平20(ワ)7115号 損害賠償等請求事件

裁判年月日  平成20年 9月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)7115号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2008WLJPCA09308019

要旨
◆原告を賃貸人、訴外Aを賃借人、原告とリース加盟店契約を締結している被告をリース物件の販売店として、原告が訴外Aとの間でファイナンス・リース契約を締結したところ、訴外Aがクーリングオフを行使し、本件リース契約を解除したことから、原告が本件加盟店契約に基づき、被告との間の本件リース物件の売買契約を解除し、被告に対し、本件売買契約解除に基づく原状回復債務ないし損害賠償債務として金員の支払を求めたのに対し、被告が、本件リース契約にはクーリングオフの適用がない等と主張して争った事案において、本件リース契約は「営業のために若しくは営業として」締結されたものではないこと、及び、訴外Aがクーリングオフの適用を受ける旨の「訪問販売における書面」の交付を受けたことを認めるに足りる証拠はないことから、訴外Aはいつでもクーリングオフの意思表示をすることが可能であることを認定し、原告の請求を認容した事例

参照条文
特定商取引に関する法律9条1項
特定商取引に関する法律26条1項1号

裁判年月日  平成20年 9月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)7115号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2008WLJPCA09308019

東京都中央区〈以下省略〉
原告 株式会社日本ビジネスリース
代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁護士 中村雅男
同 近藤暁
水戸市〈以下省略〉
被告 株式会社テレカム
代表者代表取締役 B
訴訟代理人弁護士 糸賀良徳

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,50万5759円及び内金49万6230円に対する平成17年4月28日から支払済みまで年6パーセントの割合(1年を365日とする日割計算)による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告の負担とする。
3  この判決は,仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  原告の主張(請求原因)
1  当事者
(1)  原告は,ファイナンス・リース等を業とする株式会社である。
(2)  被告は,通信機器の販売及びメンテナンスなどを目的とする株式会社である。
2  原被告間の加盟店契約及び原告と訴外C(以下「C」という。)との間のリース契約
(1)  原告と被告は,平成16年12月,次の約定からなるリース加盟店契約を締結した。
ア 顧客(本件でのCを指す。)が,法令等に基づき,クーリングオフの権利を行使して貴社(本件での原告を指す。)とのリース契約を解除したときは,貴社は当社(本件での被告を指す。)または特約店との当該リース物件に関する売買契約を解除することができる。
イ アの場合には,当社または特約店は貴社に対し,次の金員を直ちに支払う。
(ア) 貴社より受領済みの売買代金及びこれに対する売買代金受領の日から支払済みまで年6パーセントの割合による利息
(イ) 当該リース物件に関して貴社が支払済みの固定資産税その他の公租公課及び保険料
(2)  原告とCとの間のリース契約
ア 原告とCは,平成17年4月15日,原告を賃貸人,Cを賃借人として,次のとおり,ファイナンス・リース契約(以下「本件リース契約」という。)を締結した。
(ア) リース物件 ナカヨ製セキュリテイ(リース物件の販売店は被告である。)
(イ) リース期間 平成17年4月15日から7年間
(ウ) リース料総額 60万8580円(消費税等を含む)
(エ) 月額リース料 6900円(消費税等を含む)
(オ) 支払方法 リース料は,別紙リース料請求・入金明細表の請求額欄記載のとおり口座振替の方法で毎月27日限り支払う。
3  Cによるクーリングオフの権利行使
(1)  Cは,原告に対し,クーリングオフの権利を行使することを明らかにし,本件リース契約を解除した。本件リース契約は,個人用,家庭用にリース物件を使用するためのものである。
(2)  Cに対しては,法定書面の交付がされていないから,特定商取引に関する法律9条1項1号所定の起算日は開始しておらず,クーリングオフを行使する権利は消滅していない。
4  加盟店契約に基づく被告の原告に対する責任
(1)  原告は,被告に対し,加盟店規約8条1項に基づき,平成20年3月28日到達の本件訴状をもって,本件リース契約のリース物件の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を解除するとの意思表示をした。
(2)  上記売買代金は49万6230円(消費税額を含む。),原告が支払った固定資産税の額は8400円及び保険料は1129円であり,被告が原告から売買代金を受領した日は,平成17年4月28日である。
5  以上により,被告は,原告に対し,本件売買契約解除に基づく原状回復債務ないし損害賠償債務として,50万5759円及び内金49万6230円に対する加盟店規約8条1項に基づく被告が売買代金を受領した日である平成17年4月28日から支払済みまで年6パーセントの割合(1年を365日とする日割計算)による金員を支払え。
第3  被告の主張(認否及び抗弁)
1  請求原因1,2及び4(1)は認め,同3及び4(2)は否認する。仮にクーリングオフ制度が適用されるとしても,Cがクーリングオフの意思表示をしたのは,書面を受理した日から8日間以上経過している。
2  抗弁
(1)  クーリングオフの適用除外(特定商取引に関する法律)
本件リース契約にはクーリングオフ制度の適用はない。Cは,営業または業務用の目的で本件リース契約を締結したのであるから,特定商取引に関する法律の適用がない。
(2)  相殺
ア 本件リース契約は,Cの営む農業という事業のためのものであったことは明らかであるが,仮に事業を営むものではないとしても,原告は,申込者からのリース契約申込みに対し,慎重に審査をした上でリース契約の申込を受け入れることを社内的に決定をし,そのことにより,被告は,販売店として仕入れを起こし,商品の設置のために人権費などのコストの支出を余儀なくされた。これは,原告の過失ある行為によって,被告が本来無効である契約を外形的に有効と信じたことで,被告に損失が生じたものであるから,原告は,民法415条により,また,契約締結上の過失の理論により,被告が被った損害を賠償する責めを負う。
イ 被告は,原告に対し,平成20年4月22日の本件口頭弁論期日において,被告が被った次の損害についての請求債権(自働債権)をもって,被告が原告に支払うべき本訴請求債権(受動債権)とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。
(ア) 本件リース物件の仕入価格
a TAKEXコントローラーC-602 1台 3万4800円
b TAKEXパッシプセンサーPA-6612 1台 1万9200円
c TAKEXキースイッチKE-502R(6) 1台 1万3080円
d ナカヨ付加機能ユニット ET-EXU-IA/SM 1台 1万2580円
(イ) 工事技術料 一式 8万円
(ウ) 接続設定費 2万円
(エ) 人件費 2名 3万円
(オ) 車両運搬費 一式 2万円
(カ) 営業管理費 5万5714円
(キ) 事務通信費 1万円
(ク) 上記(ア)ないし(キ)の合計 29万5374円
(ケ) 消費税 1万4769円
(コ) 合計 31万0143円
第4  抗弁に対する認否
1  次のことから,本件リース契約は,主として,個人用・家庭用にリース物件を使用するためのものであることは明らかであり,特定商取引に関する法律の適用があると言わねばならない。よって,抗弁(1)は否認する。
(1)  Cは,主として,たばこ農業を営んでいる。たばこ農業の主たる作業は,たばこの栽培,収穫及び乾燥であり,各作業は,貯蔵場,乾燥室,作業場及び作業機械ハウス等で行われている。他方,Cの居宅は生活の場に過ぎないところ,本件リース物件はその自宅玄関に設置されている。Cがたばこ農業に関連して連絡を取る外部業者は主としてJTであるが,JTとの打合せは電話連絡によっており,居宅で面談する方法によることはほとんどない。
(2)  形式的にも,本件リース契約の契約書上(甲2),賃借人として,「C」,「C」という個人の名称の記載しかない。更に,「資本金」,「年商」,「従業員」,「営業年数」,「担当窓口」,「役職名」,「社屋」欄がいずれも空欄となっていることなどからすれば,Cが事業用として購入していないことは明白である。
(3)  Cは,平成19年分所得税青色申告の際に,本件リース契約に基づくリース料を,賃借料その他経費として計上していない。
(4)  以上によれば,本件リース契約は,主として,個人用・家庭用にリース物件を使用するためのものであり,「営業のために若しくは営業として」締結されたものではない(特定商取引に関する法律26条1項1号)。
2  抗弁(2)について
(1)  ユーザーが事業の用に供する目的でリース契約の申込みをしたかどうかについては,ユーザーと直接に接する被告こそよく知りうる立場にあり,また,加盟店契約上,事業の用に供する目的を有しない者に対しては,リース契約の勧誘をしないことが前提となっている。原告は,上記の実情を踏まえて,被告から送付された関連書類記載の事実や信用情報機関に問い合わせるなどして審査をしており,契約締結時点において要求される注意義務は果たしており,過失はない。
(2)  かえって,原被告間の加盟店契約においては,事業の用に供する目的を有しない者に対しては,リース契約の勧誘をしないことが前提になっているのであるから,被告は,リース物件の納入やその設置のための工事に先立ち,Cの自宅を訪問したり,設置場所の下見をして,契約の内容を説明し,Cが事業用に供する目的を持っているか否か判断すべきであるにもかかわらず,漫然とリース契約の勧誘を行い,リース物件の納入やその設置のための工事を行ったのであって,被告こそ,加盟店契約上要求される注意義務を果たしていないと言うべきである。
第5  判断
1  本件売買契約締結時において,原被告ともに,リース物件が事業用のものであるとの認識を有していたことから,双方ともに,Cに対してクーリングオフの適用を受ける旨の書面を交付していない。
2  次に,本件リース物件は事業用のもので,そもそも,クーリングオフの適用除外であると言えるか否かを検討する。証拠(甲1~11,乙1,2)及び弁論の全趣旨から次の事実が認められ,他にこの認定を左右すべき証拠はない。
(1)  Cは,平成17年3月頃,被告がNTTの代理店とのことで,インターネットの勧誘をしていたことから,被告を知るようになり,ナカヨの電話機についてオリックスとの間でリース契約を締結した。
(2)  電話工事が終了した後,1か月も経たないうちに,Cは,被告の担当者であるDら2名の訪問を受け,同人らから,電話機等の盗難や火災対策にテレカムの保険やセキュリティーの装置を付けてもらわなければならなくなったと言われた。Cは,既に火災保険に加入していて,セキュリティーも不要であると答えたところ,Dとは別のもう一人の担当者が,大きい声を出して,これは,セットで入ることになっているんだよと言ってきたので,Cは,言い争いを避けるため,本件リース契約書にサインをした。
(3)  Cは,農業を営み,主として,米,麦,たばこを作っている。C宅は,大きな母屋(居宅)があり,その玄関先に警報装置が設置され,母屋と別棟に工場が存在し,その中に,作業場,貯蔵場,乾燥室,作業機械ハウス,車両の駐車場所などが存在している。
(4)  Cは,被告の営業担当者から,営業用にセキュリティーを設置するなどと言われておらず,電話機のリースとセットであるとしか言われていない。
(5)  本件リース料は,Cの税務申告上,営業のための経費扱いとはされていない。
(6)  本件リース契約書(甲2)には,賃借人として,Cの個人名しか記載がない上,「資本金」,「年商」,「従業員」,「営業年数」,「担当窓口」,「役職名」,「社屋」欄がいずれも空欄となっている。
3  前記によれば,C宅(母屋)と作業場等は分離して存在していることが認められるところ,本件リース物件は,母屋の玄関先という,作業場とは離れた場所に設置されているから,これを事業用のためのセキュリティー装置と認めるのは困難と言うべきである。この点について,被告は,農業は,仕事場と居宅が物理的に区別されているとしても,機能的には区分できないものであるなどと主張するが,本件リース契約締結時に,被告は,Cに対し,本件リース物件が営業用である旨の説明をしておらず,事実,Cは,本件リース料を事業用の損金として計上していないことに照らすと,Cは,本件リース契約締結時において,本件リース物件が事業用のためのものと認識していなかったことが明らかであり,被告の主張は採用できない。よって,本件リース物件は,個人,家庭用のものであるから,クーリングオフの適用を受けるものと判断するのが相当である。
4  Cが,クーリングオフの適用を受ける旨の「訪問販売における書面」の交付を受けたことを認めるに足りる証拠はない。むしろ,被告は,本件リース契約について,同契約はクーリングオフの適用を受けることのない事業用のリース契約であると認識し,本件リース物件は事業用のものであるなどと主張をしているのであるから,被告がCに対して当該書面を交付することはおよそ考えられない事柄であり,特定商取引に関する法律9条1項によれば,当該書面の交付を受けてから8日の間に契約の解除ができるところ,本件では,Cは当該書面の交付を受けておらず,起算日は存在しないのであるから,Cはいつでもクーリングオフの意思表示をすることが可能と言わねばならない。
5  抗弁(2)について
次に,本件リース契約がクーリングオフの適用を受けることを前提として,本件売買契約において,原告に契約締結上の過失があったか,または,原告の債務不履行があり,原告が被告に対して損害賠償義務を負うか否かについて検討する。
(1)  典型的なファイナンス・リース契約においては,使用者の指定により,リース会社は,販売者(販売代理店等)より物件を購入してこれを使用者に賃貸し,賃貸期間中に受け取るリース料をもって,投下した資本等の費用を回収する仕組みが見られるところ,リース物件の機種,品質,性能,規格,仕様などについては,すべて販売者と使用者との間で協議,決定されるものであるから,販売者は,物件の品質を使用者に保証するとともに,特約によって,リース会社に対しても保証をするのが通常である。
(2)  前記ファイナンス・リース契約に見られる一般的な性質に加え,原被告間の加盟店契約(甲1)における約定によれば,加盟店の責任として,リース物件の品質の保証や顧客とのトラブル等はすべて加盟店の責任とされ(6条),クーリングオフの適用についての責任を加盟店が負うこととされている(8条)ことなどに照らせば,リース会社は,クーリングオフの適用について厳格に審査をする義務は負わないと言うべきであり,被告の主張はいずれも採用できない。
6  よって,原告の請求は理由があるのでこれを認容することとし,訴訟費用の負担については,民事訴訟法61条を,仮執行の宣言につき,同法259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。
(裁判官 江守英雄)

 

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