平26(ワ)9177号 立替金請求事件

裁判年月日  平成27年 7月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)9177号
事件名  立替金請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2015WLJPCA07168031

要旨
◆割賦販売業者である原告会社が、エステを屋号で営業している被告との間で、被告が訴外会社を通じて行った本件商品に係る売買についてクレジット契約を締結したとして、被告に対し、残元本等の支払を求めた事案において、請求原因の各事実について当事者間に争いはないところ、訴外会社の事実不告知による被告の本件クレジット契約の取消しは認められないとし、また、本件商品の性質からすれば、明らかにその売買契約の目的・内容が営利の目的をもって、かつ、事業のためであると認められる上、被告自身、本件商品をエステ店の販売促進等に利用するためのものであると認めており、実際に事業のために利用していることから、本件クレジット契約は、本件商品の購入者である被告が「営業のために若しくは営業として締結するものに係る個別信用購入あっせん」に該当し、クーリング・オフの適用除外取引に当たると判断して、本件クレジット契約の解除も否定し、請求を認容した事例

参照条文
割賦販売法35条の3の9
割賦販売法35条の3の10第1項
割賦販売法35条の3の13第1項
割賦販売法35条の3の60第2項1号

裁判年月日  平成27年 7月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)9177号
事件名  立替金請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2015WLJPCA07168031

東京都新宿区〈以下省略〉
原告 株式会社ビジネスパートナー
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 小野上陽子
同 中森亘
静岡県沼津市〈以下省略〉
被告 a店こと Y
同訴訟代理人弁護士 大塚陵

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,184万7918円及びこれに対する平成25年11月29日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は,被告の負担とする。
3  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
主文と同じ
第2  当事者の主張
1  原告の請求原因
(1)  原告は,個別信用購入あっせん業として,経済産業省へ登録していた割賦販売業者である。
(2)  被告は,沼津市でエステを屋号で営業し原告との間でクレジット契約を締結した債務者である。
(3)  平成25年4月1日,被告は,訴外株式会社エス・ケイ通信(以下「エス・ケイ通信」という。)を通じ対象商品の売買(以下「本件売買契約」という。)を行ったことにより,次の内容のクレジット契約(以下「本件クレジット契約」という。)を原告と締結した。
ア 商品 株式会社エス・ケイ通信顧客管理ソフト(IPmobile)(以下「本件商品」という。)
イ 販売価格 173万4940円
ウ 分割手数料 28万1060円
エ 支払期間 平成25年5月1日から平成30年4月30日
オ 分割支払金額 3万3600円
カ 支払方法 毎月28日払い
キ 遅延損害金 6%
ク 期限の利益喪失特約 被告が支払期日に分割支払を遅滞し,原告から20日以上の相当な期間を定めてその支払を書面で催告されたにもかかわらず,その期間内に支払わなかったとき,商品の購入が購入者にとって事業用のためのものである場合においては,第4条に基づく支払を1回でも怠ったとき。
(4)  被告は,原告に対し,別紙充当明細書記載のとおり,平成25年11月6日までに,合計17万4200円(うち元本部分16万8082円)を支払ったが,それ以降支払をしない。
(5)  よって,原告は,被告に対し,残元本184万7918円及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日である平成25年11月29日から支払済みまで年6%の割合による金員の支払を求める。
2  請求原因に対する認否
原告の請求原因(1)ないし(4)の事実は認める。
3  抗弁
(1)  クーリング・オフ
本件売買契約は訪問販売にあたる。被告は,平成26年11月20日の本件口頭弁論期日において,割賦販売法35条の3の10第1項1号に基づき,原告に対し,本件クレジット契約を解除するとの意思表示をした。
(2)  事実不告知による取消し
ア エス・ケイ通信のBは,被告を勧誘する際,被告のフェイスブックページが個人アカウントであり,本件商品の口コミ効果が得られないことを知りながら,故意にその事実を告げなかったことにより,被告は本件商品の口コミ効果について誤認をして,それによって本件クレジット契約を申し込んだ。
イ 被告は,平成26年11月20日の本件口頭弁論期日において,割賦販売法35条の3の13第1項3号に基づき,原告に対し,本件クレジット契約を取り消すとの意思表示をした。
4  抗弁に対する認否
前記事実不告知による取消し(ア)について不知。被告は,自身のフェイスブックに関する無知を,エス・ケイ通信の説明不足としてこじつけているにすぎず,事実不告知はない。
5  再抗弁
(1)  クーリング・オフの適用除外取引(抗弁(1)に対し)
本件クレジット契約は,被告の「営業のため若しくは営業として」(割賦販売法35条の3の60第2項1号)契約されたことは明らかである。
(2)  法定書面の交付後のクーリング・オフ(抗弁(1)に対し)
原告は,割賦販売法35条の3の9所定の法定書面であるビジネスクレジット契約について(事業目的専用)(甲4)を契約申込日に交付している。被告の意思表示は交付から8日を経過している。
6  再抗弁に対する認否
(1)  クーリング・オフの適用除外取引に対して
否認する。
(2)  法定書面の交付後のクーリング・オフに対して
被告がビジネスクレジット契約について(事業目的専用)(甲4)と同様の記載のある書面の交付を受けたことは認めるが,その余は否認する。
原告が,平成25年4月1日,被告に対して交付したビジネスクレジット契約について(事業目的専用)(甲4)には本件クレジット契約のクーリング・オフの適用を受けないことを確認する旨とクーリング・オフを行うことができる旨の記載が併記されている。このような記載は,顧客にとってクーリング・オフができるのかできないのか容易にわからないから,法定記載事項の不備がある。
7  再々抗弁(再抗弁(2)に対して)
クーリング・オフ妨害
前記6再抗弁に対する認否(2)記載のとおり,原告によるビジネスクレジット契約について(事業目的専用)(甲4)の記載行為は,クーリング・オフに関する事項につき不実のことを告げる行為により被告をして本件クレジット契約をクーリング・オフできないと誤認させた場合(割賦販売法35条の3の10第1項ただし書の括弧書)に当たる。
8  再々抗弁に対する認否
否認する。
第3  当裁判所の判断
1  原告の請求の原因(1)ないし(4)の事実は当事者間に争いがない。また,証拠(乙8)によれば,抗弁(1)の事実のうち,本件売買契約が訪問販売の方法による販売契約に当たることが認められ,その余の事実は当裁判所に顕著である。
本件の争点は,①事実不告知による取消し(割賦販売法35条の3の13第1項3号)が認められるか否か,②クーリング・オフの成否に関して,②-1クーリング・オフの適用除外取引(割賦販売法35条の3の60第1項1号)に当たるか否か,②-2②-1について当たらない場合に,原告が被告に対して交付した書面が割賦販売法35条の3の9所定の要件を満たしたものであったか否か,②-3②-1について当たらない場合であり,②-2について要件を満たしていた場合に,原告によるクーリング・オフ妨害(割賦販売法35条の3の10第1項ただし書の括弧書)があったと認められるか否か,である。
2  ①事実不告知による取消しが認められるか否かについて
(1)  被告は,エス・ケイ通信のBが,被告に対して,本件商品の購入を勧誘する際,当時,被告が有するフェイスブックページが個人アカウントであり,本件商品によればフェイスブックページに対する「いいね!」ボタンが存在しない状態になり,ひいては本件商品による口コミ効果が得られないことを知りながら,故意にその事実を告げなかったと主張する。そして,その根拠として本件商品の設定作業を行ったエス・ケイ通信の担当者が,被告店舗の会員登録をして,メールの配信を受けていたことなどを主張する。
(2)  しかし,証拠(乙7,8)によれば,被告による本件商品購入日は平成25年2月20日であり,希望納品日はその後日である同年3月6日とされているのであるから,エス・ケイ通信の担当者が本件商品の設定作業を行ったのも同日(少なくとも契約日以降)と考えられ,被告が根拠として主張する事実は時系列からして不合理である。そして,その他の全証拠によっても,エス・ケイ通信と被告が本件売買契約及び本件クレジット契約を締結する時点において,Bが被告のフェイスブックページが個人アカウントであったことを知りつつ,本件商品ではビジネスアカウントでなければ「いいね!」ボタンが機能せず,口コミ効果も期待し得ないこと等を故意に告げなかったと認めることはできない。
また,証拠(乙1)によれば,本件商品は,フェイスブック,ツイッター等のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の利用を通じて口コミ効果も期待できる機能を有することも売りとする商品であるところ,被告が事後フェイスブックのビジネスアカウントを取得して前記機能を利用できていること(乙3,8)からも明らかなように,そもそも本件商品においてフェイスブックの「いいね!」ボタンを活用するにあたり,個人アカウントかビジネスアカウントかの違いは購入者の購入判断に影響を及ぼす重要なものとまではいえないというべきであり,購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な商品の性能等(割賦販売法35条の3の13第1項柱書,同項3号)には該当しない,つまり,事実不告知の対象とはそもそもならないと解するのが相当である。なお,本件商品の購入の勧誘をする際に示した資料(乙1)に記載の限度でBが被告に対して本件商品の説明をしたことは証拠(乙8)により認められる。
結局,被告の主張は,商品についての事実不告知ではなく,契約後のエス・ケイ通信のサービスの適否についての問題提起と位置付けられるべきものである。
(3)  以上より,被告の主張は採用できない。
3  ②-1クーリング・オフの適用除外取引に当たるか否か
(1)  割賦販売法35条の3の60第2項1号の趣旨は,契約の相手方の属性が事業者や法人である場合に一律に適用除外とするものではなく,あくまで,契約の目的・内容が営利の目的をもって,かつ,事業のために又は事業の一環として行われる場合に適用除外とするものであると解するのが相当である。
(2)  証拠(乙1)によれば,本件商品は,端末機とソフトウェアからなるものであり,いわゆる顧客管理及び販売促進のためのシステムと認められる。そして,証拠(乙6ないし8)によれば,被告は,個人事業主としてエステ店を開業し,同店の売上げ向上につながると考え,本件商品の購入を決めたこと,エス・ケイ通信の担当者が本件商品の設定作業を行ったことが認められる。そうすると,本件商品の性質からすれば,明らかに,本件商品の売買契約の目的・内容が営利の目的をもって,かつ,事業のためであると認められるところ,被告自身,本件商品をエステ店の販売促進等に利用するため,つまり,本件商品の売買契約の目的・内容が事業のためのものであると認めているところであり,実際,事業のために利用していることも認められる(乙3)。
以上より,本件クレジット契約は,本件商品の購入者である被告が「営業のために若しくは営業として締結するものに係る個別信用購入あっせん」(割賦販売法35条の3の60第2項1号)に該当すると認められる。よって,被告による割賦販売法35条の3の10第1項1号に基づく本件クレジット契約の解除(クーリング・オフ)は認められない。
なお,被告は,自営業の経験がない中,開業後数日後に申込みをしたものであることなどから,事業実態のほとんどない零細事業者にあたり,本件クレジット契約は適用除外にあたらないと考えるべきであると主張するが,被告のエステ店について事業実態があることは証拠(乙2,3,6,8)から明らかであるし,前記認定のとおり,名実共に本件商品の売買契約の目的・内容が営業のためのものであることは明らかであるから,被告の主張は採用できない。
4  結論
以上より,その余の争点について判断をするまでもなく,原告の被告に対する請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 田中一洋)

 

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