平18(ワ)22568号 不当利得返還請求事件

裁判年月日  平成20年 3月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ワ)22568号
事件名  不当利得返還請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2008WLJPCA03288007

要旨
◆被告らから呉服等を購入した原告が、被告らから特定商取引に関する法律5条1項所定の契約書面の交付を受けていないとして、同法9条に基づく解除(クーリングオフ)を主張して、売買代金相当額の一部返還を求めた事案において、売買がなされた展示会場は同法5条1項、同法施行規則1条4号の「店舗に類するもの」に該当せず、また、原告の自宅で契約書が作成されたものについても同法26条2項2号によるクーリングオフの適用除外はないなどとして、原告による解除(クーリングオフ)を認め、請求を全部認容した事例

出典
判タ 1276号323頁

参照条文
特定商取引に関する法律2条1項1号
特定商取引に関する法律2条4項
特定商取引に関する法律4条
特定商取引に関する法律5条1項
特定商取引に関する法律9条
特定商取引に関する法律26条2項2号
特定商取引に関する法律施行令3条(別表第一)
特定商取引に関する法律施行令8条3号
特定商取引に関する法律施行規則1条
特定商取引に関する法律施行規則3条
特定商取引に関する法律施行規則4条

裁判年月日  平成20年 3月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ワ)22568号
事件名  不当利得返還請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2008WLJPCA03288007

東京都荒川区〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 泉進
東京都北区〈以下省略〉
被告 有限会社彩
同代表者取締役 A
千葉市〈以下省略〉
被告 株式会社ジュエリーアイキ
同代表者代表取締役 B
被告有限会社彩,同株式会社ジュエリーアイキ
訴訟代理人弁護士
中山徹
横浜市〈以下省略〉
被告有限会社彩,同株式会社ジュエリーアイキ
補助参加人
株式会社ライフ
同代表者代表取締役 C
同訴訟代理人弁護士 羽野島裕二
同 菊池麻由子
同 内田崇彦
神奈川県平塚市〈以下省略〉
被告 有限会社植田商事
同代表者代表取締役 D
同訴訟代理人弁護士 中村治嵩
同 石橋克郎
同 椎名健二
埼玉県蕨市〈以下省略〉
被告 有限会社長﨑紅屋
同代表者代表取締役 E
同訴訟代理人弁護士 後藤仁哉
同 水谷耕平

 

 

主文

1  被告有限会社彩は原告に対し,261万2000円及びこれに対する平成18年10月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告有限会社植田商事は原告に対し,165万円及びこれに対する平成18年10月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告有限会社長﨑紅屋は原告に対し,141万6900円及びこれに対する平成18年10月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4  被告株式会社ジュエリーアイキは原告に対し,34万6500円及びこれに対する平成18年10月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5  訴訟費用は,被告らの負担とする。
6  この判決は,仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  当事者の主張
(関係法令の定めは別紙のとおりである。)
1  請求原因
(被告有限会社彩(以下「被告彩」という。)関係)
(1)  原告は,平成16年2月ころ,千代田区紀尾井町所在の「ホテルニューオータニ」において,被告彩から特定商取引に関する法律(以下「法」という。)2条4項,特定商取引に関する法律施行令(以下「政令」という。)3条に該当する指定商品(以下「指定商品」という。)である袋帯を代金25万2000円で購入し,分割手数料5万0803円を加算した合計30万2803円の売買契約書併用の被告有限会社彩,同株式会社ジュエリーアイキ補助参加人(以下「補助参加人ライフ」という。)に対するクレジット申込書に署名押印した。
同契約書には法人である販売業者の代表者氏名,売買契約の締結を担当した者の氏名,売買契約の締結の年月日の記載がない。
(2)  原告は,同年5月14日,港区六本木所在の「ラフォーレミュージアム六本木」において,被告彩から訪問着を代金130万円で購入し,分割手数料34万9440円を加算した合計164万9440円の売買契約書併用の補助参加人ライフに対するクレジット申込書に署名押印した。
同契約書には法人である販売業者の代表者氏名,売買契約の締結を担当した者の氏名,商品の数量の記載がない。
(3)  原告は,同年10月16日,荒川区東尾久,熊野前駅前所在の「山惣」において,被告彩から指定商品である紬,帯を代金86万円で購入し,分割手数料17万3376円を加算した合計103万3376円の売買契約書併用の補助参加人ライフに対するクレジット申込書に署名押印した。
同契約書には法人である販売業者の代表者氏名,売買契約の締結を担当した者の氏名,売買契約の締結の年月日,商品の数量の記載がない。
(4)  原告は,同年12月17日,北区王子駅前所在の「北斗ぴあ」において,被告彩から指定商品である小紋を代金20万円で購入し,分割手数料を加算した合計25万3760円の売買契約書併用の補助参加人ライフに対するクレジット申込書に署名押印した。
同契約書には法人である販売業者の代表者氏名,売買契約の締結を担当した者の氏名,売買契約の締結の年月日の記載がない。
(5)  法5条1項は,販売業者は,営業所等以外の場所において指定商品につき,売買契約を締結したときは,遅滞なく経済産業省令で定めるところにより,売買契約の内容を明らかにする書面を購入者に交付しなければならないとし,これを受けた特定商取引に関する法律施行規則(以下「省令」という。)4条は,その記載内容として,①販売業者の氏名又は名称,住所及び電話番号並びに法人にあっては代表者氏名,②売買契約の締結を担当した者の氏名,③売買契約締結の年月日,④商品名及び商品の商標又は製造者名,⑤商品の数量等を定めているところ,法9条は,法5条の書面を受領した日から起算して8日を経過する以前においては,購入者は締結した売買契約を解除(クーリングオフ)することができる旨定めているが,上記各売買契約において原告に交付された売買契約書は,上記のとおり,いずれも,上記①ないし⑤のいずれかの記載を欠くものであり,かつ上記各売買契約の締結場所は,いずれも法5条の「営業所」に該当しないから,原告は,上記各売買契約について売買契約書の交付を受けていない。
なお,省令1条4号は,一定期間にわたり,指定商品を販売する場所であって,店舗に類するものも営業所に該当するものとしているが,同号は,指定商品を陳列し,消費者が自由に商品を選択できる状態にあることが必要であるところ,上記の各場所は,原告が自由に商品を選択することができる状況にはなかったから,いずれも省令1条4号には該当しない。
(6)  原告は,平成18年6月12日頃に被告彩に到達した内容証明郵便にて上記各売買契約を解除する旨の意思表示(クーリングオフ)をした。
(7)  また,原告は,平成16年当時収入はなく,ローンの支払いに不安をもっていたところ,被告彩の代表者であるAは,平成16年5月上旬ころ,原告にローン返済に見合う収入の途を確保するとの趣旨で「何とかする」との甘言を弄して商品の購入をすすめた。
Aの上記「何とかする」との発言は消費者契約法4条にいう不実の告知に該当するから,原告は平成19年3月1日の本件第2回弁論準備手続期日において,上記各売買契約を取り消す旨の意思表示をした。
(8)  被告彩は,クレジット会社の立替払により,上記各売買契約代金を既に全額受領済みであるから,被告彩は,原告の損失のもとに売買代金相当額合計261万2000円を不当利得したというべきである。
(9)  Aは,原告の資力が乏しくクレジットローンの支払いが困難なことを知りながら,あえて原告をして被告彩及び後記各被告に対する請求原因記載の各売買契約の締結に導いた。
これは,顧客の知識,経験及び財産の状況に照らして不適当な勧誘であり,法7条3号の定める適合性の原則に反し,不法行為に該当する。
原告が被告らから購入した商品は,いずれも呉服類であるところ,呉服関係商品は市場換価性がなく,その経済的価値はゼロに等しい。
したがって,原告は,Aの不当勧誘により売買代金相当額(合計567万8900円)の損害を被った。
原告は本訴において,次のとおり各被告らとの売買契約について,一部請求をする。

① 被告彩との間の売買契約のうち,「ホテルニューオータニの売買」について11万5906円,「ラフォーレミュージアム六本木の売買」について59万7932円,「山惣の売買」について39万5555円,「北斗ぴあの売買」について9万1989円
② 被告有限会社植田商事(以下「被告植田商事」という。)との間の後記売買契約(シティクラブ オブ 東京)の売買について75万8914円
③ 被告有限会社長﨑紅屋(以下「被告長﨑紅屋」という。)との間に後記売買契約のうち,「北斗ぴあの売買」について18万7382円,「喜楽の売買」について46万4322円
(10)  よって,原告は被告彩に対し,不当利得若しくは不法行為に基づき,261万2000円及びこれに対する解除(クーリングオフ)若しくは不法行為の後である平成18年10月21日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
(被告植田商事関係)
(1)  原告は,平成17年1月頃,港区赤坂所在の「シティクラブ オブ 東京」において,被告植田商事から本加賀友禅を代金165万円で購入し,分割手数料47万5200円を加算した合計212万5200円の売買契約書併用の株式会社クオーク(以下「クオーク」という。)に対するクレジット申込書に署名押印した。
同契約書には法人である販売業者の名称・住所,電話番号,代表者氏名,売買契約の締結を担当した者の氏名,売買契約の締結の年月日の記載がない。
(2)  上記売買契約において原告に交付された売買契約書は,上記のとおり,いずれも,省令4条の前記①,②の記載を欠くものであり,かつ上記売買契約の締結場所は,いずれも法5条の「営業所」に該当しないから,原告は,上記売買契約について売買契約書の交付を受けていない。
(3)  原告は,平成18年6月13日頃に被告植田商事に到達した内容証明郵便にて上記売買契約を解除する旨の意思表示(クーリングオフ)をした。
(4)  また,原告は,平成16年当時収入はなく,ローンの支払いに不安をもっていたところ,被告彩の代表者であるAは,平成16年5月上旬ころ,原告にローン返済に見合う収入の途を確保するとの趣旨で「何とかする」との甘言を弄して商品の購入をすすめた。
原告と本件各被告との各売買契約はすべてAの勧誘に基づくものであり,Aは,被告彩以外の被告と原告との売買契約締結にあたっては各被告の代理人としての地位に立って原告を各売買契約に誘導したものである。
Aの上記「何とかする」との発言は消費者契約法4条にいう不実の告知に該当するから,原告は平成19年3月1日の本件第2回弁論準備手続期日において,上記各売買契約を取り消す旨の意思表示をした。
(5)  被告植田商事は,クレジット会社の立替払により,上記売買契約代金を既に全額受領済みであるから,被告植田商事は,原告の損失のもとに売買代金相当額165万円を不当利得したというべきである。
(6)  よって,原告は被告植田商事に対し,不当利得に基づき,165万円及びこれに対する解除(クーリングオフ)の後である平成18年10月21日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
(被告長﨑紅屋関係)
(1)  原告は,平成15年1月18日,「北斗ぴあ」において,被告長﨑紅屋から夏付下を代金40万7400円で購入し,分割手数料10万9509円を加算した合計51万6909円の売買契約書併用の株式会社ジャックス(以下「ジャックス」という。)に対するクレジット申込書に署名押印した。
同契約書には法人である販売業者の代表者氏名,売買契約の締結を担当した者の氏名,売買契約の締結の年月日,商品の数量の記載がない。また,実際に購入した商品は夏付下のみであるのに,同契約書の商品欄には夏付下のほかに袋帯とも記載がある。
(2)  原告は,平成16年6月10日,荒川区東尾久所在の「喜楽」において,小紋,読谷を代金100万9500円で購入し,分割手数料20万3515円を加算した合計121万3015円の売買契約書併用のジャックスに対するクレジット申込書に署名押印した。
同契約書には法人である販売業者の代表者氏名,売買契約の締結を担当した者の名前の記載がない。また,実際に購入した商品は小紋,読谷のみであるのに,同契約書の商品欄には小紋,読谷のあとに「他」との記載がある。
(3)  上記各売買契約において原告に交付された売買契約書は,上記のとおり,いずれも,省令4条の前記①ないし⑤のいずれかの記載を欠くものであり,かつ上記各売買契約の締結場所は,いずれも法5条1項の「営業所」に該当しないから,原告は,上記各売買契約について売買契約書の交付を受けていない。
(4)  原告は,平成18年6月14日頃に被告長﨑紅屋に到達した内容証明郵便にて上記各売買契約を解除する旨の意思表示(クーリングオフ)をした。
(5)  被告長﨑紅屋は,クレジット会社の立替払により,上記各売買契約代金を既に全額受領済みであるから,被告長﨑紅屋は,原告の損失のもとに売買代金相当額合計141万6900円を不当利得したというべきである。
(6)  また,原告は,平成16年当時収入はなく,ローンの支払いに不安をもっていたところ,被告彩の代表者であるAは,平成16年5月上旬ころ,原告にローン返済に見合う収入の途を確保するとの趣旨で「何とかする」との甘言を弄して商品の購入をすすめた。
原告と本件各被告との各売買契約はすべてAの勧誘に基づくものであり,Aは,被告彩以外の被告と原告との売買契約締結にあたっては各被告の代理人としての地位に立って原告を各売買契約に誘導したものである。
Aの上記「何とかする」との発言は消費者契約法4条にいう不実の告知に該当するから,原告は平成19年3月1日の本件第2回弁論準備手続期日において,上記各売買契約を取り消す旨の意思表示をした。
(7)  よって,原告は被告長﨑紅屋に対し,不当利得に基づき,141万6900円及びこれに対する解除(クーリングオフ)の後である平成18年10月21日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
(被告株式会社ジュエリーアイキ(以下「被告ジュエリーアイキ」という。)関係)
(1)  原告は,平成16年12月10日,港区赤坂所在の「シティクラブ オブ 東京」において,ブラックパールペンダントを代金34万6500円で購入し,分割手数料5万1975円を加算した合計39万8475円の売買契約書併用の補助参加人ライフに対するクレジット申込書に署名押印した。
同契約書には法人である販売業者の代表者氏名,売買契約の締結を担当した者の名前,商品の数量の記載がない。
(2)  上記売買契約において原告に交付された売買契約書は,上記のとおり,省令の定める前記①,②、⑤の記載を欠くものであり,かつ上記売買契約の締結場所は,法5条1項の「営業所」に該当しないから,原告は,上記売買契約について売買契約書の交付を受けていない。
(3)  原告は,平成18年6月12日頃に被告ジュエリーアイキに到達した内容証明郵便にて上記売買契約を解除する旨の意思表示(クーリングオフ)をした。
(4)  また,原告は,平成16年当時収入はなく,ローンの支払いに不安をもっていたところ,被告彩の代表者であるAは,平成16年5月上旬ころ,原告にローン返済に見合う収入の途を確保するとの趣旨で「何とかする」との甘言を弄して商品の購入をすすめた。
原告と本件各被告との各売買契約はすべてAの勧誘に基づくものであり,Aは,被告彩以外の被告と原告との売買契約締結にあたっては各被告の代理人としての地位に立って原告を各売買契約に誘導したものである。
Aの上記「何とかする」との発言は消費者契約法4条にいう不実の告知に該当するから,原告は平成19年3月1日の本件第2回弁論準備手続期日において,上記各売買契約を取り消す旨の意思表示をした。
(5)  被告ジュエリーアイキは,クレジット会社の立替払により,上記売買契約代金を既に全額受領済みであるから,被告ジュエリーアイキは,原告の損失のもとに売買代金相当額34万6500円を不当利得したというべきである。
(6)  よって,原告は被告ジュエリーアイキに対し,不当利得に基づき,34万6500円及びこれに対する解除(クーリングオフ)の後である平成18年10月21日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
2  請求原因に対する被告らの認否
(被告彩,同ジュエリーアイキ)
(被告彩関係)
(1) 原告の請求原因(1)(「ホテルニューオータニでの売買」)のうち,原告が被告彩から袋帯を購入し,売買契約書併用のクレジット申込書を作成したこと,その記載内容は認めるが,作成場所は否認する。同売買契約書の作成はホテルニューオータニで行われた展示会の終了した翌日に原告の自宅で行われたものである。
(2) 同(2)(「ラフォーレミュージアム六本木での売買」),同(3)(「山惣での売買」)は認める。
(3) 同(4)(「北斗ぴあでの売買」)のうち,原告が被告彩から小紋を購入し,売買契約書併用のクレジット申込書を作成したことは認めるが,作成場所は否認する。同売買契約書の作成は北斗ぴあでおこなわれた展示会の後である平成16年12月17日に原告の自宅で行われたものである。
(4) 同(5)(売買契約締結場所の法5条1項該当)は,争う。
原告主張の被告彩との間の「ラフォーレミュージアム六本木での売買」,「山惣での売買」は,いずれも,省令1条4号に該当する場所で締結された。すなわち,「ラフォーレミュージアム六本木での売買」は,平成16年5月13日から14日にかけてラフォーレミュージアム六本木において実施された展示会において締結され,「山惣での売買」は平成16年10月16日から17日にかけて山惣において開催された展示会において締結されたものであるが,いずれの展示会も各卸業者が搬入した衣類,小物,宝石,装身具等が販売価額とともに見易く陳列され,来場者は自由に展示品を内覧し,購入の是非を決定し,購入申込みのできる設備も整えられている状態にあったものである。
(5) 同(6)(クーリングオフの意思表示)は認める。
(6) 同(7)(消費者契約法4条による取消)について
争う。
(7) 同(8)(不当利得)について
争う。
(8) 同(9)(不法行為)について
売買契約の存在は認めるが,不当勧誘であるとの点は争う。
(被告ジュエリーアイキ関係)
(1) 原告の請求原因(1)は認める。
(2) 同(2)(売買契約締結場所の法5条1項該当)は争う。
被告ジュエリーアイキとの間の売買は,平成16年12月10日から12日にかけて「シティクラブ オブ 東京」で開催された展示会において締結されたものであるが,同展示会は各卸業者が搬入した衣類,小物,宝石,装身具等が販売価額とともに見易く陳列され,来場者は自由に展示品を内覧し,購入の是非を決定し,購入申込みのできる設備も整えられている状態にあったものである。
(3) 同(3)(クーリングオフの意思表示)は認める。
(4) 同(4)(消費者契約法4条による取消)について
争う。
(5) 同(5)(不当利得)について
争う。
(被告植田商事関係)
(1) 原告の請求原因(1)(「シティクラブ オブ 東京」における売買)のうち,売買契約の成立は否認する。同売買の対象商品は,被告植田商事が被告彩に卸売りしたもので,これを被告彩が原告に販売したものである。被告植田商事は卸問屋であり消費者に直接着物等を販売したことはない。
なお,原告は,被告植田商事が提携しているクオークにショッピングクレジットの申込をしたが,被告彩が提携しているローン会社の限度額が上限にきていたため,被告彩から被告植田商事が提携しているローン会社を使わせて欲しい旨依頼され,被告植田商事が名義上売主になったにすぎない。被告植田商事は,クオークから165万円の支払いを受け,これを被告彩に交付し,被告彩から売買契約の対象商品の原価代金と展示会経費を受領している。
(2) 同(2)(売買契約締結場所の法5条1項該当)は争う。
ショッピングクレジットの申込書に原告主張の販売業者の名称・住所・電話番号・代表者氏名,担当者,売買契約締結の年月日の記載はないが,原告主張の売買契約は,ホテルニューオータニの「鶴の間」において東京織物卸商業組合の副理事である市田株式会社が主催した着物展示会(きものナンバーワン)において締結されたものであり,同展示会は,平成17年2月18日から20日までの間開催されたもので,多くの人が自由に出入りしており,商品を自由に選択できる状況が整っており,展示場として固定的施設を備えている場所で販売を行っていて,原告主張の売買契約は,省令1条4号の「店舗に類する」場所での販売に該当するのであるから,原告主張の売買契約に特定商取引法の適用はなく,ショッピングクレジット契約申込書に上記の記載がないことは何ら問題がない。また,原告は,上記展示会も含め自宅から合計7回展示会場に足を運んで商品を購入しているのであって,原告は商品購入のために自らの意思に基づいて上記展示会に行っているのであるから,展示会に行った時点でなんら心理的拘束を受けていなかった。
(3) 同(3)(クーリングオフの意思表示)は認める。
(4) 同(4)(消費者契約法4条による取消)について
争う。
原告主張の「シティクラブ オブ 東京」における売買の売主は被告彩であるから,Aは被告植田商事の代理人の立場に立つことはない。仮にAが原告主張の発言をしたとしても,同発言は消費者契約法4条2項の「重要事項」について不実の告知をしたことにはならない。
(5) 同(5)((不当利得)について
争う。
(被告長﨑紅屋関係)
(1) 原告の請求原因(1)(「北斗ぴあにおける売買」)は認める。ただし,原告は夏付下と袋帯を購入した。
(2) 同(2)(「喜楽における売買」)は認める。ただし,原告は小紋及び読谷のほか長襦袢2反も購入している。売買契約書の商品数量に「1」と記載されているのは被告長﨑紅屋の誤記である。
(3) 同(3)(売買契約締結場所の法5条1項該当)は争う。
「北斗ぴあ」及び「喜楽」における売買は,いずれも着物等の商品を陳列し,消費者が自由に商品を選択できる状況で行われた売買であり,原告の意思を無視した営業等もなかったから,原告と被告長﨑紅屋との間の各売買契約は「一定の期間にわたり,指定商品を陳列し,当該指定商品を販売する場所であって,店舗に類する」「営業所」等で行われた取引である。
(4) 同(4)(クーリングオフの意思表示)は認める。
(5) 同(5)(不当利得)について
争う。
(6) 同(6)(消費者契約法4条による取消)について
争う。
3  被告彩,同ジュエリーアイキの主張
(1)  法26条2項第2号は,「販売業者又は役務提供者がその営業所等以外の場所において指定商品若しくは指定権利若しくは指定役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受け又は売買契約若しくは役務提供契約を締結することが通例であり,かつ,通常購入者又は役務の提供を受ける者の利益を損なうおそれがないと認められる取引の態様で政令で定めるものに該当する訪問販売」については,法4条から10条までの規定は適用しないと定める。そして,これを受けた政令8条3号は,「店舗販売業者以外の販売業者又は店舗役務提供事業者以外の役務提供事業者が継続的取引関係にある顧客(当該訪問の前一年間に,当該販売又は役務の提供の事業に関して,二以上の訪問につき取引のあった相手方をいう。)に対してその住居を訪問して行う販売又はその住居を訪問して役務提供契約の申込みを受け若しくは役務提供契約を締結して行う役務の提供」を法26条第2項第2号の政令で定める取引の態様とする旨定める。
被告彩は,「店舗販売業者以外の販売業者」であり,被告ジュエリーアイキは,「店舗販売業者」に該当するところ,被告彩,同ジュエリーアイキと原告との間の和服,帯,宝石等に関する売買取引は,平成9年2月25日頃以来,平成17年2月19日頃に至るまで継続して行われてきたものであり,特に宝石等に関する売買取引については,被告彩が被告ジュエリーアイキから当該宝石等を仕入れて直接の売主になる場合と被告彩の展示会において出展した被告ジュエリーアイキが直接の売主になる場合とがあり,原告はそのことを十分知って取引していた。
原告主張の「ホテルニューオータニ」での売買については,店舗販売業者以外の販売業者である被告彩と原告との間の夏袋帯等の売買であり,平成16年2月23日に原告の自宅で締結されたものであるところ,被告彩と原告との間には,平成15年2月24日にサンゴールス,ピンブローチ(11万6550円)の売買契約,同年9月26日に小紋,袋帯等(116万8000円)の売買契約が締結されているから,この取引は法26条第2項2号,政令8条3号にいう継続的取引関係にある顧客に対して住居を訪問して行う販売に該当する。
したがって,この取引について法4条の適用はないから,原告は売買契約を解除(クーリングオフ)できない。
(2)  原告主張の「北斗ぴあ」での売買については,同様に店舗販売業者以外の販売業者である被告彩と原告との間の小紋等の売買であり,平成16年12月17日に原告の自宅で行われたものであるところ,被告彩と原告との間には,平成16年2月23日に夏袋帯等(30万2803円)の売買契約(ホテルニューオータニでの売買),同年5月14日に藍絞り訪問着等(164万9440円)の売買契約(ラフォーレミュージアム六本木での売買)が締結されているから,この取引は法26条第2項2号,政令8条3号にいう継続的取引関係にある顧客に対して住居を訪問して行う販売に該当する。
したがって,この取引についても法4条の適用はない。
(3)  法26条2項1号は,「その住居において売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約若しくは役務提供契約を締結することを請求した者に対して行う訪問販売」については法4条から10条までの規定は適用しない旨定める。
原告主張の「北斗ぴあでの売買」については,平成16年12月11,12日に渡って,山惣で実施された展示会に臨場して下見した原告の母親(F)から,娘の原告に似合うとして,展示商品(小紋)を自宅に持ち込んで原告に見せてやって欲しいとの依頼があり,原告からも同趣旨の依頼があったので,被告彩の代表者(A)において平成16年12月17日原告の自宅を訪問して売買契約書を作成したのである。
したがって,この取引についても法4条の適用はない。なお,原告は,和服や宝石類に殊のほか興味を示し,原告の母(F)が日本舞踊を趣味としており,そのための舞台衣装としても和服等には強い関心を示していたこともあって,単なるAの勧誘によりやむなく購入させられたという消極的な動機によるものではなく,自らが求め,積極的な意思により購入したのである。また,原告は展示会での飲食や各種ゲームなどを好み,展示会にはむしろ積極的に参加していたのであって,Aの勧誘によりやむなく出席していたというものではない。
(4)  消費者契約法による取消について
Aが「何とかする」と言った事実は否認する。その余は争う。
消費者契約法4条4項2号にいう「その他の取引条件」は,当該物品についての具体的な取引条件のことであり,消費者契約の目的である物品を離れた消費者の生活に関する一般的な条件をいうものではないから,仮にAが原告主張の発言をしたとしても消費者契約法4条により取り消すことはできない。
4  被告彩,同ジュエリーアイキの主張に対する原告の認否,主張
(1)  被告彩,同ジュエリーアイキの主張(1),(2)は争う。被告彩,同ジュエリーアイキが主張する平成16年2月23日の取引及び同年5月14日の取引は,原告が本件訴えにおいてクーリングオフを主張している取引であるから,この取引をもって法26条2項2号にいう訪問販売ということはできない。また,平成15年9月26日の小紋・袋帯116万8000円の売買は売主がサカイトレーディング株式会社とするものであって,被告彩との間の取引ではない。
(2)  また,被告彩の代表者であるAによる販売の勧誘はいわゆる多重販売に該当するから,そもそも法26条2項2号の適用がないというべきである。Aが原告に対し勧誘し,売買取引に至ったものは平成15年1月から平成17年1月に至るまでの間,8件以上に上るのであり,原告の断り切れない性格に付け込み原告をターゲットとして支払困難なクレジット債務を負担させてその生活を破綻に導くという原告の利益を損なう結果を招来しているものであり,法26条2項の適用除外を認めた趣旨に反するからである。
第3  当裁判所の判断
(被告彩関係)
1  原告の請求原因(1)ないし(4)(各売買契約の成立)は,当事者間に争いがない。
2  上記事実に証拠(甲1,甲2の1ないし4,甲16,17,乙イ1ないし13,乙ロ1の1ないし3,乙ロ3,4,乙ハ1,証人G,被告長﨑紅屋代表者,被告彩代表者,原告)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
(1) 被告らは,いずれも着物や宝飾品の販売を業としているものであるが,その販売方法として,ホテルニューオータニや帝国ホテルその他の貸会場を借りて開催されるいわゆる展示会(主催者はそれぞれ別である。)に商品を展示して,顧客を勧誘して来場してもらい,商品を購入してもらう形式の販売を行っていた。
(2) Aは,従前から,原告の母(F)に上記の展示会に来場することを勧誘して商品を購入してもらう販売方法で和服等を販売していたが,平成9年頃からは原告にも展示会への来場方を勧誘するようになり,本件証拠上は,平成15年頃以降,本件を含めて少なくとも9回,展示会に参加して和服等を販売したが,その販売方法は,概ね,Aが車で原告と原告の母を迎えに行って展示会場まで同行し,いったん,展示会場のホテル等の中のレストラン等で食事を無料で提供し,各種のゲーム等をした後,大きなホテルであれば,A(もしくは販売関係者)が展示会場まで同行し,小さな料理屋であれば直接食事会場から展示会場に赴いてきてもらい,展示会場内で販売員(マネキン)やAが原告や原告の母に展示品(会社毎のブースはない。)を見せ,原告や原告の母が購入する段階になると,その場で,被告彩が提携している補助参加人ライフのクレジット申込書(売買契約を兼ねたもの)に署名押印してもらい,Aにおいて,原告や原告の母を自宅まで送り届けるというものであった。上記クレジットの申込は,原告が署名押印するだけで,収入,資産等,原告の返済能力を確認する事項の記載には一切記入がなく,補助参加人ライフにおいて,真実,原告がクレジットの申込をしたか否かとか,収入,資産はどの程度かを調査,確認した形跡はない。なお,大きな展示会は信販会社の担当者が常駐している場合があるが,信販会社の担当者がいない場合にはAら,被告彩側の担当者が補助参加人ライフのクレジット申込用紙に原告の署名押印をもらっていた(その後,補助参加人ライフ側で原告に対し,クレジット申込意思があるかの確認がされた。)。
2  上記事実関係によれば,本件の各売買がされた場所は,いずれも,法5条1項,省令1条4号の「店舗に類するもの」に該当しないとみるのが相当である。
その理由は,次のとおりである。すなわち,
(1) 法5条1項が,営業所等以外の場所の取引について販売業者に対し,省令4条所定の事項を記載した書面を購入者に交付すべきことを要求したのは,営業所以外の場所において商品を販売する場合には,販売業者からの積極的な勧誘や販売員が購入者に直接,執拗に説得して販売する販売手法がとられやすく,購入者は自由な意思に基づいて商品を購入することができずに,むしろ購入を断り難い状況に陥りやすいことから,購入者が,販売員の影響から脱した後に,冷静な判断の下で購入の適否を判断し,不要な商品を購入したとの判断に至った場合に容易に売買契約を解除(クーリングオフ)できるように販売業者の氏名や売買契約締結の年月日等を記載した書面を交付させることとしたものである(なお,省令6条は同書面にはクーリングオフに関する事項を記載しなければならないとしている。)。
上記認定のとおり,原告は,販売員であるAに迎えにきてもらい,展示会場に同行し,食事の提供を受け,その後に商品を選ぶというような形で商品を購入しているのであり,このような販売方法では,原告が商品の購入を断り難くなるのであり(展示会に来場した客の中に購入をしない客がいるからといって,購入者すべてが自由意思で購入したとはいえない。),まして,本件のように,クレジットにより販売することを前提とした場合,原告が,全くなにも購入しないで帰ることには多大な心理的抵抗が生じることは明らかである。
したがって,このような展示会販売については購入者を保護するために,容易に売買契約を解除(クーリングオフ)できるようにすべき実質的な理由があることはいうまでもない。
(2) 次に,省令1条4号は,法2条1項1号の場所として,「一定の期間にわたり,指定商品を陳列し,当該商品を販売する場所であって店舗に類するもの」を掲げ,平成13年5月31日厚生労働省医政局長ほか発の「特定商取引に関する法律等の施行について(通達)」と題する通達は,法2条の定義として,「店舗」に類する場所について,「①最低二,三日以上の期間にわたって,②指定商品を陳列し,消費者が自由に商品を選択できる状態のもとで,③展示場等販売のための固定的施設を備えている場所で販売を行うものをいう。」とし,「具体的には,通常は店舗と考えられない場所であっても,実態として展示販売にしばしば利用されている場所(ホテル,公会堂,体育館,集会場等)で前記三要件を充足する形態で販売が行われていれば,これらも店舗に類する場所での販売に該当する。」としていて,この解釈は首肯できるものであるところ,上記各展示会は,乙イ11,弁論の全趣旨によれば,①いずれも,少なくとも二日以上は展示会を開催していることが窺われ,②指定商品を陳列し,③ホテル(ホテルニューオータニ)の宴会場やそれに類すると思われる場所(ラフォーレミュージアム六本木,山惣,北斗ぴあ)で販売を行っているのであるから,本件の各売買は,形式的には,「店舗」に類する場所において販売がされたものということはできる。
しかしながら,このような形式的な要件は満たしているとはいえても,上記のとおり,原告は,販売員であるAに迎えにきてもらい,展示会場に同行し,食事の提供を受け,その後に商品を選ぶというような形で商品を購入しているのであり,単に,展示会へ招待状等を受けとって自ら足を運んでいるとか,食事等(しかも高額の食事代)の接待を受けてはいないとか,販売側のサービスを受けずに自由に商品を選べる状況にある場合とは異なるのである。しかも,原告本人の供述によれば,販売員が試着をすすめ,試着を繰り返しているうちに断り切れない雰囲気になるというのであるから,なおさら自由に商品を選べる状況にあると言い難いところである。このような状況を考慮すると,「ホテルニューオータニでの売買」,「ラフォーレミュージアム六本木での売買」,「山惣での売買」,「北斗ぴあでの売買」は,いずれも「自由に商品を選択できる状態」ではなかったとみるべきである。
さらに,本件各売買について,法5条1項の適用があると解しても,格別販売者に困難を強いるものではない。すなわち,甲2の1ないし4,甲4の1は,いずれもクーリングオフができることを前提として「クーリングオフのお知らせ」との表題のもとにクーリングオフの手続について説明を記載しているのであり,同各書面にきちんと記入をすれば,自ずと法5条1項,省令4条所定の事項を記載することになる書式となっているのであるから,販売者側においてこれを遵守することになんらの困難もない。
3  上記認定,判断によれば,各展示会場で売買契約が締結されたことに争いがない「ラフォーレミュージアム六本木での売買」,「山惣での売買」において原告が受領した売買契約書に法5条1項,省令4条所定の事項の記載がないことは当事者間に争いがないから,原告は上記各売買についてクーリングオフができるというべきである。
4  被告彩は,「ホテルニューオータニでの売買」,「北斗ぴあでの売買」は,「ホテルニューオータニ」「北斗ぴあ」で売買がされたものではなく原告の自宅で売買契約書が作成されたとして,これらの売買について法26条2項2号による適用除外を主張するので検討する。
(1) まず,「ホテルニューオータニでの売買」については,Aの証言により,平成16年2月23日頃,原告の自宅で売買契約書兼用のクレジット申込書が作成されたことが認められる(原告は,自宅でクレジット申込書を作成したことはない旨供述するが,Aの証言によれば,「ホテルニューオータニ」の展示会場でクレジット申込書を作成することは禁止されているというのであるから,上記は原告の記憶違いとみるのが相当である。)。
次に,被告彩は「ホテルニューオータニでの売買」について,原告の自宅を訪問して,平成15年2月24日にサンゴルース,ピンブローチ(11万6550円)の売買契約,同年9月26日に小紋,袋帯等(116万8000円)の売買契約を締結した旨主張し,乙イ16(A作成の陳述書)にはこれに沿う記載がある。しかし,甲15(上記平成15年9月26日の小紋,袋帯等の売買契約書)は,販売店として「サカイトレーディング(株)東京支社」との記載がある一方,被告彩あるいはAの記載はないのであって,被告彩がその購入申込書の写し(乙イ15)を所持していること(現実にはAが販売したとみるのが相当であるが,それは販売員として関与したと評価するしかない。)を考慮しても,上記平成15年9月26日の小紋,袋帯等の売買契約が被告彩と原告との間で締結されたとは認められない。
(2) 「北斗ぴあでの売買」についてみるに,被告彩は,この「北斗ぴあでの売買」契約が締結された前一年間に,「ホテルニューオータニでの売買」及び「ラフォーレミュージアム六本木での売買」が原告の自宅で契約締結されたことを主張するが,「ラフォーレミュージアム六本木での売買」は,原告の自宅ではなく,ラフォーレミュージアム六本木で売買契約が締結されたというべきである(原告本人。ホテルニューオータニでは展示会場でクレジット書類を作成することは禁止されているから,それ以外の場所で売買契約を締結せざるを得ないが,ラフォーレミュージアム六本木においても同様であると認めるべき証拠はない。なお,甲16によれば,原告の母であるFは,同人の事情で自宅で契約したことが多かったことが認められるが,原告にはそのような事情は窺われない。)。
(3) そうすると,「ホテルニューオータニでの売買」,「北斗ぴあでの売買」について法26条2項2号,省令8条3号の要件があるとはいえない。そして,法2条の訪問販売についても法4条により省令3条に規定する事項を記載した書面を購入申込者に交付することが必要であるから,結局,原告は,被告彩との各売買契約についてクーリングオフができるというべきである。
5  原告の請求原因(6)(クーリングオフの意思表示)は,当事者間に争いがないから,原告と被告彩との間の各売買契約は,法9条により解除されたというべきであって,被告彩は原告に対して売買代金を返還する義務があることとなる。
6  してみると,被告彩が,本件の各売買契約に基づいて補助参加人ライフから各売買代金の立替払を受けたことは弁論の全趣旨により明らかというべきであって,原告は補助参加人ライフに立替払にかかる金員について約定の弁済金を支払うべき債務を負担しているのであるから,結局,被告彩は,原告の損失のもとに,本件の各売買代金相当額を利得したというべきである。
7  よって,その余の点を判断するまでもなく,原告の被告彩に対する請求は理由がある。
(被告植田商事関係)
1  原告の請求原因(1)(「シティクラブ オブ 東京」での売買)についてみるに,甲12(クオーク作成の債権通知書)によれば,原告と被告植田商事との間で原告主張のとおりの売買が成立したものとみるのが相当である。
証人Gは,原告が「シティクラブ オブ 東京」で購入した商品(本加賀友禅)は,もともと市田株式会社の商品であり,被告植田商事がこれを仕入れて販売するが,その販売先は被告彩であり,クレジット申込書上,被告植田商事が販売店とされているのは,被告彩の与信枠が一杯になったので,被告植田商事の提携クレジット会社を使用し,いったん代金が被告植田商事に入る形にしたためである旨供述するが,そもそも市田株式会社の商品を原告が購入することが決まってから被告植田商事や被告彩が仕入れてから原告に売り渡すという形式を取っているというのであり,原告が売主を認識することはできない。そうすると,売買契約書兼用のクレジット申込書には販売店の記載がないが(甲3),立替払をしたクオークが被告植田商事が販売店であるとして代金を立替払いし,被告植田商事もそのことを前提として行動している以上、被告植田商事と被告彩との関係がどのようなものであるかと関係なく(証人Gは,被告植田商事は,消費者に直接販売したことはない旨述べる。),外形上は,原告との間の売買契約は被告植田商事が売主とみるほかない。そして,その際に交付された売買契約書兼用のクレジット申込書に原告主張の記載がないことは甲3により明らかである。
2  原告の請求原因(2)(上記売買についての法5条1項該当)についてみるに,被告彩の関係での認定,判断と同様,「シティクラブ オブ 東京」は,法5条1項1号の「営業所等以外の場所」であると解するのが相当である。
3  原告の請求原因(3)(クーリングオフの意思表示)は,当事者間に争いがないから,原告と被告植田商事との間の売買契約は,法9条により解除されたというべきであって,被告植田商事は原告に対して売買代金を返還する義務があることとなる。
4  してみると,被告植田商事が,本件の売買契約に基づいてクオークから売買代金の立替払を受けたことは弁論の全趣旨により明らかというべきであって,原告はクオークに立替払にかかる金員について約定の弁済金を支払うべき債務を負担しているのであるから,結局,被告植田商事は,原告の損失のもとに,本件の各売買代金相当額を利得したというべきである。
5  よって,その余の点を判断するまでもなく,原告の被告植田商事に対する請求は理由がある。
(被告長﨑紅屋関係)
1  原告の請求原因(1),(2)(「北斗ぴあでの売買」,「喜楽での売買」)は,当事者間に争いがない。同(3)(同契約についての法5条1項該当)は,被告彩の関係での認定,判断と同様,いずれも,法5条1項1号の「営業所等以外の場所」であると解するのが相当である。
売買契約書兼用のクレジット申込書に原告主張の記載がないことは甲4の1,2により明らかである。
2  原告の請求原因(4)(クーリングオフの意思表示)は,当事者間に争いがないから,原告と被告長﨑紅屋との間の売買契約は,法9条により解除されたというべきであって,被告長﨑紅屋は原告に対して売買代金を返還する義務があることとなる。
3  してみると,被告長﨑紅屋が,本件の売買契約に基づいてジャックスから売買代金の立替払を受けたことは弁論の全趣旨により明らかというべきであって,原告はジャックスに立替払にかかる金員について約定の弁済金を支払うべき債務を負担しているのであるから,結局,被告長﨑紅屋は,原告の損失のもとに,本件の各売買代金相当額を利得したというべきである。
4  よって,その余の点を判断するまでもなく,原告の被告長﨑紅屋に対する請求は理由がある。
(被告ジュエリーアイキ関係)
1  原告の請求原因(1)(「シティクラブ オブ 東京での売買」)は,当事者間に争いがない。同(2)(同契約についての法5条1項該当)は,被告彩の関係での認定,判断と同様,いずれも,法5条1項1号の「営業所等以外の場所」であると解するのが相当である。
売買契約書兼用のクレジット申込書に原告主張の記載がないことは甲5により明らかである。
2  原告の請求原因(3)(クーリングオフの意思表示)は,当事者間に争いがないから,原告と被告ジュエリーアイキとの間の売買契約は,法9条により解除されたというべきであって,被告ジュエリーアイキは原告に対して売買代金を返還する義務があることとなる。
3  してみると,被告ジュエリーアイキが,本件の売買契約に基づいて補助参加人ライフから売買代金の立替払を受けたことは弁論の全趣旨により明らかというべきであって,原告は補助参加人ライフに立替払にかかる金員について約定の弁済金を支払うべき債務を負担しているのであるから,結局,被告ジュエリーアイキは,原告の損失のもとに,本件の各売買代金相当額を利得したというべきである。
4  よって,その余の点を判断するまでもなく,原告の被告ジュエリーアイキに対する請求は理由がある。
(結論)
以上の次第で,原告の被告らに対する請求は,すべて理由がある。
(裁判官 綿引穣)

 

別紙
関係法令の定め
法2条 この章において「訪問販売」とは,次に掲げるものをいう。
一 販売業者(中略)が営業所,代理店その他の経済産業省令で定める場所(以下「営業所等」という。)以外の場所において,売買契約の申込みを受け,若しくは売買契約を締結して行う指定商品(中略)の販売
4 この章(中略)において「指定商品」とは,国民の日常生活に係る取引において販売される物品であって政令で定めるものをい(中略)う。
政令3条 法2条4項の指定商品は,別表第一に掲げる物品とする。
別表第一
七 真珠並びに貴石及び半貴石
八 金,銀,白金その他の貴金属
三四 衣服
三五 ネクタイ,マフラー,ハンドバッグ(中略),指輪,ネックレス(中略)その他の装身具(以下略)
省令1条 特定商取引に関する法律(以下「法」という。)第二条第一項第一号の経済産業省令で定める場所は,次の各号に掲げるものとする。
一 営業所
二,三(略)
四 前三号に掲げるもののほか,一定の期間にわたり,指定商品を陳列し,当該指定商品を販売する場所であって店舗に類するもの
法4条 販売業者(中略)は,営業所等以外の場所において指定商品(中略)の申込みを受けたときは,直ちに,経済産業省令で定めるところにより,次の事項についてその申込みの内容を記載した書面をその申込みをした者に交付しなければならない(中略)。
一ないし四(略)
五 前各号に掲げるもののほか,経済産業省令で定める事項
省令3条 法第4条第5号の経済産業省令で定める事項は,次のとおりとする。
一 販売業者(中略)の氏名又は名称,住所及び電話番号並びに法人にあっては代表者の氏名
二 売買契約(中略)締結を担当した者の氏名
三 売買契約(中略)締結の年月日
四 商品名及び商品の商標又は製造者名
五 (略)
六 商品の数量
(以下略)
法5条 販売業者(中略)は,次の各号のいずれかに該当するときは,(中略)遅滞なく(中略)経済産業省令で定めるところにより,同条(4条)各号の事項(中略)についてその売買契約(中略)の内容を明らかにする書面を購入者(中略)に交付しなければならない
一 営業所等以外の場所において,指定商品(中略)につき売買契約を締結したとき(以下略)。
法7条 主務大臣は,販売業者(中略)が(中略),次に掲げる行為をした場合において,訪問販売に係る取引の公正及び購入者(中略)の利益が害されるおそれがあると認めるときは,その販売業者(中略)に対し,必要な措置をとるべきことを指示することができる。
一,二略
三 前二号に掲げるもののほか,訪問販売に関する行為であって,訪問販売に係る取引の公正及び購入者(中略)の利益を害するおそれがあるものとして経済産業省令で定めるもの
省令7条 法第7条第3号の経済産業省令で定める行為は,次の各号に定めるものとする。
一 (略)
二 老人その他の者の判断力の不足に乗じ,訪問販売に係る売買契約(中略)を締結させること(以下略)
法9条 販売業者(中略)が営業所等以外の場所において指定商品(中略)につき売買契約(中略)を締結した場合におけるその購入者(中略)(以下,この条において「申込者等」という。)は,次に掲げる場合を除き,書面によりその売買契約(中略)の解除(中略)を行うことができる。
一 申込者等が第五条の書面を受領した日(その日前に第四条の書面を受領した場合にあっては,その書面を受領した日)から起算して八日を経過したとき
二(以下略)。
法26条2 第四条から第一〇条までの規定は,次の訪問販売については,適用しない。
二 販売業者(中略)がその営業所等以外の場所において指定商品(中略)につき売買契約(中略)を締結することが通例であり,かつ,通常購入者(中略)の利益を損なうおそれがないと認められる取引の態様で政令で定めるものに該当する訪問販売
政令8条 法第26条第2項第2号の政令で定める取引の態様は,次のいずれかに該当する取引の態様とする(中略)。
三 店舗販売業者以外の販売業者(中略)が継続的取引関係にある顧客(当該訪問の前一年間に,当該販売(中略)に関して,二以上の訪問につき取引のあった相手方をいう。)に対してその住居を訪問して行う販売(以下略)
消費者契約法4条
消費者は,事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,当該消費者に対して,次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし,それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは,これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。当該告げられた内容が事実であることの誤認(以下略)
以上

 

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