平20(ワ)2752号・平20(ワ)9543号 リース料請求本訴事件、不当利得返還請求反訴事件

裁判年月日  平成21年 4月23日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)2752号・平20(ワ)9543号
事件名  リース料請求本訴事件、不当利得返還請求反訴事件
裁判結果  本訴一部認容、反訴一部認容  文献番号  2009WLJPCA04238001

要旨
◆原告が、被告会社との間で電話機のリース契約を締結し、被告会社の代表者である被告Y1が被告会社の債務を連帯保証し、また、被告会社との間でファクシミリのリース契約を締結し、被告らが被告会社の債務を連帯保証したと主張して、被告らにリース料の支払等を求めた(本訴)のに対し、被告会社及び被告Y1が、原告に対し、クーリング・オフにより各リース契約を解除したと主張して、不当利得返還請求権に基づき既払リース料の返還を求めた(反訴)事案において、電話機及びファクシミリのリースは特商法の指定役務に該当し、原告は役務提供事業者に該当するとした上で、ファクシミリのリース契約は被告会社の営業のため若しくは営業として締結され、クーリング・オフとしての解除はできないとされた事例

参照条文
民法446条
民法587条
民法601条
民法703条
特定商取引に関する法律2条
特定商取引に関する法律9条
特定商取引に関する法律26条

裁判年月日  平成21年 4月23日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)2752号・平20(ワ)9543号
事件名  リース料請求本訴事件、不当利得返還請求反訴事件
裁判結果  本訴一部認容、反訴一部認容  文献番号  2009WLJPCA04238001

平成20年(ワ)第2752号 リース料請求本訴事件
平成20年(ワ)第9543号 不当利得返還請求反訴事件

東京都中央区〈以下省略〉
原告(反訴被告) 株式会社日本ビジネスリース
代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁護士 中村雅男
同 安江克典
東京都豊島区〈以下省略〉
原告(反訴被告)補助参加人 西武通信株式会社
代表者代表取締役 B
訴訟代理人弁護士 井上清成
訴訟復代理人弁護士 吉成紗恵
東京都江東区〈以下省略〉
被告(反訴原告) 有限会社佐々木商店
代表者清算人 Y1
東京都江東区〈以下省略〉
被告(反訴原告) Y1
東京都江東区〈以下省略〉
被告 Y2
被告ら訴訟代理人弁護士 山田裕祥

 

 

主文

1  被告らは,原告(反訴被告)に対し,連帯して金55万3350円及びこれに対する平成18年8月28日から支払済みまで年14.6パーセント(年365日の日割計算)の割合による金員を支払え。
2  原告(反訴被告)は,被告(反訴原告)有限会社佐々木商店に対し,金37万8000円を支払え。
3  原告(反訴被告)のその余の本訴請求並びに被告(反訴原告)有限会社佐々木商店のその余の反訴請求及び被告(反訴原告)Y1の反訴請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用は,本訴反訴を通じ,これを4分し,その1を被告らの負担とし,その余を原告(反訴被告)の負担とする。
5  この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
1  本訴請求
(1)  被告(反訴原告)有限会社佐々木商店及び被告(反訴原告)Y1は,原告(反訴被告)に対し,連帯して金120万9600円及びこれに対する平成18年8月28日から支払済みまで年14.6パーセント(年365日の日割計算)の割合による金員を支払え。
(2)  被告らは,原告(反訴被告)に対し,連帯して金55万3350円及びこれに対する平成18年8月28日から支払済みまで年14.6パーセント(年365日の日割計算)の割合による金員を支払え。
2  反訴請求
原告(反訴被告)は,被告(反訴原告)有限会社佐々木商店及び被告(反訴原告)Y1に対し,金46万7250円を支払え。
第2  事案の概要
1  本件本訴は,リース業者である原告(反訴被告,以下「原告」という。)が,被告(反訴原告)有限会社佐々木商店(以下「被告会社」という。)と間でティ・エム・コーポレーション株式会社(以下「ティ・エム・コーポレーション」という。)の販売する電話機のリース契約を締結し,被告会社の代表者である被告(反訴原告)Y1(以下「被告Y1」という。)がリース契約に基づく被告会社の債務を連帯保証した旨主張して,被告会社及び被告Y1に対し,連帯してリース料残金120万9600円及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日である平成18年8月28日から支払済みまで約定利率年14.6パーセント(年365日の日割計算)の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,被告会社との間で原告補助参加人西武通信株式会社(以下「補助参加人会社」という。)の販売するファクシミリのリース契約を締結し,被告らがそのリース契約に基づく被告会社の債務を連帯保証した旨主張して,被告らに対し,連帯してリース料残金55万3350円及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日である平成18年8月28日から支払済みまで約定利率年14.6パーセント(年365日の日割計算)の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
これに対し,本件反訴は,被告会社及び被告Y1が,原告に対し,クーリング・オフの権利を行使して本件各リース契約を解除した旨主張して,原告に対し,不当利得返還請求権に基づき,既払リース料合計46万7250円の支払を求める事案である。
2  前提事実(争いがないか,証拠等により容易に認められる事実)
(1)  原告は,ファイナンス・リース等を業とする会社であり,被告会社は,冷凍食品の販売,氷雪業等を業とする会社であり,被告Y1は被告会社の代表取締役であった者である。被告会社は,平成17年12月31日社員総会の決議により解散した。
(2)ア  原告は,平成16年11月24日,被告会社との間で,原告を賃貸人,被告会社を賃借人として,次の内容のリース契約(以下「本件リース契約1」という。)を締結した。
(ア) リース物件 アレクソン製IP電話アダプター IPA201 1台(以下「本件電話機」という。)
(イ) リース期間 平成16年11月24日から7年(84か月)
(ウ) リース料総額 158万7600円(消費税込み)
(エ) 月額リース料 1万8900円(消費税込み)
(オ) 支払方法 リース料は,リース期間中毎月27日(金融機関の休業日の場合は,翌営業日)限り口座振替の方法により支払う。
(カ) 期限の利益喪失 被告会社がリース料の支払を1回でも遅滞したときは,被告会社は,原告に対し,残リース料並びに消費税額の全額を直ちに支払う。
(キ) 遅延損害金 年14.6パーセント(年365日の日割計算)
イ  原告は,被告会社に対し,平成16年11月24日までにリース物件である本件電話機を引き渡した。
ウ  被告Y1は,平成16年11月24日,原告に対し,本件リース契約1に基づく被告会社の原告に対する一切の債務について連帯して保証する旨約した。
エ  被告会社のリース料の支払状況は,別紙1リース料請求・入金明細表の入金額欄記載のとおりであり,被告会社は,平成18年8月27日のリース料の支払を怠ったので,同日の経過により期限の利益を喪失した。
本件リース契約1に基づく被告会社の既払リース料は,合計37万8000円である。
(3)ア  原告は,平成17年9月26日,被告会社との間で,原告を賃貸人,被告会社を賃借人として,次の内容のリース契約(以下「本件リース契約2」という。)を締結した。
(ア) リース物件 ムラテック製FAX Ⅴ-195 1台(以下「本件ファクシミリ」という。)
(イ) リース期間 平成17年9月26日から6年(72か月)
(ウ) リース料総額 64万2600円(消費税込み)
(エ) 月額リース料 8925円(消費税込み)
(オ) 支払方法 リース料は,リース期間中毎月27日(金融機関の休業日の場合は,翌営業日)限り口座振替の方法により支払う。
(カ) 期限の利益喪失 被告会社がリース料の支払を1回でも遅滞したときは,被告会社は,原告に対し,残リース料並びに消費税額の全額を直ちに支払う。
(キ) 遅延損害金 年14.6パーセント(年365日の日割計算)
イ  原告は,被告会社に対し,平成17年9月26日までにリース物件である本件ファクシミリを引き渡した。
ウ  被告Y1及び被告Y2は,平成17年9月26日,原告に対し,本件リース契約2に基づく被告会社の原告に対する一切の債務を連帯して保証する旨書面で約した。
エ  被告会社のリース料の支払状況は,別紙2リース料請求・入金明細表の入金額欄記載のとおりであり,被告会社は,平成18年8月27日のリース料の支払を怠ったので,同日の経過により期限の利益を喪失した。
本件リース契約2に基づく被告会社の既払リース料は,合計8万9250円である。
(4)  被告会社及び被告Y1は,原告に対し,平成18年9月5日到達の内容証明郵便で,本件各リース契約を解除する旨の意思表示をした。
3  争点及び争点についての当事者の主張
本件の主たる争点は,被告会社及び被告Y1の本件各リース契約解除の効力の有無であり,この点についての当事者の主張は,以下のとおりである。
(原告の主張)
特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)9条1項について
ア 指定役務(同法2条1項1号,4項)に当たらないこと
原告と被告会社との間で締結された本件リース契約1は電話機のファイナンス・リース契約であって,指定役務に該当する電話機の貸与(特商法施行令3条別表第3第2号ト)ではない。
原告と被告会社との間で締結された本件リース契約2はファクシミリのファイナンス・リース契約であって,指定役務に該当するファクシミリの貸与(特商法施行令3条別表第3第2号ト)ではない。
そうだとすれば,本件各リース契約は,特商法2条1項1号,4項の指定役務には当たらず,本件各リース契約に同法9条1項は適用されない。
イ 役務提供事業者(同法2条1項1号)に当たらないこと
本件各リース契約は,原告と被告会社との間で締結されたものであるところ,原告は被告会社代表者の居宅等において本件各リース契約の申込みを受けたわけではない。
また,ティ・エム・コーポレーション及び補助参加人会社が被告会社代表者の居宅等を訪問して本件各リース契約の申込みを受けたとしても,販売店である補助参加人会社は原告の代理人ないし使者ではなく別個の存在である。
そうだとすれば,原告は,特商法2条1項1号にいう営業所等以外の場所で指定役務提供契約の申込みを受ける(又は契約を締結する)役務提供事業者に当たらず,本件各リース契約に同法9条1項は適用されない。
ウ 営業のために若しくは営業として締結されたこと
仮に,本件各リース契約に特商法9条1項が適用されるとしても,次の事実からすれば,本件各リース契約は,被告会社の営業のために若しくは営業として締結されたのであるから,同法26条1項1号により,クーリング・オフの適用除外となる。
(ア) 被告会社の事業内容の記載
被告会社は原告に対し,本件各リース契約締結に当たり,被告会社が33年の事業歴を有し,資本金が300万円であり,氷雪販売業という事業により年商500万円を売り上げる有限会社であることを本件各リース契約書(甲1,甲2)に記載している。
被告会社が自らこのような事業内容等について記載を行い,本件各リース契約の申込みをしたのであるから,本件各リース契約が被告会社の営業のためになされたものであることは明らかである。
(イ) 被告会社の事業との関連性
本件各リース契約当時,被告会社において氷雪販売業という事業を営んでいたならば,被告会社の代表者らが氷メーカーなどの得意先などへ電話を用いて業務上の連絡を行ったりする機会があることは間違いない。
また,被告会社において注文書や伝票などの書類を業務の必要からファックスによって送信し又は受信したり,コピーしたりする機会があることも間違いない。
そうだとすれば,本件各リース契約は被告会社の業務との関連性が高く,被告会社の業務にとって必要性が高い。
(ウ) リース料等の税務申告上の取扱い
被告会社は,本件各リース契約に係るリース料を被告会社代表者の個人の税務申告ではなく,被告会社の経費として計上し,税務申告している可能性が高い。
もし,本件各リース契約が主に被告会社代表者らの個人的な使用のために締結されたのであれば,,上記リース料が被告会社の経費に計上されることはなく,したがって,これらが被告会社の経費に計上されるのは本件各リース契約が被告会社の営業のために締結されたからにほかならない。
(エ) リース契約書等の記載
原告は,申込者がリース物件を家業又は事業の用に供する目的で申し込む場合に限り,リース契約の申込みを受けてリース契約を締結している。
そして,それを申込者に示すため,原告は,原告所定の「リースお申込書」(及びそれと一体となっているリース契約書)の「リースのお申込みの内容」と題する書面の題字の真下に「※リース物件の使用目的が営業または事業用でない場合はお申込みできません。」との文書を赤字で記載している。
また,原告は,リース契約書の左上部に「私及び連帯保証人は,裏面条項および「個人情報の収集・利用・提供・登録および預託に関する条項」について承諾の上,リース物件を営業または事業の用に供する目的で契約をします。」との文言を記載している。
このように,原告は,契約者に対し,リース契約が事業の目的で締結されるものであることを明示しており,本件各リース契約においてもこれを明示しているのであるから,被告会社と原告とは本件各リース契約を事業の目的で締結しているのである。
(補助参加人会社の主張)
平成17年8月30日,補助参加人会社の営業担当者であるB(現代表者)が被告Y1の自宅兼被告会社事務所に訪問した際,被告Y1が工事に来たものと勘違いしたため話を聞くと,同月23日に他の販売業者であるティ・エム・コーポレーションとの間で,ファックスの契約が月額1万2000円(6年)で締結されていた。そこで,Bが金額を下げるので補助参加人会社の提案を聞いてもらいたいとお願いしたところ,月額8500円(6年)まで下げられれば契約してもよいとの話であったので,月額8500円で契約の申込みをもらった。
先に契約していたティ・エム・コーポレーションには,営業担当者に連絡をして解約することを承諾してもらった。本件リース契約2の申込みに際し,Bが被告Y1に対し,被告会社の業務内容の詳細を聞いたが,被告Y1は,古くから銀座松坂屋と付き合いがあり,鮮魚向けの氷を卸して儲けさせてもらっているというような話をしていた。
その後も,補助参加人会社は,被告Y1の妻が日本橋でやっているタバコ店の電話の具合が悪いとの知らせを受け,直しに訪問したこともあり,何かにつけて補助参加人会社に任せてもらっていた。
平成18年5月30日,補助参加人会社のBが現状の設備の具合を確認するため被告Y1に連絡したところ,近いうちに自宅を建て替え,商売は息子(被告Y2)に譲るとのことで,その際は2~3か月間近くに引っ越すことになるので,電話とファックスの設備を移動してほしいとの話があり,具体的な日時は,近くなっら連絡するとのことであった。しかし,具体的な日時について連絡がないまま,補助参加人会社宛に平成18年9月4日付けでクリーングオフ通知書(乙1の1)が送られてきた。
(被告らの主張)
(1) 本件リース契約1について
ア 本件リース契約1の申込みをした平成16年11月5日当時,被告会社の従業員はゼロで,代表者である被告Y1は,79歳で軽度の認知障害があり,一人で氷販売業をほそぼそとやっていた。そして,被告Y1が被告会社本店所在地である 東京都江東区〈以下省略〉の自宅兼事務所に一人でいたところ,ティ・エム・コーポレーション株式会社の営業担当者が訪問し,被告Y1に対し,明らかに,電話の使用頻度も少なく,高価な器具を導入してIP電話にする必要など全くないのに,しつこく,「IP電話にすると安くなる。それにはIPアダプターが必要だから導入しましょう。」と強引な勧誘をし,軽度認知症でIP電話とかIPアダプターと言われても何のことかよく分からない被告Y1を強引に押し切り,本件リース契約1を締結させた。
その際,ティ・エム・コーポレーションの営業担当者は,リース契約書(甲1)を持ってきて,リース物件の選定やリース料,リース期間等の設定をし,この定型契約書式(契約当事者でない売主=販売会社欄があり,売主と借主との関係を定めた契約条項がある)に,被告Y1の署名捺印をさせて契約書を作成させたものであり,リース会社である原告は,電話確認のみで与信判断をした。
イ このような経過からみて,本件リース契約1は,実質上,クレジットと相違のない提携リースであり,販売会社とリース会社は,実質上一体であり,特定商品取引法が適用される契約である。
(2) 本件リース契約2について
ア 本件リース契約2の申込みをした平成17年8月30日当時も,被告会社の従業員はゼロで,代表者である被告Y1は,80歳で軽度認知障害があり,一人で氷販売業をほそぼそとやっていた。そして,既に前年くらにティ・エム・コーポレーションに騙されて営業のためには全くファックスを使っていないのに,事業用の通常価格20万円程度のファックスを84万円という法外な詐欺的金額でリース契約を締結させられていた。
イ 補助参加人会社は,被告Y1がその被害者であることを知った上で,被告Y1に対し,「うちに任せてくれ。悪いようにはしないから。」としつこく勧誘し,よく分からない被告Y1を強引に押し切り,ティ・エム・コーポレーションに締結させられたリース契約を解約させ,改めてリース料総額64万2600円もの高額な本件リース契約2を締結させた。
その際,補助参加人会社の営業担当者は,リース契約書(甲2)を持ってきて,リース物件の選定やリース料,リース期間等の設定をし,この定型契約書式(契約当事者でない売主=販売会社欄があり,売主と借主との関係を定めた契約条項がある)に,被告Y1及び被告Y2の署名捺印をさせて契約書を作成させたものであり,リース会社である原告は,電話確認のみで与信判断をした。
ウ このような経過からみて,本件リース契約2は,実質上,クレジットと相違のない提携リースであり,販売会社とリース会社は,実質上一体であり,特定商品取引法が適用される契約である。
(3) 特商法の適用除外に該当しないこと
ア 本件各リース契約は,いずれも,特商法26条1項1号の「売買契約又は役務提供契約で,その申込みをした者が営業のために若しくは営業として締結するもの又は購入者若しくは役務の提供を受ける者が営業のために若しくは営業として締結するものに係る販売又は役務の提供」には当たらない。
イ また,次のとおり,被告会社ないし被告Y1の事業内容からすれば,本件電話機も本件ファクシミリも仕事との関連性も必要性も極めて低いものである。
(ア) 本件電話機について
平成16年11月5日当時,被告会社の代表者である被告Y1は,一人で氷販売業をしていたが,赤字続きの上,重い氷を配達するのが困難で,得意先は,当時,近所に3軒しかなく,その配達すらつらく,廃業しようと考えていた。実際,平成17年12月に保健所へ廃業届を出し廃業した。
電話の使用は,主に,個人的な戦友会や同窓会,町内会の用で,1日5~6回かけたり,かかってきたりしていただけである。親戚が多いので,親戚からの電話が多く,1日3~4回,子供への電話が1日1~2回であった。主に,家庭用で使用していたのが実態である。
営業用には,氷メーカーへの氷の注文を1日1回くらい電話ですれば足り,得意先は,前記のとおり,近所に3軒しかなく,配達も毎日巡回しているので,電話で遣り取りをする必要はほとんどなかった。ましてIP電話にする必要性はなく,パソコンも使っていないしインターネットもやっていないので,本件電話機は全く必要がなく,使った形跡もない。
(イ) 本件ファクシミリについて
平成16年当時,氷メーカーへの氷の注文は,1日1回くらい電話ですれば足り,ファックスで注文することはなかった。ファックスを使う必要は全くなかったが,ティ・エム・コーポレーションに騙されて導入していたファックスは,自宅の孫の勉強机の上に置いてあり,その利用状況は,個人的な町内会老人部運営に関する書類のコピーを週に2~3回程度が主な用途で,自宅用の利用であった。
平成17年8月,9月当時も,上記と全く同じであり,この当時,事業用にファックスを使う必要は全くなかった。
被告会社の商売のためにファックスを取り替える必要は全くなかったが,補助参加人会社の担当者から余りにもうるさく言われたのでリース契約を締結してしまった。
ウ 本件電話機及び本件ファクシミリは,いずれも,被告Y1の自宅兼被告会社事務所のうち自宅部分に設置されており,仕事との関連性も必要性も極めて低いことは明らかである。
第3  争点に対する判断
1(1)  前記前提事実に証拠(甲1ないし3,甲5,乙2,乙6,乙7,丙3,証人C,補助参加人代表者本人,被告会社代表者兼被告Y1本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
ア 被告Y1が被告会社本店所在地である 東京都江東区〈以下省略〉の自宅兼事務所に一人でいたことろ,ティ・エム・コーポレーションの営業担当者が訪問し,被告Y1に対し,電話の使用頻度も少なく,高価な器具を導入してIP電話にする必要など全くないのに,「IP電話にすると安くなる。それにはIPアダプターが必要だから導入しましょう。」などと勧誘をし,IP電話とかIPアダプターと言われても何のことかよく分からない被告Y1を強引に押し切り,被告会社との間で本件リース契約1を締結させた。
その際,ティ・エム・コーポレーションの営業担当者は,リース契約書(甲1)を持参し,リース物件の選定やリース料,リース期間等の設定をし,契約当事者でない販売店(売主)欄があり,売主と賃借人との関係を定めた契約条項があるリース契約書(甲1)に被告会社の署名捺印をさせてリース契約書を作成した。
販売会社であるティ・エム・コーポレーションは,リース申込書等リース契約関係の書類を顧客の下に持参し,顧客に契約書を作成させ,これがティ・エム・コーポレーションを通じて原告に提出され,本件リース契約1のリース契約書(甲1)は,リース申込者の住所氏名等の項目欄は不動文字で印刷されており,個別の契約内容に応じて申込者,連帯保証人,リース契約の内容等を具体的に記載するだけの定型書式であり,原告は,ティ・エム・コーポレーションにリース契約の勧誘及び契約締結の取次ぎを継続的に行わせており,本件リース契約1もそのようにして締結された。
このように,リース会社である原告は,販売業者であるティ・エム・コーポレーションにリース契約の勧誘及び契約締結の取次をさせ,顧客との間のリース契約書の作成にも一切関与せず,リース契約書(甲1)に記載された被告会社の資本金や年商等の情報や被告Y1に対する電話確認で被告会社の与信判断をした。
イ その後,補助参加人会社の営業部長であったBは,平成17年8月30日午後4時ころ,被告会社本店所在地である江東区〈以下省略〉所在の被告Y1の自宅兼被告会社事務所を飛び込みで訪問した。
その際,被告Y1は,数日前にティ・エム・コーポレーションとの間でファックスのリース契約を締結していた関係で,Bをそのファックスの取付け工事の業者であると勘違いした。被告会社がティ・エム・コーポレーションとの間で締結したファックスのリース契約のリース料は月額1万2000円(6年)であったので,Bは,被告Y1に対し,月額8500円(6年)で同じリース物件を提供できると話したところ,被告Y1は,月額リース料が8500円(消費税別)まで下げられれば契約してもよいということになり,被告会社から原告との間で本件ファクシミリをリース料月額8500円でリースする旨のリース契約の申込みを受けた。
そして,Bは,先に契約していたティ・エム・コーポレーションには,営業担当者に連絡をして解約することを承諾してもらった。
ウ 本件リース契約2の申込みに際し,Bは,被告Y1に対し,被告会社の業務内容の詳細を聞いたが,被告Y1は,古くから銀座松坂屋と付き合いがあり,鮮魚向けの氷を卸して儲けさせてもらっているというような話をしていた。
また,Bは,当日,リース契約書(甲2)を持参し,被告Y1から被告会社の資本金が300万円であり,年商が500万円であるとの説明を聞き,本件リース契約2のリース契約書(甲2)の賃借人欄の被告会社の資本金欄や年商欄にその旨記載した。
そして,Bは,リース物件の選定やリース料,リース期間等の設定をし,契約当事者でない販売店(売主)欄があり,売主と賃借人との関係を定めた契約条項があるリース契約書(甲2)に,被告会社の署名捺印をさせてリース契約書を作成した。
販売業者である補助参加人会社は,リース申込書等リース契約関係の書類を顧客の下に持参し,顧客に契約書を作成させ,これが補助参加人会社を通じて原告に提出され,本件リース契約2のリース契約書(甲2)は,リース申込者の住所氏名等の項目欄は不動文字で印刷されており,個別の契約内容に応じて申込者,連帯保証人,リース契約の内容等を具体的に記載するだけの定型書式であり,原告は,補助参加人会社にリース契約の勧誘及び契約締結の取次ぎを継続的に行わせており,本件リース契約2もそのようにして締結された。
このように,リース会社である原告は,販売業者である補助参加人会社にリース契約の勧誘及び契約締結の取次をさせ,顧客との間のリース契約書の作成にも一切関与せず,リース契約書(甲2)に記載された被告会社の資本金や年商等の情報や被告Y1に対する電話確認で被告会社の与信判断をした。
エ ところで,被告会社は,本件リース契約1の申込みをした平成16年11月5日及び本件リース契約2の申込みをした平成17年8月30日当時,被告会社の従業員はゼロで,代表者である被告Y1は,79歳ないし80歳と高齢であり,一人で氷販売業を行っていた。
被告会社の得意先は,当時,数は多くなかったものの近所の喫茶店や食堂等の飲食店に神田田町にあるニチレイという製氷会社から仕入れた氷を販売したり,夏には近くの深川公園や三好公園での出店に氷を販売したりしていたほか,かなり以前から日本橋高島屋の食堂に氷を卸していた。
被告会社は,これらの得意先等から氷の注文を受けたりする際には,頻度は少ないものの電話やファックスを利用していた。しかし,被告Y1は,パソコンを使用していないしインターネットもやったことがないこと等から,本件電話機をIP電話として利用する必要は全くなく,本件電話機でIP電話としての機能を活用して使用したことはなかった。
オ 被告Y1は,物忘れが多くなり,平成17年5月10日に三井記念病院で診察を受け,軽度認知障害(アルツハイマー型認知症の可能性)と診断され,被告会社は,遅くとも同年12月には保健所に廃業届を提出し,同月31日には社員総会の決議により解散した。
(2)ア  まず,原告は,原告と被告会社との間で締結された本件リース契約1は電話機のファイナンス・リース契約であって,指定役務に該当する電話機の貸与(特商法施行令3条別表第3第2号ト)ではないし,原告と被告会社との間で締結された本件リース契約2はファクシミリのファイナンス・リース契約であって,指定役務に該当するファクシミリの貸与(特商法施行令3条別表第3第2号ト)ではなく,本件各リース契約は,特商法2条1項1号,4項の指定役務には当たらず,本件各リース契約に同法9条1項は適用されないなどと主張する。
しかしながら,特商法施行令3条別表第3第2号は,指定役務として「次に掲げる物品の貸与」を規定し,そのトとして「電話機及びファクシミリ装置」が掲げられているところ,証拠(甲1,甲2)によれば,本件各リース契約書2条において,「原告は,売主から,賃借人が指定する表記の物件を買受けて,この契約に定める条件に従い賃借人にリース(賃貸)し,賃借人はこれを借受けます。」と記載されていることが認められ,電話機及びファクシミリのリースは,特商法施行令3条別表第3第2号トに該当する指定役務の提供に当たるというべきであるから,原告の上記主張は採用できない。
イ  次に,原告は,本件各リース契約は,原告と被告会社との間で締結されたものであるところ,原告は被告会社代表者の居宅等において本件各リース契約の申込みを受けたわけではないし,ティ・エム・コーポレーション及び補助参加人会社が被告会社代表者の居宅等を訪問して本件各リース契約の申込みを受けたとしても,販売店である補助参加人会社は原告の代理人ないし使者ではなく別個の存在であるから,原告は,特商法2条1項1号にいう営業所等以外の場所で指定役務提供契約の申込みを受ける(又は契約を締結する)役務提供事業者に当たらず,本件各リース契約に同法9条1項は適用されないなどと主張する。
しかしながら,前記認定事実によれば,原告は,ティ・エム・コーポレーション及び補助参加人会社に対し,本件各リース契約を含むリース契約自体の勧誘及び契約締結の取次を継続的に行わせていたというべきであり,本件各リース契約は,原告ではなく,同契約の対象物件の売主であるティ・エム・コーポレーションないし補助参加人会社を通じて勧誘されたものであり,しかも,リース対象物件の販売契約とそのリース契約とは一応別個の法律関係にあるけれども,本件においては,被告会社に対するティ・エム・コーポレーションないし補助参加人会社によるリース契約の勧誘,ティ・エム・コーポレーションないし補助参加人会社から被告会社へのリース対象物件の販売及び原告と被告会社とのリース契約が全体として一体をなして成り立っているものと評価できるのであり,かつ,原告は,リース契約の勧誘から締結に至るまでティ・エム・コーポレーションないし補助参加人会社の従業員をいわばその手足として利用していたものと認めるのが相当である。
そして,訪問販売等の特定商取引を公正にし,購入者が受けることのある損害の防止を図ることにより,購入者の利益を保護し,併せて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし,もって国民経済の健全な発展に資するという特商法の目的(同法1条)にかんがみると,以上認定の事実関係の下においては,原告は,特商法2条1項1号所定の「役務提供事業者」に該当し,本件各リース契約は特商法所定の訪問販売と認められるというべきである。
したがって,本件においては,本件各リース契約を勧誘したのが役務提供をする原告の従業員ではなく,同契約の対象物件の販売業者であるティ・エム・コーポレーションないし補助参加人会社の従業員であることは,特商法の適用を否定する理由とはならないというべきであるから,原告の上記主張は採用できない。
ウ  さらに,原告は,本件各リース契約は,被告会社の営業のために若しくは営業として締結されたのであるから,特商法26条1項1号により,クーリング・オフの適用除外となる旨主張する。
しかして,特商法26条1項1号は,売買契約又は役務提供契約で,その申込みをした者が営業のために若しくは営業として締結するもの又は購入者若しくは役務の提供を受ける者が営業のために若しくは営業として締結するものに係る販売又は役務の提供については,いわゆるクーリング・オフ等に関する規定を適用しないと定めているところ,その規定の趣旨目的は,特商法が消費者保護を目的とするものであることから,契約の目的,内容が営業のためのものである場合には適用除外とし,事業者が営業活動に関連して行う取引については,私的自治又は業界の商慣習に委ねるのを相当とするというもであって,仮に申込みをした者,購入者又は役務の提供を受ける者が事業者であっても,これらの者にとって,営業のために若しくは営業として締結するものでない販売又は役務の提供については,これを特商法の適用対象外とするものではないと解するのが相当である。
これを本件についてみると,前記認定事実によれば,被告会社は,得意先等から氷の注文を受けたりする際には,電話やファックスを利用していたが,被告Y1がパソコンを使用していないしインターネットをやった経験がないことから,通常の家庭用電話機の通話機能以外に本件電話機でIP電話としての機能を活用した利用をしたことがなかったことや被告会社の事業規模や内容からしても,一般の家庭用電話機が1台あれば十分であり,本件電話機のような機能を有する電話機は必要でなかったこと,他方,本件ファクシミリはその設置された場所が被告Y1の自宅兼被告会社事務所であり,しかも,被告会社は,本件各リース契約締結当時,被告Y1一人が経営や営業活動を行っており,実質的には個人企業ともいうべき実態を有していたことからすると,被告Y1が個人的事情で本件ファクシミリを利用することがあったとしても,前記認定の本件ファクシミリの利用状況に照らせば,被告会社は本件ファクシミリを営業のために使用していたものと認めるのが相当である。
(3)  そうすると,本件リース契約1については,被告会社が氷雪販売業としての営業のために若しくは営業として締結されたものとはいえないが,本件リース契約2については,被告会社の営業のために若しくは営業として締結されたものというべきである。
したがって,被告会社及び被告Y1がした本件各リース契約の解除の意思表示は,本件リース契約1についてはクーリング・オフの権利を行使したものとして有効であるが,本件リース契約2についてはクーリング・オフの権利を行使することができないから無効であるというべきである。
2  以上によれば,原告の本訴請求中,被告らに対し,連帯してリース料金残金55万3350円及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日である平成18年8月28日から支払済みまで約定利率年14.6パーセント(年365日の日割計算)の割合による遅延損害金の支払を求める請求は理由があるが,被告会社及び被告Y1に対し,連帯してリース料残金120万9600円及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日である平成18年8月28日から支払済みまで約定利率年14.6パーセント(年365日の日割計算)の割合による遅延損害金の支払を求める請求は理由がない。
他方,前記前提事実(2)エ及び(3)エのとおり,少なくとも,被告会社が原告に対し,本件リース契約1に基づき支払った既払リース料は合計37万8000円であり,本件リース契約2に基づき支払った既払リース料は合計8万9250円であるところ,これらの既払リース料を被告Y1が支払ったと認めるに足りる証拠はなく(被告らは,形式的には被告会社が,実質的には被告Y1が原告との間で本件各リース契約を締結した旨主張するが,そのような事実を認めることはできない),前示のとおり,本件リース契約2の契約解除は無効であるから,被告会社及び被告Y1の反訴請求は,被告会社が原告に対し,金37万8000円の支払を求める限度で理由がある。
第4  結論
よって,原告の本訴請求は,被告らに対し,連帯して金55万3350円及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日である平成18年8月28日から支払済みまで約定利率年14.6パーセント(年365日の日割計算)の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却し,被告会社及び被告Y1の反訴請求は,被告会社が原告に対し,金37万8000円の支払を求める限度で理由があるから認容し,被告会社のその余の反訴請求及び被告Y1の反訴請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条本文,65条1項本文を,仮執行宣言につき同法259条1項を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判官 山﨑勉)

 

〈以下省略〉

 

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