平15(ワ)24733号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成18年 2月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平15(ワ)24733号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  確定  文献番号  2006WLJPCA02277002

要旨
◆在宅ワークの斡旋等を勧誘文言とする商品販売について、詐欺商法であるとは認められないが、旧訪問販売法又は特定商取引法に違反し、不法行為に当たるとされた事例

出典
判タ 1256号141頁

評釈
和田肇・ジュリ別冊 200号6頁(消費者法判例百選)

参照条文
民法44条
民法709条
民法715条
民法719条
訪問販売等に関する法律9条の9(平12法120改正前)
訪問販売等に関する法律9条の10(平12法120改正前)
訪問販売等に関する法律10条(平12法120改正前)
特定商取引に関する法律52条
特定商取引に関する法律55条
特定商取引に関する法律56条

裁判年月日  平成18年 2月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平15(ワ)24733号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  確定  文献番号  2006WLJPCA02277002

原告 甲野A子
外8名
上記9名訴訟代理人弁護士 藤森克美
被告 株式会社A
代表者代表取締役 癸村一郎
外10名
上記11名訴訟代理人弁護士 冨永忠祐

 

主文
1  被告株式会社Aは,原告甲野A子に対し,金67万6864円及びこれに対する平成15年4月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告株式会社Aは,原告乙原B子に対し,金54万1856円及びこれに対する平成14年11月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告株式会社Aは,原告丙山C子に対し,金70万1548円及びこれに対する平成12年11月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4  被告株式会社Dは,原告丁川D子に対し,金25万9834円及びこれに対する平成14年12月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5  被告株式会社Cは,原告戊谷E子に対し,金40万9399円及びこれに対する平成13年11月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6  被告株式会社Cは,原告己岡F子に対し,金26万1160円及びこれに対する平成15年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7  被告株式会社Dは,原告庚町G子に対し,金24万1404円及びこれに対する平成14年12月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8  被告株式会社Cは,原告辛本H子に対し,金32万0548円及びこれに対する平成15年1月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
9  被告株式会社Bは,原告壬島I子に対し,金27万2000円及びこれに対する平成15年2月28日から支払済みまで年5分の割による金員を支払え。
10  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
11  訴訟費用は,(1)原告甲野A子,同乙原B子及び同丙山C子に生じた費用のうち,その7分の1を被告株式会社Aの負担とし,その余を同原告らの負担とし,(2)原告丁川D子に生じた費用のうち,その9分の1を被告株式会社Dの負担とし,その余を同原告の負担とし,(3)原告戊谷E子及び同己岡F子に生じた費用のうち,その8分の1を被告株式会社Cの負担とし,その余を同原告らの負担とし,(4)原告庚町G子に生じた費用のうち,その7分の1を被告株式会社Dの負担とし,その余を同原告の負担とし,(5)原告辛本H子に生じた費用のうち,その9分の1を被告株式会社Cの負担とし,その余を同原告の負担とし,(6)原告壬島I子に生じた費用のうち,その6分の1を被告株式会社Bの負担とし,その余を同原告の負担とし,(7)被告株式会社Aに生じた費用のうち,その3分の1を同被告の負担とし,その余を原告丁川D子,同戊谷E子,同己岡F子,同庚町G子,同辛本H子及び同壬島I子の負担とし,(8)被告癸村一郎,同子野二郎及び同巳岡七郎に生じた費用は,原告らの負担とし,(9)被告株式会社Bに生じた費用のうち,その3分の1を同被告の負担とし,その余を原告丁川D子及び同辛本H子の負担とし,(10)被告株式会社C及び同株式会社Dに生じた費用は,同被告らの負担とし,(11)被告丑原三郎に生じた費用は,原告甲野A子,同乙原B子,同丙山C子,同丁川D子,同辛本H子及び同壬島I子の負担とし,(12)被告寅山四郎に生じた費用は,原告戊谷E子及び同己岡F子の負担とし,(13)被告卯川五郎及び同辰谷六郎に生じた費用は,原告甲野A子,同乙原B子,同丙山C子,同丁川D子,同戊谷E子,同己岡F子,同庚町G子及び同辛本H子の負担とする。
12  この判決は,第1項ないし第9項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1  請求
1  主位的請求
(1)  被告株式会社A,同癸村一郎,同子野二郎,同丑原三郎,同卯川五郎,同辰谷六郎及び同巳岡七郎は,原告甲野A子に対し,連帯して金73万6864円及びこれに対する平成15年4月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  被告株式会社A,同癸村一郎,同子野二郎,同丑原三郎,同卯川五郎,同辰谷六郎及び同巳岡七郎は,原告乙原B子に対し,連帯して金59万1856円及びこれに対する平成14年11月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)  被告株式会社A,同癸村一郎,同子野二郎,同丑原三郎,同卯川五郎,同辰谷六郎及び同巳岡七郎は,原告丙山C子に対し,連帯して金95万1548円及びこれに対する平成12年11月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)  被告株式会社A,同癸村一郎,同株式会社B,同子野二郎,同丑原三郎,同株式会社D,同卯川五郎,同辰谷六郎及び同巳岡七郎は,原告丁川D子に対し,連帯して金27万9834円及びこれに対する平成14年12月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(5)  被告株式会社A,同癸村一郎,同子野二郎,同株式会社C,同寅山四郎,同卯川五郎,同辰谷六郎及び同巳岡七郎は,原告戊谷E子に対し,連帯して金49万9399円及びこれに対する平成13年11月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(6)  被告株式会社A,同癸村一郎,同子野二郎,同株式会社C,同寅山四郎,同卯川五郎,同辰谷六郎及び同巳岡七郎は,原告己岡F子に対し,連帯して金28万1160円及びこれに対する平成15年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(7)  被告株式会社A,同癸村一郎,同子野二郎,同株式会社D,同卯川五郎,同辰谷六郎及び同巳岡七郎は,原告庚町G子に対し,連帯して金26万1404円及びこれに対する平成14年12月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(8)  被告株式会社A,同癸村一郎,同株式会社B,同子野二郎,同株式会社C,同丑原三郎,同卯川五郎,同辰谷六郎及び同巳岡七郎は,原告辛本H子に対し,連帯して金35万0548円及びこれに対する平成15年1月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(9)  被告株式会社A,同癸村一郎,同株式会社B,同子野二郎,同丑原三郎及び同巳岡七郎は,原告壬島I子に対し,連帯して金29万2000円及びこれに対する平成15年2月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  予備的請求
(1)  被告株式会社Aは,原告甲野A子に対し,金61万6864円及びこれに対する平成15年4月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  被告株式会社Aは,原告乙原B子に対し,金49万1856円及びこれに対する平成14年11月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)  被告株式会社Aは,原告丙山C子に対し,金79万1548円及びこれに対する平成12年11月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)  被告株式会社Dは,原告丁川D子に対し,金23万9834円及びこれに対する平成14年12月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(5)ア  被告株式会社Cは,原告戊谷E子に対し,金35万9399円及びこれに対する平成13年11月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 被告株式会社Aは,原告戊谷E子に対し,金6万円及びこれに対する平成13年11月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(6)ア  被告株式会社Cは,原告己岡F子に対し,金19万7260円及びこれに対する平成15年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 被告株式会社Aは,原告己岡F子に対し,金4万3900円及びこれに対する平成15年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(7)ア  被告株式会社Dは,原告庚町G子に対し,金17万9904円及びこれに対する平成14年12月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 被告株式会社Aは,原告庚町G子に対し,金4万1500円及びこれに対する平成14年12月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(8)ア  被告株式会社Cは,原告辛本H子に対し,金25万5948円及びこれに対する平成15年1月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 被告株式会社Aは,原告辛本H子に対し,金3万4600円及びこれに対する平成15年1月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(9)ア  被告株式会社Bは,原告壬島I子に対し,金22万5000円及びこれに対する平成15年2月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 被告株式会社Aは,原告壬島I子に対し,金2万7000円及びこれに対する平成15年2月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  本件は,被告らがパソコン教材等を売りつけて高額な金員を騙し取ろうと企て,実際は在宅ワークを斡旋する意思も委託できる業務も有していないにもかかわらず,原告らに対して在宅ワークを斡旋するかのような言辞を用い,パソコン教材を購入して勉強さえすれば容易に副収入につながるかのような錯誤に陥らせ,パソコン教材等を購入させたなどと主張する原告らが,主位的に,不法行為(使用者責任,法人の不法行為責任,共同不法行為)に基づいて,被告らに対し,連帯して別表の「請求額」欄記載のとおりの各損害金(既払金,慰謝料及び弁護士費用の合計金額)及び各金員に対する各不法行為の後である別表の「不法行為及び不当利得の遅延損害金の始期」欄記載の各日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,錯誤,公序良俗違反による無効,詐欺,消費者契約法による取消し,クーリング・オフによる契約の解除を理由とする不当利得返還請求権に基づいて,別表の「勧誘業者=(契約業者)」欄記載の各被告に対し,別表の「実損害合計」欄記載の各既払金額及び各金員に対する別表の「不法行為及び不当利得の遅延損害金の始期」欄記載の各日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2  前提事実(当事者間に争いがないか,末尾掲記の証拠によって容易に認められる事実)
(1)  原告らは,別表の「勧誘業者(=契約業者)」欄記載の各被告の従業員である別表の「担当者名」欄記載の各担当者から勧誘を受け,別表の「契約日」欄記載の日に,上記各被告から,別表の「商品名」欄記載の商品(以下「本件商品」という。)を別表の「商品代金」欄記載の金額で購入し,別表の「信販又はローン会社」欄記載の信販会社等との間で,別表の「支払総額」欄記載の金額について割賦払契約を締結した。

(2)ア  原告甲野A子(以下「原告甲野」という。)は,昭和50年*月*日生まれの女性であり,本件商品を購入した当時,主婦であった(甲イの1,甲イの10)。
イ 原告乙原B子(以下「原告乙原」という。)は,昭和35年*月*日生まれの女性であり,本件商品を購入した当時,運送会社のパートタイマーであった(甲ロの1,甲ロの7)。
ウ 原告丙山C子(以下「原告丙山」という。)は,昭和53年*月*日生まれの女性であり,本件商品を購入した当時,大学生であった(甲ハの1,甲ハの3)。
エ 原告丁川D子(以下「原告丁川」という。)は,昭和51年*月*日生まれの女性であり,本件商品を購入した当時,インターネットを使ったサービス業を行う会社に勤務しており,平成12年8月末まで同社の事務及び営業を担当していた(甲ニの1,甲ニの8)。
オ 原告戊谷E子(本件商品を購入した当時の姓は丙本。以下「原告戊谷」という。)は,昭和51年*月*日生まれの女性であり,本件商品を購入した当時,大学生であった(甲ホの1,甲ホの5)。
カ 原告己岡F子(本件商品を購入した当時の姓は丁町。以下「原告己岡」という。)は,昭和53年*月*日生まれの女性であり,本件商品を購入した当時,主婦であった(甲への1,甲への4)。
キ 原告庚町G子(以下「原告庚町」という。)は,昭和45年*月*日生まれの女性であり,本件商品を購入した当時,主婦であった(甲トの1,甲トの5)。
ク 原告辛本H子(以下「原告辛本」という。)は,昭和42年*月*日生まれの女性であり,本件商品を購入した当時,主婦であった(甲チの1,甲チの7)。
ケ 原告壬島I子(本件商品を購入した当時の姓は戊岡。以下「原告壬島」という。)は,昭和50年*月*日生まれの女性であり,本件商品を購入した当時,主婦であった(甲リの1,甲リの9)。
(3)ア  被告株式会社A(以下「被告A」という。)は,平成4年7月28日に株式会社Aシステムとして設立され,コンピュータソフトウェア及びハードウェアの開発並びに販売等を業とする株式会社である。被告Aの株式の約80パーセントは被告癸村一郎が保有し,約20パーセントは被告巳岡七郎が保有している(甲5,被告癸村一郎本人11頁)。
イ 被告癸村一郎は,被告Aの設立以降現在に至るまで同社の代表取締役であり,平成10年1月21日から平成14年6月30日まで被告株式会社B(以下「被告B」という。)の代表取締役であった。
ウ 被告Bは,コンピュータソフトウェア・ハードウェア等の割賦販売に関する事業の運営及び管理等を業とする株式会社であり,被告癸村一郎及び被告Aが各50パーセントの株式を保有する同社の子会社である(被告癸村一郎本人1頁及び2頁)。
エ 被告子野二郎(以下「被告子野」という。)は,平成11年5月28日から平成15年1月14日まで被告Aの監査役であり,同日から現在に至るまで被告Bの代表取締役である。
オ 被告株式会社C(以下「被告C」という。)は,平成12年1月27日に株式会社Eとして設立され,コンピュータソフトウェア及びハードウェアの開発並びに販売等を業とする株式会社であり,被告Aが100パーセントの株式を保有する同社の子会社である(甲6,被告癸村一郎本人1頁及び2頁)。
カ 被告丑原三郎(以下「被告丑原」という。)は,平成9年5月26日から平成12年4月1日まで被告Aの取締役,同年3月15日から同年12月30日まで被告Dの代表取締役,平成13年5月1日から平成14年6月30日まで被告Bの取締役であり,平成13年5月1日に被告Cの取締役に就任し,平成15年1月14日から現在に至るまで被告Cの代表取締役である。
キ 被告株式会社D(以下「被告D」という。)は,平成12年3月15日に株式会社Fとして設立され,コンピュータソフトウェアの開発,販売及び賃貸等を業とする株式会社であり,被告Aが100パーセントの株式を保有する同社の子会社である(被告癸村一郎本人1頁及び2頁)。
ク 被告寅山四郎(以下「被告寅山」という。)は,平成10年1月21日から平成12年4月1日まで被告Bの取締役,同日から同年12月31日まで被告Cの代表取締役であり,平成13年9月3日から現在に至るまで被告Dの代表取締役である。
ケ 被告卯川五郎(以下「被告卯川」という。)は,平成7年1月12日から平成13年8月31日まで被告Aの取締役,平成12年4月1日から平成13年5月1日まで被告Bの代表取締役,平成12年4月2日から平成13年8月31日まで被告Cの代表取締役であった。
コ 被告辰谷六郎(以下「被告辰谷」という。)は,平成7年1月12日から平成13年8月31日まで被告Aの取締役,平成12年12月30日から平成13年8月31日まで被告Dの代表取締役であった。
サ 被告巳岡七郎は,平成10年1月21日に被告Bの代表取締役に重任され,平成12年4月1日まで同社の代表取締役を務め,平成11年5月28日から現在に至るまで被告Aの取締役,平成13年9月3日から現在に至るまで被告Cの監査役,同月28日から現在に至るまで被告Bの監査役である。
(4)  ANETは,被告Aが運営するインターネットプロバイダーである。ANETの月会費は当初2700円であり,契約後1年ごとに400円ずつ減額されるが,入会当初最大2か月間無料であったり,契約者によっては1年間無料など,各種割引があった。ANETは,平成12年6月ころにGNETに改称された(甲2。甲チの10)。
3  争点
本件の主たる争点は,①被告らが原告らを勧誘して本件商品を購入させ,ANET又はGNETへの加入契約を締結させたことがいわゆる内職詐欺商法,訪問販売等に関する法律違反,特定商取引に関する法律違反の不法行為に当たるか否か,②原告らの被った損害の額,③原告らの本件商品の売買契約及びANET又はGNETへの加入契約が錯誤又は公序良俗違反により無効,詐欺又は消費者契約法による取消し,クーリング・オフによって解除されるべきものか否か,④原告らの損失額並びに被告A,同B,同C及び同Dの利得額である。
4  争点に関する当事者の主張
(1)  争点1(被告らが原告らを勧誘して本件商品を購入させ,ANET又はGNETへの加入契約を締結させたことがいわゆる内職詐欺商法,訪問販売等に関する法律違反,特定商取引に関する法律違反の不法行為に当たるか否か)について
ア 原告らの主張
(ア) 内職詐欺商法
被告Aの代表者である同癸村一郎は,同B,同C及び同Dの各代表者と共謀して,被告Aが開発したパソコン教材等を売りつけて高額な金員を騙し取ろうと企て,実際は在宅ワークを斡旋する意思も委託できる業務も有していないにもかかわらず,原告らに対し,下記aないしiのとおり,在宅ワークを斡旋するかのような言辞を用い,教材を購入して勉強さえすれば容易に副収入につながるような錯誤に陥らせ,本件商品の売買契約及びANET又はGNETへの加入契約を締結させたものであり,これは典型的な内職詐欺商法であって刑法246条所定の詐欺罪に該当する違法行為である。
別表の「担当者名」欄記載の各担当者は,いずれも「簡単な試験に合格すれば仕事を斡旋する。」,「当社指定の教材を使って勉強すれば誰でも合格できる。」などと申し向けて,原告らに本件商品の購入を勧誘したが,被告Aが行った実際の検定試験は非常に難しく,これに合格できたのは原告らのうち原告丙山のみであり,同甲野,同乙原,同丁川,同戊谷,同己岡及び同庚町は,試験の不合格を理由に仕事を斡旋されなかった。また,原告丙山が被告Aから斡旋された仕事は2,3か月に1度,それも1万円程度のものが5回与えられただけであり,「月5万円から8万円の収入が確実」との勧誘時の説明とはほど遠いものであった。さらに,原告辛本及び同壬島は,試験に不合格でも通信講座を受講すれば仕事を斡旋するとの説明を受け,通信講座を修了したが,仕事を斡旋してもらうには同原告らが不利になる内容の契約書にサインをしなくてはならない上に,斡旋してもらえる仕事も1か月に5000円程度とのことであり,月5万円程度の収入が確実であるとの勧誘時の説明とは全く異なるものであった。また,前記各担当者は,試験を受けるにはANET又はGNETへ入会しなくてはならないと言って,原告丁川以外の原告らからANET又はGNET月会費名目の金員を騙し取った。
被告らが内職詐欺商法を展開していたことは,ANETには1か月当たり約230人程度が入会しているにもかかわらず,業務斡旋の実体がわずか3人から54人というほんの一握りの会員に対して一人当たり1か月1万3173円から2万5109円の委託費を支払っていたにすぎないこと,消費者生活センターに被告らに関する相談が合計2916件も寄せられており,その相談事例は,仕事をするためには簡単な試験を受けなければならないと申し向けられ,結果的には試験に合格できずに仕事の斡旋が受けられず,結局高額な教材の代金のみを支払い続けさせられている事例ばかりであること,現在被告Aが電話勧誘業から撤退していることなどからも明らかである。
a 原告甲野について
被告Aの従業員午町丁子(以下「午町」という。)は,平成11年8月18日,原告甲野に電話をかけ,「ただいま在宅ワーカーを募集しており,甲野さんにお電話しました。当社主催のISS検定に合格すれば,当社から文章入力等の在宅ワークを斡旋します。検定試験はチャレンジシリーズという当社が販売している教材で勉強さえすれば,パソコン初心者でも合格できる簡単なものです。」,「教材にパソコン,今ならプリンターも付けて税込み59万1150円と大変お買い得になっております。しかも60回払のクレジット契約を組めば支払総額は80万円くらいになりますが,月々の返済はわずか1万3300円だけで済みます。」,「在宅ワークで得た収入の中からクレジットの返済を差し引いても手元に毎月2,3万円は必ず残りますよ。」,「検定試験を受けるにはANETに加入しなくてはなりません。」などと申し向け,本件商品を購入すれば容易に副収入につながると原告甲野を誤信させ,PCマスターという教材付きパソコン及びプリンターを購入させるとともにANETへの加入契約を締結させた。
b 原告乙原について
被告Aの従業員未本K子(以下「未本」という)は,平成12年3月15日,原告乙原に電話をかけ,「パソコンを使って在宅ワークをしてみませんか。1日2,3時間で月に5万円以上の収入は確実ですよ。」,「パソコン初心者の方でも大丈夫です。当社の教材を使って学習すればすぐに操作できるようになりますから安心してください。教材で学習した後,当社の検定試験に合格すれば仕事がもらえます。検定試験といっても簡単なものですし,当社の教材で1日2,3時間勉強すれば誰でも合格できます。ほとんどの人が1回の試験で合格していますから心配いりません。」,「検定試験を受けるためにはANETに加入してもらい,インターネット上で試験を受けてもらいます。ですからパソコンも当社が指定するものを購入してもらいます。プリンターも仕事の際必要になりますし,パソコンとプリンターをセットで購入されると割引価格になりますので,この機会に是非購入してください。また教材等の代金の支払は分割払も可能ですから,在宅ワークで得た収入の中から余裕を持って支払うことができます。収入は本人の頑張り次第で5万円以上も十分可能です。」などと申し向け,本件商品を購入すれば容易に副収入につながると原告乙原を誤信させ,オズノートというパソコン,チャレンジシリーズというパソコン教材を購入させるとともにANETへの加入契約を締結させた。
c 原告丙山について
被告Aの従業員申島八郎(以下「申島」という。)は,平成12年3月15日ころ,原告丙山に電話をかけ,「在宅ワークをしてみませんか。簡単なデータ入力を1日に30分程度行うだけで月5万から8万円の収入が確実に得られます。」,「当社主催のISS検定という試験に合格していただくことが条件となります。しかし,当社が開発した教材及び当社が勧めるパソコンを購入して勉強すれば試験には必ず合格できるから心配いりません。しかも試験の内容はパソコンのワードとエクセルの基礎知識に関するもので非常に簡単です。」,「仕事はメールを通じて行うから情報漏れを防ぐために当社が提供するANETというプロバイダーに加入してもらうので,今回新たにパソコンを購入した方が良い。」,「教材とパソコンの代金は64万円ほどかかるが,分割払が可能だから毎月の負担は1万5000円程度であり,そのお金は在宅ワークで得た収入から十分賄える。」,「検定試験は必ず合格するから安心してください。必ず仕事がもらえます。」などと申し向け,検定試験には簡単に合格でき,在宅ワークにより簡単に収入が得られると原告丙山を誤信させ,オズノート及びチャレンジシリーズを購入させるとともにANETへの加入契約を締結させた。
d 原告丁川について
被告Dの従業員酉村L子(以下「酉村」という。)は,平成12年9月11日ころ,原告丁川に電話をかけ,「1日1,2時間で月に5万円程度の収入があったらいいと思いませんか。今回は仕事をしていただく方の募集のお電話です。」,「在宅ワークのお仕事をしてもらうには,当社が勧める試験に合格することが条件となりますが,そのためには教材を購入して勉強してもらいます。」,「今までに全くパソコンを触ったことがない人でも受かる簡単な試験であるので,日常業務をこなせるレベルであれば絶対合格しますよ。」,「価格を聞くと高いと思うかもしれませんが,月に1万円未満の支払のクレジット契約が組めるので大丈夫です。仕事を始めれば収入からクレジットの返済ができますから心配ありません。毎月9200円の48回払なら無理なく支払えますね。支払総額は44万2234円になります。」,「在宅ワークで得た収入から毎月のクレジットの支払を引いて残ったお金を貯めて,皆さん一括返済しています。」,「仕事の量を増やせば,月に10万円から20万円の収入も可能です。」などと申し向け,在宅ワークによって月に5万円から20万円の収入が得られ,本件商品代金の支払も収入から十分賄うことができると誤信させ,エキスパートナーというパソコン教材を購入させた。
e 原告戊谷について
被告Cの従業員戌野M子(以下「戌野」という。)は,平成12年10月3日,原告戊谷に電話をかけ,「ただいま在宅でパソコンを使ってデータ入力の仕事をしていただく方を募集しております。在宅ワークに興味はありませんか。」,「1か月にあとどれくらい収入がプラスされればいいと思いますか。」,「その金額(原告戊谷が答えた1か月に5万円くらい)でしたら1日1,2時間の在宅ワークで稼げますよ。」,「ただし,お仕事ですからそれなりのスキルがないと仕事を任せられないし,クライアントさんにも信用されないためG認定試験という試験に合格することが条件となります。試験を受けるには当社の指定する教材を購入して勉強してください。」,「これで勉強すれば短期間でパソコンの技術が習得でき,認定試験にも必ず合格できます。」,「プロバイダー契約をしていただかないと試験が受けられませんので,Gが運営するGNETに入会してもらうことになります。」,「30万円でパソコンの技術が習得でき,かつ収入も得られるのですよ。教材の支払はクレジットが組めるので毎月の負担は大した金額になりません。」,「クレジットは在宅ワークで得られた収入から容易に返済できます。収入を貯めて繰上返済する人も多いです。」,「それ(原告戊谷が答えた1日の空き時間5時間ぐらい)なら毎月10万円以上の収入になりますよ。」などと申し向け,在宅ワークにより毎月5万円くらいの収入は得られ,本件商品代金の支払は収入から余裕を持って返済できると誤信させ,ビジネスパートナーというパソコン教材を購入させるとともにGNETへの加入契約を締結させた。
f 原告己岡について
被告Cの従業員亥原N子(以下「亥原」という。)は,平成12年11月27日又は28日ころ,原告己岡に電話をかけ,「今回業務拡大のために新しい在宅ワーカーを募集することになったので,丁町さんに電話をしたのです。」,「当社指定の試験に合格していただいてからお仕事を始めていただくことになりますが,簡単に合格できますよ。」,「当社指定の試験ですから今回購入していただく教材を使っていただければ合格できるような内容です。CD?ROMとテキストを繰り返しやっていただければ大体は皆さん合格していらっしゃいます。特に丁町さんはお若いしパソコン経験者ですから簡単だと思いますよ。」,「教材は消費税込みで30万9750円です。60回のクレジット契約にすると総額が42万1260円になりますが,月々の返済はたった7000円です。この7000円の負担も試験に合格してお仕事をするようになると,お仕事で得た収入の中から余裕を持って支払うことができます。ですから実質的な負担は,ほんの数か月分だけですから安心してください。」,「毎月5万円から6万円の収入は確実ですよ。」などと申し向け,試験は簡単で誰でも合格できるものであり,在宅ワークにより収入が得られると原告己岡を誤信させ,ビジネスパートナーを購入させた。
原告己岡は,亥原からGNETへの加入に関する説明を受けていなかったが,GNETに加入しなければ試験を受けられないことが判明し,試験に合格しないと仕事を斡旋してもらえないと思い,GNETへの加入契約を締結した。
g 原告庚町について
被告Dの従業員未本は,平成13年2月26日,原告庚町に電話をかけ,「在宅のお仕事に興味はありますか。」,「パソコン経験があるのでしたらすぐに仕事がもらえ収入が得られます。月に5万円,多い方は10万円くらいを稼いでいます。」,「ただし,当社指定の検定試験に合格することが条件となります。チャレンジシリーズいうCD?ROM教材を購入して勉強していただければ必ず合格できますし,検定試験といってもパソコン初心者や年配の方でも合格できる簡単な試験なので心配はいりません。庚町様はパソコン経験者なのですぐに合格できますよ。」,「今回はキャンペーン中なので教材が特別に安くなっており消費税込みで41万2650円です。支払についてはクレジット契約を組むことができるし,初回の引き落としは3か月くらい先になるので,その間に試験に合格すればいいのです。合格したらすぐに仕事がもらえるので,収入から余裕を持って返済できます。」,「クレジットにすると支払総額は56万1204円になりますが,月々の返済は9300円です。」,「検定試験はインターネット上で行われるので,当社指定のプロバイダーに入会していただきます。」などと申し向け,在宅ワークにより簡単に収入が得られると原告庚町を誤信させ,チャレンジシリーズを購入させるとともに,GNETへの加入契約を締結させた。
h 原告辛本について
被告Cの従業員甲村九郎(以下「甲村」という。)は,平成13年5月11日,原告辛本に電話をかけ,データ入力の在宅ワークをしないかと切り出し,「原稿をそのまま打ち込むだけの誰でもできる簡単な仕事です。月に最低5万円は得られます。頑張れば月に20万円の収入も可能です。」などと言葉をかけ,在宅ワークをするには仕事の納品のために被告C指定のプロバイダーに入会すること,被告Aが開発したチャレンジシリーズを購入すること,教材を使って学習後,インターネット上で行われるG検定試験というタイピング等の試験に合格しなくてはならないことなどを説明し,「試験は簡単で落とすための試験ではありません。タイピング試験はタイピングが得意なお友達に頼んでH子さんの代わりに受験しても構いません。」,「パソコンも当社で購入することができます。教材とパソコン合わせて62万0550円になりますが,60回払のクレジットを組めば毎月1万4000円で済みます。仕事がもらえれば毎月最低でも5万円の収入がありますから,その中から1万4000円を支払うだけです。」,「リストラで外部発注が増えており,仕事は山ほどあり,人手不足の状態なのです。」などと申し向け,試験が簡単で重要でなく,在宅ワークにより簡単に収入が得られると原告辛本を誤信させ,トラベルメイトというパソコン及びチャレンジシリーズを購入させるとともに,GNETへの加入契約を締結させた。
i 原告壬島について
被告Bの従業員乙島十郎(以下「乙島」という。)は,平成13年11月22日,原告壬島に電話をかけ,「SOHOを始めませんか。在宅ワーカーの開拓をしています。あなたもその一人になりませんか。仕事をするにはチャレンジシリーズという教材を購入して,教材で勉強後,当社指定の検定試験に合格すると仕事がもらえます。」,「購入していただく教材は通信講座になっていますので,その講座を修了すれば試験に合格した人と同じように仕事を紹介します。試験に合格するか通信講座を修了すれば仕事をもらえますよ。」,「すぐに合格できますよ。」,「次の試験は3か月後の2月にあります。仮に60回払のローンを組んだ場合,1か月の負担は1万5000円になりますので,3か月分の4万5000円さえ支払うことができれば,あとの支払は毎月の報酬から余裕を持って賄えます。毎月5万円は簡単に稼げますので,1万5000円の支払なら家計に負担はかけません。」,「試験を受けるためにはGNETというプロバイダーに入会しなくてはなりません。」などと申し向け,在宅ワークによって毎月5万円程度の報酬が簡単に得られ,本件商品代金の支払は報酬から余裕を持って支払うことができると原告壬島を誤信させ,チャレンジシリーズを購入させるとともに,GNETへの加入契約を締結させた。
(イ) 平成12年法律第120号による改正前の訪問販売等に関する法律(以下「旧訪問販売法」という。)違反
a 不実告知(同法9条の9第1項。原告甲野,同乙原,同丙山,同丁川,同戊谷,同己岡,同庚町及び同辛本について)
午町,未本,申島,酉村,戌野,亥原及び甲村は,上記原告らに対し,「毎月5万円から20万円の収入は確実です。」,「教材の代金は報酬の中から余裕を持って支払えます。」,「検定試験は誰でも簡単に合格できます。」などと不実を告げ,本件商品の売買契約及びANET又はGNETへの加入契約を締結させた。
b 重要事実の不告知(同法9条の10第2号。原告乙原について)
未本は,原告乙原に対し,「教材は少々高額です。」と告げたものの,パソコン,教材及びプリンターの具体的な価格について一切告げず,これらを購入させた。
c 同法の適用除外について(被告らの主張(イ)に対する反論)
消費者と事業者の間で締結される契約は,同法10条1項1号の「営業のために若しくは営業として締結する契約」に当たらないから,消費者である原告甲野,同乙原,同丙山,同丁川,同戊谷,同己岡,同庚町及び同辛本は,同法の適用を受ける。
(ウ) 特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)違反(原告壬島について)
a 不実告知(同法52条1項)
乙島は,原告壬島に対し,「月5万円の収入が確実に得られます。検定試験は必ず合格します。」,「教材の代金は在宅ワークで得た収入から十分賄えます。」などと不実を告げ,本件商品の売買契約及びGNETの加入契約を締結させた。
b 書面不交付(同法55条1項)
乙島は,経済産業省令で定めた業務提供誘引販売業の概要について記載した書面を契約締結前に原告壬島に交付せずに本件商品の売買契約及びGNETへの加入契約を締結させた。
c 指示対象行為違反(同法56条2号)
乙島は,「月5万円の収入が確実に得られます。」などとあたかも月に一定の収入が得られることが確実であるとの断定的判断を提供して,本件商品の売買契約を締結させた。
(エ) 被告らの責任
a 各担当者の不法行為に関する被告A,同B,同C及び同Dの使用者責任
別表の「担当者名」欄記載の各担当者の前記勧誘行為は,詐欺行為及び旧訪問販売法又は特定商取引法に違反するものであり,不法行為に該当する。
被告Aは,原告甲野,同乙原及び同丙山に対し,午町,未本及び申島の前記違法な勧誘行為について,被告Bは,原告壬島に対し,乙島の前記違法な勧誘行為について,被告Cは,原告戊谷,同己岡及び同辛本に対し,戌野,亥原及び甲村の前記違法な勧誘行為について,被告Dは,原告丁川及び同庚町に対し,酉村及び未本の前記違法な勧誘行為について,それぞれ民法715条1項の使用者責任を負う。
b 被告癸村一郎,同子野,同丑原,同寅山,同卯川,同辰谷及び同巳岡七郎の共同不法行為
上記被告らは,下記(a)ないし(d)のとおり,被告A,同B,同C又は同Dの役員として,共謀して前記内職詐欺商法を企画,推進し,各担当者にこれを指揮,命令していたから,被告A,同B,同C又は同Dの役員であった当時に勧誘を受けた各原告に対し,すなわち,被告癸村一郎,同子野及び同巳岡七郎は,原告らに対し,被告丑原は,原告甲野,同乙原,同丙山,同丁川,同辛本及び同壬島に対し,被告寅山は,原告戊谷及び同己岡に対し,被告卯川及び同辰谷は,原告甲野,同乙原,同丙山,同丁川,同戊谷,同己岡,同庚町及び同辛本に対し,共同不法行為責任を負う。
(a) 被告癸村一郎,同子野,同丑原,同卯川,同辰谷及び同巳岡七郎は,同Aの役員(代表取締役,取締役又は監査役)として,共謀して前記内職詐欺商法を企画,推進し,同被告の各担当者にこれを指揮,命令した。
(b) 被告癸村一郎,同子野,同丑原,同寅山,同卯川及び同巳岡七郎は,同Bの役員(代表取締役,取締役又は監査役)として,共謀して前記内職詐欺商法を企画,推進し,同被告の各担当者にこれを指揮,命令した。
(c) 被告丑原,同寅山,同卯川及び同巳岡七郎は,同Cの役員(代表取締役,取締役又は監査役)として,共謀して前記内職詐欺商法を企画,推進し,同被告の各担当者にこれを指揮,命令した。
(d) 被告丑原,同寅山及び同辰谷は,同Dの代表取締役として,共謀して,前記内職詐欺商法を企画,推進し,同被告の担当者にこれを指揮,命令した。
c 被告A,同B,同C及び同Dの不法行為責任(法人の不法行為責任。民法44条1項)
被告Aは,その代表者である被告癸村一郎の前記不法行為について,被告Bは,その代表者である被告癸村一郎,同卯川及び同巳岡七郎の前記不法行為について,被告Cは,その代表者である被告丑原,同寅山及び同卯川の前記不法行為について,被告Dは,その代表者である被告丑原,同寅山及び同辰谷の前記不法行為について,それぞれ民法44条1項に基づき損害賠償責任を負う。
d 被告A,同B,同C及び同Dは,代表者以外の役員の前記b記載の各不法行為について使用者責任,共同不法行為責任を負う。
イ 被告らの主張
(ア) 原告らの主張(ア)に対する認否及び反論
a(a) 原告らに対する勧誘が内職詐欺商法であるとの点は否認ないし争う。
前記各担当者は,原告らに本件商品の購入を勧誘するに当たり,在宅ワークを斡旋するなどといった説明をしていない。
(b) 被告Aが実施したISS検定試験及びG認定試験は,いずれもジャストシステムが行う一太郎検定試験の内容と比較しても大差ないものであって,ある程度の努力をすれば誰でも合格できるレベルの内容である。原告丙山以外の原告らが試験に合格できなかったのは,ある程度の努力を怠ったからにすぎない。また,上記試験に合格後,パソコンの入力作業の仕事を発注する場合でも,試験に合格したものには無条件に仕事を発注できるわけではなく,原告丙山のように入力ミスが目立つ者に対しては発注を躊躇せざるを得なかった。
(c) 被告Cの担当者が原告辛本に対し,試験に不合格でも通信講座を受講すれば仕事を斡旋すると説明をしたことは認める。
b 午町が原告甲野に対して本件商品の購入を勧誘し,支払方法について説明をしたことは認めるが,その余は否認する。
c 未本が原告乙原に対してパソコンとプリンターをセットで購入すると割引になること,本件商品の代金は分割払も可能であることを説明したことは認めるが,その余は否認する。
d 申島が原告丙山に対して本件商品の購入及びANETへの加入を勧誘したことは認めるが,その余は否認する。
e 酉村が原告丁川に対して在宅ワークについて説明したことは認めるが,その余は否認する。
f 戌野が原告戊谷に対して在宅ワーク,G認定試験,GNET,本件商品の価格及び分割払が可能であることを説明したことは認めるが,その余は否認する。
g 亥原が原告己岡に対してG認定試験,教材の価格,分割払における毎月の支払額及び支払総額について説明したことは認めるが,その余は否認する。
h 未本が原告庚町に対してパソコンを使っての在宅ワークを紹介し,検定試験,教材の価格,分割払における毎月の支払額,支払総額及びGNETについて説明したことは認めるが,その余は否認する。
i 甲村が原告辛本に対してパソコンを使っての在宅ワーク,GNETへの入会,本件商品の価格及び分割払における毎月の支払額について説明をしたことは認めるが,その余は否認する。
j 乙島が原告壬島に対してパソコンを使った在宅ワーク,教材,検定試験,次の試験が2月にあること,分割払における毎月の支払額及びGNETについて説明をしたことは認めるが,その余は否認する。
(イ) 旧訪問販売法の適用除外について
原告甲野,同乙原,同丙山,同丁川,同戊谷,同己岡,同庚町及び同辛本は,適用除外について規定する同法10条1項1号所定の「営業のために若しくは営業として」,本件商品を購入したのであるから,同法は適用されない。
(ウ) 特定商取引法の不適用について
乙島は,原告壬島を勧誘した際,在宅ワークを斡旋するなどの説明をしていないから,同原告の本件商品の売買契約は同法51条1項の業務提供誘引販売取引に該当しない。
(2)  争点2(原告らの被った損害の額)について
ア 原告らの主張
被告らの不法行為によって原告らが被った損害は別表の「請求額〈A+B+C〉」欄記載の各金額のとおりであり,その内訳は,以下の(ア)ないし(ウ)のとおりである。
(ア) 財産的損害 別表の「実損害合計〈A=a+b〉」欄記載の各既払金
a 原告らは,別表の「信販又はローン会社」欄記載の信販会社等に対し,本件商品の割賦払金又は繰上弁済金として,別表の「既払金〈a〉」欄記載の各金額を支払った。
b 原告らは,ANET又はGNETの月会費として,別表の「既払金〈b〉」欄記載の各金額を被告Aに支払った。
(イ) 慰謝料 別表の「慰藉料〈B〉」欄記載の各金額
原告らは,被告らの内職詐欺商法等の前記不法行為によって,家計のために少しでも収入を得たいという気持ちを踏みにじられ,各自のやりくりの中で何とか捻出したお金を本件商品代金名目で騙し取られた。原告らの精神的損害を金銭に評価すると,別表の「慰藉料〈B〉」欄記載の各金額を下回らない。
(ウ) 弁護士費用 別表の「弁護士費用〈C〉」欄記載の各金額
イ 被告らの主張
(ア) 原告ら主張の事実は,いずれも否認ないし争う。
(イ) 損益相殺
a 原告らは,本件商品を購入してこれらを実際に使用し,パソコンのスキルを上達させるなどの利得を得ている。パソコン教材及びパソコンを購入した原告甲野,同乙原,同丙山及び同辛本は,少なくとも30万円の利得を得ており,パソコン教材のみを購入した原告丁川,同戊谷,同己岡,同庚町及び同壬島は,少なくとも10万円の利得を得ているから,同利益は,原告らの損害額から控除されるべきである。
b 原告丙山及び同辛本は,被告Aからそれぞれ6万3425円,4237円の委託料の支払を受けており,同利益は,上記原告両名の損害額から控除されるべきである。
(3)  争点3(原告らの本件商品の売買契約及びANET又はGNETへの加入契約が錯誤又は公序良俗違反により無効,詐欺又は消費者契約法による取消し,クーリング・オフによって解除されるべきものか否か)について
ア 原告らの主張
(ア) 錯誤による無効
原告らは,在宅ワークにより月5万円以上の収入は確実であると錯誤に陥り,本件商品の購入及びANET又はGNETへの入会の意思表示をした。これらの意思表示は,要素の錯誤によるものであり無効である。
(イ) 詐欺による取消し
a 別表の「担当者名」欄記載の各担当者は,原告らに対し,実際は本件商品の販売を目的としているにもかかわらず,あたかも在宅ワークを斡旋するかのように,「毎月5万円から20万円の収入は確実です。」,「教材の代金は報酬の中から余裕を持って支払えます。」,「検定試験は誰でも簡単に合格できます。」などと虚偽の事実を申し向けて原告らを欺き,その旨誤信させて,本件商品の売買契約及びANET又はGNETへの加入契約を締結させた。
b 原告己岡は,被告A及び同Cに対し,平成15年11月6日到達の本件訴状をもって,本件商品の売買契約及びGNETへの加入契約を取り消す旨の意思表示をした。
原告己岡を除く原告らは,被告A及び別表の「勧誘業者=(契約業者)」欄記載の各被告に対し,別表の「勧誘業者及びAらに催告書を送付した日」欄記載の各日の翌々日ころに,本件商品の各売買契約及びANET又はGNETへの各加入契約を取り消す旨の意思表示をした。
(ウ) 公序良俗違反による無効
別表の「担当者名」欄記載の各担当者が原告らに対して本件商品の各売買契約及びANET又はGNETへの各加入契約を締結させる行為は,原告らの無思慮,窮迫に乗じて不当の利を博する行為に該当し,公序良俗に違反し無効である。
(エ) 消費者契約法による取消し(原告辛本及び同壬島について)
a 原告辛本及び同壬島は,同法における「消費者」に該当する。
同法における「消費者」と「事業者」を区別する観点は,契約の締結,取引に関する情報,交渉力の格差であるところ,原告辛本及び同壬島は,いずれも幼い子供を抱え,外に働きに出かけることもできない専業主婦であり,契約の締結,取引に関して豊富な情報や高い交渉力を有していない「消費者」であるのは一目瞭然である。
また,高額な収入が得られると称する在宅ワークの斡旋とは,高額な教材等を購入させるための餌にすぎず,被告Aによる在宅ワーク斡旋の実体がないのは明らかであるから,原告辛本及び同壬島の契約は,「事業のため」ではないこととなるため,「消費者」に該当する。
b 別表の「担当者名」欄記載の各担当者の勧誘行為は,前記のとおり,原告らに不実を告げてその旨誤認させたものであり,同法4条1項1号で定められている不実告知に該当する。
原告辛本及び同壬島は,被告A及び別表の「勧誘業者=(契約業者)」欄記載の各被告に対し,別表の「勧誘業者及びAらに催告書を送付した日」欄記載の各日の翌々日ころに,本件商品の各売買契約及びANET又はGNETへの各加入契約を取り消す旨の意思表示をした。
(オ) クーリング・オフによる契約の解除(原告甲野,同丙山,同丁川,同戊谷,同己岡及び同庚町について)
a 原告甲野,同丙山,同丁川,同戊谷及び同己岡について
上記原告5名のクレジット契約書には絶対的記載事項である契約年月日の記載がないので,法定書面の交付がされていない。原告己岡は,被告A及び同Cに対し,平成15年11月6日送達の本件訴状をもって,原告甲野,同丙山,同丁川及び同戊谷は,被告A及び別表の「勧誘業者=(契約業者)」欄記載の各被告に対し,別表の「勧誘業者及びAらに催告書を送付した日」欄記載の各日の翌々日ころに,クーリング・オフを行使し,本件商品の売買契約及びANET又はGNETへの加入契約を解除する旨の意思表示をした。
b 原告庚町について
原告庚町のクレジット契約書には,絶対的記載事項である契約年月日及び商品の引き渡し時期の記載がないので,法定書面の交付がされていない。原告庚町は,被告A及び同Dに対し,平成15年7月30日ころ,クーリング・オフを行使し,本件商品の売買契約及びGNETへの加入契約を解除する旨の意思表示をした。
イ 被告らの主張
(ア) 原告らの主張(ア)ないし(オ)に対する認否
いずれも否認ないし争う。
(イ) 原告らの重過失(原告らの主張(ア)について)
原告らは,当時のいわゆるSOHOブームにあおられて,安易な発想で,パソコン技術を習得すれば家で小遣い稼ぎができると軽信して契約締結に至ったものであるから,民法95条ただし書所定の重過失があり,錯誤無効の主張をすることはできない。
(ウ) 消費者契約法の不適用(原告らの主張(エ)について)
原告辛本及び同壬島は,在宅ワークを反復継続して行う意思を有していたから,「事業として又は事業のために契約の当事者」(同法2条1項)となったものであり,同法における「消費者」(同条項)から除外されるため,同法の適用はない。
(4)  争点4(原告らの損失額並びに被告A,同B,同C及び同Dの利得額)について
ア 原告らの主張
(ア) 原告らは,別表の「既払金〈a〉」欄記載の各金員を別表の「不法行為及び不当利得の遅延損害金の始期」欄記載の各日の前日までに支払い,別表の「勧誘業者(=契約業者)」欄記載の各被告は,同額の金員を取得した。
(イ) 原告らは,被告Aに対し,別表の「既払金〈b〉」欄記載の各金員を別表の「不法行為及び不当利得の遅延損害金の始期」欄記載の各日の前日までに支払い,同被告は,同額の金員を取得した。
(ウ) 被告A及び別表の「勧誘業者(=契約業者)」欄記載の各被告は,別表の「不法行為及び不当利得の遅延損害金の始期」欄記載の各日の前日当時,同被告らが取得した金員が法律上の原因がないことを知っていた。
イ 被告らの主張
(ア) 原告ら主張の事実は,いずれも否認ないし争う。
(イ) 原告らが本件商品を取得して利得を得ていること及び委託料の支払を受けたことについては,前記(2)イ(イ)のとおりである。
第3  当裁判所の判断
1  前記前提事実に証拠(甲1,甲2,甲5,甲6,甲イの1ないし10,甲ロの1ないし7,甲ハの1ないし5,甲ニの1ないし8,甲ホの1ないし5,甲への1ないし4,甲トの1ないし5,甲チの1ないし11,甲リの1ないし10,乙1,乙3,乙4の4ないし6,乙7の3,乙7の6,乙7の8,乙8ないし12,乙16,証人乙島,同戊岡太郎,原告丙山本人,同辛本本人,同壬島本人及び被告A代表者兼被告癸村一郎本人。ただし,証人乙島及び被告A代表者兼被告癸村一郎本人のうち,後記採用しない部分を除く。)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。
(1)  原告甲野について
ア 被告Aの従業員である午町は,平成11年8月18日ころ,原告甲野に電話をかけ,同原告に対し,「パソコンを使って在宅ワークをやってみたいと思いませんか。」,「当社主催のISS検定試験に合格すれば,当社から文章入力等の在宅ワークを斡旋します。検定試験はチャレンジシリーズという当社が販売している教材で勉強さえすれば,パソコン初心者でも合格できる簡単なものです。」,「教材にパソコン,今ならプリンターをつけて税込み59万1150円と大変お買い得です。60回払のクレジット契約を組めば支払総額は80万円くらいになりますが,月々の返済は1万3300円だけで済みます。在宅ワークで得た収入の中からクレジットの返済を差し引いても手元に毎月2,3万円は必ず残ります。」,「検定試験を受けるにはANETというプロバイダーに加入しなくてはなりません。」などと申し向けてパソコン教材チャレンジシリーズ,パソコン及びプリンターの購入並びにANETへの加入を勧誘した。
イ 原告甲野は,前記午町の勧誘を受け,平成11年8月19日ころ,チャレンジシリーズとパソコン本体がセットになっているPCMaster6.0とプリンターを合計59万1150円(消費税込み)で被告Aから購入し,ファインクレジット株式会社(以下「ファインクレジット」という。)との間で支払総額80万3964円の割賦払契約(初回1万9264円,2回目以降1万3300円の合計60回払)を締結するとともに,被告Aとの間でANETへの加入契約を締結した。
ウ(ア) 原告甲野は,平成12年1月から平成15年4月ころまでの間に,前記PCMaster6.0及びプリンターの割賦払金として少なくとも合計52万6564円をファインクレジットに支払った。
(イ) 原告甲野は,平成11年10月ころから平成15年4月ころまでの間に,ANET又はGNETの月会費として合計9万0300円を被告Aに支払った。
エ(ア) ISS検定試験は,被告Aが実施し,パソコンに関する知識試験とワープロソフトであるワード及び表計算ソフトであるエクセルに関する実技試験を内容とするものであり,年4回にわたってインターネット上で実施されるものであった。ISS検定試験は,平成12年11月ころ,G認定試験と改称された。G認定試験では,いずれもインターネット上で受験することができるタイピング試験,知識試験及び実技試験の3つに順次合格することが必要であり,タイピング試験及び知識試験は,時期や回数にかかわらず何度でも受験できるが,実技試験は,年4回しか受験できなかった。
(イ) ISS検定試験及びG認定試験は,専らANETないしGNETの会員のみが受験するものであり,被告A,同B,同C及び同Dに対してのみ資格として通用するものであり,その他世間一般においては,資格試験として全く認知されていなかった。
オ 原告甲野は,PCMaster6.0を使って学習し,4回ほどISS検定試験を受けたがいずれも不合格であった。その後,原告甲野は,G認定試験のタイピング試験及び知識試験については合格したが,実技試験に合格できなかったため,結局,被告Aから在宅ワークの斡旋ないし委託を受けられなかった。
(2)  原告乙原について
ア 被告Aの従業員である未本は,平成12年3月15日ころ,原告乙原に電話をかけ,同原告に対し,「パソコンを使って在宅ワークをしてみませんか。1日2,3時間の仕事で月に5万円以上の収入は確実ですよ。当社の教材を使って学習すればすぐに操作できるようになりますから安心してください。教材で学習した後,当社の検定試験に合格すれば仕事がもらえます。検定試験といっても簡単なものですし,当社の教材で1日2,3時間勉強すれば誰でも合格できます。」,「検定試験を受けるためにはANETという当社のプロバイダーに加入してもらい,インターネット上で試験を受けてもらいます。パソコンも当社が指定するものを購入してもらいます。プリンターも仕事の際必要になりますし,パソコンとプリンターをセットで購入されると割引価格になるのでこの機会に是非購入してください。教材代金の支払は,分割払が可能であり,在宅ワークで得た収入の中から余裕を持って支払うことができます。」などと申し向けてオズノート,プリンター及びチャレンジシリーズの購入並びにANETへの加入を勧誘した。
イ 原告乙原は,前記未本の勧誘を受け,平成12年3月16日ころ,オズノート,プリンター及びチャレンジシリーズを合計65万8350円(消費税込み)で被告Aから購入し,ファインクレジットとの間で支払総額89万5356円の割賦払契約(初回1万6256円,2回目以降14900円の合計60回払)を締結するとともに,被告Aとの間でANETへの加入契約を締結した。
ウ(ア) 原告乙原は,平成12年8月から平成14年11月までの間に,オズノート,プリンター及びチャレンジシリーズの割賦払金として合計41万8556円をファインクレジットに支払った。
(イ) 原告乙原は,平成12年5月ころから平成14年11月ころまでの間に,ANET又はGNETの月会費として,合計7万3300円を被告Aに支払った。
エ 原告乙原は,オズノート及びチャレンジシリーズを使って学習し,2回ほどISS検定試験を受験したが,いずれも不合格となり,その後G認定試験を受験したが,タイピング試験に合格できなかったため,結局,被告Aから在宅ワークの斡旋ないし委託を受けられなかった。
(3)  原告丙山について
ア 被告Aの従業員である申島は,平成12年3月15日ころ,原告丙山に電話をかけ,同原告に対し,「在宅ワークをしてみませんか。簡単なデータ入力を1日に30分程度行うだけで月5万円から8万円の収入が確実に得られます。ただし,当社主催のISS検定に合格していただくことが条件となります。当社が開発した教材及び当社が勧めるパソコンを購入して勉強すれば試験には必ず合格できるから心配ありません。試験の内容はパソコンのワードとエクセルの基礎知識に関するもので非常に簡単です。」,「仕事はメールを通じて行うから情報漏れを防ぐために当社が提供するANETというプロバイダーに加入してもらうので,今回新たにパソコンを購入した方が良いです。」,「教材とパソコンの代金は64万円ほどになりますが,分割払が可能ですから,毎月の負担は1万5000円程度で済みますし,そのお金は在宅ワークで得た収入から十分賄えます。」などと申し向けてオズノート及びチャレンジシリーズの購入並びにANETへの加入を勧誘した。
イ 原告丙山は,前記申島の勧誘を受け,平成12年3月17日ころ,オズノート及びチャレンジシリーズを合計64万7325円(消費税込み)で被告Aから購入し,株式会社ジャックスとの間で支払総額88万0362円の割賦払契約(初回1万8962円,2回目以降1万4600円の合計60回払)を締結するとともに,被告Aとの間でANETへの加入契約を締結した。
ウ 原告丙山が購入したチャレンジシリーズは,CD?ROM8枚及びテキスト8冊がセットとなっているものであり,ウィンドウズやインターネット,ワード,エクセル等の基本的知識,操作方法を学習することを内容とするパソコン教材である。
エ(ア) 原告丙山は,平成12年7月から11月ころまでの間に,オズノート及びチャレンジシリーズの割賦払金及び繰上弁済金として合計72万0148円を株式会社ジャックスに支払い,債務を完済した。
(イ) 原告丙山は,平成12年3月ころから平成14年9月ころまでの間に,ANET又はGNETの月会費として,合計7万1400円を被告Aに支払った。
オ 原告丙山は,オズノート及びチャレンジシリーズを使って学習し,一度は不合格になったものの,平成12年7月にISS検定試験に合格した。
カ(ア) 原告丙山は,平成12年8月ころまでに,被告Aが第三者から請け負ったデータ入力,編集等の業務について同被告から委託を受けるという内容の業務委託契約を同被告との間で締結した。
(イ) 原告丙山は,平成12年10月4日ころ,被告Aから前記業務委託契約に基づき,委託料を1件10円,入力にミスがあった場合には減額されることとして,1144件程度のデータ入力業務の委託を受けた。原告丙山は,同月中旬ころ,上記データ入力を終えて被告Aに納品した。
被告Aは,同年12月11日,上記業務委託料として,1064件分について1件10円,被告Aがミスがあったと判断した80件分について1件5円で計算し,これに消費税を加えた合計1万1592円を原告丙山に支払った。
(ウ) 原告丙山は,平成12年12月下旬ころ,被告Aから約1000件のデータ入力業務の委託を受けて,これを納品し,平成13年2月13日,業務委託料として,1万0458円を被告Aから受け取った。
(エ) 原告丙山は,平成13年2月下旬ころ,被告Aから約2000件のデータ入力業務の委託を受けて,これを納品し,同年5月10日,業務委託料として,2万0464円を被告Aから受け取った。
(オ) 原告丙山は,平成13年5月ころ,被告Aからデータ入力業務の委託を受け,納期を過ぎながらもこれを納品し,同年8月10日,業務委託料として,1万4189円を被告Aから受け取った。
(カ) 原告丙山は,平成13年8月ころ,被告Aからデータ入力業務の委託を受け,これを納品し,同年9月10日,業務委託料として,6722円を被告Aから受け取った。
(4)  原告丁川について
ア 被告Dの従業員である酉村は,平成12年9月11日ころ,原告丁川に電話をかけ,同原告に対し,「SOHOというのをご存じですか。1日1,2時間で月に5万円程度の収入があったら良いと思いませんか。今回は仕事をしていただく方の募集のお電話です。在宅ワークのお仕事をしてもらうには,当社指定のインターネット上で行われる試験に合格することが条件となりますが,そのためには教材を購入して勉強してもらいます。今までに全くパソコンを触ったことのない人でも合格できる簡単な試験なので,日常業務をこなせるレベルであれば絶対合格しますよ。仕事を始めれば,収入からクレジットの返済ができますから心配ありません。毎月9200円の48回払なら,無理なく支払えますね。支払総額は44万2234円になります。皆さん在宅ワークで得た収入から毎月のクレジットの支払を引いたお金を貯めて一括返済しています。仕事の量を増やせば,月に10万円から20万円の収入も可能です。」などと申し向けてエキスパートナーの購入を勧誘した。
イ(ア) 原告丁川は,前記酉村の勧誘を受け,平成12年9月13日ころ,エキスパートナーを代金34万3350円(消費税込み)で被告Dから購入し,ファインクレジットとの間で,支払総額44万2234円の割賦払契約(初回9834円,2回目以降9200円の合計48回払)を締結した。
(イ) 原告丁川は,同日ころ,被告Aとの間で,パソコンの1年間の無料レンタル及びGNETの1年間の無料利用について合意した。
ウ 原告丁川は,平成12年11月から平成14年12月5日までの間に,エキスパートナーの割賦払金として,合計23万9834円をファインクレジットに支払った。
エ 原告丁川は,エキスパートナーを使って学習し,G認定試験の知識試験及びタイピング試験に合格したが,2度ほど受験した実技試験のすべてには合格できなかったため,結局,被告Aから在宅ワークの斡旋ないし委託を受けられなかった。
(5)  原告戊谷について
ア 被告Cの従業員である戌野は,平成12年10月3日ころ,原告戊谷に電話をかけ,同原告に対し,「ただいま在宅でパソコンを使ってデータ入力の仕事をしていただく方を募集しています。在宅ワークに興味はありませんか。5万円くらいでしたら1日1,2時間の在宅ワークで稼げますよ。ただし,G認定試験という試験に合格することが条件となります。試験を受けるには当社の指定する教材を購入して勉強してください。これで勉強すれば短期間でパソコンの技術が習得でき,認定試験にも必ず合格できます。」,「プロバイダー契約をしていただかないと試験が受けられませんので,GNETに入会してもらうことになります。」,「教材の支払はクレジットが組めるので毎月の負担は7000円になり,大した金額になりませんし,在宅ワークで得られた収入から容易に返済できます。収入を貯めて繰上返済する人も多いです。1日5時間ぐらい仕事をすれば毎月10万円以上の収入になりますよ。」などと申し向けてビジネスパートナーの購入及びGNETへの加入を勧誘した。
イ 原告戊谷は,前記戌野の勧誘を受け,平成12年10月4日ころ,ビジネスパートナーを代金30万9750円(消費税込み)で被告Cから購入し,株式会社セントラルファイナンス(以下「セントラルファイナンス」という。)との間で,支払総額42万1260円(初回8260円,2回目以降7000円の合計60回払)の割賦払契約を締結するとともに,被告Aとの間でGNETへの加入契約を締結した。
ウ(ア) 原告戊谷は,平成12年11月から平成13年11月ころまでの間に,ビジネスパートナーの割賦払金及び繰上弁済金として合計35万9399円をセントラルファイナンスに支払い,債務を完済した。
(イ) 原告戊谷は,平成12年12月ころから平成14年11月ころまでの間に,GNETの月会費として,合計6万円を被告Aに支払った。
エ 原告戊谷は,ビジネスパートナーを使って学習し,G認定試験のタイピング試験及び知識試験に合格したが,2度ほど受験した実技試験に合格することができなかったため,結局,被告Aから在宅ワークの斡旋ないし委託を受けられなかった。
(6)  原告己岡について
ア 被告Cの従業員である亥原は,平成12年11月28日ころ,原告己岡に電話をかけ,同原告に対し,「在宅でのお仕事にご興味はありませんか。今回業務拡大のために新しい在宅ワーカーを募集することになったので,丁町(原告己岡の当時の姓)さんに電話をしたのです。当社指定の試験に合格していただいてからお仕事を始めていただくことになりますが,簡単に合格できますよ。」,「当社指定の試験ですから今回購入していただく教材を使っていただければ合格できるような内容です。CD?ROMとテキストを繰り返しやっていただければ大体は皆さん合格していらっしゃいます。特に丁町さんはお若いしパソコン経験者ですから簡単だと思いますよ。」,「教材は消費税込みで30万9750円です。60回のクレジット契約にすると総額が42万1260円になりますが,月々の返済はたった7000円です。この7000円の負担も試験に合格してお仕事をするようになると,お仕事で得た収入の中から余裕を持って支払うことができます。実質的な負担は,ほんの数か月分だけですから安心してください。」,「毎月5万円から6万円の収入は確実ですよ。」などと申し向けてビジネスパートナーの購入を勧誘するとともに,上記試験を受けるためには必要であるなどと説明して,GNETへの加入を勧誘した。
イ(ア) 原告己岡は,前記亥原の勧誘を受け,平成12年11月29日ころ,ビジネスパートナーを30万9750円(消費税込み)で被告Cから購入し,セントラルファイナンスとの間で支払総額42万1260円(初回8260円,2回目以降7000円の合計60回払)の割賦払契約を締結した。
(イ) 原告己岡は,平成12年12月ころ,被告Aとの間でGNETへの加入契約を締結した。
ウ(ア) 原告己岡は,平成13年4月から平成15年7月までの間に,ビジネスパートナーの割賦払金として合計19万7260円をセントラルファイナンスに支払った。
(イ) 原告己岡は,平成13年2月ころから平成14年8月ころまでの間に,GNETの月会費として,合計4万3900円を被告Aに支払った。
エ 原告己岡は,ビジネスパートナーを使って学習し,G認定試験の知識試験及びタイピング試験に合格したが,3回ほど受験した実技試験に合格できなかったため,結局,被告Aから在宅ワークの斡旋ないし委託を受けられなかった。
(7)  原告庚町について
ア 被告Dの従業員である未本は,平成13年2月26日ころ,原告庚町に電話をかけ,同原告に対し,「在宅のお仕事に興味はありますか。パソコン経験があるのでしたらすぐに仕事がもらえ収入が得られます。月に5万円,多い方は10万円くらいを稼いでいます。ただし,当社指定のG認定試験という検定試験に合格することが条件となります。チャレンジシリーズという教材を購入して勉強すれば必ず合格できますし,検定試験といってもパソコン初心者や年配の方でも合格できる簡単な試験なので心配はいりません。庚町様はパソコン経験者なのですぐに合格できますよ。」,「クレジットにすると支払総額は56万1204円になり,月々の返済は9300円です。合格したらすぐに仕事がもらえるので,収入から余裕を持って返済できます。」,「検定試験はインターネット上で行われるので,当社指定のプロバイダーに入会していただきます。」などと申し向けてチャレンジシリーズの購入及びGNETへの加入を勧誘した。
イ 原告庚町は,前記未本の勧誘を受け,平成13年2月27日ころ,チャレンジシリーズを41万2650円(消費税込み)で被告Dから購入し,株式会社クオークとの間で支払総額56万1204円(初回1万2504円,2回目以降9300円の合計60回払)の割賦払契約を締結するとともに,被告Aとの間でGNETへの加入契約を締結した。
ウ(ア) 原告庚町は,平成13年6月から平成14年12月までの間に,チャレンジシリーズの割賦払金として合計17万9904円を株式会社クオークに支払った。
(イ) 原告庚町は,平成13年5月ころから平成15年4月ころまでの間に,GNETの月会費として,少なくとも4万1500円を被告Aに支払った。
エ 原告庚町は,チャレンジシリーズを使って学習し,G認定試験のタイピング試験及び知識試験に合格したが,2度ほど受験した実技試験に合格できなかったため,結局,被告Aから在宅ワークの斡旋ないし委託を受けられなかった。
(8)  原告辛本について
ア 被告Cの従業員である甲村は,平成13年5月11日ころ,原告辛本に電話をかけ,同原告に対し,「パソコンでデータ入力の在宅ワークをしませんか。原稿をそのまま打ち込むだけの誰でもできる簡単な仕事です。月に最低5万円は得られます。頑張れば月に20万円の収入も可能です。」などと言葉をかけた上,在宅ワークをするには,GNETに加入する必要があること,チャレンジシリーズを購入して学習後,G認定試験に合格する必要があることを説明し,「試験は簡単で落とすための試験ではありません。」,「パソコンも当社で購入することができます。教材とパソコン合わせて62万0550円になりますが,60回払のクレジットを組めば毎月1万4000円で済みます。仕事がもらえれば毎月最低でも5万円の収入がありますから,その中から1万4000円を支払うだけです。」,「リストラで外部発注が増えており,仕事は山ほどあり,人手不足の状態なのです。」などと申し向けてトラベルメイト及びチャレンジシリーズの購入並びにGNETへの加入を勧誘した
イ 原告辛本は,前記甲村の勧誘を受け,平成13年5月11日ころ,トラベルメイト及びチャレンジシリーズを合計62万0550円(消費税込み)で被告Cから購入し,ファインクレジットとの間で支払総額84万3948円(初回1万7948円,2回目以降1万4000円の合計60回払)の割賦払契約を締結するとともに,被告Aとの間でGNETへの加入契約を締結した。
ウ(ア) 原告辛本は,平成13年8月から平成15年1月までの間に,トラベルメイト及びチャレンジシリーズの割賦払金として合計25万5948円をファインクレジットに支払った。
(イ) 原告辛本は,平成13年7月ころから平成15年3月ころまでの間に,GNETの月会費として,少なくとも3万4600円を被告Aに支払った。
エ 原告辛本は,トラベルメイト及びチャレンジシリーズを使って学習し,G認定試験のタイピング試験及び知識試験に合格したが,3回ほど受験した実技試験に合格できなかった。
オ 原告辛本は,平成14年3月ころ,被告Cの担当者から被告Aが運営するパソコンスクールGの無料通信講座を修了すれば仕事を斡旋することができるなどと言われ,同講座を受講し,同年12月ころ修了した。
カ(ア) 原告辛本は,平成15年1月14日ころ,被告Aが第三者から請け負ったデータ入力等の業務について同被告から委託を受けるという内容の業務委託契約を同被告との間で締結した。
(イ) 原告辛本は,平成15年1月下旬ころ,約500件のエクセルのデータ入力等について1件10円で被告Aから委託を受け,これを納品し,同年5月9日,業務委託料として,4237円の支払を受けた。
(9)  原告壬島について
ア 被告Bの従業員である乙島は,平成13年11月22日ころ,原告壬島に電話をかけ,同原告に対し,「在宅ワークを始めませんか。」,「仕事をするにはチャレンジシリーズという教材を購入して,教材で勉強した後,当社指定の検定試験に合格すると仕事がもらえます。購入していただく教材は通信講座になっていますので,その講座を修了すれば試験に合格した人と同じように仕事を紹介します。パソコンを使って家計簿をつけているならばすぐに試験に合格できますよ。次の試験は3か月後にあり,仮に60回払のローンを組んだ場合,1か月の負担は1万5000円になりますので,3か月分の4万5000円さえ支払うことができれば,あとの支払は毎月の報酬から余裕を持って賄えます。毎月5万円は簡単に稼げますので,1万5000円の支払なら家計に負担はかけません。」,「試験を受けるためにはGNETというプロバイダーに入会しなくてはなりません。」などと申し向けてチャレンジシリーズの購入及びGNETへの加入を勧誘した。
イ(ア) 原告壬島は,前記乙島の勧誘を受け,平成13年11月23日ころ,チャレンジシリーズを52万2900円(消費税込み)で被告Bから購入し,サンクス株式会社との間で支払総額89万6722円(月々1万5000円,最終回1万1722円の合計60回払)の割賦払契約を締結した。
(イ) 原告壬島は,本件商品の購入に当たり,チャレンジシリーズを使って学習したことによって得られる在宅ワークの内容,条件等について記載された書面の交付を受けていない。
(ウ) 原告壬島は,平成14年2月ころ,被告Aとの間でGNETへの加入契約を締結した。
ウ(ア) 原告壬島は,平成13年12月から平成15年2月までの間に,チャレンジシリーズの割賦払金として合計22万5000円をサンクス株式会社に支払った。
(イ) 原告壬島は,平成14年4月ころから平成15年2月ころまでの間に,GNETの月会費として,少なくとも2万7000円を被告Aに支払った。
エ 原告壬島は,チャレンジシリーズを使って学習し,G認定試験のタイピング試験及び知識試験に合格したが,3回ほど受験した実技試験に合格できなかった。
オ 原告壬島は,平成13年11月下旬ころから,チャレンジスキルトレーニング12か月コースという通信講座を受講し,平成15年2月17日ころ,同講座を修了した。
カ 原告壬島は,平成15年2月下旬ころ,被告Aから送付された業務誓約書(甲リの7)及び業務委託契約書(甲リの8)を受け取ったが,一方的に不利な内容と考え,これに署名することはせず,結局,被告Aから在宅ワークの斡旋ないし委託を受けられなかった。
(10)  原告らと別表の「勧誘業者=(契約業者)」欄記載の各被告との間の本件商品の各売買契約及び原告らと別表の「信販又はローン会社」欄記載の各信販会社等との間の割賦払契約では,本件商品の所有権につき,上記各信販会社等が上記各被告に立替払した時点で上記各信販会社等に移転し,原告らが割賦払金を完済するまでは,上記各信販会社等が所有権を留保する旨合意がされていたため,本件商品の割賦払金を完済した原告丙山及び同戊谷は,本件商品の所有権を取得しているが,その余の原告らは,割賦払金を完済していないため,未だ本件商品の所有権を取得していない。
(11)ア  被告AのSOHO事務局が開設するホームページには,「当SOHO事務局では,仕事を外注で頼みたい企業(個人)と在宅で資格や技能を使い仕事をしたいSOHO会員との間に立ち,双方にメリットが生まれる,円滑なお取引のお手伝いさせて頂いております。」(甲2の6頁)などと掲載されていた。
また,被告Aが作成したANETのパンフレット(甲2)には,ISS検定試験について,「受験資格:ANET会員で,Challenge SOHO模擬試験合格者」(5頁)との記載及び「ISS検定受験資格は,ANET加入者のみとなっております。ISS検定受験ご希望の方は,ANETへのお申し込みをお願いします。」(7頁)との記載があった。
イ 被告Cは,雑誌「○○」平成13年6月号(甲チの9)にビジネスパートナーに関する広告を掲載し,「パソコンの技術は身についても,実際在宅での仕事を自分でみつけてくるのは大変ですよね。そんな時心強いのがアウトソーシング事業部。私達に代わって日夜業務獲得の為に活動されているそうです。だから修了生の方々も着実に在宅ワークをこなされているんだそうです。」などの宣伝文句を掲載した。
(12)ア  被告Aは,ISS検定試験又はG認定試験に合格した者のうち,在宅ワークの斡旋又は委託を受けることを希望する者をSOHO会員として登録し,その登録者に対して,データ入力等の業務を委託し,委託料を支払っていた。
イ 原告らが本件商品の購入を勧誘された当時,個人として被告Aからデータ入力等の業務委託を受けた者が受け取っていた委託料は,一人当たり月額およそ1万5000円程度から3万円程度が多かったが,中には,6万円や7万円を超える委託料を受け取っていた者もいたことがうかがわれる(乙7の3の305頁,307頁等)。
(13)  被告A,同B,同C及び同Dのパソコン教材の販売等に関して,その購入者等から,消費者生活センターに対し,苦情や相談が数多く寄せられており,その中には,勧誘の際に説明された在宅ワークによる収入が現実に得られないことや,ISS検定試験又はG認定試験が難しいといった内容のものもあった。
2  争点1(被告らが原告らを勧誘して本件商品を購入させ,ANET又はGNETへの加入契約を締結させたことがいわゆる内職詐欺商法,旧訪問販売法違反,特定商取引法違反の不法行為に当たるか否か)について
(1)  内職詐欺商法について
原告らは,被告Aの代表者である被告癸村一郎は被告B,同C及び同Dの各代表者と共謀して,被告Aが開発したパソコン教材を売りつけて高額な金員を騙し取ろうと企て,実際は在宅ワークを斡旋する意思も委託できる業務も有していないにもかかわらず,原告らに対し,在宅ワークを斡旋するかのような言辞を用い,教材を購入して勉強さえすれば容易に副収入につながるような錯誤に陥らせ,本件商品の売買契約及びANET又はGNETへの加入契約を締結させたものであり,これは典型的な内職詐欺商法であって刑法246条所定の詐欺罪に該当する違法行為である旨主張する。
ア そこで検討するに,まず,原告らは,ANETには1か月当たり約230人程度が新規入会しているにもかかわらず,業務斡旋の実体がわずか3人から54人というほんの一握りの会員に対してしか委託料を支払っていなかったこと,及びその委託料の額が一人当たり1か月1万3173円から2万5109円程度であって,月5万円以上という原告らが勧誘時に説明された金額とかけ離れていることからすると,被告らが在宅ワークを斡旋ないし委託する意思も委託できる業務も有していなかったことは明らかである旨主張する。
(ア) しかし,ANETの会員の新規入会者数が1か月当たり約230人程度であるとしても,前記前提事実のとおり,ANETは被告Aが運営するインターネットプロバイダーであり,その会員の中には,在宅ワークを行うことを前提にパソコン教材等を購入した者以外にも,単にインターネットを利用するためにANETに加入していた者等も相当数含まれていたことは否定できず,上記ANETの新規加入者がすべて被告Aなどから在宅ワークの斡旋が受けられると勧誘されてパソコン教材等を購入し,在宅ワークを行うことを希望していた者であると認めるに足りる証拠はないから,単に被告Aから業務委託を受けた者の数がANETの新規入会者数に占める割合が小さいことをもって,被告らが在宅ワークを斡旋ないし委託する意思や委託できる業務を有していなかったとまでは認められない。
(イ) また,実際に支払われていた委託料についても,確かに,原告らが本件商品の勧誘を受けた当時,個人として被告Aからデータ入力等の業務委託を受けた者が受け取っていた委託料は,一人当たり月額1万5000円程度から3万円程度のものが多かったことは前記認定のとおりであるが,中には,一人で月に6万円や7万円を超える委託料を受け取っていた者がいたことがうかがわれることも前記認定のとおりであるから,月5万円以上という勧誘時の説明はいささか誇張されている面があることは否定し難いものの,被告Aが月5万円程度の委託料を支払う意思が全くなかった又は委託できる業務をおよそ有していなかったとまで断定することはできない。
(ウ) したがって,被告Aから実際に業務委託を受けていた者の人数及び支払を受けていた委託料の額を理由として,被告らが在宅ワークを斡旋ないし委託する意思も委託できる業務も有していなかった旨の原告らの主張は理由がない。
イ 次に,原告らは,原告丙山がISS検定試験に合格して業務委託を受けて委託料を得ていること及び同辛本が委託料を得ていることについて,ISS検定試験及びG認定試験は,勧誘の際に仕事の斡旋を受けることができると誤信させるため又は仕事の斡旋を受けることをあきらめさせるための小道具であり,委託料の支払も,内職詐欺商法の実体をごまかすためのものであった旨主張する。
しかし,ISS検定試験及びG認定試験がワードやエクセル等に関する知識,能力等を判断する試験としておよそ不合理であって不当なものであると認めるに足りる証拠はなく,これらが勧誘の際に仕事の斡旋を受けることができると誤信させるため又は仕事の斡旋を受けることをあきらめさせるための小道具であるとは認められない。
また,被告Aは単に原告丙山,同辛本に委託料を支払っているばかりでなく,前記認定のとおり,他の相当数のSOHO会員に対しても実際に仕事を委託して一定の委託料を支払っており,しかも,その中には個人として月額7万円を超える委託料を受け取っていた者もいたことがうかがわれることからすると,被告Aが原告丙山及び同辛本に委託料を支払っていたことが内職詐欺商法をごまかすためのものであったとは認められない。
したがって,原告らの上記主張は理由がない。
ウ また,原告らは,原告丙山に対して仕事のミスを指摘して委託料を減額したことについて,委託したデータと同じデータを被告Aの社内でも作成してミスを発見するという被告らが主張するようなシステムがあったとすれば,そのようなシステム自体が無意味なものであり,内職詐欺商法を裏付けるものである旨主張するが,仮に被告Aが同システムを採用していたとしても,同システムが,被告AがSOHO会員に対して委託する仕事量の多寡等を決定する際に,受託者の業務の正確性等を判断するためのものとして,必要性の全くないものであるとまでは認められず,同システムが内職詐欺商法を裏付けるものであるとはいえないから,原告らの上記主張は理由がない。
エ さらに,原告らは,消費者生活センターに被告らに関する相談が合計2916件も寄せられており,その相談事例は,仕事をするためには簡単な試験を受けなければならないと申し向けられ,結果的には試験に合格できずに仕事の斡旋が受けられず,結局高額な教材の代金のみを支払い続けさせられている事例ばかりであり,被告らが内職詐欺商法を展開していたことは明らかである旨主張する。
確かに,被告A,同B,同C及び同Dのパソコン教材の販売等に関しては,その購入者等から,消費者生活センターに対し,苦情や相談が数多く寄せられており,その中には,勧誘の際に言われた在宅ワークによる収入が現実に得られないことや,ISS検定試験やG認定試験が難しいといった内容のものがあったことは前記認定のとおりであるが,そのことは,上記被告らの勧誘担当者の勧誘に不当ないし違法なものがあったことをうかがわせる事情ではあるものの,そのことから直ちに,上記被告らが在宅ワークを斡旋ないし委託する意思がなく内職詐欺商法を展開していたとまで認めることはできない。
したがって,原告らの上記主張は理由がない。
オ また,原告らは,現在被告Aがパソコン教材の販売に関する電話勧誘業から撤退していることやANETないしGNETの会員の多くが退会していることは,被告らの内職詐欺商法を裏付けるものであると主張するが,そのような事実があったとしても,そのことをもって,原告らが本件商品の購入の勧誘を受けた当時,被告らが在宅ワークを斡旋ないし委託する意思や委託できる業務を有していなかったとまでは認められないから,原告らの主張は理由がない。
カ さらに,原告らは,被告癸村一郎が,その陳述書(乙8)において,「営業現場レベルで仕事を紹介してくれると約束したとか,してないとかといったトラブルが増え始めたことも事実です。」(2頁),「顧客からのクレームや解約の申し出が殺到しはじめました。」(3頁),「契約時に確かに弊社営業社員が行き過ぎた勧誘を行いお客様の誤解を生じさせたと確認出来るもの」(3頁)などと記述し,その本人尋問において,「営業の担当のほうからは,就職に有利だとか,あるいはある程度の仕事を斡旋するというような口頭での約束をもらったというようなことはありました。」(8頁),「仕事を紹介してくれないというクレームが発生し始めたというのは多分98年とか99年とか,そのぐらいになってからのことだと思います。」(25,26頁),営業担当社員がオーバートークしているかもしれないことについて,「それはあったと思います。」,「具体的に仕事を紹介するとかという明言は避けなさいよという指導はしてましたけど,実際問題,結果的にそういうふうなこと,トークをしてたという事実はあったからクレームになったんだと思ってます。」(26,27頁)と供述しており,内職詐欺商法を自白したものである旨主張する。
しかし,被告癸村一郎の上記陳述書の記述及び本人尋問における供述は,被告Aが開発したパソコン教材等の販売について,勧誘担当者が不当な勧誘をした事例があったことを認める趣旨のものであると解されるものの,被告癸村一郎又は同Aが在宅ワークを斡旋ないし委託する意思や委託できる業務を有していなかったことを認めたものであるとまでは解されず,上記陳述書の記述及び本人供述をもって,原告ら主張の内職詐欺商法があったと認めることはできない。
したがって,原告らの上記主張は理由がない。
キ  以上検討したところによれば,原告丙山及び同辛本が実際に被告Aから業務委託を受け,一定の委託料を得ていたのみならず,同原告らの他にも,相当数のSOHO会員が被告Aからデータ入力等の業務委託を受けて,相当の委託料を得ていたこと等に徴すると,被告らが在宅ワークを斡旋ないし委託する意思や委託できる業務を有していなかった旨の原告らの主張は理由がなく,他に被告らが在宅ワークを斡旋ないし委託する意思又は委託できる業務を有していなかったことを認めるに足りる証拠はないから,被告らが刑法246条所定の詐欺罪に該当するような内職詐欺商法を行った旨の原告らの主張は理由がない。
(2)  旧訪問販売法違反について
ア 原告甲野,同乙原,同丙山,同丁川,同戊谷,同己岡,同庚町及び同辛本に対する不実告知(同法9条の9第1項)について
(ア) 上記原告らは,被告A,同B,同C及び同Dの各担当者が,「毎月5万円から20万円の収入は確実です。」,「教材の代金は報酬の中から余裕を持って支払えます。」,「検定試験は誰でも簡単に合格できます。」などと上記原告らに対して不実を告げ,本件商品の売買契約及びANET又はGNETへの加入契約を締結させた旨主張する。
前記認定のとおり,上記原告らに対して勧誘した各担当者は,いずれも,表現に多少の相違があるにせよ,被告Aが実施する検定試験に合格すれば,データ入力業務等の在宅ワークの斡旋ないし委託を受けることができること,これにより少なくとも月額3万円ないし5万円程度の収入を確実に得ることができ,その収入により本件商品の割賦払金の返済ができること,本件商品を購入して勉強すれば上記検定試験には簡単に合格できること,同試験を受験するにはANETないしGNETに加入する必要があることを説明しており,その勧誘文言を全体として見ると,上記原告らにおいて,本件商品を購入し,ANET又はGNETへ加入すれば,容易に在宅ワークの斡旋ないし委託を受けることができ,これにより,少なくとも月額3万円ないし5万円程度の収入を得られることが確実であって,その収入により本件商品の割賦払金の返済ができるような説明をしたというべきである。
他方,実際には,前記認定のとおり,月に6,7万円を超える委託料を受け取っていた者がいたことがうかがわれるものの,多くの者は,せいぜい月額1万5000円ないし3万円程度の収入を得られるにすぎなかったのであるから,本件商品を購入し,ANET又はGNETへ加入しても,在宅ワークの斡旋ないし委託を受け,これにより月額3万円ないし5万円程度の収入を得ることは,不可能であったとまではいえないとしても,確実ではなかったといわざるを得ない。
そして,在宅ワークによって得られる収入がどの程度であるのか,その収入によって本件商品の割賦払金の返済ができるか否かは,本件商品を購入したり,ANET又はGNETへ入会したりするに当たって極めて重要な意思形成の要因であったといえる。
そうすると,前示のとおり,上記各担当者は,いずれも上記原告らに対し本件商品の購入を勧誘するに当たり,実際は必ずしもそうではないにもかかわらず,本件商品を購入し,ANET又はGNETへ加入すれば,容易に在宅ワークの斡旋ないし委託を受けることができ,これにより,少なくとも月額3万円ないし5万円程度の収入を得られることが確実であって,その収入により本件商品の割賦払金の返済ができるような説明をしたのであるから,旧訪問販売法9条の9第1項で禁止されている不実告知を行ったものというべきである。
(イ) この点につき,被告らは,上記各担当者は,上記原告らに対し本件商品の購入を勧誘するに当たり,在宅ワークを斡旋するなどといったことは説明していない旨主張する。
しかしながら,前記認定のとおり,被告Aは,そのホームページに「当SOHO事務局では,仕事を外注で頼みたい企業(個人)と在宅で資格や技能を使い仕事をしたいSOHO会員との間に立ち,双方にメリットが生まれる,円滑なお取引のお手伝いをさせて頂いております。」などと掲載し,被告Cもビジネスパートナーに関する広告に「パソコンの技術は身についても,実際在宅での仕事を自分でみつけてくるのは大変ですよね。そんな時心強いのがアウトソーシング事業部。私達に代わって日夜業務獲得の為に活動されているそうです。だから修了生の方々も着実に在宅ワークをこなされているんだそうです。」などと掲載しているのであり,被告A及び同Cは,その業務として,パソコンスクールGの修了者等に在宅ワークの斡旋ないし委託を行っているような宣伝ないし勧誘を行っていたのである。
また,ISS検定試験及びG認定試験は,被告A及び同B,同C,同Dといった被告Aとその子会社やANETないしGNETの会員のみにしか認知されておらず,同試験に合格しても,被告Aから仕事の斡旋ないし委託を受ける以外には,在宅ワークを獲得する上で,格別有利となるような資格ではないことからすると,本件商品を購入する主要な意義は,被告Aから在宅ワークの斡旋ないし委託を受けられることにあるといえるのであり,前記各担当者が勧誘に当たり,本件商品を購入することによって在宅ワークの斡旋ないし委託が受けられる旨説明することは,比較的高額である本件商品を購入する動機を形成する勧誘文言として極めて自然なものであるといえる。
さらに,被告らは,被告Cの担当者が,原告辛本に対し,試験に不合格でも通信講座を受講すれば仕事を斡旋すると説明したことを認めているだけでなく,被告癸村一郎も,その本人尋問において,各担当者が仕事を斡旋することを約束するなどのオーバートークをしたことを認める趣旨の供述(26頁及び27頁)をしているのである。
以上のような事情を考慮すると,前記各担当者は,前記各原告らへの勧誘に当たり,本件商品を購入すれば在宅ワークの斡旋ないし委託が受けられる旨説明したことは明らかであり,この認定を覆すに足りる証拠はない。
したがって,被告らの上記主張は理由がない。
(ウ) また,被告らは,パソコン教材等を購入した者に対しては,就職や内職の斡旋を確約したり,収入を確約するような商品ではないことを記載した書面を送付していた旨主張し,被告癸村一郎もその本人尋問においてこれに沿う供述をする。
確かに,ビジネスパートナーを購入した者を対象として作成された文書(乙13の1)には,「当社製品は,以下のような事を約束する商品ではございません。」,「商品を購入する事に対し,就職や内職の斡旋を確約する。商品を購入する事に対し,収入を確約する。商品を購入する事に対し,各種資格試験等の合格を確約する。」との記載があるが,同文書及び被告癸村一郎本人尋問の結果によっても,同文書が原告らに対して実際に送付されたとまでは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
したがって,被告癸村一郎の上記供述は信用し難く,被告らの上記主張は採用することができない。
(エ) さらに,被告らは,前記認定に対し,前記各担当者は,ISS検定試験又はG認定試験を受験するためにはANETないしGNETに入会する必要があるなどと説明していない旨主張する。しかし,前記認定のとおり,被告A作成のパンフレットには,「受験資格:ANET会員で,Challenge SOHO模擬試験合格者」,「ISS検定受験資格は,ANET加入者のみとなっております。ISS検定受験ご希望の方は,ANETへのお申し込みをお願いします。」といったように,ISS検定試験を受験するためには,ANET会員であることが必要である旨明記されていたことからすると,実際にANETないしGNET会員でなければISS検定試験又はG認定試験を受験することができなかったか否かはともかく,前記各担当者がISS検定試験又はG認定試験を受験するためにはANETないしGNETに入会する必要があると説明したことは明らかであり,この認定を覆すに足りる証拠はない。
したがって,被告らの上記主張は採用することができない。
(オ) また,被告らは,試験が難しいか易しいかの感覚は,受験者の興味,実力,才能,努力等が複合的に交錯して判断されるものであり,ISS検定試験及びG認定試験が難しいか否かは,にわかに論じられないなどと主張する。
しかし,前示のとおり,前記各担当者の勧誘が旧訪問販売法9条の9第1項所定の不実告知に該当するのは,実際は試験が難しいものであったにもかかわらずこれを簡単だと説明したなどというように,単に試験の難易を理由とするものではなく,前記各担当者が,本件商品を購入し,ANET又はGNETへ加入すれば,容易に在宅ワークの斡旋ないし委託を受けられ,これにより,少なくとも月額3万円ないし5万円程度の収入を得られることが確実であって,その収入により本件商品の割賦払金の返済ができるような説明をしたことを理由とするものである。
したがって,被告らの主張は,前記判断に消長を来すものではなく,失当である。
イ 原告乙原に対する重要事実の不告知(旧訪問販売法9条の10第2号)について
原告乙原は,被告Aの従業員である未本が「教材は少々高額です。」と告げたものの,パソコン,教材及びプリンターの具体的な価格について一切告げず,これらを購入させたから,未本の勧誘は,同法9条の10第2号所定の重要事実の不告知に該当すると主張し,原告乙原作成の陳述書(甲ロの7)中にはこれに沿う記述部分があるが,クレジット契約書(甲ロの1)及び売買契約書(甲ロの2)にパソコン,教材及びプリンターの売買代金が明記されていることからすると,上記陳述書の記述部分は信用し難く,他に同原告主張の事実を認めるに足りる証拠はないから,原告乙原の主張は採用することができない。
ウ 旧訪問販売法の適用除外について
被告らは,原告甲野,同乙原,同丙山,同丁川,同戊谷,同己岡,同庚町及び同辛本は,同法の適用除外について規定する同法10条1項1号所定の「営業のために若しくは営業として」本件商品を購入したのであるから,同法の適用を受けないと主張する。
しかし,前記のとおり,本件商品を購入した後,被告Aから委託を受けた在宅ワークをすることにより得られたであろう収入は,多くの場合,月額1万5000円から3万円程度であり,多くてもせいぜい6,7万円程度という極めて小規模かつ営利性の乏しいものであったことからすると,本件商品の購入が同条項所定の「営業のために若しくは営業として」行われたものであるとは認められない。
したがって,被告らの上記主張は理由がない。
エ 以上検討したところによれば,原告甲野,同乙原,同丙山,同丁川,同戊谷,同己岡,同庚町及び同辛本に対する前記各担当者の勧誘行為は,旧訪問販売法9条の9第1項所定の禁止行為である不実告知に該当するものであるというべきである。
(3)  原告壬島に対する特定商取引法違反について
ア 不実告知(同法52条1項)について
(ア) 原告壬島は,被告Bの従業員である乙島が「月5万円の収入が確実に得られます。検定試験は必ず合格します。」,「教材の代金は在宅ワークで得た収入から十分賄えます。」などと原告壬島に対し不実を告げ,本件商品の売買契約及びGNETの加入契約を締結させたことは,同法52条1項所定の禁止行為である不実告知に該当すると主張する。
前記認定のとおり,乙島は,原告壬島に対し,被告Aが実施する検定試験に合格するか,通信講座を修了すれば,在宅ワークの斡旋ないし委託を受けることができること,少なくとも月に5万円程度の収入を確実に得ることができ,その収入により本件商品の割賦払金の返済ができること,パソコン教材を購入して勉強すれば上記検定試験には簡単に合格できること,同試験を受験するにはGNETに加入する必要があることを説明しており,その勧誘文言を全体として見ると,原告壬島において,本件商品を購入し,GNETへ加入すれば,容易に在宅ワークの斡旋ないし委託を受けられ,これにより,少なくとも月額5万円程度の収入を得られることが確実であって,その収入により本件商品の割賦払金の返済ができるような説明をしたというべきである。
他方,実際には,前記認定のとおり,本件商品を購入し,GNETへ加入して,在宅ワークの斡旋ないし委託を受けたとしても,これにより月額5万円程度の収入を得ることは決して確実でなかったといわざるを得ない。
したがって,乙島は,原告壬島に対して本件商品の購入及びGNETへの加入を勧誘するに当たり,同法52条1項4号所定の「その業務提供誘引販売業に係る業務提供利益に関する事項」について,不実告知を行ったというべきである。
(イ) これに対し,被告らは,乙島は,原告壬島に本件商品の購入を勧誘するに当たり,在宅ワークを斡旋するなどといった説明はしていないから,本件商品の売買契約は特定商取引法51条1項の業務提供誘引販売取引に該当しないし,G認定試験を受験するためにGNETに入会する必要があるとも説明していない旨主張し,証人乙島も在宅ワークを斡旋するなどの説明をしていない旨証言するが,同証言及び被告らの上記主張が採用し難いものであることは,他の原告らの旧訪問販売法における不実告知の項で判示したとおりである。
イ 書面不交付(同法55条1項)について
原告壬島は,乙島が原告壬島に対し経済産業省令で定めた業務提供誘引販売業の概要について記載した書面を契約締結前に交付せずに本件商品の売買契約及びGNETへの加入契約を締結させた旨主張する。
前記認定のとおり,原告壬島は,本件商品の購入に当たり,チャレンジシリーズを使って学習したことによって得られる在宅ワークの内容,条件等について記載された書面の交付を受けていないのであるから,乙島は,同法55条1項及び経済産業省令43条1項4号所定の「商品(中略)を利用する業務の提供又はあつせんについての条件に関する重要な事項」を記載した業務提供誘引販売業の概要書面を交付しなかったというべきである。
ウ 指示対象行為違反(同法56条2号)について
原告壬島は,乙島が「月5万円の収入が確実に得られます。」などとあたかも月に一定の収入が得られることが確実であるとの断定的判断を提供して,本件商品の売買契約を締結させた旨主張する。
前記のとおり,乙島は原告壬島に対し,本件商品を購入し,GNETへ加入すれば,容易に在宅ワークの斡旋ないし委託を受けられ,これにより,少なくとも月額5万円程度の収入を得られることが確実であることを告げているのであるから,同法56条2号所定の「利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供し」たということができる。
(4) 結論
ア  以上検討したところによれば,原告壬島を除く原告らに対して各担当者が本件商品の購入を勧誘した行為は,旧訪問販売法9条の9第1項所定の禁止行為に該当するものであるから,不法行為に該当するというべきである。そして,前記各担当者は,不法行為に該当する本件商品の勧誘の際に,在宅ワークの斡旋ないし委託を受けるためにはANET又はGNETへ加入する必要がある旨説明したのであるから,ANET又はGNETへの加入に関する勧誘は,これが同法で規制の対象となっている指定商品又は指定役務に該当しないとしても,本件商品の勧誘と同様に不法行為に該当するというべきである。
また,乙島が原告壬島に対して本件商品の購入及びGNETへの加入を勧誘した行為は,特定商取引法52条1項4号所定の禁止行為である不実告知に該当するとともに,同法55条1項で交付が要求されている概要書面を交付せず,同法56条2号所定の断定的判断を提供したものであるから,不法行為に該当するというべきである。
そして,上記勧誘は,いずれも別表の「勧誘業者(=契約業者)」欄記載の各被告の従業員によって,その事業の執行について行われたものであるから,被告Aは原告甲野,同乙原及び同丙山に対して,被告Bは原告壬島に対して,被告Cは原告戊谷,同己岡及び同辛本に対して,被告Dは原告丁川及び同庚町に対して,前記各担当者の不法行為について,それぞれ使用者責任を負う。
イ 原告らは,被告癸村一郎,同子野,同丑原,同寅山,同卯川,同辰谷及び同巳岡七郎は同A,同B,同C又は同Dの役員として,内職詐欺商法を企画,推進し,各担当者に指揮,命令していたと主張するが,前記認定のとおり,本件商品の販売等が原告ら主張の内職詐欺商法に当たるとは認められないし,また,被告癸村一郎,同子野,同丑原,同寅山,同卯川,同辰谷及び同巳岡七郎が前記各担当者に対して不法行為に該当するような勧誘を行うよう指揮,命令していたことを認めるに足りる証拠はないから,原告らの上記主張は採用することができない。
よって,被告癸村一郎,同子野,同丑原,同寅山,同卯川,同辰谷及び同巳岡七郎について不法行為は成立しない。
ウ そして,同被告らに不法行為が成立しない以上,同被告らが法人の代表者又は被用者であることを理由として,被告A,同B,同C及び同Dが法人の不法行為責任(民法44条1項)又は使用者責任を負うこともない。
3  争点2(原告らが被った損害の額)について
(1)  財産的損害について
原告らは,前記各担当者の不法行為によって,別表の「既払金〈a〉」欄記載の各金員及び別表の「既払金〈b〉」欄記載の各金員の出捐を余儀なくされたのであるから,別表の「実損害合計〈A=a+b〉」欄記載の各金員は,いずれも前記各担当者の不法行為による損害と認められる。
(2)  慰謝料について
原告らは,前記各担当者の不法行為によって精神的苦痛を被ったと推測されるけれども,前記財産的損害の補填を受けることによってもなお補填することができない程の精神的損害を被ったと認めるに足りる証拠はないから,原告らの慰謝料請求は理由がない。
(3)  損益相殺について
ア 被告らは,原告らが本件商品を購入してこれらを実際に使用し,パソコンのスキルを上達させるなどの利得を得ているのであり,パソコン教材及びパソコンを購入した原告甲野,同乙原,同丙山及び同辛本は,少なくとも30万円の利得を得ており,パソコン教材のみを購入した原告丁川,同戊谷,同己岡,同庚町及び同壬島は,少なくとも10万円の利得を得ているから,これらの利得は,原告らの前記損害額から控除されるべきである旨主張する。
原告丙山は,前記認定のとおり,申島の不法行為によって締結された売買契約により,オズノートというパソコン及びチャレンジシリーズという教材を取得しており,前記認定事実1(3)ウ,証拠(甲イの8,甲チの10,原告丙山本人)及び弁論の全趣旨によると,原告丙山が得た利益は少なくとも15万円を下らないと認められるから,原告丙山の前記損害額から15万円を控除すべきである。
また,原告戊谷は,前記認定のとおり,戌野の不法行為によって締結された売買契約により,チャレンジシリーズを取得しており,証拠(甲イの8,甲チの10)及び弁論の全趣旨によると,原告戊谷が得た利益は少なくとも5万円を下らないと認められるから,原告戊谷の前記損害額から5万円を控除すべきである。
他方,原告甲野,同乙原,同丁川,同己岡,同庚町,同辛本及び同壬島については,同丙山及び同戊谷と異なり,前記認定のとおり,本件商品の割賦払金を完済しておらず,所有権留保特約により,本件商品の所有権は未だ信販会社等に留保されていることからすれば,前記各担当者の不法行為によって締結された売買契約により,損益相殺として控除すべき利益を取得したとまでは認められない。
イ また,被告らは,原告丙山及び同辛本は,被告Aからそれぞれ6万3425円,4237円の委託料の支払を受けており,その利益は,前記原告両名の損害賠償額から控除されるべきである旨主張する。
しかし,上記原告両名が被告Aから支払を受けた委託料は,いずれも前記原告両名が委託業務を行ったことに対する対価であって,申島及び甲村の不法行為によって締結された売買契約等により得た利益ではないから,損益相殺の対象とはならないというべきである。
したがって,被告らの上記主張は理由がない。
(4)  弁護士費用について
本件事案の内容,審理の経過,認容額等を考慮すれば,前記各担当者の不法行為と相当因果関係の範囲内にある弁護士費用相当の損害は,それぞれ,原告甲野につき6万円,同乙原につき5万円,同丙山につき6万円,同丁川につき2万円,同戊谷につき4万円,同己岡につき2万円,同庚町につき2万円,同辛本につき3万円及び同壬島につき2万円と認めるのが相当である。
第4  結論
よって,原告らの本訴請求中主位的請求は,不法行為(使用者責任)による損害賠償として,原告甲野が被告Aに対し金67万6864円,原告乙原が同被告に対し金54万1856円,原告丙山が同被告に対し金70万1548円,原告丁川が被告Dに対し金25万9834円,原告戊谷が被告Cに対し金40万9399円,原告己岡が同被告に対し金26万1160円,原告庚町が被告Dに対し金24万1404円,原告辛本が被告Cに対し金32万0548円,原告壬島が被告Bに対し金27万2000円及び各金員に対する各不法行為の後である別表の「不法行為及び不当利得の遅延損害金の始期」欄記載の各日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は失当であるから棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,61条,65条1項本文を,仮執行宣言につき同法259条1項を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山﨑勉 裁判官 田村政巳 裁判官 中西正治)

別紙
〈省略〉
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