110条の適用によって,メディアサポートの詐欺行為について,被告に責任を認めるべきであると主張する。
b しかし,民法110条は,代理人が与えられた代理権限を超えた行為を行った場合に,相手方において代理人に当該行為をする権限があると信じるべき正当な事由があるときは,相手方が本人に対して,法律行為の効果が本人に帰属することを主張できるとする規定であって,代理人の詐欺行為を本人の詐欺行為と同視することを認める規定ではない。
また,民法110条の表見代理は,本人が代理人に基本代理権を与えていることを前提とし,この基本代理権は事実行為の代行権限では足りないと解されているところ,上記(ア)のとおり,被告は,メディアサポートに対し,本件業務提携契約上,リース契約の締結の事務手続に関する事実行為の代行権限を与えていたことまでは認められるが,これを超えて何らかの代理権を授与していたことまでは認められないのであるから,基本代理権を前提とした民法110条を適用ないし類推適用する基礎を欠くというべきである。
c よって,原告らの上記主張には理由がない。
(ウ)a 原告らは,被告が,原告X1各リース契約及び原告X2各リース契約が,メディアサポートの詐欺行為によって締結されたものであることについて悪意又は有過失であったから,民法96条2項により,被告に対して詐欺による取消しを対抗できる旨主張する。
b 上記第3・1(3)において認定したとおり,被告は,平成14年9月ころから平成15年9月ころまで,メディアサポート案件を約2600件程度扱い,その間,11件ほどのクレームを受理したこと,同時期から平成17年10月ころまで,メディアサポート案件を5600件ほど扱い,95件ほどのクレームを受理したこと,被告が扱ったメディアサポート案件のクレームには,電話機が使えなくなる,電話代が安くなるなどといった,本件におけるBらやDの説明と類似するとみられる説明を受けたことに対するクレームも含まれていたが,被告はメディアサポート案件におけるクレームをメディアサポートに転送してクレームの解決を依頼したところ,ほとんどのクレームは結局リース料の支払を再開する,リース契約をメディアサポートの負担で解約するなどの方法により解決を見たこと,クレームはユーザー本人からのものと弁護士が介入してなされたものとがあったが,対処方法としては違いはなかったことなどが認められる。
そうすると,そもそもメディアサポート案件のうちクレームが発生する割合が特に高いとまではいえないこと,それらのクレームには本件に類似する内容のものもあったが,その内容が客観的な証拠等により事実であると確認されていたわけではないこと,メディアサポート案件のクレームは,メディアサポートによってほぼ解決をされていたことなどからすれば,メディアサポートの販売員がリース契約の締結に当たってした説明に問題があり,それが原因でクレームが発生したとしても,事後的な対応において,発生したクレームがほぼ解決に至っている以上,被告において,メディアサポートの販売員が,営業活動を行うに当たって,電話機を替えれば電話料金が安くなる,現在使っている電話機が使えなくなるから電話機を替える必要があるなどといった欺罔行為を行っていたと認識していたとまで認めることはできない。
また,リース会社としては,加盟店の取り扱うリース契約について解約率が高い,クレームが多いなどの事情がない限り,リース契約書,リース物件の借受確認証等のリース契約を締結するに当たって必要な書類の記載等を確認し,電話等でユーザーの意思確認をした上で,不合理な点や不自然な点がないと判断すれば,適切にリース契約の説明等が行われたものと判断して差し支えないといえるから,仮にリース契約締結に当たっての説明において,加盟店の販売員に詐欺行為があったとしても,直ちに,リース会社が加盟店の販売員の詐欺行為を知らなかったことに過失があったと評価することはできない。
本件では,上記のとおり,原告X1各リース契約,原告X2各リース契約の締結時において,メディアサポートの扱う案件について,他の加盟店と比較して特に解約率が高いとかクレームが多いといった事情は見あたらず,また,原告X1各リース契約のリース契約書,借受確認証の記載に特段不自然な点はなく,原告X1は,被告が行った電話による意思確認の際,特にリース契約の締結過程に問題があった旨を回答した形跡はない。
なお,原告X2各リース契約においては,前記認定事実のとおり,リース物件の設置がリース契約の締結に先行して行われているという事情があり,原告X2リース契約(2)のリース契約書のお申込み日欄の記載と借受確認証の借受日欄の記載の日付を比較すれば,不自然であるといえなくもない。しかし,原告X2は,被告が行った電話による意思確認の際,メディアサポートの販売員が勝手にリース物件を設置したなどの苦情等を申し出ていないのであるから,被告において,原告X2各リース契約の締結の際にメディアサポートの販売員による欺罔行為があったと疑うべき事情があったとまでいうことはできない。
c したがって,被告が,メディアサポートの販売員であるBら及びDの欺罔行為によって,原告らが錯誤に陥ったことにより本件各リース契約が締結されたことについて,知っていたとはいえないし,知らなかったことについて,過失があるということもできない。
d なお,原告らは,被告がクレーム処理のほとんどを加盟店に依頼し,被告自ら対応していないことが問題であるとの趣旨の指摘をする。
しかしながら,前記認定事実のとおり,本件業務提携契約上,ユーザーに対するリース契約の説明等は加盟店が行うこととなっていることから,リース契約の締結についての交渉やユーザーとのやりとり,あるいは納入したリース物件についての具体的な情報を保有しているのは,被告よりも加盟店であるといえ,加盟店がクレーム処理に当たった方がクレーム処理が円滑に進むことは否定できない以上,被告がクレーム処理を加盟店に依頼することが不合理であるとまではいえない。
(エ)a 原告らは,被告がメディアサポートにリース契約の事務手続を代行させることにより利益を得ている以上,メディアサポートによる詐欺行為に関するリスクも被告が負担すべきであるとして,被告の知,不知を問わず,原告らは詐欺取消しを被告に対抗できると主張する。
b この点について,消費者契約法5条1項は,事業者が第三者に対し,当該事業者と消費者との間における消費者契約の締結について媒介することの委託をし,当該委託を受けた第三者が消費者に対して同法4条1項から3項までに規定される不実告知等をしたときは,消費者は消費者契約の申込み又は承諾の意思表示を取り消すことができるとして,民法96条2項の特則を定めている。
後記のとおり,原告らは,いずれも,税理士業を営む者であり,その事業のために本件各リース契約を締結したのであるから,「消費者」(消費者契約法2条1項)に当たらず,本件各リース契約は「消費者契約」(同法2条3項)に当たらない。したがって,本件各リース契約の締結について同法5条1項は適用されず,他に,被告がメディアサポートにリース契約の事務手続を代行させることにより利益を得ていることから,被告の知,不知を問わず,被告に対し詐欺取消しを対抗できると解すべきことを認める法律上の根拠はないから,原告らの主張には理由がない。
(オ) 原告らは,被告は,メディアサポートと一体であるから,信義則上,原告らがメディアサポートに対して対抗できることは,被告に対しても対抗できると主張するが,メディアサポートは被告とは別個独立の法人格を有し,本件全証拠によっても,被告とメディアサポートが一体であると認めることはできないから,原告らの主張には理由がない。
ウ  錯誤について
(ア) 前記第1・1(2)アのとおり,原告X1は,リース物件を日立主装置ET-610iA・1台及び同電話機ET-610iA・6台,リース期間を平成17年10月4日から平成24年10月3日まで,リース料及び消費税を月額合計1万0920円とする原告X1リース契約(1)及びリース物件を日立電話機ET-610iA・1台,リース期間を平成17年10月1日から平成24年9月30日,リース料を月額合計6090円とする原告X1リース契約(2)を申し込んだことが認められ,原告X1各リース契約の内容であるリース物件,期間,月額リース料について錯誤があったとはいえない。
前記第1・1(2)イのとおり,原告X2は,リース物件を日立主装置ET-410iA・1台及び同電話機ET-610iA・1台,リース期間を平成15年9月25日から平成22年9月24日まで,リース料及び消費税を月額合計5040円とする原告X2リース契約(1)及びリース物件をムラッテクスファックス機F351・1台,リース期間を平成15年11月4日から平成21年11月3日,リース料を月額合計5040円とする原告X2リース契約(2)を申し込んだことが認められ,原告X2各リース契約の内容であるリース物件,期間,月額リース料について錯誤があったとはいえない。
(イ) 上記第3・1(2)ア,イのとおり,原告らが陥った可能性のある錯誤は,電話機を替えれば電話料金が安くなる,現在使っている電話機やファックスが使えなくなる,というものであり,原告ら各リース契約締結の動機の錯誤に当たるので,原告らの錯誤を被告に対して主張するためには,これらの動機が,被告に対して明示的ないし黙示的に示されている必要がある。
この点,本件各リース契約の際,原告らからメディアサポートを介して被告に対して差し入れられたリース契約書や借受確認証の記載からは,このような動機の存在はうかがわれず,被告からの電話による意思確認の際にも,このような動機について原告らが被告に告げたことも認められない。
(ウ) もっとも,原告らの錯誤がメディアサポートの販売員による説明に基づいていることから,原告らの錯誤は少なくともメディアサポートに対しては示されていたとはいえる。
しかしながら,メディアサポートは被告とは別個独立の法人格を有し,本件の全証拠によっても,リース会社とその加盟店という関係を超えた資本関係等や人的関係の存在は認められない。また,上記のとおり,被告がメディアサポートに対し,リース契約の締結について代理権を授与していたことも認められない。
したがって,原告らの各リース契約締結の動機がメディアサポートに対して示されていたとしても,これをもってその動機が被告に対して示されていたとみることはできないから,原告は錯誤無効を被告に対して主張することはできない。
(4)  小括
以上のとおり,仮に原告ら各リース契約が,メディアサポートの販売員であるBらやDの欺罔行為により原告らが錯誤に陥った結果として締結されたものであるとしても,原告らは詐欺による意思表示の取消しを被告に対して主張することはできず,また,錯誤に陥ったことを被告に主張することもできないのであるから,争点①及び②に関する原告らの主張には理由がない。
3  争点③(提携販売事業者管理義務違反の有無)について
(1)  原告らは,本件業務提携契約上又は信義則上の注意義務の一内容として,被告には,メディアサポートの扱う商品,販売方法,営業実態,経営内容,他のリース会社の動向等を調査して,その提携関係について厳正に管理し,顧客に対して不測の損害を与えることがないよう配慮すべき提携販売事業者管理義務があるとした上で,被告が前記義務に違反したことを理由にリース料相当額につき損害賠償責任を負う旨の主張をする。
(2)ア  そこで検討するに,そもそも,本件業務提携契約は,前記第3・1(1)のとおり,被告がメディアサポートに対してリース契約締結に関する契約書等の授受といった事務手続を委託することを主な内容とするもので,本件業務提携契約の契約書上,被告がメディアサポートを一般的に管理することを定めた規定は存しない。
イ  また,原告らは,信義則上,提携販売事業者管理義務が発生する根拠として,経済産業省が,平成17年12月6日,業界団体への指導や個人事業者等への注意喚起等を内容としたニュースをホームページに掲載し,リース事業協会に対して提携販売事業者の管理を厳格に見直すことを指導するよう求めたことを指摘する。
さらに,原告らは,特定商取引法の通達改正により,消費者保護が徹底されたことについても指摘する。
しかしながら,これらの行政指導や通達改正により,直ちに原告らが主張するような私法上の提携販売事業者管理義務が発生するものとは解されないのみならず,前記の行政指導や通達改正は,本件各リース契約締結後に行われたものであるから,この点からも,本件各リース契約に関して被告に具体的な私法上の義務を課す根拠となるものではないというべきである。
ウ  原告らは,使用者責任の観点から,被告に,原告らが主張するような内容の提携販売事業者管理義務があると主張するが,前記第3・1(1)のとおり,被告とメディアサポートが締結したのはリース業務提携契約であること,メディアサポートは被告との間でのみ業務提携契約を締結しているわけではないこと,本件業務提携契約上の解除条項は,相手方に本件業務提携契約上の義務違反等があった場合に解除することができるとするもので,被告及びメディアサポートの双方が解除権を有していることなどからすれば,被告が使用者責任の観点からメディアサポートを指揮監督すべきであると解すべき根拠は何ら存しない。
(3)  以上によれば,被告に,私法上の義務として,本件業務提携契約上又は信義則上,メディアサポートの扱う商品,販売方法,営業実態,経営内容,他のリース会社の動向等を調査して,その提携関係について厳正に管理し,顧客に対して不測の損害を与えることがないよう配慮すべき提携販売事業者管理義務があると解することはできない。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告らの提携販売事業者管理義務違反の主張は理由がない。
4  争点④(公序良俗違反の有無)について
(1)  原告X1は,原告X1各リース契約のリース料はリース物件の市場価格に照らして不当に高額であって,暴利行為に当たる旨主張する。
しかしながら,ファイナンス・リース契約は,物件の購入を希望するユーザーに代わって,リース業者が販売業者から物件を購入の上,ユーザーに長期間これを使用させ,その購入代金に金利等の諸経費を加えたものをリース料として回収する制度であり,その実体はユーザーに対する金融上の便宜を付与するものであるから,リース料の支払債務は契約の締結と同時にその金額について発生し,ユーザーに対して月々のリース料の支払という方式による期限の利益を与えるものにすぎず,また,リース物件の使用とリース料の支払とは対価関係に立つものではないというべきである(最高裁平成3年(オ)第1495号同5年11月25日第1小法廷判決参照)から,リース料とリース物件の市場価格を比較して,その当不当を論ずることは容易ではない。
また,証拠(甲11ないし甲13)によれば,原告X1リース契約(1)のリース物件のうち,電話機の定価は3台で34万1000円であること,主装置が市場において18万円で販売されていたことがあったこと,ファックスについては定価が41万4750円であったことが認められるが,他方,原告X1各リース契約においては物件の設置が無料で行われた上,リース物件のメンテナンスやファックス用紙の無料提供が行われていたこと,原告X1はリース料の支払について期限の利益を受けていたことを考慮すると,第2・1(2)ア記載の原告X1各リース契約のリース料が,リース物件の市場価格に照らし著しく不相当であったと即断することもできない。
(2)  また,原告X2は,原告X2各リース契約の締結が,メディアサポートの販売員であるDの押売り同様の行為によるものであって公序良俗に違反する旨主張するが,原告X2各リース契約の締結経緯及びその評価については,前記第3・1(2)イ及び2(3)イ(ウ)bで認定,説示したとおりであり,原告X2各リース契約締結に先立ってリース物件が設置されたことは,リース契約の本来の締結過程に照らして不適切であったとはいえるものの,被告からの意思確認の際に,原告X2がその点を特に問題視することもなかったこと,原告X2が原告X2リース契約(1)に引き続いて原告X2リース契約(2)を締結したことなどからすれば,原告X2各リース契約の締結過程において,Dによる営業行為が公序良俗違反と評価されるとまでいうことはできない。
5  争点⑤(クーリングオフ)について
(1)  原告ら各リース契約のリース物件は,それぞれ電話機ないしファックスであるところ,特定商取引に関する法律施行令3条別表第3第2号は,指定役務として「次に掲げる物品の貸与」を規定し,そのトとして「電話機及びファクシミリ装置」が掲げられており,証拠(甲1の1及び2)によれば,原告ら各リース契約においては,被告がリース物件を賃借人にリース(賃貸)し,賃借人がこれを借り受けるものとされていることが認められるから,電話機及びファックスのリースは,同施行令3条別表第3第2号トに該当する指定役務の提供に当たるというべきである。
(2)  特定商取引法が訪問販売業者に対し広告,勧誘行為,契約書面交付などに関して行為規制を定めている趣旨に照らせば,「販売業者」(同法2条1項1号)とは,消費者に対し契約締結に向けた勧誘活動を実際に行う事業者を指すものと解すべきである。
これを本件についてみると,前記第3・1(1)のとおり,被告とメディアサポートとの間には,リース契約に関する基本契約が締結されており,メディアサポートが被告のリース契約の事務手続を代行していること,原告ら各リース契約もそのようにして締結されたことが認められる。
そうすると,原告らに対するメディアサポートによるリース契約の勧誘,メディアサポートから被告へのリース物件の販売,原告ら,被告間のリース契約の締結が全体として一体を成しているものであり,かつ,被告は,リース契約の勧誘から締結に至るまでメディアサポートの従業員をいわば手足として利用しているものということができる。
したがって,本件において,原告らがメディアサポートの従業員に対して本件リース契約の申込み等を行っていたとしても,本件リース契約は,被告による訪問販売に当たるものというべきであり,被告は「販売業者」に当たる。
(3)ア  原告らは,原告らが個人非営利事業者である税理士であって,営業や商行為としての契約は観念できないし,営利の目的をもって反復継続的に電話機等を購入したとする事情もないから,本件各リース契約は「営業のために若しくは営業として締結する契約」に当たらないとして,特定商取引法26条1項は適用されず,クーリング・オフの適用は除外されないと主張する。
同項の規定の趣旨は,特定商取引法が取引に不慣れな消費者の保護を目的とするものであるから,契約の目的,内容が営業のためのものである場合には適用除外とし,営業活動に関連して行われる取引については,私的自治又は業界の商慣習に委ねるのを相当とするというものである。税理士の業務もそれが実際上営利の目的をもって行われることがあることは否定できないのであって,そのことと,商法上,税理士の業務が,税理士の商人該当性の判断においては,その職務の精神的労務性や歴史的,伝統的な経緯から,営業に当たらないと解されていることとは,別の事柄であって,同項の適用上,ある事業や職務が同項にいう営業に当たるかどうかは,その実態が営利を目的とした事業・職務に当たるといえるかどうかにより判断されるべきである。
イ  原告らは,特定商取引法の前身である訪問販売法の昭和63年改正に至る経緯や同法の適用範囲を拡大するという同改正の趣旨からすれば,同改正前には商行為に当たらないとして適用除外とはされなかった税理士業については,当然に特定商取引法適用されると主張する。
しかしながら,同改正の趣旨は,豊田商事事件などで問題となった利殖商法が,消費者が購入する場合であっても,絶対的商行為(商法501条1号)に当たり,訪問販売法が適用されないこととなり妥当でないから,特定商取引法の目的である消費者保護の見地から,商法上の商行為概念を基準とする枠組みに代わり,「営業のため若しくは営業として」行うか否かを基準とする枠組みに変更することにあったと解される。
そうすると,同改正の趣旨は,単に,訪問販売法の適用範囲を広げたというものではないのであるから(同改正後の特定商取引法の施行に関する経済産業省の通達においても,「「営業のために若しくは営業として」とは,本法においては商行為に限定するものではない。」とされているところである(甲131)。),改正前に税理士に訪問販売法が適用されていたとしても,そのことから直ちに,税理士に特定商取引法の適用があると解することはできず,上記のとおり,「営業のために若しくは営業として」締結されたものといえるかを当該事業や職務及び取引の実態から判断しなければならないというべきである。
(4)  原告X1について
ア 前記第3・1(2)アで認定したとおり,原告X1は,原告X1各リース契約を締結する以前から,自宅とは別の場所に所在する税理士事務所において,電話回線を5,6本使用してリース物件とほぼ同様の機能を有する電話機を同じ台数使用して税理士業務を行っていたこと,原告X1の税理士事務所は年間4000万円程度の売上げがあったが,税理士業による所得を事業所得として申告し,原告X1各リース契約のリース料を経費に計上していたこと,原告X1は,現在も,その経営する事務所においてリース物件である電話機及びファックスを使用していること,リース契約を締結した動機は以前の電話機が古くなっていたからであること,リース契約は事務所を開設する税理士の肩書を明記して締結したことなどからすれば,事務所の所在及び活動実態,電話機及びファックスの使用状況並びに原告X1各リース契約締結前後の経緯等に照らし,原告X1は,営利を目的として税理士業を営んでおり,その「営業のために」原告X1各リース契約を締結したと認めるのが相当である。
イ したがって,特定商取引法26条1項1号により,いわゆるクーリングオフを定める同法9条は原告X1各リース契約には適用されないこととなるから,原告X1各リース契約についてのクーリングオフの主張は理由がない。
(5)  原告X2について
ア(ア) 前記第3・1(2)イによれば,原告X2は,原告X2各リース契約を締結した当時,従業員を使用せず,年間の売上げは300万円程度にすぎなかったことが認められ,税理士としての活動実態が無かったのではないかとの疑問を差し挟む余地がないではないが,他方,原告X2は,自宅とは別の大阪府大東市に所在する事務所において,事務所の扉等に「X2会計」ないし「X2会計事務所」との表示を掲げ,電話機及びファックスを使用して税理士業務を行っており,顧問先を有して一定の売上げを得ていたこと,リース契約は,事務所を開設する税理士の肩書を明示して締結したこと,原告X2は,平成18年9月まで約3年にわたりリース料を支払い,その間は事務所においてリース物件を使用していたことがそれぞれ認められることなどからすれば,原告X2も,営利を目的として税理士業を営んでいたというべきであり,原告X2が,実態として税理士業務をほとんど行っていないとまではいえない。
(イ) ところで,前記第3・1(2)イによれば,原告X2は,原告X2各リース契約を締結する前は,ファックス番号と電話番号が同一のファックス機能付きの電話機を用いて,従業員を雇うことなく税理士業を不自由なく営んでおり,前記のような原告X2の事業規模や内容に照らすと,その税理士業務のために,一般の家庭用電話機が1台あれば十分であり,原告X2リース契約(1)のリース物件の電話機のように多用な機能を有し,主装置に複数の電話機端末を接続することができるようなビジネスホンをその営業のためにおよそ必要としていなかったことは明らかである。
このように契約者の営業の規模等の実態に即して具体的に検討した場合におよそ当該営業のために必要でないことが明かな物品の販売や役務の提供は,もはやその営業のためにされたものとはいい難いというべきであり,特定商取引法26条1項1号には該当しないというべきである。
これに対し,原告X2は,原告X2リース契約(2)を締結する以前からファックスを使用して業務を行っていたのであるから,原告X2は,原告X2リース契約(2)のファックスをその営業のために使用していたものと認めるのが相当である。
(ウ) そうすると,原告X2リース契約(1)については,原告X2の税理士業の営業のために若しくは営業として締結されたものとはいえないが,原告X2リース契約(2)については,原告X2の税理士業の営業のために若しくは営業として締結されたものというべきである。
イ したがって,前提事実のとおり,原告X2が,丙事件訴状により,クーリング・オフの権利を行使して原告X2各リース契約を解除する意思表示をしたことは当裁判所に顕著であるところ,この意思表示は,原告X2リース契約(1)についてはクーリング・オフの権利を行使したものとして有効であるが,原告X2リース契約(2)についてはクーリング・オフの権利を行使することができないから無効である。
6  争点⑥(被告が支払うべき額)及び⑦(原告らの支払義務の存否及び支払うべき額)について
(1)  以上によれば,被告の支払義務に関する争点⑥のうち,原告X1の本訴請求に関する部分は,前記認定,説示のとおりであるから,判断の必要はない。
原告X2リース契約については,前記第3・5(3)で説示したとおり,原告X2リース契約(1)は,クーリング・オフにより解除されたのであるから,原告X2の本訴請求中,被告に対し,既払リース料18万1440円及びこれに対する原告X2が被告に対してクーリング・オフの意思表示及び既払リース料の返還を催告した平成19年7月6日の翌日である同月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求は理由があるが,その余の請求は理由がない。
(2)ア(ア) 前記第3・1(2)のとおり,原告X1各リース契約は有効に成立していると認められるから,原告X1は,本件各リース契約に基づくリース料の支払義務があったと認められる。
それにもかかわらず,原告X1は,平成18年8月4日以降,リース料の支払をしないから,同日の経過をもって期限の利益を喪失したものと認められる。
(イ) なお,原告X1は,原告X1リース契約(2)は,リース物件である電話機が納入されていないから不成立である,借受確認証を発行したことに故意又は過失がないからリース料の支払を拒むことができると主張する。
しかしながら,前提事実のとおり,原告X1リース契約(2)についての「リースお申込みの内容」と題する書面(甲1の2)には「日立電話機ET-610iA 1台」をリース物件とすることが明記されていることから,原告X1と被告との間において,電話機をリースすることについての意思表示の合致があるといえ,前記第3・1(2)ア(イ)のとおり,電話機をリース物件とする原告X1リース契約(2)が成立したことは明らかである。また,証拠(乙1の2,原告X1)によれば,原告X1には,電話機をリース物件とするリース契約の申込みをすることについて表示と真意の不一致はないこと,原告X1は,実際にはファックスが納入されていることを知りながら,Bらを介して被告に対し,原告X1リース契約(2)について電話機のリースを受けたことを証する借受確認証を交付したこと,クレディは同年10月17日午後3時04分ころ,被告担当者が原告X1に架電し,原告X1リース契約(2)リース物件の設置を確認したことが認められるから,原告X1は,信義則上,被告に対し,リース物件である電話機の納入がないとして原告X1リース契約(2)のリース料の支払を拒むことができないというべきである。
(ウ) そして,第2・1(2)記載の契約内容を前提とすると,原告X1は,原告X1各リース契約の残リース料127万5750円及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日である平成18年8月5日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払義務があるというべである。
イ(ア) 前記第3・1(2)のとおり,原告X2各リース契約は有効に成立していると認められるが,前記第3・5のとおり,原告X2リース契約(1)は,クーリング・オフにより解除されたから,原告X2は,原告X2リース契約(1)に基づくリース料の支払義務は負わないが,原告X2リース契約(2)に基づくリース料の支払義務があるというべきである。
それにもかかわらず,原告X2は,平成18年10月4日以降,リース料の支払をしないから,同日の経過をもって期限の利益を喪失したものというべきである。
(イ) そして,第2・1(2)記載の契約内容を前提とすると,原告X2は,原告X2リース契約(2)の残リース料19万1520及びこれに対する期限の利益喪失の日の後の日であることが当裁判所に顕著である平成20年2月28日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払義務があるというべきである。
7  結論
以上のとおりであるから,原告X1の請求は理由がないからこれを棄却し,原告X2の請求は18万1440円及びこれに対する平成19年7月7日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容すべきであるが,その余は理由がないから棄却し,被告の原告X1に対する請求は理由があるからこれを認容し,被告の原告X2に対する請求は19万1520円及びこれに対する平成20年2月28日から支払済みまで14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容すべきであるが,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 矢尾渉 裁判官 竹添明夫 裁判官 前田亮利)

 

別紙
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