平26(ワ)26873号 リース料請求事件

裁判年月日  平成27年10月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)26873号
事件名  リース料請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2015WLJPCA10278002

要旨
◆割賦販売、リース事業、消費者信用事業、カードビジネス等を主として行う原告会社が、被告に対し、電話機等に係る本件各リース契約に基づき、リース料残代金等の支払を求めた事案において、本件各リース契約は被告方で契約の申込み及び締結がされたものであるから訪問販売に該当する一方、同各契約が「営業のために若しくは営業として」締結されたとはいえないから特定商取引に関する法律の適用除外には該当しないところ、被告は適式にクーリング・オフの権利を行使しているから、本件各リース契約は有効に解除されたとして、原告会社の請求を棄却した事例

新判例体系
公法編 > 産業経済法 > 特定商取引に関する法… > 第二章 訪問販売、通… > 第五節 雑則 > 第二六条 > ○適用除外 > (一)判断基準
◆家族と同居する住宅兼店舗で喫茶店を営む個人が締結した電話機、ファクシミリのリース契約は、特定商取引に関する法律第二六条第一項第一号の「営業のために若しくは営業として」締結したものに該当しないから、クーリング・オフの権利を行使することができる。

参照条文
特定商取引に関する法律2条1項1号
特定商取引に関する法律9条1項
特定商取引に関する法律26条1項1号

裁判年月日  平成27年10月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)26873号
事件名  リース料請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2015WLJPCA10278002

東京都豊島区〈以下省略〉
原告 株式会社クレディセゾン
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 長島良成
同 米林清
同 淺沼貞光
同 井倉浩文
千葉県旭市〈以下省略〉
被告 a店こと Y
同訴訟代理人弁護士 澤田仁史

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告は,原告に対し,42万1260円及び内金40万1200円に対する平成25年3月5日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(1年を365日とする日割計算)による金員を支払え。
2  被告は,原告に対し,46万4100円及び内金44万2000円に対する平成24年7月5日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(1年を365日とする日割計算)による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,別紙契約目録記載のリース契約(以下それぞれ「本件第1契約」,「本件第2契約」といい,両契約を「本件各リース契約」という。)に基づいて,リース料残金及び期限の利益を喪失した日の後である最終支払日の翌日から支払済みまで約定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原告は,(1)被告は,本件第1契約について,17回目の支払期日である平成24年5月7日にリース料を支払わなかったことから,別紙契約目録記載1の約定に従って,同日の経過により残リース料全額の支払につき期限の利益を喪失した。その後,被告は,原告に対し,支払期日に遅れながらもリース料の支払を続けていたが,平成25年3月4日に25回目のリース料を支払った後は,一切リース料を支払わなかった。被告による上記リース料の支払は支払期日を徒過しているものであるが,原告は,一部請求として,最終支払日(平成25年3月4日)の翌日から遅延損害金を付して残リース料全額である42万1260円(その内訳は元金40万1200円及び消費税2万0060円)の請求を行う旨主張するとともに,(2)被告は,本件第2契約について,4回目の支払期日である平成24年4月4日にリース料を支払わなかったことから,別紙契約目録記載2の約定に従って,同日の経過により残リース料全額の支払につき期限の利益を喪失した。その後,平成24年7月4日に,被告は原告に対し,4回目のリース料を支払った後は,一切リース料を支払わなかった。被告による上記リース料の支払は支払期日を徒過しているものであるが,原告は,一部請求として,最終支払日(平成24年7月4日)の翌日から遅延損害金を付して残リース料全額である46万4100円(その内訳は元金44万2000円及び消費税2万2100円)の請求を行うと主張している。
被告は,特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)9条1項本文による本件各リース契約の解除を主張している。
1  前提事実(争いがない事実以外は,各項掲記の証拠等により認める。)
(1)  原告は,割賦販売,リース事業,消費者信用事業,カードビジネス等を主として行う株式会社である。
被告は,原告との間で別紙契約目録記載の本件各リース契約を締結し,主装置等を借り受けた者である。
(2)  被告は,原告に対し,平成25年3月4日に本件第1契約の25回目のリース料を支払った後は,一切リース料を支払わなかった。被告は,原告に対し,平成24年7月4日に,本件第2契約の4回目のリース料を支払った後は,一切リース料を支払わなかった。
(3)  被告は,原告に対し,平成26年3月26日,本件各リース契約をクーリング・オフにより解除する旨の意思表示をなし,同意思表示は同月28日,原告に到達した。
2  争点及びこれに対する当事者の主張
(1)  本件各リース契約は,訪問販売(特商法2条1項1号)に当たるか。
(被告の主張)
リース会社が,提携関係にあるサプライヤー(販売店)に,リース契約締結の勧誘,交渉,申込手続を代行させることを特徴とするファイナンスリース取引を「提携(型)リース取引」又は「リース提携販売」という。
このリース提携販売のように,一定の仕組みの上での複数の者による勧誘,販売等であるが,総合してみれば一つの訪問販売を形成していると認められるような場合には,いずれも特商法の訪問販売における「販売業者等」に該当すると解されている(経済産業省通達参照・乙3,4)。
(原告の主張)
特商法2条は,訪問販売の定義について,販売業者が営業所等以外の場所において契約の申込みを受け,もしくは契約を締結するものであると規定し,販売業者と実際に営業所等以外の場所で契約の申込みを受け,もしくは契約を締結する者とが同一の主体であることを明確に要件としている。
しかるに,本件各リース契約では,被告から契約の申込みを受けたのは本件各リース契約の当事者である原告であって,実際に被告を訪問した販売店の担当者ではない。すなわち,本件各リース契約は,原告が営業所において本件各リース契約書を受領した時点で,申込みを受けたといえるのであり,被告から本件各リース契約の当事者ではない販売店の担当者が本件各リース契約書を受領した時点では,被告の申込みの意思表示が原告に到達したとはいえないのである。
したがって,原告が販売業者に該当するとしても,営業所等以外の場所において契約の申込みを受けたとはいえないのであるから,本件各リース契約は特商法2条1項1号が規定する訪問販売に該当しない。
(2)  本件各リース契約は,被告が「営業のために若しくは営業として」(特商法26条1項1号)締結したものといえるか。
(原告の主張)
本件各リース契約は,営業のために若しくは営業として(特商法26条1項1号)締結したものといえることは明らかであるから,同法9条は適用されない。
すなわち,特商法26条1項1号の趣旨は,同法が消費者保護を目的とするものであり,事業者が営業活動に関連して行う取引については私的自治又は商慣習に委ねるべく同法の適用を除外する点にあることから,当該規定の趣旨に照らせば,営業のために若しくは営業として締結する契約とは,事業者が営業活動に関連して行う契約をいうものと解され,主として個人的家庭用に使用するためのものでない限り,特商法は適用されないとするのが法の趣旨である。被告が本件各リース契約を営業に関連して締結していることは明らかである。
(被告の主張)
本件各リース契約は,営業のため若しくは営業として締結されたものではなく,適用除外事由はない。
第3  争点に対する判断
1  証拠(乙27及び下記認定事実末尾のもの。被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  被告は,かつてはa1店の名称で,現在はa店の名称で,店舗兼住宅(以下「本件建物」という。)において喫茶店を経営している。
本件建物の構造は,1階部分が店舗と住居,2階部分が住居であり(乙8),住居部分には,被告の妻の母,被告の長男,長女の3名が暮らし,平成24年に被告の妻の父が他界するまでは同人も居住していた。被告は肩書き記載の住所地に妻と二人で暮らしている。
(2)  平成22年11月ころ,テレワード株式会社(以下「テレワード」という。)の従業員が本件建物を訪れた。被告の妻が配線を見せたところ,テレワードの従業員は,「回線を光フレッツにしませんか。工事代はサービスします。今の電話代より料金が月1000円ほど安くなります。そのためには,電話機を交換する必要があります。」と言って新たな電話機の導入を勧めてきた。被告の妻は,テレワードの従業員の指示により,リース契約書のお申込者欄に,a1店と記入し(甲1の1,2),別紙契約目録記載1の電話機等のリース物件について本件第1契約を締結した。
(3)  平成23年11月ころ,有限会社京葉通信(以下「京葉通信」という。)の従業員が本件建物を訪れた。同従業員は,「電話機の調子はどうですか。テレワードは倒産してしまったので,当社がお客様のメンテナンスを引き継ぎました。」と述べた。当時店舗部分には,ファクシミリが設置してあり,被告の妻が,電話が鳴ったらファクシミリの呼び鈴もすぐに鳴るように設定できないのかと質問したところ,京葉通信の従業員は,薪たなファクシミリの導入を勧めたため,被告は本件第2契約を締結した。契約締結にあたり,リース契約書のお申込者欄の記載は,京葉通信の従業員の指示に従い,a店と記入し(甲4の1,2),別紙契約目録記載2のファクシミリ等のリース物件について本件第2契約を締結した。
(4)  被告の喫茶店は,以前被告の妻の父が経営していたものを被告が引き継いでおり,創業50年になる。本件建物は総武本線b駅から徒歩2分ほどの住宅地にあり,喫茶店の利用者はほとんどが近隣住民であり,座席数は最大30人程度である。来店者数は,平日が約30名程度であり,土曜日は少なく,日曜日は定休日である。喫茶店では被告とその妻が稼働している。
被告の平成25年分の確定申告書(乙17)によれば,収入金額等は約730万円であり,リース料を経費計上しているが,仕入れ金額等売上原価を控除し,経費を控除した専従者控除前の所得金額は32万円であり,専従者控除後の所得金額はマイナスである(乙17,3枚目)。
(5)  被告は本件第1契約の目的物である電話機の親機を,2階住居部分に設置し,1階住居部分及び1階店舗部分には子機各1台を設置している(乙9)。飲食店検索サイトや旭飲食店マップには電話番号が記載されているが(甲14ないし16),被告は電話帳には電話番号を掲載しておらず(乙10),喫茶店の利用者が近隣住民であることもあり,電話での問い合わせがくることはほとんどなく,喫茶店の業務に関連して電話がかかってくることはほとんどない。
喫茶店に業務に関連して電話がかかってくる場合として,飲食物の出前の依頼があるが,依頼者は地元の住民か地元の事業者のため,事前に教えてある被告の携帯電話に直接電話をかけてくるのが通常であり,電話の使用割合は,家族のための私用が大半である(乙21ないし23)。
(6)  被告は本件第2契約の目的物であるファクシミリを,1階店舗部分に設置している(乙9)。被告は従前平成15年ころに量販店で購入した家庭用ファクシミリを,子どものクラブ活動の連絡手段や勉強のためのコピー機として利用していた。本件第2契約によるファクシミリ導入後も使用方法に変化はなく,ファクシミリを被告の業務のために使用することはなかった。同ファクシミリは導入後3か月で調子が悪くなり,使用をやめ,現在は従前利用していたファクシミリを接続している。
2  以上に基づき判断する。まず本件各リース契約が特商法2条1項1号所定の訪問販売に該当するかについて検討する。
甲1の1,2,甲4の1,2によれば,営業担当者が被告に示した本件各リース契約関係の書類は,表題がリース契約書(②クレディセゾン用)と不動文字で印刷され,クレディセゾン取扱営業所の欄には原告の社名及び住所が表記され,個別の契約内容に応じて申込者,リース契約の内容等を記載するだけの定型書式であり,これに被告が記入をして営業担当者に託したものであり,上記の一連の流れに照らせば,被告方で本件契約の申込み及び締結がなされたものと認められ,本件契約は,原告の営業所等以外の場所で申込み及び締結があったということができる。
3  本件各リース契約は,被告が「営業のために若しくは営業として」(特商法26条1項1号)締結したものといえるかについて検討する。
特商法26条1項1号は,売買又は役務提供契約で,その申込みをした者が「営業のため若しくは営業として」締結するもの又は購入者又は役務の提供を受ける者が「営業のために若しくは営業として」締結するものに係る販売又は役務の提供については,いわゆるクーリング・オフ等に関する規定を適用しないと定めるところ,その規定の文言等からも明らかなとおり,その趣旨は,特商法が消費者保護を目的とするものであることから,契約の目的,内容が営業のためのものである場合には適用除外とし,事業者が営業活動に関連して行う取引については,私的自治又は業界の商慣習に委ねるのを相当とするというものであって,仮に申込みをした者,購入者又は役務の提供を受ける者が事業者であっても,これらの者にとって「営業のために若しくは営業として」締結するものでない販売又は役務の提供については,これを特商法の適用対象外とするものではないと解するのが相当である。
そうすると,「営業のために若しくは営業として」する取引か否かは,契約書の契約名義などといった形式的なものだけでなく,当該取引の実態から判断すべきであり,仮に申込みをした者,購入者又は役務の提供を受ける者が事業者であっても,これらの者にとって,「営業のために若しくは営業として」締結するものではない取引までも特商法が適用されないと解するのは相当ではないというべきである。
これを本件についてみると,上記認定事実によれば,被告は,本件建物を訪れた販売員から,従前使用していた回線を変更した結果として電話機の交換が必然的であると勧められ,また従前使用していたファクシミリの機能について相談したことがきっかけで各リース物件を導入することとなったものであり,経緯において営業との関連は乏しい。
また前記認定事実によれば,被告は喫茶店を経営しているが,被告と妻のみが従事し,1日の来客は30人程度で,店舗を利用しているのは地元の固定客であって,電話番号は電話帳に記載していない。
被告が小規模な営業をしていることは事実としても,営業の手段として当該電話機及びファクシミリの有益性は希薄であり,したがって電話の利用は個人的使用が中心であって,ファクシミリも子どものクラブ活動等の連絡に利用しており,業務のために全く利用していない。
上記のような本件各リース契約締結の経緯,被告の営業の規模,内容,リース物件の営業使用の必要性や頻度を考慮すると,本件各リース契約の契約書及び借受確認証に屋号を記載していること(甲1の1,甲2,甲4の1,甲5),本件各リース契約のリース料が被告の営業経費に通信費として計上されていること(乙17ないし20,被告本人尋問),インターネット上の飲食店検索サイトの店舗基本情報(甲14,15)や,地元の飲食店マップ(甲16)に本件建物の電話番号が掲載されていることを考慮しても,本件各リース契約は「営業のために若しくは営業として」締結したものとは認められないから,特商法の適用除外には該当しない。
そして,特商法9条1項によれば,訪問販売における契約の申込みの撤回又は解除は,5条書面を受領した日から起算して8日を経過するまでは行うことができると定めているところ,本件においては,原告から被告に対して,5条書面の交付がない。前記前提事実のとおり,被告は,原告に対し,平成26年3月28日に到達した内容証明郵便(乙1)で,本件各リース契約についてクーリング・オフの権利を行使しているから,これにより本件各リース契約は,有効に解除されたものというべきである。
第4  結論
以上によれば,原告の請求は理由がない。よって主文のとおり判決する。
(裁判官 三上乃理子)

 

〈以下省略〉

 

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