平17(行ウ)640号・平17(行ウ)641号・平19(行ウ)681号 指示処分取消等請求事件、訴えの追加的併合申立事件

裁判年月日  平成20年 3月14日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(行ウ)640号・平17(行ウ)641号・平19(行ウ)681号
事件名  指示処分取消等請求事件、訴えの追加的併合申立事件
裁判結果  一部却下、一部棄却  文献番号  2008WLJPCA03148020

要旨
◆リフォーム事業会社である原告が被告東京都に対して特定商取引に関する法律7条に基づく指示及び東京都消費生活条例48条に基づく勧告が違法であるとして処分の取消し等を求めた事案において、前記勧告は取消訴訟の対象である行政事件訴訟法3条2項所定の行政庁の処分に当たらないとして前記勧告の取消しを求める訴えを却下し、前記指示は、訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利害が害されるおそれがあると認めるときに販売業者等に必要な措置をとるべきことを指示することができると規定する特定商取引に関する法律7条が掲げる行為に該当する事例についてなされた適法な指示であるとして前記指示の取消しを求める請求を棄却した事例

参照条文
行政事件訴訟法3条2項
特定商取引に関する法律7条
特定商取引に関する法律26条2項1号
特定商取引に関する法律66条
東京都消費生活条例26条
東京都消費生活条例46条
東京都消費生活条例48条

裁判年月日  平成20年 3月14日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(行ウ)640号・平17(行ウ)641号・平19(行ウ)681号
事件名  指示処分取消等請求事件、訴えの追加的併合申立事件
裁判結果  一部却下、一部棄却  文献番号  2008WLJPCA03148020

平成17年(行ウ)第640号 指示処分取消等請求事件(甲事件)
平成17年(行ウ)第641号 指示処分取消等請求事件(乙事件)
平成19年(行ウ)第681号 訴えの追加的併合申立事件(丙事件)

東京都府中市〈以下省略〉
原告 ケーアールケー株式会社
代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁護士 阿部泰隆
松田研一
越智敏裕
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 東京都
代表者兼処分行政庁 東京都知事石原慎太郎
指定代理人 直井春夫
宮崎俊郎
松元嗣子
齋藤広光

 

 

主文

1  本件訴えのうち,甲事件及び乙事件に係る各勧告の取消しを求める部分及び丙事件に係る部分をいずれも却下する。
2  その余の訴えに係る原告の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は原告の負担とする。

 

 

事実及び理由

第1  請求
1  甲事件
(1)  東京都知事がKRK関東株式会社に対して平成17年7月12日付けでした特定商取引に関する法律7条に基づく指示を取り消す。
(2)  東京都知事がKRK関東株式会社に対して平成17年7月12日付けでした東京都消費生活条例48条に基づく勧告を取り消す。
2  乙事件
(1)  東京都知事が原告(旧商号KRK株式会社)に対して平成17年7月12日付けでした特定商取引に関する法律7条に基づく指示を取り消す。
(2)  東京都知事が原告(旧商号KRK株式会社)に対して平成17年7月12日付けでした東京都消費生活条例48条に基づく勧告を取り消す。
3  丙事件
(1)  前記1及び2の各(2)記載の勧告がいずれも違法であることを確認する(前記1及び2の各(2)の予備的請求)。
(2)  原告が前記(1)の各勧告に従う義務を負わないことを確認する(前記1及び2の各(2)の予備的請求)。
第2  事案の概要
本件は,KRK関東株式会社(同社は,後記のとおり,原告により吸収合併された。以下,同社を「被承継人」という。)及びKRK株式会社(同社は,後記のとおり,商号変更前の原告である。)に対し,それぞれ東京都知事から平成17年7月12日付けで特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)7条に基づく指示(以下「本件各指示」という。)及び東京都消費生活条例(平成6年東京都条例第110号。以下「本件条例」という。)48条に基づく勧告(以下「本件各勧告」という。)がされたため,原告が,被告に対し,本件各指示及び本件各勧告が違法であることを主張してこれらの取消しを求める甲事件及び乙事件と,本件各勧告の取消請求に係る予備的請求として,本件各勧告の違法確認及び本件各勧告に従う義務がないことの確認を求める丙事件とが併合審理された事案である。
1  前提事実
本件の前提となる事実は,次のとおりである。いずれも当事者間に争いのない事実若しくは当事者が争うことを明らかにしない事実又は証拠等により容易に認めることのできる事実である。
(1)  原告について(争いのない事実及び弁論の全趣旨)
ア 被承継人は,平成9年12月25日,商号を「有限会社ケー・アール・ケー」として設立された会社であり,同11年3月1日,「ケー・アール・ケー関東株式会社」へと組織変更され,同15年10月21日に「KRK関東株式会社」へ,同17年10月20日に「ケーアールケー株式会社」へとそれぞれ商号変更された後,同18年3月1日,原告に吸収合併された。
すなわち,本件各指示及び本件各勧告がされた当時の被承継人の商号は,KRK関東株式会社であるから,甲事件に係る各取消請求との関係において,特に区別するときは,以下,「KRK関東」という。
イ 原告は,平成4年12月7日,商号を「近畿流通株式会社」として設立された会社であり,同11年1月21日に「ケー・アール・ケー近畿株式会社」へ,同15年10月21日に「KRK株式会社」へ,同18年3月1日に「ケーアールケー株式会社」へとそれぞれ商号変更され,同日,被承継人を吸収合併した。
すなわち,本件各指示及び本件各勧告がされた当時の原告の商号は,KRK株式会社であるから,乙事件に係る各取消請求との関係において,特に区別するときは,以下,「KRK」という。
ウ KRK関東及びKRKの代表取締役はAが兼務し,B及びCは両社の取締役を兼務していた。さらに,両社の商業登記簿記載の目的は,給水及び排水設備,衛生設備,水洗便所,風呂並びにちゅう房設備の設計及び施工,冷暖房設備の設計及び施行,内装工事の設計及び施行等の点で同一であり,KRKの本店所在地のあった東京都新宿区内の「新宿アイランドタワー7階」にはKRK関東の新宿支店のショールームが存在し,KRK関東の中心的な営業拠点となっていた。
また,KRKは,KRK関東の全株式を所有し,KRKには役員の外に従業員は存在せず,KRK関東が消費者と契約する際に使用する契約書面には,契約者としてKRK関東のほかにKRKも併記されていた。
KRK関東及びKRKは,共に「KRKグループ」を標ぼうし,KRKグループのパンフレットには,KRKが管理部門で,KRK関東が事業部門であることが明記され,会社概要における資本金についても,連結ベースでの金額が示され,事業内容もグループとしての一体の説明を行っていた。
すなわち,KRK関東及びKRKは,KRKが管理面,KRK関東が関東近県における事業面を担当し,両社は1つの組織(KRKグループ)として一体となってリフォーム事業を行っていた。
(2)  立入調査及び業務改善計画書の提出等について
ア 東京都生活文化局消費生活部取引指導課(以下,「取引指導課」という。)の担当職員は,平成14年3月18日,特商法66条並びに本件条例26条及び46条に基づき,KRK関東に対する立入調査をし,本件条例48条及び取引指導課作成の「不適正な取引行為に関する事業者調査・指導等の実施要領」に基づく指導をした。(乙14,15)
イ その結果,KRK関東の代表取締役であるAは,東京都知事にあてた平成14年3月20日付けの業務改善計画書を提出した。(乙16)
(3)  聞き取り調査等について
取引指導課では,平成15年9月30日,東京都練馬区消費生活センターからKRKグループに係る同月19日付け「不適正取引に関する情報(通知書)」を受領し,同16年7月2日,東京都品川区消費者センターからKRK関東に係る同年6月30日付け「不適正取引に関する情報(通知書)」を受領したことから,前記(2)イの業務改善計画書の提出にもかかわらず,不適正な取引行為が継続して行われている疑いがあるとして,特商法7条に基づく指示及び本件条例48条に基づく勧告を視野に入れた調査を行い,消費者からの聞き取り調査によって,次のアないしウの3事例(以下,順次「取引事例A」,「取引事例B」及び「取引事例C」といい,これらを併せて「本件各事例」という。)を確認した。(乙17,18)
ア 取引事例A
D(昭和○年○月○日生まれ。)は,東京都練馬区に所在するマンションの1004号室に居住するものであるが,平成15年8月3日,自宅において,KRK関東の従業員であるEから示された自宅のリフォーム工事に係る工事請負契約書(工事代金見積額442万1544円を特別価格300万円に値引きして施工する内容のもの)に署名押印した。(甲7,乙19)
イ 取引事例B
F(昭和○年○月○日生まれ。)は,東京都江東区に所在するマンションの704号室に居住するものであるが,平成15年12月18日,自宅において,KRK関東の従業員であるGから示された自宅のリフォーム工事に係る工事請負契約書(工事代金見積額260万7521円を上記704号室をショールームとして使用させることを条件に167万6000円に値引きして施工する内容のもの)に署名押印した。(甲8,乙22)
ウ 取引事例C
H(昭和○年○月○日生まれ。)は,東京都多摩市に所在するマンションの306号室に居住するものであるが,平成16年8月7日,自宅において,KRK関東の従業員であるIから示された自宅のリフォーム工事に係る契約書(工事代金見積額69万6885円を50万円に値引きして施工する内容のもの)に署名押印した。(甲9,乙26)
(4)  本件各指示及び本件各勧告に至るまでの経緯について
ア 取引指導課は,平成16年12月17日,KRK関東及びKRKに対し,特商法66条及び本件条例46条に基づき報告を求め,同月22日,両社から報告書の提出を受けた。(乙8,9,29)
イ 取引指導課は,平成17年2月21日,KRK関東及びKRKに対し,行政手続法13条1項2号に基づく弁明の機会の付与及び本件条例49条に基づく意見陳述の機会の付与に係る通知をした。(乙30,乙31)
ウ KRK関東は,平成17年2月25日,取引指導課に対し,弁明書及び陳述書等を提出した。(乙32ないし36)
(5)  本件各指示及び本件各勧告について
東京都知事は,KRK関東及びKRKに対し,それぞれ平成17年7月12日付けの書面で特商法7条に基づく本件各指示及び本件条例48条に基づく本件各勧告を行った。上記各書面における本件各指示及び本件各勧告の記載内容は,いずれも下記のとおりである。(甲1,4)

(指示の内容)
(1) 貴社は,貴社の行う訪問販売に係る役務提供契約の締結について勧誘をするに際し,または訪問販売に係る役務提供契約の申込の撤回若しくは解除を妨げるため不実のことを告げる行為をしないこと。(特定商取引法第6条第1項)
(2) 貴社は,貴社の行う訪問販売に係る役務提供契約の締結について勧誘をするに際し,当該役務提供契約に関する事項であって,顧客若しくは役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき,正確且つ十分な説明を行うこと。(特定商取引法第7条第2号)
(3) 貴社は,貴社の行う訪問販売に係る役務提供契約の締結について迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘をし,又は当該契約の申込の撤回若しくは解除について迷惑を覚えさせるような仕方でこれを妨げないこと。(特定商取引法第7条第3号,特定商取引法施行規則第7条第1号)
(勧告の内容)
(1) 貴社は,契約にかかる損害賠償額の予定,違約金又は契約の解除に伴う清算金の定めにおいて,消費者に不当に高額又は高率な負担を求める条項を設けた契約を締結しないこと。(条例第25条第1項第3号,条例施行規則第8条第2号)
(2) 貴社は,契約の成立又は有効性について消費者等が争っているにもかかわらず,契約が成立し,又は有効であると一方的に主張して,強引に債務の履行を迫り,又は債務の履行をさせないこと。(条例第25条第1項第4号,条例施行規則第9条第4号)
(3) 貴社は,消費者のクーリング・オフの権利の行使に際して,手数料・送料・サービスの対価等法令上根拠のない要求をして,当該権利の行使を妨げ,契約の成立又は存続を強要しないこと。(条例第25条第1項第6号,条例施行規則第11条第1項第3号)
(4) 貴社は,法律及び条例の遵守について,内部教育等により従業員等に徹底すること。
(6) 本件各指示及び本件各勧告がされた後の経緯について
ア KRK関東及びKRKは,平成17年7月26日,取引指導課に対し,それぞれ改善報告書を提出した。(甲3,6,乙3の1及び2)
イ KRK関東は平成17年9月6日に,また,KRKは同月7日に,それぞれ東京都知事に対し,異議申立てをした。(乙40,41)
ウ 東京都知事は,平成17年10月28日,KRK関東及びKRKの各異議申立てをそれぞれ棄却する旨の決定をした。(甲2,5)
エ KRK関東及びKRKは,平成17年12月31日,甲事件及び乙事件に係る各訴えを提起し,さらに,原告は,同19年10月26日,行政事件訴訟法19条1項による訴えの追加的併合又は民訴法143条による訴えの追加的変更として,丙事件に係る訴えを提起した。
なお,甲事件及び乙事件に係る各訴訟については,平成19年6月26日の本件第8回口頭弁論期日において,同年9月4日に次回の口頭弁論期日が指定され,同期日において口頭弁論が終結される予定であった(なお,最終準備書面の提出期限は同年8月28日までとされた。)が,同月25日に原告訴訟代理人弁護士がすべて辞任する旨の届出がされ,その後,現在の原告訴訟代理人弁護士が改めて選任されたことなどから,同年9月3日付けで同期日が同年11月6日に変更されたところ,丙事件に係る訴えが同年10月26日に提起され,同20年2月6日の本件第10回口頭弁論期日において口頭弁論が終結された。
(当裁判所に顕著な事実)
2  争点
(本案前の争点)
(1) 本件条例48条に基づく勧告は,取消訴訟の対象である行政事件訴訟法3条2項所定の行政庁の処分に当たるか。
(2) 丙事件の各確認請求に係る訴えについて,訴えの利益があるか。
(本案の争点)
(3) 本件各事例において,特商法26条2項1号にいう「請求」があるなど特商法の適用を除外する事由があるか。
(4) 本件各指示の原因となる事実について
ア Gが,Fに対し,そのような事実は存しないにもかかわらず,「また1件決まっちゃいましたよ。」と申し向けるなどして,契約の締結について勧誘するに際し,不実のことを告げたか。
イ KRK関東の従業員であるJが,Fに対し,「40%の違約金は払ってもらう。これは法律で決まっていることだ。」と申し向けるなどして,申込みの撤回を妨げるため,不実のことを告げたか。
ウ Eが,Dに対し,「住所,氏名をお願いできますか。」と話しながら示した書面が契約書であることなどを説明しなかったか。
エ Iが,Hに対し,「ここに署名と判子をお願いします。」と話しながら示した書面が契約書であることなどを説明しなかったか。
オ Dがいわゆるクーリングオフの通知を送付したことに対し,Jが,「どうしてクーリングオフしたのですか。話し合いをさせてくれませんか。」等と申し向けるなどして,クーリングオフを拒否したか。
カ Gが,Fが「一晩考えさせてほしい。」と何度も話しているにもかかわらず,「今日中じゃないと間に合いませんよ。ここで,お子さんに電話したらどうですか。」と申し向けるなどして,決断を迫ったか。
キ Fが解約の書面を郵送したことに対し,Jが,「もう工事は始まっている。断っても工事はしますよ。」等と話し,Fが「解約の書面を郵送した。」と言っても,「そんなもの,いくら来ても受取拒否する。」と答えたり,「例えばお風呂だけとかキッチンだけやるというのはどうですか。」等と申し向けるなどして,クーリングオフを拒否したか。
ク Hが電話で契約を断ったことに対し,Iが,「是非やらせて下さい。」,「考え直して下さい。」等と申し向けるなどして,クーリングオフを拒否したか。
(5) 本件各勧告の原因となる事実について
ア 原告の契約書の裏面に,「申込がクーリングオフ期間を過ぎての解約及びクーリングオフ以外の契約に関しては,当社規定により,契約金額の40%を,違約金として請求できます。」との記載があることが,東京都消費生活条例施行規則(平成6年東京都規則第225号)8条2号が定める,契約に係る損害賠償額の予定,違約金又は契約の解除に伴う清算金の定めにおいて,消費者に不当に高額又は高率な負担を求める条項を設けた契約を締結させることに当たるか。
イ Jが,Dに対し,「見積書だと思っていたと言うが,印もついている。工期も決めている。それを見積書だと思っていたというのはだれが聞いてもおかしいと思う。」等と述べたか。
ウ Fが解約の書面を郵送したことに対し,Jが,特商法9条3項により違約金の支払を請求することができないにもかかわらず,「40%の違約金は払ってもらう。」と言い,法令上根拠のない要求をしたか。
エ Hが解約を申し出て,再三の説得を断った際,Iが,「それならば違約金を払ってもらいます。」と言ったか。
3  争点に関する当事者の主張の概要
(1)  争点(1)(勧告の処分性)について
(被告の主張)
勧告は,一般に,その指示する行為をその対象者が行わないと,後に不利益処分等の具体的処分を受けることがあることを対象者に通知する行為であり,その行為自体には直接具体的な法的効果が結び付けられているものではない。
そして,本件各勧告は,本件条例48条に基づくものであるところ,同条は,本件条例の規定に違反をしている事業者に対し,当該違反をしている事項を是正するよう勧告することをその内容としており,当該事業者に対し,何らかの義務を課するとか権利行使を妨げる等の法的効果を生ぜしめるものではない(これに従わないときの効果は,その旨を公表することが予定されているだけである。)。
したがって,本件各勧告は,それ自体において直接の法的効果を生ずるものとはいえず,抗告訴訟の対象となる処分には当たらないから,その取消しを求める訴えは,不適法なものとして却下されるべきである。
(原告の主張)
原告は,本件各勧告と同時にされた教示に従って本件各勧告の取消しの訴えを提起しており,このような教示からすれば,東京都知事は本件各勧告に処分性があると考えていたはずである。訴訟要件といえども,それほど客観的に決めなければならないものではないから,上記のとおり,東京都知事が本件各勧告に処分性を認めていた以上,本件各勧告には処分性がある。
仮にそうではないとしても,近時の最高裁判例に照らすと,これまで処分性がないとされてきた行政庁の行為についても,その取消しの訴えが提起されたなら,これを適法として取り扱う傾向にあるのであるから,本件各勧告の取消しの訴えは適法とされるべきである。
(2)  争点(2)(確認の訴えの利益)について
(被告の主張)
ア 本件各勧告の違法確認又は本件各勧告に従う義務がないことの確認を求める訴えには,訴えの利益がない。
イ なお,行政事件訴訟法19条1項による追加的併合の申立てが認められるためには,基本となる取消訴訟及び関連請求に係る訴えが共に適法であることが必要であるが,前者が不適法な訴えであることは争点(1)に係る被告の主張のとおりである。
(原告の主張)
ア 本件各勧告がされたことは東京都知事により公表されているところ,これにより,原告の営業活動は甚大かつ深刻な影響を受けた。すなわち,上記公表後,各種の報道がされたことなどもあって,顧客からの多数の解約申出,製造業者及びクレジット会社等の取引先からの取引停止,テレビコマーシャルの打切り,社員募集広告の申込拒否,就職内定者による辞退,各種協会及び団体への加盟の拒否,新規株式上場準備作業の断念等,原告は極めて大きな打撃を受け続けている。現在までの損害額は,5億円を下回ることはない。
このように,本件各勧告により原告に生じている重大な営業上の不利益を排除し,今後,同様の不利益が生じないようにするためには,本件各勧告が違法であることを確認し,これに従う義務がないことが確認されることが必要であるから,丙事件に係る各確認の訴えには訴えの利益がある。
イ なお,行政事件訴訟法19条1項による追加的併合の申立てが認められるためには,基本となる取消訴訟及び関連請求に係る訴えが共に適法であることが必要であるといわれるが,本件では取消訴訟と当事者訴訟である確認訴訟とが選択的な関係にあり,処分性の有無の判断に応じていずれかの訴訟が適法として取り扱われるべきものであるから,同項による追加的併合の申立てとして適法である。ただし,そうでないとしても,丙事件に係る訴えは,民訴法143条による訴えの追加的変更として適法である。
(3)  争点(3)(特商法の適用除外)について
(被告の主張)
ア 特商法26条2項1号は,「その住居において売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約若しくは役務提供契約を締結することを請求した者に対して行う訪問販売」について,「第4条から第10条までの規定」を適用しないと定めているところ,同号にいう「請求」に当たるか否かは,取引行為を行いたい旨の明確な意思表示をしたか否かにより決すべきであり,本件各事例では,いずれもこのような「請求」はなかった。
イ 原告は,不特定多数を対象とした広告紙を配布した場合には,訪問販売に当たらない旨主張するが,このようなことは,特商法2条1項2号(営業所以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた者その他政令で定める方法により誘引した者と営業所等において契約を締結した場合)で問題となるとしても,同項1号(営業所等以外の場所において契約を締結した場合)では問題とならない。
ウ また,原告は,取引事例Aでは,モデルルームが「営業所」に当たると主張しているが,Dが契約書に署名押印したのはその自宅であり,このような原告の主張は結論に影響しない。
エ したがって,本件各事例については,いずれも特商法の適用が除外されない。
なお,原告は,本件各事例が訪問販売に当たらなければ特商法のみならず本件条例の規制対象ともならないと理解しているようであるが,両者の規制対象は異なるのであるから,これは誤解である。
(原告の主張)
ア 特商法26条2項1号にいう「請求」の程度は,「契約の申込み」又は「契約の締結」を明確に表示した場合,すなわち「○○を購入するから来訪されたい」等の明確に意思表示があった場合に限らず,請求の趣旨が,例えば,「工事箇所の下見,工事の見積りをしてほしいので来訪されたい」,「○○のカタログを持参されたい」等取引行為を行いたい意思があると認められる程度であればよいところ,本件各事例では,いずれもこのような「請求」があったものである。
イ また,被告の作成した「不適正な取引行為の防止―特定商取引法等による規制―」と題する特商法に関する解説によれば,「雑誌広告,新聞広告,テレビCM等不特定多数を対象とした誘引方法は,『訪問販売』の対象とはなりません。」と記載されているところ,取引事例A及び取引事例Bでは,不特定多数を対象とした広告紙を配布していた(前者で約2200枚及び後者で約130万枚)のであるから,訪問販売に当たらない。
ウ 取引事例Aでは,契約締結に先立ち,Dは,原告が設置したモデルルームを2日にわたり訪れているところ,そうである以上,同モデルルームは「営業所」に当たる。
エ したがって,本件各事例については,いずれも特商法及び本件条例による規制の対象外となる。
なお,仮にそうでないとしても,原告が本件各事例について規制の対象外となると考えたことには帰責事由がなく,このような場合に,突如として本件各指示及び本件各勧告をしたことは違法である。
(4)  争点(4)(本件各指示の原因となる事実の存否)について
(被告の主張)
本件各指示の原因となる事実については,消費者からの事情聴取,事業者へのその内容の通知,事業者の反論及び消費者への再確認という慎重な手続を経た上で認定されたものであって,事実誤認があるという原告の主張には理由がない。
(原告の主張)
ア 本件各指示の原因となる事実は,いずれも存在しないか,存在するものがあっても,特商法6条1項,7条2号及び3号,特定商取引に関する法律施行規則(以下「特商法施行規則」という。)7条1号等に該当しない。
なお,このような事例は,原告の行う取引のごく一部で問題となったものにすぎない。
イ 平成14年にされた行政指導(前記前提事実(2)ア)は,KRK関東の契約書にその代表者名が記載されていなかったこと(この点については速やかに改善している。)を除いて事実誤認の下にされた違法なものであるところ,本件各指示は上記行政指導がされたことを前提としており,その行政指導が違法である以上,本件各指示は比例原則に反し違法である。
また,上記行政指導において指摘されなかった事項は,原告において適法であると信頼するのが相当であるところ,本件各指示は,上記行政指導で指摘されなかった事項を理由としている点で信頼保護原則に反し違法である。
さらに,本件各指示は,行政手続法13条1項2号に違反するほか,平等原則に反する違法又は法執行における裁量濫用の違法がある。
(5)  争点(5)(本件各勧告の原因となる事実の存否)について
(被告の主張)
本件各勧告の原因となる事実については,消費者からの事情聴取,事業者へのその内容の通知,事業者の反論及び消費者への再確認という慎重な手続を経た上で認定されたものであって,事実誤認があるという原告の主張には理由がない。
(原告の主張)
ア 本件各勧告の原因となる事実は,いずれも存在しないか,存在するものがあっても,本件条例25条1項3号,4号及び6号,東京都消費生活条例施行規則8条2号,9条4号,11条1項3号等に該当しない。
なお,このような事例は,原告の行う取引のごく一部で問題となったものにすぎない。
イ 平成14年にされた行政指導(前記前提事実(2)ア)は,KRK関東の契約書にその代表者名が記載されていなかったこと(この点については速やかに改善している。)を除いて事実誤認の下にされた違法なものであるところ,本件各勧告は上記行政指導がされたことを前提としており,その行政指導が違法である以上,本件各勧告は比例原則に反し違法である。
また,上記行政指導において指摘されなかった事項は,原告において適法であると信頼するのが相当であるところ,本件各勧告は,上記行政指導で指摘されなかった事項を理由としている点で信頼保護原則に反し違法である。
さらに,本件各勧告は,東京都消費生活条例施行規則36条2項に違反するほか,平等原則に反する違法又は法執行における裁量濫用の違法がある。
第3  争点に対する判断
1  争点(1)(勧告の処分性)について
(1)  行政事件訴訟法3条2項所定の行政庁の処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。
(2)  本件条例48条は,「知事は,第14条第2項,第16条第4項,第17条第2項,第18条第2項,第19条第3項又は第25条第2項の規定に違反をしている事業者があるときは,その者に対し,当該違反をしている事項を是正するよう指導し,及び勧告することができる。」と定めているところ,上記勧告は,事業者に対し,「当該違反をしている事項を是正するよう」に一定の行為(作為又は不作為)を促すものではあるが,法令上,当該勧告に従うことを義務付ける規定はなく,当該勧告は,当該事業者に任意の協力を求める行政指導であるといわざるを得ない。
ただし,問題となる行政庁の行為が行政指導であるとしても,これに従わなければ後行する不利益な処分を受けることがほぼ確実であり,その不利益の重大性等から,行政指導を受けた段階でこれを争う手段を付与する必要性が極めて高い場合には,これに処分性を認めることは可能であると解することができるところ(最高裁平成14年(行ヒ)第207号同17年7月15日第二小法廷判決・民集59巻6号1661頁参照),平成18年東京都条例第155号による改正前の東京都消費生活条例50条は,「知事は,事業者が第10条第3項若しくは第46条第2項の規定による要求又は第12条,第23条若しくは第48条の規定による勧告に従わないときは,その旨を公表することができる。」として,勧告に従わないときの東京都知事の公表権限を定めているが(乙1),公表の基本的な性質は国民に対する情報提供であって(本件条例27条参照),当該事業者の権利義務関係に何らかの変動を及ぼすような法的効果を直接発生させるものではない。また,本件条例48条に基づく勧告に従わなかったことが何らかの規制権限行使の要件となるなどの法令上の規定は見当たらず,前掲最高裁判決に照らしても,当該勧告に処分性を認めることはできない(これに対し,特商法7条に基づく指示については,特商法8条により,これに従わないときは業務の全部又は一部の停止を命ずることができるとされている。)。
もっとも,たとえ事実上の効果にすぎないものとしても,公表の結果,当該事業者の社会的信用が低下するなどの不利益が生じる可能性はあるが,その救済方法については,公表に先行する勧告に処分性を認めずとも,営業権の侵害等を理由に公表の差止めを求める訴えを提起することも考えられないではないし(なお,行政事件訴訟法4条所定のいわゆる実質的当事者訴訟の可能性については後記2参照),公表によって生じた損害の賠償又は名誉若しくは信用の回復の措置等を求めて訴えを提起することはもとより可能であるといえる。
(3)  したがって,本件条例48条に基づく勧告は,取消訴訟の対象である行政事件訴訟法3条2項所定の行政庁の処分に当たらず,本件各勧告の取消しを求める訴えは不適法である。
なお,原告は,行政庁の教示(行政事件訴訟法46条1項参照)において東京都知事が本件各勧告に処分性を認めていた旨主張するが,教示の有無により問題となる行政庁の行為の処分性が左右されるわけではないから,同主張は採用することができない。
2  争点(2)(確認の訴えの利益)について
(1)  前記1のとおり,本件各勧告は,KRK関東及びKRKに対しこれに従うべき義務を直接に課すものではないから,本件各勧告に従う義務を負わないことの確認を求める訴えには,訴えの利益がない。
(2)  そして,原告は,本件各勧告が公表されたことにより原告の社会的信用が低下し,営業上損失を被っているとして,本件各勧告の違法確認につき訴えの利益がある旨主張しているが,本件各勧告が公表されたことにより現に損失を被っているというのならば,その公表そのものの違法性を主張して,公表されない地位にあることの確認を求める訴えを提起することでその救済を図ることが直接的かつ有効な解決方法であると考えられるし,本件各勧告の違法確認を求める訴えは,過去の法律関係の確認を求めるものであって,上記地位の確認の訴えの方がより適切な訴えということができるから,本件各勧告の違法確認の訴えについては,確認の訴えの利益を認めることができない(なお,最高裁平成13年(行ツ)第82号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁参照)。
(3)  したがって,丙事件に係る訴えはいずれも不適法である。
3  争点(3)(特商法の適用除外)について
(1)  特商法26条2項1号は,「その住居において売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約若しくは役務提供契約を締結することを請求した者に対して行う訪問販売」について,「第4条から第10条までの規定」を適用しないと定めているところ,同項は,「特定商取引(中略)を公正にし,及び購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより,購入者等の利益を保護し,あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし,もつて国民経済の健全な発展に寄与する」(特商法1条)という法の目的に照らし,特商法の訪問販売に対する規制が専ら押し付け販売的なものから消費者を保護することを目的とすることを考慮して,日常生活において支障なく行われている取引についてまで規制を及ぼすことは特商法の本意ではなく,また,それによってこれらの取引に無用の混乱を生じさせることは避けるべきであることなどから,同項各号所定の取引を訪問販売についての規定の適用対象から除外することとした規定である。そして,同項1号は,売買契約等の申込み又は締結をその住居においてすることを請求した者に対して行う訪問販売については,購入者側に訪問販売の方法によって契約する意思があらかじめあること,また,購入者と販売業者との間に取引関係があることが通例であるため,上記趣旨に照らし規制の必要がないことから設けられた規定であると解することができる。
(2)  平成17年8月10日付け経済産業省大臣官房商務流通審議官発「特定商取引に関する法律等の施行について」と題する通達(以下「新通達」という。)は,特商法26条2項1号の趣旨に照らし,下記のとおり,新通達により従来の通達(以下「旧通達」という。)の文言を一部改正した。同改正については,住宅リフォーム訪問販売業者の脱法行為の防止のため,同訪問販売業者が,消費者に「見積りをしてほしいので来訪されたい」等,あたかも消費者の方から販売業者に対して,自宅に来訪して取引をすることを要請したかのように言わせることは,訪問販売規制の適用除外に該当しない(特商法の規制が適用される)ことを明確にしたものであると説明されている。(乙61,62の1ないし3)

(新通達)
法第26条第2項第1号について
本号は,販売業者等が自らの意思に基づき住居を訪問して販売を行うのではなく,消費者の「請求」に応じて行うその住居における販売等を適用除外とするものである。
このような場合は,例えば商品の売買にあたっては,
①購入者側に訪問販売の方法によって商品を購入する意思があらかじめあること
②購入者と販売業者との間に取引関係があること
が通例であるため,本法の趣旨に照らして本法を適用する必要がないためである(ただし法第3条は適用される。)。
購入者が,「○○を購入するから来訪されたい」等,「契約の申込み」又は「契約の締結」を明確に表示した場合,その他取引行為を行いたい旨の明確な意思表示をした場合,「請求した者」に当たる。
商品等についての単なる問合せ又は資料の郵送の依頼等を行った際に,販売業者等より訪問して説明をしたい旨の申出があり,これを消費者が承諾した場合は,消費者から「請求」を行ったとは言えないため,本号には該当しない。
また,販売業者等の方から電話をかけ,事前にアポイントメントを取って訪問する場合も同様に本号には該当しない。
また,例えば,消費者が台所の水漏れの修理を要請し,その修理のために販売業者等が来訪した際に,台所のリフォームを勧誘された場合については適用除外に当たらないと考えられる。
(旧通達)
法第26条第2項第1号について
本号は,販売業者等が自らの意思に基づき住居を訪問して販売を行うのではなく,消費者の「請求」に応じて行うその住居における販売等を適用除外とするものである。
このような場合は,例えば商品の売買にあたっては,
①購入者側に訪問販売の方法によって商品を購入する意思があらかじめあること
②購入者と販売業者との間に取引関係があること
が通例であるため,本法の趣旨に照らして本法を適用する必要がないためである(ただし法第3条は適用される。)。
「請求」の程度は,「契約の申込み」又は「契約の締結」を明確に表示した場合,すなわち「○○を購入するから来訪されたい」等の明確に意思表示があった場合に限らず,請求の趣旨が,例えば,「工事箇所の下見,工事の見積もりをしてほしいので来訪されたい」「○○のカタログを持参されたい」等取引行為を行いたい意思があると認められる程度であればよい。
また,例えば工事の場合にあっては,当初の見積もり等のための来訪が要請されていない場合であっても,2回目以降の来訪が要請されたものであれば同様に適用除外となる。
しかし,商品等についての単なる問合せ又は資料の郵送の依頼等を行った際に,販売業者等より訪問して説明をしたい旨の申出があり,これを消費者が承諾した場合は,消費者から「請求」を行ったとは言えないため,本号には該当しない。
また,販売業者等の方から電話をかけ,事前にアポイントメントを取って訪問する場合も同様に本号には該当しない。
(3)  そこで,本件各事例について検討した結果は,次のとおりである。
ア 取引事例Aについて
(ア) D作成の平成16年10月25日付け上申書(乙19)及び証人Dの証言によれば,Dは,自宅の郵便受けに入れられたKRK関東さいたま支店の広告紙を見て,Dの居住するマンションの909号室がKRKグループによるリフォーム工事の様子を示すオープンルームとして開放されることを知り,平成15年8月2日,同号室を訪れて見学したこと,Dが同号室を退出したところ,Eから声を掛けられ,翌日午前10時に同号室を再訪することにしたこと,同月3日,Dは妻と共に同号室を訪れて見学を終えたところ,EがDに対し,複数回,「是非お宅を見せてもらい,見積りをさせてください。」などと申し向けたこと,Dがこれに応じてEを自宅に通し,Eが見積りを終えた後,前記前提事実(3)アのとおり,Dが契約書に署名押印したことを認めることができる。
(イ) これに対し,原告は,Eから見積りをさせてほしいと申し向けた事実はなく,むしろDから積極的に自宅での見積りを要求した旨主張し,これと同旨のE作成の各陳述書(甲43,乙33)及びオープンルームを提供したK作成の陳述書(甲57)の各記載部分がある。
しかしながら,Eは当時のKRK関東の従業員として,KはKRK関東に対し自宅をオープンルームに提供した者として,それぞれ原告との利害関係を有するものであり,しかも,甲43は平成19年11月16日の本件第9回口頭弁論期日において,甲57は同20年2月6日の本件第10回口頭弁論期日において,それぞれ当初予定されていた口頭弁論の終結日(同19年9月4日)を経過した後に書証の申出がされたものである。他方において,DとKRK関東との契約をめぐる争いは,Dが平成15年8月4日にいわゆるクーリングオフの通知を発信した後,同年8月25日ころに終了しており(乙19),Dが殊更原告に係る不利益な事実を同16年10月25日付けの上申書に記載しなければならない理由は見いだしがたく,また,取引指導課に対し,E作成の陳述書(乙33)が提出されたことから,取引指導課においてDに対し事実関係を再確認した書面においても,Dが同様の記載をしていること(乙37,49の1,51,証人L)などに照らしても,前記(ア)に係るD作成の上申書(乙19)の記載部分及び証人Dの証言部分はいずれも信用することができる。
(ウ) このような認定事実からすれば,DがEを自宅に通すに先立ち,売買契約等の申込み又は締結をその住居においてすることを請求したこと,すなわち取引行為を行いたい旨の明確な意思表示をし,訪問販売の方法によって契約する意思があらかじめあったという事実はなく,取引事例Aにおいて特商法26条2項1号にいう「請求」はなかったものと認めることができる(このことについては,新通達によればもとより,旧通達によっても同様の結論となる。)。
イ 取引事例Bについて
(ア) G作成の平成17年2月25日付け陳述書(乙34)によれば,取引事例Bについて,GがF宅を訪れた経緯は下記のとおり記載されている。

平成15年12月18日(木)12時10分頃,F氏より「折り込みチラシを見て,オープン記念のクリスマスパック(¥1,225,000-)で出来るのか話を聞きたい。」と,電話が入り,新宿支店の私が応対しました。F氏に「クリスマスパックのキッチン,浴室などを工事する時,宅内の配管が古くなって来ているので一緒に取り替えたらいくらぐらいするのか教えて下さい。」と言われ,私が「通常70m2くらいのマンションでは,30万円くらいですが,詳しくは一度現地を見てみないと細かい金額はわからないので,お伺いしましょうか。」と話すと,F氏は「それじゃあ,一度来て見積書を出してください。今日の午後5時頃だったら居ますよ。」と言われたので,同日,私は午後5時過ぎにF氏宅へ伺いました。
(イ) このような記載を前提とすると,Fがリフォーム工事の金額の問い合わせをしたのに対し,GからF宅を来訪する旨伝えたことが明らかであり,Fが売買契約等の申込み又は締結をその住居においてすることを請求したこと,すなわち取引行為を行いたい旨の明確な意思表示をし,訪問販売の方法によって契約する意思があらかじめあったという事実はなく,取引事例Bにおいて特商法26条2項1号にいう「請求」はなかったものと認めることができる(このことについては,新通達によればもとより,旧通達によっても同様の結論となる。)。
ウ 取引事例Cについて
(ア) Hを被聴取者(聴取日平成17年1月26日)とする同年2月1日付け聴取結果報告書(乙26)によれば,Hは,KRKグループがリフォーム工事を施工したマンションの1室がモデルルームとして開放されることを知り,平成16年8月7日,その妻と共に同室を訪れて見学したこと,その際,IがHに対し,「お宅も見積りしましょうか。」と申し向けたこと,Hがこれに応じてIを自宅に通し,Iが見積りを終えた後,前記前提事実(3)ウのとおり,Hが契約書に署名押印したことを認めることができる。
(イ) これに対し,原告は,Iから見積りをさせてほしいと申し向けた事実はなく,むしろHから積極的に自宅での見積りを要求した旨主張し,これと同旨のI作成の各陳述書(乙36,甲19)の各記載部分がある。
しかしながら,Iは当時のKRK関東の従業員として原告との利害関係を有するものであり,他方において,HとKRK関東との契約をめぐる争いは,Hが平成16年8月10日にクーリングオフの通知を発信したことにより終了しており(乙26),Hが殊更原告に係る不利益な事実を同17年1月26日に話さなければならない理由は見いだしがたい。また,取引指導課に対し,I作成の陳述書(乙36)が提出されたことから,取引指導課においてHに対し事実関係を再確認した書面においても,Hが同様の記載をしていること(乙39,49の3,51,証人L)などに照らしても,前記(ア)に係る聴取結果報告書(乙26)の記載部分は信用することができる。
(ウ) このような認定事実からすれば,HがIを自宅に通すに先立ち,売買契約等の申込み又は締結をその住居においてすることを請求したこと,すなわち取引行為を行いたい旨の明確な意思表示をし,訪問販売の方法によって契約する意思があらかじめあったという事実はなく,取引事例Cにおいて特商法26条2項1号にいう「請求」はなかったものと認めることができる(このことについては,新通達によればもとより,旧通達によっても同様の結論となる。)。
(4)  したがって,本件各事例については,特商法26条2項1号による特商法の適用除外の対象とはならない。
なお,原告は,取引事例A及び取引事例Bにおいて不特定多数を対象とした広告紙を配布していた旨主張するが,このような広告紙による誘引方法により消費者が事業者の営業所を来訪した場合についてはともかく,それぞれの自宅で契約書の作成がされた本件では特に意味のない主張というべきである。また,原告は,取引事例Aに係るオープンルームが原告の「営業所」に当たると主張するが,D宅で取引事例Aに係る契約書の作成がされている本件では特に意味のない主張というべきである。
4  争点(4)(本件各指示の原因となる事実の存否)について
(1)  争点(4)アについて
ア 証拠(甲30,乙22)及び弁論の全趣旨によれば,KRK関東は,平成15年12月18日ころ,「新宿支店・リフォーム専門ショールーム OPEN大特価セール!!」,「オープン記念クリスマスパック 1,225,000円!!」,「先着12名様」などと記載した広告紙を約130万枚配布したことを認めることができる(ただし,原告の主張によれば,営業員がクリスマスパックの成約件数を即時に認識することは困難であるので,必ずしも同件数を12に限るとする営業方針ではなかったとのことであり,実際,同件数は12を超えたとのことである。なお,被告は,原告の上記主張を前提とすると,上記広告紙の記載は不当景品類及び不当表示防止法4条1項2号所定の不当な表示に当たる可能性があると指摘している。)。
イ そして,Fがこの広告紙を見てKRK新宿支店に問い合わせの電話をし,これを契機としてGが平成18年12月18日午後5時過ぎころにF宅を訪問したことは,前記3(3)イ(ア)のG作成の陳述書(乙34)の記載内容からも明らかであるところ,F作成の同16年11月15日付け上申書(乙22)によれば,F宅において,Fが契約書に署名押印するに先立ち,GがFに対し,「クリスマスパック」の成約件数は12に限られるということで,「今日中に契約しないと間に合いませんよ」,「あとは,とてもこの金額ではできませんよ」などと話し,Gの携帯電話に着信が入るたびにGが席を外すなどしてFの居室に戻る都度,「また1件決まっちゃいました」,「あと何人しかできませんよ」などと申し向けて契約の締結を勧誘したことを認めることができる。
この点について,原告は,F作成の上申書の上記記載内容は信用できない旨主張し,G作成の各陳述書(甲18,乙34)にはF作成の上申書の上記記載内容と異なる内容の記載があるが,Gは当時のKRK関東の従業員として原告との利害関係を有するものであり,他方において,FとKRK関東との契約の締結及びその解約をめぐる争いは,東京都消費生活総合センターの相談員の立会いを得た話し合いの末,平成16年1月20日ころ,FがKRK関東に対し5万円を支払って契約を解約することが合意され,既に解決しているところ,Fが殊更原告に係る不利益な事実を同年11月15日付けの上申書に記載しなければならない理由は見いだしがたく,また,取引指導課に対し,G及びJ作成の各陳述書(乙34,35)が提出されたことから,取引指導課においてFに対し事実関係を再確認した書面においても,Fは同様の記載をしている(乙38,49の2,51,証人L)。さらに,Gの勧誘方法に係る記載内容も,KRK関東の広告紙の記載内容等に照らし,不自然又は不合理な点は見当たらず,そもそも,携帯電話に着信があるたびにクリスマスパックの成約件数が増加し,早く契約を締結しなければその特典を得られなくなる旨申し向ける勧誘方法は特徴的なもので,Fの記憶違いをうかがわせる証拠がないことなどに照らすと,F作成の上申書の上記記載内容は信用することができ,原告の上記主張は採用することができない。
そして,原告の主張によれば,クリスマスパックの成約件数について営業員に連絡することはおよそあり得ないということであり,また,KRK関東が平成15年12月18日に締結した契約は,F以外には1件しか存在しないこと(乙23)などに照らすと,GがFに対し申し向けた「また1件決まっちゃいました」などという言動に対応する事実は存在しなかったものと認めるのが相当である。
ウ したがって,Gが,Fに対し,そのような事実は存しないにもかかわらず,「また1件決まっちゃいましたよ。」と申し向けるなどして,契約の締結について勧誘するに際し,不実のことを告げた事実を認めることができるところ,Gの行為は,特商法6条1項7号所定の不実のことを告げる行為に該当する。
(2)  争点(4)イについて
ア 前記3のとおり,FがKRK関東と締結した契約には特商法4条から10条までの規定が適用されるところ,証拠(乙22,44)によれば,FはKRK関東に対し,平成15年12月19日ころ,契約を解約する旨の電話連絡をし,さらに,同月20日には同旨の内容を記載した書面を発信したこと,同月24日には,Fが東京都消費生活総合センターに相談し,その助言に従い,KRK関東に対し,改めて解約の書面を発信したこと,同月25日ころ,JがFに対し,電話で「40%の違約金は払ってもらう」,「これは法律で決まっていることだ」,「うちの会社には専門の弁護士がいる」,「第一,もう工事は始まっている」,「断っても工事しますよ」などと話し,Fが解約の書面を郵送した旨伝えても,「そんなもの,いくら来ても受取拒否する」などと話したこと,そのやり取りの中で,JがFに対し,「例えば,お風呂だけとか,キッチンだけやるというのはどうですか」,「それで,残りの金額の分を40%にするか30%にするか決めたらどうですか,今決めてください」などと話したことを認めることができる。
この点について,J作成の陳述書(乙35)によれば,JがFに話した内容は,F作成の上申書(乙22)においてかなり悪質な表現に替えてある旨記載されているが,Fから相談を受けた東京都消費生活総合センターの職員が平成15年12月25日にJと電話で話をしたところ,Jが「この件は絶対に解約には応じない」などと話したこと,同16年1月8日に行われた同センターにおけるFとKRK関東との話し合いにおいても,KRK関東がFに対し40%の違約金を支払うよう請求していることなどが認められること(乙44)などに照らすと,上記認定を覆すに足りる証拠はない。
イ そして,前記ア前段の認定事実によれば,Fは特商法9条1項所定の申込みの撤回等をしたのであるから,同条3項により,KRK関東は違約金の支払を請求することができないにもかかわらず,Jは「法律で決まっていることだ」などと話して,申込みの撤回等を妨げるため特商法6条1項5号所定の不実のことを告げる行為をしたものと認めることができる(実際,FはKRK関東に対し,5万円を支払って解約するという結果となっている。)。
(3)  争点(4)ウについて
ア D作成の平成16年10月25日付け上申書(乙19)及び証人Dの証言並びにKRK関東が使用していた見積書等の書式(1枚目に「御見積書( )様」,2枚目に「工事請負契約書(業務)」,3枚目に「契約完了 兼 工事完了 報告書」及び「入金報告書(現金・振込・ローン個人別)並びに4枚目に「工事請負契約書(お客様控)」がとじられているもので,「御見積書」に記載された金額等が複写されて「工事請負契約書(業務)」及び「工事請負契約書(お客様控)」に転記されるもの。乙52)によれば,D宅において,Eが見積書の記入を終えた後,その金額等が複写された「工事請負契約書(業務)」にDの署名押印を求める際に,それが見積書の下にとじられていた契約書であることを説明しなかったことを認めることができる。
この点について,原告は,EがDに対し,見積書の下が複写式の契約書になっていることを説明したことがないことは認めるものの,Dは,リフォーム工事の請負契約を締結する意思があったのであり,自ら署名押印した書類が契約書であることは認識していたと主張するが,Dは,契約書に署名押印した翌日である平成15年8月4日の午前中に「無料の見積りとばかり思っていたが契約書になっていたので,本日8月4日練馬区消費生活センターに相談し,クーリングオフいたします。」との記載を含む書面を「KRKグループ本部」あてに発信しており,その他遅くとも同年9月19日までには作成されていたDのメモ(乙17)の記載内容に照らしても,Dは,Eから格別の説明がなかったため,Eから署名押印を求められた書面が見積書であると誤認してこれに署名押印したものと認めるのが相当である。
イ そして,このようなEの行為は,特商法7条2号が定める,訪問販売に係る契約の締結について勧誘するに際し,当該契約に関する事項であって,顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき,故意に事実を告げないことに該当する(実際,EがDの面前で金額等を記入していた書面は見積書であったのであり,さらに,乙17及び証人Dの証言によれば,Dには眼疾のため視野狭さくがあることが認められることなどからすると,差し出された書面が契約書であることが説明されなければそのような誤認が生じ得ることは容易に推察できるところである。)。
(4)  争点(4)エについて
ア Hを被聴取者とする平成17年2月1日付け聴取結果報告書(乙26)によれば,H宅において,Iが見積書の記入を終えた後,その金額等が複写された「工事請負契約書(業務)」にHの署名押印を求める際に,それが見積書の下にとじられていた契約書であることを説明しなかったことを認めることができる。
この点について,原告は,そのような事実はなく,Hは契約書であることを認識した上で署名押印したものである旨主張し,これと同旨のI作成の各陳述書(乙36,甲19)の各記載部分がある。
しかしながら,Iは当時のKRK関東の従業員として原告との利害関係を有するものであり,他方において,Hが殊更原告に係る不利益な事実を話さなければならない理由は見いだしがたいこと,また,取引指導課においてHに対し事実関係を再確認した書面においても,Hが同様の記載をしていること(乙39,49の3,51,証人L)などは,前記3(3)ウ(イ)のとおりであり,聴取結果報告書(乙26)の上記記載部分は信用することができる。
イ そして,このようなIの行為は,特商法7条2号が定める,訪問販売に係る契約の締結について勧誘するに際し,当該契約に関する事項であって,顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき,故意に事実を告げないことに該当する(実際,IがHの面前で金額等を記入していた書面は見積書であったのであり,差し出された書面が契約書であることが説明されなければ見積書に署名押印するとの誤認が生じ得ることは容易に推察できるところである。)。
(5)  争点(4)オについて
ア Dがクーリングオフの通知を送付したことに対し,Jが,「どうしてクーリングオフしたのですか。話し合いをさせてくれませんか。」等と申し向けるなどした事実があったことは,当事者間に争いがないが,その詳細につき,証拠(乙17,19)及び証人Dの証言によれば,Dが平成15年8月4日にクーリングオフの通知を発信したところ,同月7日,JからDに電話があり,どうしてクーリングオフをしたのかとの問い合わせがあった上,話し合いをさせてほしいとの要求があったので,Dがこれに対しそのつもりはないと返答したこと,その後,Jが東京都練馬区消費生活センターに対し取引事例Aに係る契約についてはクーリングオフが適用されない旨を強硬に申し入れ,東京都練馬区が間に入った話し合いを求めたこと,同月21日,上記センターで行われた話し合いにおいて,JがDに対し,「あなたが『見積書とばかり思っていたら契約書だった』というのは,私たちが詐欺をやったと言っているのと同じだと思う。」などと話したことを認めることができる。
イ このようなJの行為は,特商法7条3号及び特商法施行規則7条1号が定める,訪問販売に係る契約の締結について迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘をし,又は申込みの撤回若しくは解除について迷惑を覚えさせるような仕方でこれを妨げることに該当する。
(6)  争点(4)カについて
ア F作成の平成16年11月15日付け上申書(乙22)によれば,Gが,Fが「一晩考えさせてほしい。」と何度も話しているにもかかわらず,「今日中じゃないと間に合いませんよ。ここで,お子さんに電話したらどうですか。」と申し向けるなどして,契約を締結する決断を迫った事実を認めることができる。
この点について,Fが「一晩考えさせてほしい。」と話したことはないとするG作成の陳述書(甲18)が提出されているが,Fがこのような言葉を複数回話していたことについては,東京都消費生活総合センターにおいてGも認めていたところであり(乙44),また,Fが殊更原告に係る不利益な事実を上申書に記載しなければならない理由が見いだしがたいことなどは,前記(1)イのとおりである。
イ このようなGの行為は,特商法7条3号及び特商法施行規則7条1号が定める,訪問販売に係る契約の締結について迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘をし,又は申込みの撤回若しくは解除について迷惑を覚えさせるような仕方でこれを妨げることに該当する。
(7)  争点(4)キについて
ア 前記(2)ア前段の認定事実によれば,Fが解約の書面を郵送したことに対し,Jが,「もう工事は始まっている。断っても工事はしますよ。」等と話し,Fが「解約の書面を郵送した。」と言っても,「そんなもの,いくら来ても受取拒否する。」と答えたり,「例えばお風呂だけとかキッチンだけやるというのはどうですか。」等と申し向けるなどして,クーリングオフを拒否したことを認めることができる。
イ このようなJの行為は,特商法7条3号及び特商法施行規則7条1号が定める,訪問販売に係る契約の締結について迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘をし,又は申込みの撤回若しくは解除について迷惑を覚えさせるような仕方でこれを妨げることに該当する。
(8)  争点(4)クについて
ア Hを被聴取者とする平成17年2月1日付け聴取結果報告書(乙26)によれば,平成16年8月7日にHが契約書に署名押印してから1時間ないし2時間後にHがKRK関東に架電し,「工事はしません。お断りします。」と伝えたこと,すると,しばらくして,IがH宅を訪れ,「是非やらせてください。」などと話したこと,翌8日にHがIの携帯電話に架電し,工事を断ると伝えたところ,Iから翻意するよう促されたこと,同日の夜になって,IからHに電話があり,「考え直してください。」と言うので,Hがそれを断ったところ,Iは,「それならば違約金を払ってもらいます。」と話したことを認めることができる。
イ このようなIの行為は,特商法7条3号及び特商法施行規則7条1号が定める,訪問販売に係る契約の締結について迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘をし,又は申込みの撤回若しくは解除について迷惑を覚えさせるような仕方でこれを妨げることに該当する。
(9)  特商法7条は,主務大臣(又は特定商取引に関する法律施行令18条に基づき都道府県知事)は,販売業者又は役務提供事業者が特商法3条から6条までの規定に違反し,又は特商法7条に掲げる行為をした場合において,訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは,その販売業者又は役務提供事業者に対し,必要な措置をとるべきことを指示することができると規定するところ,以上検討の結果及び弁論の全趣旨によれば,本件各指示は適法であると認めることができる。
これに対し,原告は,本件各事例が特商法の適用除外となると原告が考えたことにつき帰責事由がない旨主張するが,特商法7条に基づく指示は,訪問販売の適正化を図るためのものであり,故意,過失又は違法性の意識等といった帰責事由の存在を必要とするものではない。
また,原告は,本件各指示に先立つ平成14年の行政指導が違法である旨主張するが,本件各指示の適法性と特段の関係はない。
さらに,原告は,上記行政指導において指摘されなかった事項についてはこれを原告が適法であると信頼したことを保護すべきである旨主張するが,上記行政指導の際,原告のいう「指摘されなかった事項」について,行政庁がそれが適法であるとの公的見解を表明した事実を認めることはできず,原告において保護すべき何らかの信頼が生じたものと認めることはできない。
そして,証拠(乙8,9,29ないし36,66,67)及び弁論の全趣旨によれば,本件各指示が行政手続法13条1項2号に違反すると認めることはできず,また,本件各指示が平等原則に反すること,又は行政庁の裁量を濫用してされたものであることを認めるに足りる証拠はない(仮に特商法違反の事実が原告の行う取引のごく一部に見られるにすぎないものとしても,このことが直ちに本件各指示を違法とすることにはならない。)。
5  結論
以上の次第で,争点(5)について判断するまでもなく,甲事件及び乙事件に係る本件各勧告の取消しを求める訴え並びに丙事件に係る訴えは不適法であるからこれらを却下し,本件各指示の取消しを求める請求には理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 杉原則彦 裁判官 小田靖子 裁判官 島村典男)

 

*******

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。