平18(ツ)36号 請負残代金請求上告事件

裁判年月日  平成18年 9月13日  裁判所名  大阪高裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ツ)36号
事件名  請負残代金請求上告事件
裁判結果  上告棄却  上訴等  確定  文献番号  2006WLJPCA09137002

要旨
◆上告人が洗面台を取り付けるなどし、被上告人が32万円を支払う契約を締結したところ、被上告人がクーリング・オフをしたことから、上告人が未払代金の支払を求めた事案において、本件契約は、請負契約に該当するので訪問販売に該当せず、被上告人は特定商取引法26条2項1号に規定する者に該当するからクーリング・オフの適用除外者であるとする上告人の主張につき、本件契約は同法2条の訪問販売に該当し、被上告人が適用除外者に該当するかどうかは、上告人が主張立証すべき事実であるところ、その事実を認めるに足る証拠はないことから、上告人の主張を排斥した原審の判断には、本件各証拠関係等に照らし、経験則や採証法則違反の違法があるとはいえないとして、上告を棄却した事例

裁判経過
控訴審 平成18年 4月28日 神戸地裁 判決 平17(レ)129号 請負代金請求控訴事件
第一審 平成17年11月29日 神戸簡裁 判決 平17(ハ)10422号

出典
判タ 1225号275頁

参照条文
特定商取引に関する法律2条1項
特定商取引に関する法律9条
特定商取引に関する法律26条2項1号
特定商取引に関する法律施行令別表1の番号42
特定商取引に関する法律施行令別表3の番号8ト
特定商取引に関する法律等の施行について(平成16年11月4日経済産業省大臣官房商務流通審議官発各経済産業局長及び内閣府沖縄総合事務局長あて通達)

裁判年月日  平成18年 9月13日  裁判所名  大阪高裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ツ)36号
事件名  請負残代金請求上告事件
裁判結果  上告棄却  上訴等  確定  文献番号  2006WLJPCA09137002

上告人 Aプランニングこと甲山太郎
上記訴訟代理人弁護士 砂山一郎
同 宮内勉
同 宮内俊江
同 水谷恭子
同 石井龍一
同 髙島章光
被上告人 乙川花子
上記訴訟代理人弁護士 中山稔規

 

主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理由
第1  上告代理人砂山一郎ほかの上告理由について
1  原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1)  上告人は,Aプランニングという名称で,水回り工事業,内装工事業等を営む者である。
上告人は,住宅増改築業,室内外の改装及び装飾の企画設計請負業等を目的とするB株式会社に勤務していた際,同社の従業員として,被上告人方において,平成13年4月上旬ころにユニットバスの,同年10月ころにキッチンの各取替工事を施工したことがあり,被控訴人と面識があった。
上告人は,平成14年ころ同社を退職して,個人で上記業務を営むようになったところ,同年2月ころ,被上告人方を訪れ,被上告人に対し,独立開業したことを伝えたことがあるが,上告人と被上告人の間には業者と顧客の関係以上に親しい付き合いはなかった。
(2)  上告人は,平成17年4月13日,被上告人方を訪問し,同所で,被上告人(大正13年*月*日生,当時80歳)との間で,被上告人方にあった洗面台をナショナルハイベルウィン洗面台(以下「本件洗面台」という。)に次の約定で取り替える旨の契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
ア 代金32万円(うち洗面台の価格は16万8000円)
イ 被上告人は,上記代金のうち5万円を同日支払い,残金27万円を同月25日に支払う。
ウ 上告人は,同月22日,洗面台を取り替える。
(3)  本件洗面台は,幅75cm,高さ91.5cmのシャワー付き洗面台本体と幅75cm,高さ98.5cmの背面収納棚付き3面鏡を組み合わせた商品であり,これを壁面に取り付けて高さ190cmの洗面台として設置するようになっている。
(4)  被上告人は,上告人に対し,同月13日,本件契約代金のうち5万円を支払った。
(5)  上告人は,同月22日,本件契約に基づき,被上告人方で,従前の洗面台を撤去し,本件洗面台を設置した。
(6)  上告人は,被上告人に対し,本件契約を締結した際,契約日付け,品名,単価,金額,合計額,値引き調整合計額,工事日等のみを記載した契約書(甲1)を示し,同契約書に被上告人の署名・押印を得たのみで,本件契約の締結に際し,被上告人に対し,クーリング・オフができる旨等を記載した書面を交付していない。
(7)  被上告人は,本件洗面台が設置された後,兵庫県東灘警察署や兵庫県立神戸生活創造センターを訪れ,本件契約の解消ができないかについて相談し,同センターの相談員からクーリング・オフの制度について教示を受けた。そして,被上告人は,上告人に対し,同月25日,本件契約を解除する旨記載したはがきを送付し,同書面は,同月26日,上告人に到達した(以下「本件解除」という。)。
2  本件は,上告人が,被上告人との間で本件契約を締結したなどと主張して,被上告人に対し,本件契約に基づき,残金27万円及びこれに対する支払期日の翌日である平成17年4月26日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原審において,被上告人は,本件契約は,特定商取引に関する法律(以下「法」という。)2条1項にいう訪問販売に該当する契約であるところ,被上告人は,上告人に対し,書面で本件解除をしたので,法9条の規定に基づき,本件契約は解除された旨主張し,これに対し,上告人は,(1) 本件契約は,請負契約に該当するので訪問販売に該当しない,(2) 被上告人は,法26条2項1号に規定する者に該当するから,法9条の規定に基づいて本件契約を解除することはできないなどと反論した。
3  そこで検討すると,本件契約は,本件洗面台を代金32万円で購入者である被上告人方に取り付けて設置することを内容とするものであるところ,上記1の本件事実関係の下では,本件洗面台の売買は特定商取引に関する法律施行令(以下「政令」という。)別表第一の番号42に該当する指定商品(浴槽,台所流し,便器,浄化槽,焼却炉その他の衛生用の器具又は設備並びにこれらの部品及び付属品〜具体例として「洗面化粧台」が含まれる。)の販売に当たり,また,本件洗面台の取付けは政令別表第三の番号8ト(上記指定商品の取付け又は設置)に該当する指定役務の有償での提供に当たり,本件契約はこれら商品の売買と役務の提供をもって構成されているのであるから,結局,本件契約は法2条にいう訪問販売に該当する契約であると解することが相当である。
また,法26条2項1号に規定する者(適用除外者)に該当するかどうかは,販売業者又は役務提供業者(以下「販売業者等」という。),すなわち本件においては上告人が主張立証すべき事実であると解すべきであるところ,原審は,被上告人は,法26条2項1号に規定する者に該当すると認めるに足りる証拠はないとして,上告人の上記2の主張を排斥しているのである(なお,法の施行に際し,通達が発出されているところ,同通達は,法26条2項1号について,「本号は,販売業者等が自らの意思に基づき住居を訪問して販売を行うのではなく,消費者の『請求』に応じて行うその住居における販売等を適用除外するものである。〈中略〉『請求』の程度は,『契約の申込み』又は『契約の締結』を明確に表示した場合,すなわち『○○を購入するから来訪されたい』等の明確に意思表示のあった場合に限らず,請求の趣旨が,例えば,『工事箇所の下見,工事の見積もりをしてほしいので来訪されたい』『○○のカタログを持参されたい』等取引行為を行いたい意思がある程度であればよい。〈中略〉しかし,商品等についての単なる問合せ又は資料の郵送の依頼等を行った際に,販売業者等より訪問して説明をしたい旨の申出があり,これを消費者が承諾した場合は,消費者から『請求』を行ったとは言えないため,本号には該当しない。また,販売業者等の方から電話をかけ,事前にアポイントメントを取って訪問する場合も同様に本号には該当しない。」〔特定商取引に関する法律等の施行について〈通達〉〈平成16年11月4日経済産業省大臣官房商務流通審議官発各経済産業局長及び内閣府沖縄総合事務局長あて〉参照〕というものであるから,上記主張立証の程度はこれを踏まえたものになるべきである。)。そして,上告人の上記主張を排斥した原審の認定判断には,本件証拠関係等に照らし経験則違反や採証法則違反の違法があるとはいえない。
4  そうすると,本件解除は効力を有するから,上告人の本件請求を棄却すべきものとした原審の認定判断は是認することができ,論旨は,権利濫用をいう部分を含め,すべて理由がない。
第2  結論
以上のとおりであって,本件上告は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官・井垣敏生,裁判官・森野俊彦,裁判官・小池一利)
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