平26(ワ)12783号 リース料請求事件

裁判年月日  平成27年 8月18日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)12783号
事件名  リース料請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2015WLJPCA08188007

要旨
◆被告との間でファイナンス・リース契約を締結した原告が、被告に対し、本件リース契約に基づくリース残代金の支払を求めた事案において、本件リース契約は被告が運営する本件製作所の営業のために締結したもので家庭用のために締結したものではないから、特定商取引法26条1項1号の適用除外によりクーリングオフによる解除はできないとしたほか、本件リース契約にリース物件販売店として関与した補助参加人の担当者による詐欺的勧誘行為による取消し及び被告の錯誤による無効、補助参加人による被告への詐欺的勧誘行為を放置したことによる原告の安全配慮義務違反、暴利行為による公序良俗違反をいう被告の各主張も認められないとして、請求を全部認容した事例

参照条文
民法1条2項
民法90条
民法95条
民法96条1項
民法414条1項
特定商取引に関する法律2条1項1号
特定商取引に関する法律4条4号
特定商取引に関する法律9条1項
特定商取引に関する法律26条1項1号

裁判年月日  平成27年 8月18日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)12783号
事件名  リース料請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2015WLJPCA08188007

東京都港区〈以下省略〉
原告 日立キャピタルNBL株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 中村雅男
同 今田富久香
横浜市〈以下省略〉
被告 Y
同訴訟代理人弁護士 檜垣智子
東京都豊島区〈以下省略〉
原告補助参加人 西武通信株式会社
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 井上清成
同 小林英憲
同 加藤和子
同 藤井輝

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,140万4480円及びこれに対する平成22年1月28日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による金員を支払え。
2  訴訟費用は,被告の負担とする。
3  この判決は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
主文と同旨。
第2  事案の概要
本件は,被告との間でファイナンス・リース契約を締結した原告が,被告に対し,上記ファイナンス・リース契約に基づき,リース残代金140万4480円及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日である平成22年1月28日から支払済みまで約定の年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による遅延損害金の支払を求めた事案である。
なお,上記ファイナンス・リース契約について,リース物件の販売店として関与した補助参加人が原告を補助するために補助参加をした。
1  前提事実(当事者間に争いがない事実及び証拠により容易に認定できる事実。)
(1)  当事者等
ア 原告は,ファイナンス・リース等を業とする株式会社である。
イ 補助参加人は,事務用機器等のリース業務等を業とする株式会社である。
(2)  ファイナンス・リース契約の締結
原告と被告は,平成17年8月4日,原告を賃貸人,被告を賃借人として,下記のファイナンス・リース契約を締結した(以下「本件リース契約」という。)。原告は,被告に対し,同日までに下記リース物件を引き渡した。

リース物件 サクサ製主装置XT300 1台
サクサ製電話機TD510 1台
サクサ製コードレス電話機WS510 1台
(以下「本件リース物件」という。)
リース期間 平成17年8月4日から7年間
リース料総額 368万6760円(消費税等含む)
月額リース料 4万3890円(消費税等含む)
支払方法 平成17年9月から平成24年8月まで毎月27日限り,月額リース料を支払う。
期限の利益喪失 被告は,リース料の支払を1回でも遅滞したときは,当然に期限の利益を喪失し,原告に対し,残リース料及び残消費税額の全額を直ちに現金で支払う。
遅延損害金 年14.6パーセント(1年365日の日割計算)
(3)  期限の利益喪失
被告は,原告に対し,平成17年9月分から平成21年12月分までのリース料合計228万2280円を支払ったが,平成22年1月27日,同月分のリース料の支払を怠り,同日の経過により期限の利益を喪失した。同日時点におけるリース料の残額は,140万4480円である。
2  争点及びこれに関する当事者の主張
(1)  クーリングオフによる解除(争点1)
(被告の主張)
ア 原告は,補助参加人に対し,原告に代わってユーザーとの間のリース契約を締結する権限を与えており,被告に対する補助参加人の勧誘,補助参加人から原告への本件リース物件の販売及び原告と被告との本件リース契約は一体となって成立し,原告は,本件リース契約の勧誘から締結まで補助参加人の担当者を手足として利用しているから,原告及び補助参加人は,いずれも特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)2条1項1号所定の役務提供事業者に該当する。
そして,本件リース契約は,原告の営業所等以外の場所で申込み及び締結があったものといえるから,同号所定の訪問販売に該当する。
イ 本件リース物件のうち電話機(以下「電話機の親機」という。)及びコードレス電話機(以下「電話機の子機」という。)は,被告の自宅兼事業所建物の居住部分に設置され,使用されていたこと,本件リース契約締結当時,被告は79歳と高齢であり,事業の廃止も検討していたこと,被告の事業は小規模零細であり,事業の連絡としては主にファクシミリを使用していたこと,本件リース物件はビジネスホンであるが,被告の営業形態はビジネスホンを必要とするものではなかったことからすると,被告による本件リース物件の使用は家庭用であり,本件リース契約は被告の営業のための契約には当たらないから,特定商取引法26条1項1号の適用除外には該当しない。
また,本件リース契約の契約書に特定商取引法4条4号所定のクーリングオフに関する記載はないし,被告が本件リース契約を締結するに際して口頭でクーリングオフの説明を受けたこともないから,クーリングオフの行使期間は開始していない。
ウ 被告は,原告に対し,平成22年3月2日,本件リース契約をクーリングオフにより解除する旨の意思表示をした。
(原告の主張)
ア 被告の主張は,争う。
イ 原告は,補助参加人に対し,原告に代わってリース契約を締結する権限を与えておらず,補助参加人は,原告の代理人ではなく,ユーザーの申込みの意思表示を伝達する使者の立場にある。また,原告は,補助参加人の担当者を自社の手足として利用してはいない。
ウ 被告は事業者であり,電話機は被告が事業を行う上で有益かつ必要な機器である。本件リース物件の設置場所に関する被告の主張はにわかには信じ難く,被告が零細な事業者であるとは認められないし,商取引の現場では注文主からの受注依頼や外注先に対する発注の可否の確認が電話で行われるのが通常であり,10万円を超える通信費を経費として申告していることからすると,被告が本件リース物件を事業のために利用していたことは明らかである。
したがって,本件リース契約は,特定商取引法26条1項1号に該当するから,クーリングオフは適用されない。
(2)  錯誤無効又は詐欺取消し(争点2)
(被告の主張)
被告は,新たな電話機を交換する必要もなく,リース契約を継続しなければならない事情もなかったにもかかわらず,補助参加人の担当者の勧誘により,新たに本件リース契約を締結せざるを得ないとの錯誤に陥り,被告にとって不要なビジネスホンにつき,高額なリース料で契約を締結したといえる。したがって,本件リース契約は,錯誤により無効である。
また,補助参加人の担当者は,原告の履行補助者又は契約締結についての代理人であるということができ,同人の欺罔行為は原告による欺罔行為と同視できる。
被告は,原告に対し,平成26年7月22日の本件口頭弁論期日において,本件リース契約を詐欺により取り消す旨の意思表示をした。
(原告の主張)
被告の主張は,争う。
本件リース契約を締結するに際し,被告が何らかの錯誤に陥ったとは認められないし,補助参加人の担当者が欺罔行為を行ったとも認められない。
また,補助参加人及びその担当者は,原告とは完全に別個の営業主体であり,原告の履行補助者でも代理人でもない。
(3)  安全配慮義務違反による解除(争点3)
(被告の主張)
原告は,販売店である補助参加人を管理できる立場にありながら,販売店においてユーザーに対する信用を供与し,その緊密な関係を利用してリース契約の収益を上げているのであるから,販売店の販売方法,販売商品,営業実態,経営内容等を調査して,その提携関係を厳正に管理し,ユーザーに不測の損害を与えないよう配慮すべき契約上ないし信義則上の義務を負う。しかし,原告は,上記義務を怠り,漫然と補助参加人による被告への詐欺的勧誘行為を放置し,その結果,被告は,重大な被害を被った。
被告は,平成26年7月22日の本件口頭弁論期日において,上記債務不履行ないし信義則上の安全配慮義務違反に基づき,本件リース契約を解除する旨の意思表示をした。
(原告の主張)
被告の主張は,争う。
補助参加人は,原告の履行補助者や代理人ではなく,別個の営業主体であり,原告の専属の販売店ではなく,その他の多数のリース会社との間で取引を行っている。したがって,原告は,補助参加人を管理する立場にはなく,安全配慮義務を負っていない。
(4)  暴利行為による公序良俗違反(争点4)
(被告の主張)
被告は,本件リース物件を購入すれば20万円程度の出費で済んでいたところ,本件リース契約を締結したために368万6760円を支払うこととなった。本件リース契約締結後は月額のリース料が4万3890円と高額になっており,被告は本件リース契約を中途解約することもできない。また,補助参加人の勧誘方法は違法である。
したがって,本件リース契約は,原告が被告から多額の金員を収奪する暴利行為であり,契約締結過程の面においても,社会的に許容される範囲を逸脱した不公正な取引であり,公序良俗に反し無効である。
(原告の主張)
被告の主張は,争う。
本件リース契約のリース料総額が368万円以上となっているのは,過去に存在した別のリース契約に係る解約金等が含まれているためであり,本件リース物件のみの料金として金額が設定されているわけではない。また,原告は補助参加人に対し,物件代金として292万3060円を支払っているから,原告の売上げとなるのは58万8140円までであり,本件リース契約のリース料総額が暴利に当たるとは到底評価できない。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の各事実が認められる。
(1)  被告は,本件リース契約当時,東京都葛飾区内の自宅に独居し,同所において,a製作所(以下「本件製作所」という。)の屋号で,スプリング加工業を営んでいた(甲1から3まで,乙1,4,8)。
(2)  本件製作所では,平成16年頃,被告を含めて3名の従業員が勤務していたが,その後,本件リース契約を締結した頃までに,被告のみが勤務するようになった(甲1から3まで,乙1)。
(3)  本件製作所は,平成17年当時,ばねの製造を外部に発注することにより営業を行っており,少なくとも7か所の取引先を有していた。また,本件製作所の記名スタンプには,被告が自宅のものとして記載した電話番号と同一の電話番号が記載されていたほか,上記番号とは異なるファクシミリ番号が記載されていた(甲1,3,乙1,3,10)。
(4)  被告は,平成16年5月17日,それまで他社からリースを受けていた電話機と入れ替える形で,原告との間で,主装置内蔵電話機及びコードレス電話機をリース物件とし,リース期間を同日から5年間,月額リース料を2万4150円,リース料支払総額を144万9000円とするリース契約を締結した。なお,上記電話機は,業務用に用いることを想定したいわゆるビジネスホンであった(甲2,丙1,弁論の全趣旨)。
(5)  被告は,平成16年8月9日,それまで他社からリースを受けていたファクシミリと入れ替える形で,原告との間で,ファクシミリ1台をリース物件とし,リース期間を同日から5年間,月額リース料を2万0790円,リース料支払総額を124万7400円とするリース契約を締結した(甲3,丙1)。
(6)  平成17年7月頃,補助参加人の担当者が前記(4),(5)の電話機及びファクシミリの使用状況を確認するために被告方を訪問した際,上記ファクシミリがなくなっていたことから,被告は,従前のリース契約を整理する目的も兼ねて,原告との間で本件リース契約を締結した(丙1,3の2)。
(7)  本件リース契約においては,本件リース物件の価格として292万3000円が計上されていたところ,原告は,補助参加人に対し,上記金額の税込金額に概ね相当する金額として,本件リース物件の代金35万3325円,工事費14万0595円,原告が被告との間で従前締結していたリース契約の残債務202万3350円,障害対応等の費用55万2132円の合計306万9402円を支払った(丙3の2)。
(8)  被告は,本件リース契約締結後,本件リース物件のうち主装置を自宅1階の店舗部分に,電話機の親機を1階の居住部分の台所の食卓の上に,電話機の子機を2階の居住部分の寝室にそれぞれ設置した(乙8,12)。
(9)  被告は,平成17年分の所得税申告の際,売上として1312万6548円,経費のうち通信費として10万9880円,外注工賃として858万8017円,所得として217万3441円を申告した(乙3)。
(10)  被告は,平成21年12月末日,高齢であることや認知症が進行したことを主な理由として,本件製作所を廃業した(乙8,弁論の全趣旨)。
2  争点1(クーリングオフによる解除)について
被告は,被告による本件リース物件の使用は家庭用であり,本件リース契約は,被告の営業のための契約には当たらず,特定商取引法26条1項1号の適用除外には該当しないこと等を根拠として,本件リース契約につき,クーリングオフによる解除を主張する。
しかしながら,前記1のとおり,まず,被告は,本件製作所の事業として,少なくとも7か所の取引先を有し,平成17年の売上は約1312万円,外注費は約858万円であったことからすると,本件製作所の事業が小規模零細であったと評価することはできず,上記事業のために取引先と日常的に連絡を取ることを要していたと認められる。
また,本件製作所の記名スタンプには,被告が自宅のものとして記載したものと共通の電話番号が記載されており,本件製作所の事業のために他の電話番号による通話回線が設置されていたとも認められないこと,税務申告の際にも通信費として少なくとも電話回線使用料に相当する金額が計上されていることからすると,ばねの製造の外注先等の取引先との連絡の用途のために本件リース物件が用いられていたものと認められる。
そして,本件リース契約当時,被告は比較的高齢ではあったものの,被告が本件リース契約の締結に際して,原告や補助参加人に廃業を検討している旨述べたと認めるに足りる証拠はないし,現に,平成21年末まで事業を継続していたことが認められる。
さらに,本件製作所の事業のために本件リース物件のようないわゆるビジネスホンを設置することが必須であったかは必ずしも明らかではないものの,被告が本件リース契約の前に少なくとも2度にわたり電話機についてのリース契約を締結しており,そのうち本件リース契約の直近に締結したリース契約がいわゆるビジネスホンを対象とするものであったことからすると,本件製作所の業務のためにビジネスホンを設置することが格別に不自然であるということはできない。
加えて,被告は本件リース物件のうち電話機の親機と子機を居住部分に設置していたものの,このこと自体は,本件製作所にかかってきた電話も含めて,被告が居住部分にいる間に応対できるようにすることを目的とした措置であるとも考えられるから,これをもって本件リース物件が事業目的で設置されたことを否定することはできない。
これらのことからすると,本件リース契約は,被告が本件製作所の営業のために締結したものというべきであるから,特定商取引法26条1項1号により,クーリングオフに関する規定は適用されないというべきである。
したがって,被告のクーリングオフによる解除の主張は認められない。
3  争点2(錯誤無効又は詐欺取消し)について
被告は,新たな電話機を交換する必要もなく,リース契約を継続しなければならない事情もなかったにもかかわらず,補助参加人の担当者の勧誘により,新たに本件リース契約を締結せざるを得ないとの錯誤に陥り,被告にとって不要なビジネスホンにつき,高額なリース料で契約を締結したとして,本件リース契約について,錯誤無効及び詐欺取消しを主張する。
しかしながら,被告は,本件リース契約の締結に際し,補助参加人の担当者から受けた勧誘の内容について,何ら具体的な立証をしておらず,補助参加人の担当者から被告が主張するような内容の勧誘が行われたことや被告が錯誤に陥ったことを認めることはできない。
したがって,被告の錯誤無効及び詐欺取消しの主張は認められない。
4  争点3(安全配慮義務違反による解除)について
被告は,原告が販売店である補助参加人を管理できる立場にありながら,漫然と補助参加人による被告への詐欺的勧誘行為を放置し,その結果,被告は,重大な被害を被ったとして,本件リース契約の解除を主張する。
しかしながら,前記3のとおり,補助参加人の担当者が詐欺的勧誘行為を行ったとは認められないから,被告の上記主張は,前提を欠き,認められない。
5  争点4(暴利行為による公序良俗違反)について
被告は,本件リース契約は,原告が被告から多額の金員を収奪する暴利行為であり,契約締結過程の面においても,社会的に許容される範囲を逸脱した不公正な取引であり,公序良俗に反し無効である旨主張する。
しかしながら,まず,前記1(7)のとおり,本件リース契約に際し,原告が補助参加人に支払った金額は合計306万9402円であるところ,これは,リース物件自体の価格のほか,工事費,障害対応等の費用及び原告が被告との間で従前締結していたリース契約の残債務202万3350円が計上されたものであり,それぞれの費目は,被告が享受した商品や役務の対価として特段高額であるとは認められない。また,本件リース契約におけるリース料の総額は368万6760円であり,原告が本件リース契約によって得る利益は,多くともこの金額から上記306万9402円を控除した61万7358円にとどまるところ,前記前提事実のとおり,リース期間が7年間とされていることを考慮すると,原告が本件リース契約によって,暴利を得たとは認められない。
そして,前記3のとおり,本件リース契約の締結に至る過程において,補助参加人の担当者から違法な勧誘が行われたとも認められない。
したがって,本件リース契約が公序良俗に反するとの被告の主張は,認められない。
第4  結論
以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 髙橋祐喜)

 

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