平19(ネ)632号 リース料返還等請求控訴事件

裁判年月日  平成19年11月19日  裁判所名  名古屋高裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ネ)632号
事件名  リース料返還等請求控訴事件
裁判結果  原判決取消  上訴等  上告、上告受理申立  文献番号  2007WLJPCA11197001

要旨
◆零細事業者が申込みをしたリース契約につき同契約が事業のためにされたものではないとしてクーリングオフが認められた事例

新判例体系
公法編 > 産業経済法 > 特定商取引に関する法… > 第二章 訪問販売、通… > 第一節 定義 > 第二条 > ○定義 > (一)「役務提供事業者」
◆リース契約の勧誘とリース対象物件の販売などを一体化して行っていた本件事業者は、特定商取引に関する法律第二条第一項第一号所定の「役務提供事業者」に該当する。

 

裁判経過
第一審 平成19年 6月20日 名古屋地裁 判決 平18(ワ)4383号

出典
判タ 1270号433頁
判時 2010号74頁
消費者法ニュース 74号174頁

評釈
宇野遥子・判タ別冊 25号68頁(平20主判解)
小田典靖・国民生活研究 53巻1号34頁

参照条文
特定商取引に関する法律9条1項
特定商取引に関する法律26条1項1号

裁判年月日  平成19年11月19日  裁判所名  名古屋高裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ネ)632号
事件名  リース料返還等請求控訴事件
裁判結果  原判決取消  上訴等  上告、上告受理申立  文献番号  2007WLJPCA11197001

控訴人 甲野太郎
同訴訟代理人弁護士 平田米男 荻原典子 瀧康暢 平井宏和
森田茂 小野晶子 牧野一樹 稲森幸一
竹之内智哉 青木信也 稲熊公孝 小田典靖
水谷大太郎 山内益恵 中根祐介 水野秀志
宮﨑亮 山下陽子 青葉憲一 上野浩
被控訴人 NECリース株式会社
同代表者代表取締役 加藤奉之
同訴訟代理人弁護士 香髙茂

 

主文
1  原判決を取り消す。
2  被控訴人は,控訴人に対し,55万4400円及びこれに対する平成18年7月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  訴訟費用は,第1,2審を通じて,被控訴人の負担とする。
4  この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1  控訴の趣旨
主文同旨
第2  事案の概要
1  本件は,控訴人が被控訴人に対し,クーリング・オフの権利を行使して被控訴人とのリース契約を解除したなどとして,不当利得返還請求権に基づき,リース料として支払った55万4400円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は,控訴人の請求を棄却したため,控訴人がこれを不服として控訴した。
2  前提事実(当事者間に争いがない事実,証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)  控訴人は,個人で印刷画工を業として行っていた者である。
(2)  被控訴人は,リース会社である。
(3)  株式会社フォーバル(以下「フォーバル」という。)は,電気通信機器やオフィスで使用する機器などの販売などを業とする会社である。
(4)  控訴人は,平成15年12月8日,被控訴人との間で,次のリース契約(本件3契約)を締結した。なお,控訴人の手元にある契約書(甲5)には,リース物件として「タイコーソルボーネ ME TEL1台」と記載され,電話機も記載されている(本件1契約)が,「TEL」の記載は誤記であり,両者は同一の契約と認められる。(甲5,58,乙1,6)
ア リース物件 タイコーソルボーネ ME1台
イ リース期間 84か月
ウ リース料額総額(消費税額を含む。) 70万5600円
月額(消費税額を含む。) 8400円
(5)  控訴人は,本件3契約締結のころ,被控訴人に対し,リース物件が設置されたことを証明するため引渡完了および物件表示ラベル貼付済通知書(乙2)を作成して提出し,また,預金口座振替依頼書(乙3)に支払口座として中京銀行浄心支店の控訴人の預金口座を記載して被控訴人に提出した。(乙2,3)
(6)  控訴人は,平成16年4月14日,所轄の名古屋西税務署に対し,経営困難を理由に事業を廃止するとの廃業届を出した。(甲27)
(7)  控訴人は,平成16年6月1日,被控訴人との間で,次のリース契約(本件4契約)を締結した(以下,本件3,4契約に係る各契約書を併せて「本件各契約書」という。)。なお,日付金額等から後に引用する請求原因記載の本件2契約と同一の契約と認められる。(甲58,乙7,11,13)
ア リース物件 TEL タイコーソルボーネ1台
イ リース期間 84か月
ウ リース料額総額(消費税額を含む。) 105万8400円
月額(消費税額を含む。) 1万2600円
(8)  控訴人は,本件4契約締結のころ,被控訴人に対し,リース物件が設置されたことを証明するため引渡完了および物件表示ラベル貼付済通知書(乙8)を作成して提出し,また,預金口座振替依頼書(乙9)に支払口座として中京銀行浄心支店の控訴人の預金口座を記載して被控訴人に提出した。(乙8,9)
(9)  本件3,4契約には,次の約定がある。なお,本件各契約書には,特定商取引法(以下「特商法」という。)9条1項の規定による売買契約若しくは役務提供契約の解除に関する事項(同法5条1項1号,4条4号)についての記載はない。(乙1,7)
ア 物件の所有権は被控訴人に帰属する。
イ 控訴人がリース料支払債務を履行しない場合には,支払うべき金額に対し支払期日の翌日から完済まで年14.6%(日歩4銭)の割合による損害金を支払う。
ウ 控訴人がリース料金の支払を怠ったときは,被控訴人が請求したときに,直ちに全額につき期限が到来したものとみなし,控訴人は一括して残リース料債務全額を支払う。
エ 控訴人がリース料の支払を怠ったときは,被控訴人は何らの催告を要せずに本契約を解除できる。
オ 本契約が解除された場合または期限の利益を喪失し,依然としてリース料の支払を怠るときは,控訴人は被控訴人の指示に従い,自己の費用でリース物件を被控訴人に返還する。
カ オの場合,被控訴人は必要に応じ自ら控訴人の施設内に立ち入り,物件を搬出することができる。
キ リース物件は,売主(フォーバル)から控訴人に直接搬入され,控訴人は物件が搬入された後,直ちに物件の検査を行い,瑕疵のない完全な状態で売主から引渡を受けたことを確認し,控訴人は借受日を記載した引渡完了通知書を被控訴人に発行する。
ク 物件の規格,仕様,品質,性能その他に隠れた瑕疵があった場合並びに物件の選択または決定に際して控訴人に錯誤があった場合においても,被控訴人は一切責任を負わない。
ケ 控訴人はクの場合,売主に対して直接請求を行い,売主との間で解決する。この場合,控訴人が売主に対して権利を行使する場合においても,リース料の支払その他本契約に基づく債務の弁済を免れない。
(10)  控訴人は,被控訴人に対し,少なくとも平成18年5月26日までにリース料として合計55万4400円を支払った。
(11)  控訴人は,被控訴人に対し,平成18年7月6日付け内容証明郵便を発して,いわゆるクーリング・オフの権利を行使すると共に,既払いのリース料の返還を求めた。上記郵便は,同月7日被控訴人に到達した(甲26の1・3)。
3  当事者の主張は,次のとおり補正し,当審における控訴人の補足的主張を付加するほか,原判決「事実及び理由」欄第2に記載のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の補正)
(1) 原判決2頁18行目の「特定商取引上の」を「特定商取引法上の」と改める。
(2) 同2頁26行目,4頁2行目の「事実を申し述べ,」を「事実を申し述べて控訴人を欺罔し,」とそれぞれ改める。
(3) 同3頁12行目と13行目の間に,次のとおり加える。
「ウ 本件1契約は暴利行為として公序良俗に反し無効である。」
(4) 同3頁13行目の「リース契約」を「VOIPユニットに関するリース契約」と改め,14行目の「主張するが,」の次に,「契約書の交付もないため控訴人は契約内容を認識しておらず,意思表示の合致が認められないので,」を加える。
(5) 同4頁22行目の「原告は,」の次に,「平成19年2月6日の」を加える。
(6) 同5頁18行目と19行目の間に,「同(4)ウの事実は否認する。物件の選定と価格の決定は控訴人とフォーバルとの合意に基づいて行われるものであり,被控訴人が関与する余地はない。」を加える。
(7) 同5頁17行目,25行目の「否認する。」の次に,「被控訴人とフォーバルとは提携関係にはないし,そもそも提携関係の内容自体あいまいである。」をそれぞれ加える。
(当審における控訴人の主張)
(1) 控訴人については,特商法26条1項1号の適用除外に該当しないというべきである。
個人事業者にとって「営業」といえるか否かは,実質的に事業者の営業の目的との関連,契約の目的・内容・用途,使用形態,支払が営業経費か個人の家計からか,反復継続した取引か,事業者の事業規模などにより判断されるべきところ,控訴人は事業実態がほとんどない零細事業者である上,控訴人の事業はデザインの仕事に過ぎず,電話機・通信機器に関連するものでは全くなく,かつ,リース料も経費として計上していなかったものであることなどから,本件3,4契約は,控訴人の「営業のため」とも「営業として」ともいえないというべきである。
(2) 電話機のリース契約は,特商法所定の指定役務(特商法施行令第3条別表第3第2号トの役務提供契約)に該当するものであり,また,本件3,4契約は,いずれもフォーバルの従業員からの訪問勧誘に基づくものであって訪問販売に当たる。
(3) 表見法理(新たな主張)
仮に被控訴人がフォーバルに対してリース契約締結に関する代理権を与えていないとしても,少なくとも契約成立についての最終的意思決定以外の事実行為については代理することを許容していたというべきである。また,控訴人は,フォーバルの従業員からリース契約の説明を受けたのであり,対象物件の選別,リース料の設定及びリース期間の設定もフォーバルの従業員が行っていたので,フォーバルの従業員には代行権限があるものと信じた。このような契約締結の過程からして,表見法理の見地から,被控訴人は,フォーバルの従業員に代理権を与えていた場合と同様の責任を負うというべきである。
第3  当裁判所の判断
当裁判所は,原判決と異なり,控訴人の請求は,理由があるものと判断する。その理由は,次のとおりである。
1  特商法の適用について
本件3,4契約に特商法が適用されるか否か,以下争いのある要件につき順次検討を加える。
(1)  被控訴人が特商法2条1項1号の役務提供者に当たるか。
前記前提事実に加え,証拠(甲58,乙1ないし3,6ないし9,11,控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件3,4契約はいずれもリース契約であるところ,被控訴人は,本件3,4契約の締結に際し,控訴人との関係では,主として本件3,4契約の内容について確認の電話を入れた程度の関わりしかないこと,本件3,4契約は,フォーバルの従業員丙山一郎(以下「丙山」という。)が当時控訴人が使用していた名古屋市西区大金町所在の一戸建て住宅(借家)(以下「大金町の借家」という。)を訪問して締結されたものであるところ,その対象物件の選定はいずれも丙山と控訴人との間でされており,かつ,リース契約の内容(リース金額,リース期間等の設定)を含む本件各契約書の作成も同様であること,このようにして作成された本件各契約書はフォーバルを通じて被控訴人に提出されていること,本件各契約書は,表題が「プロモーションリース申込書(契約書)」と不動文字で記載された契約書で,既に貸主が被控訴人である旨不動文字で記載されており,また,リース申込者等の各項目欄が不動文字で作成されており,個別の契約内容に応じて上記申込者,連帯保証人,リース契約の内容等を具体的に記載するだけの,被控訴人が定型的に使用している契約書であって,これをフォーバルが利用していること,本件各契約書は上記表題のとおりリース契約書であるのに,リース契約の当事者ではないはずの売主(本件ではフォーバル)欄が設けられており,また,契約条項中にも,貸主(本件では被控訴人)と借主(本件では控訴人)との関係にとどまらず,本来契約関係に立たない売主と借主との関係をも定めた条項が設けられていること,本件3,4契約の対象物件に係る引渡完了及び物件表示ラベル貼付済通知書についても,フォーバルを通じて行われていることがそれぞれ認められる。
これらの事実によれば,被控訴人は,フォーバルに対し,本件3,4契約を含むプロモーションリース契約自体の勧誘及び同契約締結の取次を継続的に行わせていたということが明らかである。そうであれば,本件3,4契約は,被控訴人ではなく同契約の対象物件の売主に過ぎないフォーバルを通じて勧誘されたものであり,かつ,リース対象物件の販売契約とそのリース契約とは一応別個の法律関係にあるとはいえ,本件においては,控訴人に対するフォーバルによるリース契約の勧誘,フォーバルから被控訴人へのリース対象物件の販売及び被控訴人と控訴人とのリース契約が全体として一体をなして成り立っているのであり,かつ,被控訴人は,リース契約の勧誘から締結に至るまでフォーバルの従業員をいわばその手足として利用したものと認めるのが相当である。そして,訪問販売等の特定商取引を公正にし,購入者が受けることのある損害の防止を図ることにより,購入者の利益を保護し,併せて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし,もって国民経済の健全な発展に資するという特商法の目的(1条)に鑑みると,以上認定の事実関係の下においては,被控訴人は,特商法2条1項1号所定の「役務提供事業者」に該当し,本件3,4契約は特商法所定の訪問販売と認められるというべきである。「特定商取引に関する法律等の施行について」との経産省の通達(平成18・01・30経済産業省商局第1号経済産業大臣官房商務流通審議官通達。甲42,51)もこの解釈に沿うものと解される。
したがって,本件においては,リース契約である本件3,4契約を勧誘したのが役務提供をする被控訴人の従業員ではなく,同契約の対象物件の販売業者であるフォーバルの従業員であることは,特商法の適用を否定する理由にはならないというべきである。
(2)  本件3,4契約は指定役務提供契約に当たるか(特商法2条1項1号,4項)。
被控訴人は,本件3,4契約は,電話機等のリースであるから,指定役務に該当しないと主張する。
特商法施行令第3条別表第3第2号は指定役務として「次に掲げる物品の貸与」と規定し,そのトとして「電話機及びファクシミリ装置」が掲げられているところ,本件各契約書はその冒頭において「貸主は売主から物件を買受けて借主にリース(賃貸)し,借主はこれを借受けます。」と謳っていることからも明らかなとおり,電話機等のリースは「指定役務の提供」に当たるというべきである。被控訴人の主張は採用することができない。
(3)  本件3,4契約は特商法26条1項1号の適用除外に該当するか。
特商法26条1項1号は,売買契約又は役務提供契約で,その申込みをした者が「営業のために若しくは営業として」締結するもの又は購入者又は役務の提供を受ける者が「営業のために若しくは営業として」締結するものに係る販売又は役務の提供については,いわゆるクーリング・オフ等に関する規定を適用しないと定めるところ,その規定の文言等からも明らかなとおり,その趣旨は,契約の目的,内容が営業のためのものである場合には適用除外とするというにとどまり,仮に申込みをした者,購入者又は役務の提供を受ける者が事業者であっても,これらの者にとって,営業のために若しくは営業として締結するものではない販売又は役務の提供を特商法適用の除外事由とするものではないというべきである(甲42,51参照)。そうすると,同号が定める適用除外となるのは,申込みをした者,購入者又は役務の提供を受ける者が事業者であり,かつ,これらの者にとって,当該契約の目的,内容が営業のためのものである場合ということになると解される。
そして,前記前提事実に加え,証拠(甲27,34ないし36,37の1・2,54,56の1ないし6,58〔ただし,以下の認定に反する部分は除く。〕,乙27,28,控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,昭和35年頃から,アトリエ・Xの名称で印刷画工を個人(1人)で行っており,昭和43年頃からは,大金町の借家を自宅兼事務所として,その1室を事務所に当てて上記印刷画工を行ってきたが,上記仕事のために家庭用電話機を1台使用していたにとどまること,平成17,18年版のタウンページには「デザイン(グラフィック)」の部にアトリエ・Xの名で掲載されていること,控訴人の事業内容は,控訴人がパソコンを使うことができなかったために時代に乗り遅れ,パソコンが普及した後もなお専ら手作業を中心とした印刷画工であったこと,控訴人の弟が,母や控訴人とも一緒に住むため,平成13年4月に名古屋市西区児玉に家を建てたが,控訴人は,仕事は大金町の借家で続けたこと,控訴人は,平成17年分の所得についてまで所得税の確定申告をしていたが,その所得については,平成13年分は営業所得が62万円(他に所得はない。),平成14年分は営業所得が63万7000円(他に所得はない。),平成15年分は64万2000円,平成16年分は95万2837円(一時所得となる保険金の申告漏れにより更正・決定を受けた。なお,営業所得は53万2000円であると認める。),平成17年分は営業所得が48万5000円(営業収入は95万3000円。他に所得はない。)であったこと,このころの印刷画工の営業収入(売上)は年間約100万円程度であり,1か月10万円に達するかどうかといった程度であったこと,そして,控訴人は,平成16年4月14日,所轄の名古屋西税務署に対し,経営困難を理由に事業を廃止するとの廃業届を出したことがそれぞれ認められる。
これらの認定事実,とりわけ,控訴人は,少なくとも平成13年以降は,その売上金額からも明らかなとおり専ら賃金を得る目的で1人で印刷画工を行っていたに過ぎず,その規模は零細であったこと,現に控訴人は,経営困難との理由で,本件3契約締結の約4か月後である平成16年4月には所轄税務署に対して廃業届を提出していること(なお,控訴人は,事業者には特商法の適用除外があることを知らなかったものである。),控訴人には,弟が建てた自宅とは別に事務所(大金町の借家)があるといっても,もともと自宅兼用で借りていた借家の1室であり,その延長で事務所として使い続けていたに過ぎないこと,控訴人の事業規模や事業内容からしても,従前から使い続けていた家庭用電話機が1台あれば十分であったといえること,一方,証拠(甲55,58,乙1,7,19)によれば,本件3契約のリースの目的物である「タイコーソルボーネ ME」とは,事務所用電話(ビジネスフォン)の主装置で,これによりフォーバルがサービスを提供している通話料が2分で5.5円になる55フォンの利用が可能となるものであり,本件4契約のリースの目的物である「TEL タイコーソルボーネ」とはそれに接続する電話機であるところ,本件3,4契約に係るリース物件は,複数の従業員があることを想定し,かつ,拡張性のあるビジネスフォンを前提とした電話機に係る装置等,あるいは,光ファイバーによるインターネット接続を念頭に置いた,ファックス自動切替機能が付いた電話機等であると認められるのであるが,上記のとおり控訴人は事業といっても印刷画工を専ら1人で,手作業で行うような零細事業に過ぎず,かつ,控訴人自身パソコンを使えないというのであって,上記目的物は一般的に汎用性,あるいは,利用度の高いコピー機等とは異なり,控訴人が行う印刷画工という仕事との関連性も必要性も極めて低いことからすると,本件において特商法との関係では,本件3,4契約は,控訴人の営業のために若しくは営業として締結されたものであると認めることはできない。本件各契約書のリース申込者(借主)欄には,「アトリエ・X」などと書かれたゴム判が押されているが,その余の欄はほとんどすべて手書きであって(乙1,7),上記申込者欄のみゴム判による必要はないこと,現に上記申込欄には,控訴人名も入ったゴム判が押されているのに,別途控訴人自らの署名もあること,フォーバルの従業員丙山は,本件3,4契約締結当時,事業者であれば特商法が適用除外となり得,クーリング・オフの権利を行使することができない場合があることを知っており(甲58),かつ,上記ゴム判が押されたのも丙山の求めによること(甲53)からすると,丙山は,控訴人が事業者であることをことさら強調するために上記ゴム判を利用したものと認められるのであり,本件各契約書に上記ゴム判が押されていることは上記認定を何ら左右するものではないというべきである(この点,丙山は,控訴人のフォーバルに対する損害賠償請求事件において,控訴人に対して上記ゴム判を求めた理由について,「お客様の,要は,手書きですと書くところが多いもんですから,ゴム判を使って押してもらっ」たと証言している(甲58)が,上記認定事実に加え,本件各契約書中リース契約の内容欄等については丙山が記載していること(甲58,控訴人本人)に照らせば,上記証言内容は不自然,不合理であると言わざるを得ない。)。
したがって,本件3,4契約は特商法26条1項の適用除外に当たるとの被控訴人の主張は採用することができない。
(4)  以上によれば,本件3,4契約については,特商法の適用があるというべきである。
2  次に,前記前提事実のとおり,本件各契約書には,少なくとも特商法9条1項の規定による売買契約若しくは役務提供契約の解除に関する事項(同法5条1項1号,4条4号)についての記載はないから,本件各契約書はいずれも同法5条1項所定の法定書面(以下「5条書面」という。)には当たらない。
そして,特商法9条1項によれば,訪問販売における契約の申込みの撤回又は解除は,5条書面を受領した日から起算して8日を経過するまでは行うことができると定めているところ,本件においては,被控訴人から控訴人に対して,5条書面の交付がないのである。そうすると,前記前提事実のとおり,控訴人は,被控訴人に対し,平成18年7月6日に発した内容証明郵便で,本件3,4契約についてクーリング・オフの権利を行使しているものであるから,これにより本件3,4契約は,有効に解除されたものというべきである。
3  そうすると,控訴人は,被控訴人に対し,不当利得返還請求権に基づき,既払いのリース料相当額55万4400円及びこれに対する不当利得の返還を請求した日の翌日である平成18年7月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
第4  結論
以上のとおり,控訴人の請求は理由があるから認容すべきである。よって,これと異なる原判決は不当であるから取り消して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 満田明彦 裁判官 野々垣隆樹 裁判官 浅田秀俊)
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